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好き好き大好き
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風呂から上がって、平常心を装うために頬を叩いて顔を引き締める。
急いで夕食の準備をしようと食堂に向かうと、入り口にリーズナがいた。
猫の姿に戻っているが、不貞腐れた顔をしていた。
カイウスに怒られたみたいで、俺とも話してくれない。
「ごめんね、師匠…カイウスにちゃんと誤解を解いとくから」と言ったら、尻尾で頭を叩かれた。
何も言わないが、余計な事をするなと言っているようだった。
修行が無駄な事になる事はしない、リーズナの誤解を解くだけだよ。
「ライム、そこで何してる?」
「あ、カイウス…」
「やっぱりリーズナとなにかあったのか?」
カイウスの視線がリーズナの方を向いて、俺はカイウスとリーズナの間に割って入った。
本当にカイウスに隠すような事はない。
あるとしたら、修行の事だけだ。
でもカイウスにその事は話せない。
だから修行じゃなくて、リーズナと遊んでいた事にした。
俺の言葉にリーズナは呆然としていた。
「遊び?何の?」
「ボールを使った遊びだよ、手を使えないと遊べないからリーズナに変身してもらっただけだよ」
「…そうか、悪かったなリーズナ」
『……別に』
リーズナは不満そうな顔をしていたが、カイウスの変な誤解が解けたみたいで良かった。
俺が夕飯作ろうと思っていたら、今日はカイウスも一緒に作ると言ってくれた。
厨房に並んで立って、一緒に料理を作りながらカイウスの横顔をこっそり覗く。
ジッと見つめていたら、視線に気付いたカイウスは俺に小さな声で「どうした?」と聞いてきた。
何でもないと言って、視線を前に戻して野菜を切る。
ちょっとした事が嬉しいだけなんだ、くっつく肩も声も全部大好きだな…って嬉しくなる。
「ライム、俺…今日不思議な事があったんだ」
「不思議?まさか嫌な事があったの?」
「違う、ライムが俺の心の中にいるような感じだ…幸せな気持ちが広がって、疲れなんて吹き飛んだよ」
カイウスも俺がいた事に気付いてくれたんだ。
でも、本当にいたとは知らないから「ライムが恋しかったのかもな」と笑っていた。
カイウスの服の袖を掴むと、指で俺の手をなぞった。
カイウス、好きが溢れて止まらなくなる…口で言っても足りない。
見上げると、カイウスが顔を近付けてきた。
でも俺はそれを肩を押して止めた。
不思議そうにするカイウスに、つま先立ちして唇を触れ合わせた。
俺がキスしたかったんだ、びっくりしているカイウスに満足した。
「早く料理作ろう、食べてからカイウスにくっつきたいから」
「そうだな」
二人で料理を作る時間はとても幸せで、ずっと時が止まればいいのになと願わずにはいられない。
カイウスと二人で作った料理を食べて、後片付けもカイウスとやった。
お腹もいっぱいになったし、カイウスに触りたいなぁ…と近付いた。
キスがしたいと思ってカイウスを見つめていたら、俺の方を向いた。
キスするのかな、と思っていたらカイウスに手を引かれた。
何処に行くんだろうと、カイウスにされるがままに付いて行く。
まさか外まで行くとは思ってなくて、夜の冷たい風が吹いていた。
そしてカイウスに腰を掴まれて引き寄せられる。
「ライム、浮くからしがみついて」
「わ、分かった」
両腕をカイウスの首に回して、ギュッと抱きしめる。
すると、冷たい夜の風と違い…暖かい風が下から吹いて俺とカイウスを浮かせた。
そのままゆっくりと上に運ばれて、バルコニーに降ろされた。
二階は半崩壊していたが、バルコニーは外に出ているからか壊れてはいなかった。
そのまま手を繋いでバルコニーからの眺めを見つめた。
木々の向こう側に見えるのは街で、光がポツポツと見えて綺麗だった。
「凄い…綺麗」
「もっと景色がいいところに連れて行きたかったが、ごめんな」
「そんな事ないよ、ありがとうカイウス」
「こういうのってムードが大事なんだろうけど、よく分からなくてな」
カイウスはそう言って、俺の頬に触れた。
ムードなんてなくてもカイウスがいればそれでいいよ。
カイウスにそう言おうとしたら、右手を持ち上げられた。
ズボンのポケットからなにかを取り出していた。
俺の人差し指に嵌められたのは、カイウスの髪色と同じ小さな青い宝石の指輪だった。
カイウスは指輪をしている指に軽く口付けた。
「ライムが俺のものがほしいって言ったから、願いを込めて作った」
「カイウス…」
「人差し指の指輪は、愛する人と永遠を誓う意味があるんだ」
急いで夕食の準備をしようと食堂に向かうと、入り口にリーズナがいた。
猫の姿に戻っているが、不貞腐れた顔をしていた。
カイウスに怒られたみたいで、俺とも話してくれない。
「ごめんね、師匠…カイウスにちゃんと誤解を解いとくから」と言ったら、尻尾で頭を叩かれた。
何も言わないが、余計な事をするなと言っているようだった。
修行が無駄な事になる事はしない、リーズナの誤解を解くだけだよ。
「ライム、そこで何してる?」
「あ、カイウス…」
「やっぱりリーズナとなにかあったのか?」
カイウスの視線がリーズナの方を向いて、俺はカイウスとリーズナの間に割って入った。
本当にカイウスに隠すような事はない。
あるとしたら、修行の事だけだ。
でもカイウスにその事は話せない。
だから修行じゃなくて、リーズナと遊んでいた事にした。
俺の言葉にリーズナは呆然としていた。
「遊び?何の?」
「ボールを使った遊びだよ、手を使えないと遊べないからリーズナに変身してもらっただけだよ」
「…そうか、悪かったなリーズナ」
『……別に』
リーズナは不満そうな顔をしていたが、カイウスの変な誤解が解けたみたいで良かった。
俺が夕飯作ろうと思っていたら、今日はカイウスも一緒に作ると言ってくれた。
厨房に並んで立って、一緒に料理を作りながらカイウスの横顔をこっそり覗く。
ジッと見つめていたら、視線に気付いたカイウスは俺に小さな声で「どうした?」と聞いてきた。
何でもないと言って、視線を前に戻して野菜を切る。
ちょっとした事が嬉しいだけなんだ、くっつく肩も声も全部大好きだな…って嬉しくなる。
「ライム、俺…今日不思議な事があったんだ」
「不思議?まさか嫌な事があったの?」
「違う、ライムが俺の心の中にいるような感じだ…幸せな気持ちが広がって、疲れなんて吹き飛んだよ」
カイウスも俺がいた事に気付いてくれたんだ。
でも、本当にいたとは知らないから「ライムが恋しかったのかもな」と笑っていた。
カイウスの服の袖を掴むと、指で俺の手をなぞった。
カイウス、好きが溢れて止まらなくなる…口で言っても足りない。
見上げると、カイウスが顔を近付けてきた。
でも俺はそれを肩を押して止めた。
不思議そうにするカイウスに、つま先立ちして唇を触れ合わせた。
俺がキスしたかったんだ、びっくりしているカイウスに満足した。
「早く料理作ろう、食べてからカイウスにくっつきたいから」
「そうだな」
二人で料理を作る時間はとても幸せで、ずっと時が止まればいいのになと願わずにはいられない。
カイウスと二人で作った料理を食べて、後片付けもカイウスとやった。
お腹もいっぱいになったし、カイウスに触りたいなぁ…と近付いた。
キスがしたいと思ってカイウスを見つめていたら、俺の方を向いた。
キスするのかな、と思っていたらカイウスに手を引かれた。
何処に行くんだろうと、カイウスにされるがままに付いて行く。
まさか外まで行くとは思ってなくて、夜の冷たい風が吹いていた。
そしてカイウスに腰を掴まれて引き寄せられる。
「ライム、浮くからしがみついて」
「わ、分かった」
両腕をカイウスの首に回して、ギュッと抱きしめる。
すると、冷たい夜の風と違い…暖かい風が下から吹いて俺とカイウスを浮かせた。
そのままゆっくりと上に運ばれて、バルコニーに降ろされた。
二階は半崩壊していたが、バルコニーは外に出ているからか壊れてはいなかった。
そのまま手を繋いでバルコニーからの眺めを見つめた。
木々の向こう側に見えるのは街で、光がポツポツと見えて綺麗だった。
「凄い…綺麗」
「もっと景色がいいところに連れて行きたかったが、ごめんな」
「そんな事ないよ、ありがとうカイウス」
「こういうのってムードが大事なんだろうけど、よく分からなくてな」
カイウスはそう言って、俺の頬に触れた。
ムードなんてなくてもカイウスがいればそれでいいよ。
カイウスにそう言おうとしたら、右手を持ち上げられた。
ズボンのポケットからなにかを取り出していた。
俺の人差し指に嵌められたのは、カイウスの髪色と同じ小さな青い宝石の指輪だった。
カイウスは指輪をしている指に軽く口付けた。
「ライムが俺のものがほしいって言ったから、願いを込めて作った」
「カイウス…」
「人差し指の指輪は、愛する人と永遠を誓う意味があるんだ」
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