冷淡騎士に溺愛されてる悪役令嬢の兄の話

雪平@冷淡騎士2nd連載中

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花の世界

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顔を上げてびっくりした。

綺麗な黒い髪が花びらと一緒に揺れている。
カイウスだ、しかも普通のカイウスじゃない。
暴走した時のカイウスだった。

「どうして…カイウス、なにがあったの!?」

「それは俺のセリフだ、なんでライムが此処にいるんだ?」

「なんでって、だってここは俺達が住んでる洋館の下…」

「ここはカイウスの中だ」

カイウスの言葉にびっくりして周りを見渡した。
この綺麗な場所がカイウスの世界。

もしカイウスがここにいなかったら、そう言われても信じられなかったかもしれない。
カイウスは「リーズナと一緒にいたのか?」と聞いてきた。
リーズナといたけど、なにかリーズナがやったのか?

カイウスは俺の髪に触れていて、くすぐたかった。

「まぁ、来たんならゆっくりしていって」

「カイウス…」

「俺がライムを帰すのかは分からないけど」

カイウスの顔は冗談か本気がいまいち分からない時がある。
とりあえずそれは置いといて、ここがカイウスの中ならもう一人のカイウスがいるかもしれない。

周りを見渡してみるが、この場所には俺とカイウスの二人しかいなかった。

「カイウス、ここにもう一人のカイウスいなかった?」

「もう一人?…俺?」

そりゃあそうなるか、目の前のカイウスももう一人のカイウスなんだから…

どう説明したらいいんだろう、目の前のカイウスもあの人格を知っている筈だ。
だから三人目のカイウスと言った方が伝わるだろう。

カイウスは俺の肩に手を置いて、綺麗な笑みを見せた。
俺もつられて笑ってみたら、視界がぶれた。

びっくりして目を丸くしていたら、視界が青空いっぱいになった。

「あ…れ…?」

「カイウスカイウスって俺以外の男なんてどうでもいいよ」

「でも、他の人じゃなくてカイウスの話だから」

「人格が違うんだから、他人だよ」

そう言ったカイウスは俺の首筋を舐めた。
カイウスの中とはいえ、さっきは痛みを感じていた。
だから舐められた感覚もむずむずする気持ちもある。

俺は話がしたいのに、こんなところで流されたら何も聞けない。
せっかく話が出来るのに…

腕を伸ばして、カイウスから離れようとしたがすぐに手を掴まれて恋人繋ぎをされてしまう。
耳の近くでチュッとリップ音が聞こえると変な気分になってきた。

「アイツばっかりライムに触って不公平だろ、俺だって触りたい愛でたい愛したい」

「んんっ…そ、れは…俺の話が終わってからで」

「話って表のアイツの話だろ、俺の話以外聞きたくない」

「貴方にも関係がある話なんだ!」

俺の言葉に聞く耳持たなかったカイウスが俺の方を向いた。

無関係な話ではない、カイウスの中で起こった話だ…表も裏も影響がある話なんだ。
自分の話だと分かったら、カイウスは動きを止めた。

鼻と鼻がくっつきそうなほど至近距離で見つめ合っていた。
カイウスの足が俺の足の間にあるから、少し動いただけで擦れてしまって俺も動けない。

カイウスは耳元で囁くように「話して」と言っていた。
どうやら、このまま話を聞くつもりらしい。

「カイウスの中に異変が起きている事は知ってるよね」

「異変…あぁ、変なのが入ろうとしているアレ?大丈夫だよ、簡単に入れるものじゃないから…俺達は器に守られている、アレさえ壊れなければ大丈夫」

どうやらこのカイウスは気にしていない様子だった。
一度人格が乗っ取られた時も、器が不安定だったから。
でも不安定なだけで、すぐに元通りになってあれから乗っ取られる事はなくなった。

そう思えたら良かったけど、カイウスは不安で不安で俺に弱さを見せるほどだった。
よほどの事だと俺だって分かる、大丈夫だとは思えない。

目の前のカイウスは余裕そうに笑っていたが、笑みが消えて俺の額に額を合わせていた。

「ライムはなにが望み?ライムの望みを叶えてあげる」

「…俺の、望み…」

「不安に思うなら人格の一人ぐらい俺が消してあげる」
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