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カイウスの話38
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ライムに辛い話をするところだった。
俺を殺してくれなんて、死んでもライムを縛り付けるわけにはいかない。
いざとなったらライムと別れて、誰もいないところで自分で始末する。
自分でも制御出来ない奴が表に出てきたら、誰にも止められなくなる。
そうなったら、神やローベルトどころではない。
街を眺めると美しい景色が広がっていた。
俺が騎士である限り、この世界を守る事も俺の務めだ。
命を掛けて、俺はライムが生まれたこの世界を守り抜く。
「カイ様?」
またカイト様を呼ぶところから始めようと兵舎に向かおうとした。
後ろから声が聞こえて、後ろを振り返るとそこにいたのは最近会ったような会っていないような人物が立っていた。
買い物をする途中だったのか、ローズが驚いた顔をしていた。
会ったのは別の世界のローズだから、現実ではしばらく家に帰っていなかったからな。
早くカイト様を呼びにいかないと、また騒ぎになっていたら困る。
でも、ローズは俺の実家のメイドだ…このまま無視も出来ない。
「ローズ、変わりはなかったか?」
「…カイ様もお元気そうで」
ローズが近付いてきて、頭を下げる。
長居はするつもりはないから話を早く切り上げようと思った。
ローズもメイド服を着ているし、今は仕事中だろう。
ローズは俺の名前を呼んでなにか言いたそうにしていた。
俺はローズに用がないが、家でなにかあったのなら話を聞かないといけない。
ローズの主人は俺だからだ。
「なにかあったのか?」
「カイ様、どちらにお泊まりになられているのですか?騎士団の兵舎ですか?」
「なんでそんな事が気になるんだ?」
「…あ、えっと…ご報告が遅れてしまい申し訳ございません……昨日、ハイドレイ様がカイ様を訪ねてきまして…お話を聞いたら兵舎にはいらっしゃらないと…」
「心配しなくても大丈夫だ、ローズは家を守ってくれさえすればいい」
「カイ様!私に出来る事なら何でもします!だからカイ様…何でもお申し付け下さい!」
「家の事以外でローズに頼む事はない、他のメイド達にも俺の事は気にするなと伝えといてくれ」
ローズは幼馴染みだが、今は使用人という気持ちが大きい。
ローズになにか話す事は今後もない。
ローズが何を思ってそう言っているのかは知らない。
ただ、ローズも余計な感情を消して俺の事は雇い主とだけ思えばいい。
兵舎に到着すると、入り口付近にカイト様が待っていた。
「遅い!」と言うが、本来なら俺が来るのを待たずに先に仕事を始めてもいいんだが…トラブルが起きていないだけマシか?
カイト様を迎えにきたのもあるが、それだけではなく今日はハイドレイに用がある。
俺を訪ねて家に来たのなら、なにかあったのだろう。
カイト様は他の騎士に興味がないからか、誰を見かけたとか分からないと言っていた。
他の騎士にハイドレイの場所を聞くと外回りをしているようだった。
可笑しい、ハイドレイは今日外回りの日ではなかった筈だが…
外にいるなら、俺達もいつも通りの外回りをしに行く事にした。
「ハイドなんとかとかどうでもいいですよ、俺達騎士は国民の事だけを考えるべきだ…です」
「騎士同士の報告も大切です、一人で国民を守っているわけではありません」
「……」
「カイト様は付き合う必要はありません、先に仕事をお願い出来ますか?」
「…分かったよ」
カイト様は最後敬語を忘れて行ってしまった。
ハイドレイは俺に用があったみたいだし、俺だけでいい。
ハイドレイを探しながら、俺も外回りをする。
すぐにハイドレイが見つかって近付く。
何処かを見ているみたいで、視線の先を見るとそこにあったのはローベルト家だった。
ハイドレイは真剣な顔をして、ただ見つめていた。
「ハイドレイ」
「あ、カイ様!お疲れ様です!」
「どうかしたのか?」
「そうでした!カイ様にご報告したい事がありまして」
ハイドレイは俺の方を向いて、いつもの明るい顔に戻った。
俺の家にやってきた理由を話してくれた。
ハイドレイの同期が最近兵舎にも帰ってこなくて不思議に思ったハイドレイがずっと行方を探していたと言う。
そして同期の姿を昨日やっと見つけたそうだ。
そこはローベルト家の敷地内で、ユリウスと一緒にいた。
最近ユリウスを見かけなかった、ユリウスの部下にも行方を聞かれた事がある。
俺が実家にいた時もユリウスは帰ってこない事があった。
だから気にしていなかったが、ハイドレイの同期といた事よりもローベルト家の敷地内にいた事が問題だ。
「カイ様ならなにか知ってるかと思って…」
「悪い、ユリウスの事は俺も知らない」
「そう、ですか…アイツ真面目だし、一人でローベルト家に乗り込んだんじゃないかと思って…」
「分かった、ユリウスについて調べてみる」
「ありがとうございます、俺も調べてみます」
ハイドレイは同期が心配なのか、名残惜しそうにローベルト家を見つめながら行った。
ユリウス、いったい何故ローベルト家に居たんだ?行動次第では兄弟とはいえ敵同士になるかもしれない。
俺を殺してくれなんて、死んでもライムを縛り付けるわけにはいかない。
いざとなったらライムと別れて、誰もいないところで自分で始末する。
自分でも制御出来ない奴が表に出てきたら、誰にも止められなくなる。
そうなったら、神やローベルトどころではない。
街を眺めると美しい景色が広がっていた。
俺が騎士である限り、この世界を守る事も俺の務めだ。
命を掛けて、俺はライムが生まれたこの世界を守り抜く。
「カイ様?」
またカイト様を呼ぶところから始めようと兵舎に向かおうとした。
後ろから声が聞こえて、後ろを振り返るとそこにいたのは最近会ったような会っていないような人物が立っていた。
買い物をする途中だったのか、ローズが驚いた顔をしていた。
会ったのは別の世界のローズだから、現実ではしばらく家に帰っていなかったからな。
早くカイト様を呼びにいかないと、また騒ぎになっていたら困る。
でも、ローズは俺の実家のメイドだ…このまま無視も出来ない。
「ローズ、変わりはなかったか?」
「…カイ様もお元気そうで」
ローズが近付いてきて、頭を下げる。
長居はするつもりはないから話を早く切り上げようと思った。
ローズもメイド服を着ているし、今は仕事中だろう。
ローズは俺の名前を呼んでなにか言いたそうにしていた。
俺はローズに用がないが、家でなにかあったのなら話を聞かないといけない。
ローズの主人は俺だからだ。
「なにかあったのか?」
「カイ様、どちらにお泊まりになられているのですか?騎士団の兵舎ですか?」
「なんでそんな事が気になるんだ?」
「…あ、えっと…ご報告が遅れてしまい申し訳ございません……昨日、ハイドレイ様がカイ様を訪ねてきまして…お話を聞いたら兵舎にはいらっしゃらないと…」
「心配しなくても大丈夫だ、ローズは家を守ってくれさえすればいい」
「カイ様!私に出来る事なら何でもします!だからカイ様…何でもお申し付け下さい!」
「家の事以外でローズに頼む事はない、他のメイド達にも俺の事は気にするなと伝えといてくれ」
ローズは幼馴染みだが、今は使用人という気持ちが大きい。
ローズになにか話す事は今後もない。
ローズが何を思ってそう言っているのかは知らない。
ただ、ローズも余計な感情を消して俺の事は雇い主とだけ思えばいい。
兵舎に到着すると、入り口付近にカイト様が待っていた。
「遅い!」と言うが、本来なら俺が来るのを待たずに先に仕事を始めてもいいんだが…トラブルが起きていないだけマシか?
カイト様を迎えにきたのもあるが、それだけではなく今日はハイドレイに用がある。
俺を訪ねて家に来たのなら、なにかあったのだろう。
カイト様は他の騎士に興味がないからか、誰を見かけたとか分からないと言っていた。
他の騎士にハイドレイの場所を聞くと外回りをしているようだった。
可笑しい、ハイドレイは今日外回りの日ではなかった筈だが…
外にいるなら、俺達もいつも通りの外回りをしに行く事にした。
「ハイドなんとかとかどうでもいいですよ、俺達騎士は国民の事だけを考えるべきだ…です」
「騎士同士の報告も大切です、一人で国民を守っているわけではありません」
「……」
「カイト様は付き合う必要はありません、先に仕事をお願い出来ますか?」
「…分かったよ」
カイト様は最後敬語を忘れて行ってしまった。
ハイドレイは俺に用があったみたいだし、俺だけでいい。
ハイドレイを探しながら、俺も外回りをする。
すぐにハイドレイが見つかって近付く。
何処かを見ているみたいで、視線の先を見るとそこにあったのはローベルト家だった。
ハイドレイは真剣な顔をして、ただ見つめていた。
「ハイドレイ」
「あ、カイ様!お疲れ様です!」
「どうかしたのか?」
「そうでした!カイ様にご報告したい事がありまして」
ハイドレイは俺の方を向いて、いつもの明るい顔に戻った。
俺の家にやってきた理由を話してくれた。
ハイドレイの同期が最近兵舎にも帰ってこなくて不思議に思ったハイドレイがずっと行方を探していたと言う。
そして同期の姿を昨日やっと見つけたそうだ。
そこはローベルト家の敷地内で、ユリウスと一緒にいた。
最近ユリウスを見かけなかった、ユリウスの部下にも行方を聞かれた事がある。
俺が実家にいた時もユリウスは帰ってこない事があった。
だから気にしていなかったが、ハイドレイの同期といた事よりもローベルト家の敷地内にいた事が問題だ。
「カイ様ならなにか知ってるかと思って…」
「悪い、ユリウスの事は俺も知らない」
「そう、ですか…アイツ真面目だし、一人でローベルト家に乗り込んだんじゃないかと思って…」
「分かった、ユリウスについて調べてみる」
「ありがとうございます、俺も調べてみます」
ハイドレイは同期が心配なのか、名残惜しそうにローベルト家を見つめながら行った。
ユリウス、いったい何故ローベルト家に居たんだ?行動次第では兄弟とはいえ敵同士になるかもしれない。
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