冷淡騎士に溺愛されてる悪役令嬢の兄の話

雪平@冷淡騎士2nd連載中

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朝、二人だけの会話

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チチチ…と何処からか鳥の声が聞こえて、もう朝か…と目を開ける。
欠伸をして、目の前を見ると黒い毛むくじゃらの物体が見えた。

よく見たらリーズナが俺の真横にいて、リーズナから鳥の声が聞こえる。
まさかリーズナって鳥だったのか?
寝惚けた頭でそんな馬鹿みたいな事を考える。

鳥だから身軽に飛んだり出来たんだなぁ…納得。

リーズナの顎を触ろうと伸ばしたが、前足でバシッと叩かれた。

痛みはそんなにないが、おかげで目が冴えた。

もう一度チチチ…という鳥の囀りが聞こえた。
声がする方を見ると、リーズナの頭の上に小鳥が乗っていた。

可愛らしい小鳥は逃げる事もせずに、リーズナになにか話しかけているように見えた。
小鳥の言葉が分からないリーズナは微妙そうな顔をしていた。

黒猫の上に真っ白な小鳥、癒される。

『おい、コイツをどうにかしろ!上で鳴かれるとうるさい!』

「そう言っても…」

俺が小鳥に触れようとしたら、飛んでかわされてしまい…またリーズナの頭の上に戻った。

リーズナが顔を洗う仕草をしても同じだった。
賢い小鳥だな、昨日は鷹もいたし鳥が多いのかな。

リーズナは何度もやっているのか、ブチギレそうな顔をしていた。
魔力を出しそうな勢いでリーズナを止めに入ろうと布団から出た。

俺がなにかする前に、寝室のドアが開かれた。

「リーズナ、ここで暴れるな」

「カイウス!」

「おはようライム、よく眠れたか?」

「うん、すっかり元通りだよ」

先に起きていたカイウスは着替えを済ませて、俺を起こしに来てくれたみたいだった。
リーズナはカイウスが来た事で、魔力を出す事はしなかったが不満なのは変わりなかった。

リーズナは見回りを兼ねた散歩を毎日洋館の周りでしていて、帰ってきたところをカイウスが見たら小鳥がいたらしい。
それまでリーズナも何処かで鳥が鳴いているくらいにしか思ってなかったみたいだ。

リーズナと仲良くなりたいのかな、カイウスも初めての友達だと言っていた。

リーズナと小鳥も気になるけど、朝食…昨日は夕飯を作ってくれたから朝食は俺が作りたい。

「カイウス、朝食もう作っちゃった?」

「いや、出来立てがいいと思ってたからまだだ…すぐ用意する」

「俺が作るから座ってて」

「そうか?じゃあお願いしようか」

カイウスに任せっぱなしは嫌だと思う俺の気持ちに気付いてくれて、椅子に座った。
よし、夕飯作れなかった分…とびきり美味しい料理を作ろう!

色鮮やかなサラダと魚を焼いて、体が温まるスープと漬物の野菜と…それからそれから…

テーブルに料理が乗った皿を置いて、リーズナ用の魚が乗った皿を床に置いた。
反対方向の椅子に座り、カイウスと向かい合わせに座る。

テーブルに並べられた朝食とは思えない量の料理を見て、頭を下げた。

「作り過ぎました、ごめんなさい」

「謝る事はない、美味しそうだよ」

「無理に全部食べなくていいから、お弁当にも出来るし」

「ライムの料理なんだ、無理なんて言葉は似合わない…美味しい」

一口漬物を食べて、眩しいくらいの笑みを浮かべていた。
いくら夕飯作れなかったからって、夕飯分の量も作る必要はないな。

料理は美味しく出来て良かった。

それにカイウスも、顔色が良さそうで何よりだ。
昨日、疲れているような顔をしていた。
俺がマッサージしてあげたかったのに、指一本も動かしづらくなるなんて思わなかった。

カイウスにマッサージされてからお返しにマッサージするのはなにか違うな。

今日の修行は動ける体力も計算しつつ、無理なくリーズナを捕まえる…それが一番だ。

「カイウス、昨日は眠れた?」

「ライムのおかげで悪夢は見なかった、ありがとう」

「そう?役に立てたなら良かった」

カイウス、やっぱりかなり疲れていたんだな。
俺のマッサージなんて、途中からカイウスにセクハラしてただけのように思うんだけど…

カイウスの顔色から、優しさで嘘を付いているんじゃない事は分かる。

なにかリフレッシュ出来たのかと考えていたら、昨日の事を思い出して顔を真っ赤にした。

あ、あー…まぁ、二回もすっきりしたらぐっすり寝れるよな。
俺もぐっすりだし…もしかして、俺のマッサージよりもそっちの方が効果あるのか?

「どうした?ライム」

「な、なな何でもないよ!今日の夜もマッサージしてあげるからね!」

「あぁ、楽しみにしてる」

カイウスも昨日の事を思い出して、ほんのり頬が赤くなっていたがさすがカイウス、ポーカーフェイスが上手くてすぐに普通の顔に戻った。
朝からマッサージの話をしているだけなのに、隠語みたいになっているのはどうなんだ?

朝食を食べ終わり、残った料理をお弁当にしたり俺の昼食にしているとちょうどいい時間になっていた。
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