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安らぐ人の傍

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ゆっくりとしっかりとカイウスが感じられる。
奥の奥までカイウスの体温が俺の中にいる。

唇を合わせて、舌を絡めてキスも深く深くする。
腰を掴まれて、軽く動かされるだけでさっき絶頂を迎えたのにまたイきそうになる。

俺も腰を動かして、息が乱れて小さな声を上げる。

風呂だから声も反響して、二人しかいないのに変な気分になる。
俺の興奮した体も、カイウスの俺を見つめる熱い瞳も声も汗も全部が興奮する。

やがてペースが早くなって、絶頂が近いんだと分かった。
カイウスのを中で刺激して離さない俺の中は、まるで俺の気持ちそのもののようだ。

もっとカイウスとしたい、もっともっと欲しい。

「あっ!あぅっ…んっ、んっ!カイウスッ、イきそっ…」

「ライム…俺も、一緒に…」

汗で顔に張り付いた髪をカイウスが退かして、額と額を合わせる。
至近距離でお互いを見つめながら、カイウスを締め付けてイってしまった。

腹にカイウスの熱を感じる。
ギュッとカイウスを抱きしめると、少し動いてビクッと気持ちが良かった。
また興奮したら終わるものも終わらなくなる。

刺激しないようにゆっくりと抜くと、さすがに二回もイったら疲れてしまった。

「俺がライムの体も洗っておくから寝ていいよ」

「カイウス…に…任せる、わけには…」

必死に起きて、俺もカイウスの体を洗おうと思ったのに目蓋が重い。
カイウスに背中を撫でられた温かさもあって、いつの間にか眠ってしまった。






※カイウスの話

ライムの体を洗って、抱き抱えて寝室に向かう。

足元にリーズナがいて、なにか言うわけでもなく俺達を見ていた。
リーズナからライムが運動して筋肉痛になった事を聞かされた。

俺達の安心出来る居場所がない、ここもずっと安全ではない。
神をこの手で倒さなくては…それ以外に俺達の安らぐ日常に戻る方法はない。

「リーズナ、ライムの事頼んだぞ」

『分かってる、お前も大丈夫なのか?』

「なにが…」

『……あんまり心配掛けるなよ、恋人なんだろ』

そう言ったリーズナが走っていった。
珍しいな、リーズナがあんな事を言うなんて…

リーズナに言われなくても、ライムに心配掛けたくない気持ちはある。
でも、ライムには小さな事もお見通しなんだな。
心配掛けていたのか、今日はいろいろあったからな。

神が次にする事を警戒しながらカイト様に騎士の事を教えていた。
剣術は休みなく修行をしているらしく、悪くはない。

ただ、何度か言いたげな顔をして俺を見ている時がある。
昔から好かれてはいなかったが、それと違うなにかを感じる。

それだけなら別にいい、ただ…カイト様は変に正義感があり過ぎる。
人が困っていると駆けつけるのはいいが、無計画過ぎて新たなトラブルを巻き起こしてしまう。
言葉遣いも良くはなく、カイト様が王族だと知っているのは安全のため一握りの人間だけだ。

まずは言葉遣いをどうにかしないとな、騎士が偉そうにしてどうするんだ。
王族は確かに堂々としていなければいけないがカイト様は今では騎士だろ。

俺が見ていない間にカイト様になにがあったのか謎だ。
あんな性格だっただろうか。

いつもより仕事が増えて、疲れも二倍になった気分だった。

でも、そんな疲れもライムを見ていると癒えてきた。
ライムも疲れたみたいで、触りたいという気持ちが我慢出来なくなった。

自分の欲まみれの気持ちをライムにぶつけたくなくて、最後までするのは戸惑った。
でも、あんな可愛くねだられたらダメだ。

甘える…か、ライムになら甘えてもいいか。

ずっとカッコつけたいんだけど、ライムに甘えるのもいいかな…と少し思った。

新しい布団を引っ張り出して、ライムを寝かせた。

ライムの横に寝転がり、天井を見つめた。
きっと瞳を閉じたら朝がやってくる。
愛しいライムとの、大切な朝の時間。

瞳を閉じたら、声が聞こえた。

その声はライムじゃない、深いで反吐が出る声。

『カイウス、カイウス…』

「うっ、く…」

頭が割れそうなほど痛い、苦しい…目の前が歪む。

さっきとは違い、嫌な汗を掻いて両耳を塞ぐ。
脳の中に侵入してくる感覚がして、俺の体の中が追い出そうとしている。

俺の中にいる未知なる人格が俺の人格を食おうとしているような奇妙な感覚だ。
ただの暴走の人格ではない。
また、ライムを傷付けるつもりなのか…そうだとしたら俺が許さない。

他人とは違い、自分の人格をどうにかする事は出来ない。
だからこそ神よりも厄介な相手になる。

背中を丸めて、大きく息を吐いて落ち着こうとする。
布団を掴む手に電流が流れていて、このままだと暴走してしまう。
対抗するために魔力を全身で出して抑えなくてはいけない。

それだけではなく、追い打ちをかけるように神の声が聞こえる。
これは幻覚なのか、それとも声だけを俺の脳内に飛ばしたのか?

結界で神や、それに近い奴らはここに来る事は出来ない。
だからこんな事をするのか、俺の体だ…好きにさせない。

体に火が付いたかのように熱く燃えている。
このままだと、俺自身の力でライムに危害を加えてしまう。
そうなる前にライムから離れないと…外に出ればこの近くに人がいないから魔力を解放しても平気だ。

石のように重い体を動かして、立ち上がろうとした。

その前に。背中が温かくなって後ろを振り向いた。

ライムが後ろから俺を抱きしめていた。
まだ眠たいのか、うわ言のように俺の名前を呼んでいた。

また眠ってしまったのか、目蓋は閉じたままだった。
それでも、俺を抱きしめる手は離さなかった。

いつの間にか落ち着いていき、さっきまでの辛さが嘘のようだ。
魔力も安定してきて、ホッと一安心してライムの方に体を向ける。
幸せそうに眠るライムを見ると、この子をなにがあっても命を掛けて守ると改めて強く思う。
俺もライムをギュッと抱きしめて、目蓋を閉じた。

今度は安心して眠る事が出来た。

俺にはライムがいる、大丈夫だ。
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