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本気の修行開始!
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「俺の私物?」
「うん、小さなものでも何でもいいからほしいんだ…カイウスが傍にいるって感じたい」
これは嘘ではなく、恥ずかしいけど俺の本心だ。
リーズナはカイウスの魔力が感じられる私物を持っていれば、その魔力が俺を隠してくれると言っていた。
カイウスは俺のために危ない事はしてほしくないと思うのは分かる。
俺が弱いからだ、カイウスにもらった糸の力も使いこなせないのならならないのと変わりない。
だから俺はリーズナにカイウスを守るために、修行する事になっている。
カイウスには内緒だから、カイウスが仕事に行った後しか出来ないけど…
俺はカイウスに背中を預けてもらえる…そんな関係になりたいんだ。
「少し待っていてくれるか?」
「うん、本当に何でもいいからね」
カイウスに頭を撫でられて、頬が熱くなるのが分かる。
離れていってしまう手が寂しくて、名残惜しそうにカイウスをみると頬に触れられた。
ゆっくりと唇が優しく触れ合って、幸せな気分になる。
カイウスを玄関前で見送っていると、足元にリーズナがいた。
さっきまでいなかったから何処に行ってたんだろうと思ってた。
リーズナは俺を見つめていて、気のせいかな…視線が冷たい。
『朝から胸焼けするようなもん見せんなよ』
「ご、ごめんねリーズナ」
『今はお前の師匠だ、分かったか!』
「は、はい!師匠!」
リーズナはカタチから入るタイプだったみたいで、リーズナの後を付いて行った。
洋館の裏側には大きな使われていない訓練所がある。
元々この洋館は城の兵舎として建てられたものだ。
今は別のところに兵舎が出来て、城から遠いここは誰も使わなくなり廃墟になった。
だから俺が住んでも誰かに気付かれる心配はない。
俺がこうして電流の糸を使っても誰にも見られる心配はない。
『じゃあ俺を捕まえてみろ』
「え?師匠を?」
『自分の武器を使って俺を捕まえてみろ』
「でもリー…師匠を攻撃なんて」
『俺がお前にやられるわけねぇだろ!知り合いだろうがなんだろうが、そんな優しさを持ってたらカイを守れねぇぞ!』
「…っ!?」
『カイのためなら鬼になれ!悪魔になれ!生半可な気持ちで守るなんて言ってんな!』
リーズナは訓練施設の入り口に走っていき、俺を振り返った。
逃げ出すなら今だとリーズナは無言だけど、そう言っているように感じた。
俺達が戦うのは一切の油断も許さない相手だ。
俺が負けたのは恐怖が勝っていたからだ、覚悟がなかった…戦う覚悟が…
俺が勝てた時は、過去の時…一対一で戦った時だ。
あの時の俺はカイウスの力があった事も勝てた一つだけど、カイウスへの強い想いもあった。
誰にも負けない、負けたくない、俺とカイウスの絆が勝利に導いた。
今まで強くなりたいと思っていても、強くなれなかったのは怖かったんだ。
誰かを本気で傷付ける事が…この武器も拘束するために使っていた。
でも、この武器は電流が流れているから人を傷付ける事しか出来ない。
だんだん俺はそれが怖くなっていたのに、自分自身気付いていなかった。
だから俺は自分で無意識に成長を止めていたのかもしれない。
イヤーカフを手に持って、両手で握りしめてリーズナに近付く。
『どうするかさっさと決めろ、昼食の時間が迫ってるんだから』
「昼食って、朝食食べたばかりだよ」
『いいだろ別に』
「ごめんね師匠、ちょっと俺に付き合ってくれる?」
『覚悟が出来たのか?』
「カイウスを守るために、俺は何でもする…元々俺は善人キャラで生まれてないからね」
『は?なんだそれ』
「綺麗事だけじゃカイウスを守れない、分かってた筈なんだけど実際師匠には甘く感じたんだよね」
『そうだな、カイを守るためには覚悟が必要だ…俺だってカイに何をするか分からない…その時俺を倒してカイを助けられるか?』
「……」
『傷付けるつもりで全力で来い!』
リーズナはそう言うと、猫の姿がだんだん変わっていった。
黒髪で腰まで長い髪を後ろを一つに結んでいる見た事がない顔の青年だ。
後ろの髪は何だか猫の尻尾のように揺れている。
子供の姿しか見た事がないから、大人にもなれるんだ。
そう思っていたら、リーズナは歩き出してしまい俺も追いかける。
猫の姿なら早くて追いかけられるかと思って糸をリーズナに向かって投げた。
すると、一瞬で目の前からリーズナが消えてしまった。
糸は空間を通り過ぎて、俺のところに戻ってきた。
少し先にリーズナが立っていて、俺を見ていた。
「猫じゃないから捕まえやすいとでも思った?」
「……うっ」
「確かに逃げるだけなら猫の方が早い、でも俺は捕まえろとしか言ってねぇよ」
「えっと、つまり…」
「俺も捕まるだけじゃないって事だ」
リーズナは軽く手を振ると引っ張られるほどの突風が吹いた。
リーズナはカイウスだ、カイウスと同じ魔力ではないのかもしれないけど強い力を持っているのは当然だ。
獅子の姿のリーズナとは違う、人の姿のリーズナは身軽そうだ。
リーズナは魔力を使いやすい姿になったんだ、本格的に戦わないといけない。
俺を殺すつもりかは分からないが、遠くからでもリーズナの本気の気配が分かる。
怪我をしても、それは俺の責任だ…俺の弱さが傷になる。
カイウスに心配掛けないためにも、自分を守りリーズナを捕まえる…それが今の目標だ。
リーズナの突風はすぐに止み、静寂の時間が訪れた。
リーズナが微かに動いたのを見て、一気に駆け出した。
最初の訓練は急な山を駆け上がる事だ、足を引っ掛けるものがないから滑りやすい。
足と手の押す力だけで登らないといけないし、高さがあるから途中まで登ったらもう引き返せない。
引っ掛けるものがないから糸は使えない、登るしかない。
両手をつるつるの山に付いて、指の力だけで登り始める。
かなり体力がいる、騎士の訓練所だから当たり前なんだけどね。
リーズナはまだ上にいる、俺が登るのを待ったいるのかと思った。
余裕だな、俺はまだリーズナが油断できる相手って事か。
腕を伸ばして、ゆっくりと確実にリーズナに近付いていく。
リーズナは手のひらにさっきの風を出現させていた。
気付く前に俺目掛けて突風が吹いて、手が山から離れた。
地面に尻餅を付いて、視界いっぱいに青空が広がっていた。
「もう今日は終わりか?」
「まさか……まだまだやるよ!」
「うん、小さなものでも何でもいいからほしいんだ…カイウスが傍にいるって感じたい」
これは嘘ではなく、恥ずかしいけど俺の本心だ。
リーズナはカイウスの魔力が感じられる私物を持っていれば、その魔力が俺を隠してくれると言っていた。
カイウスは俺のために危ない事はしてほしくないと思うのは分かる。
俺が弱いからだ、カイウスにもらった糸の力も使いこなせないのならならないのと変わりない。
だから俺はリーズナにカイウスを守るために、修行する事になっている。
カイウスには内緒だから、カイウスが仕事に行った後しか出来ないけど…
俺はカイウスに背中を預けてもらえる…そんな関係になりたいんだ。
「少し待っていてくれるか?」
「うん、本当に何でもいいからね」
カイウスに頭を撫でられて、頬が熱くなるのが分かる。
離れていってしまう手が寂しくて、名残惜しそうにカイウスをみると頬に触れられた。
ゆっくりと唇が優しく触れ合って、幸せな気分になる。
カイウスを玄関前で見送っていると、足元にリーズナがいた。
さっきまでいなかったから何処に行ってたんだろうと思ってた。
リーズナは俺を見つめていて、気のせいかな…視線が冷たい。
『朝から胸焼けするようなもん見せんなよ』
「ご、ごめんねリーズナ」
『今はお前の師匠だ、分かったか!』
「は、はい!師匠!」
リーズナはカタチから入るタイプだったみたいで、リーズナの後を付いて行った。
洋館の裏側には大きな使われていない訓練所がある。
元々この洋館は城の兵舎として建てられたものだ。
今は別のところに兵舎が出来て、城から遠いここは誰も使わなくなり廃墟になった。
だから俺が住んでも誰かに気付かれる心配はない。
俺がこうして電流の糸を使っても誰にも見られる心配はない。
『じゃあ俺を捕まえてみろ』
「え?師匠を?」
『自分の武器を使って俺を捕まえてみろ』
「でもリー…師匠を攻撃なんて」
『俺がお前にやられるわけねぇだろ!知り合いだろうがなんだろうが、そんな優しさを持ってたらカイを守れねぇぞ!』
「…っ!?」
『カイのためなら鬼になれ!悪魔になれ!生半可な気持ちで守るなんて言ってんな!』
リーズナは訓練施設の入り口に走っていき、俺を振り返った。
逃げ出すなら今だとリーズナは無言だけど、そう言っているように感じた。
俺達が戦うのは一切の油断も許さない相手だ。
俺が負けたのは恐怖が勝っていたからだ、覚悟がなかった…戦う覚悟が…
俺が勝てた時は、過去の時…一対一で戦った時だ。
あの時の俺はカイウスの力があった事も勝てた一つだけど、カイウスへの強い想いもあった。
誰にも負けない、負けたくない、俺とカイウスの絆が勝利に導いた。
今まで強くなりたいと思っていても、強くなれなかったのは怖かったんだ。
誰かを本気で傷付ける事が…この武器も拘束するために使っていた。
でも、この武器は電流が流れているから人を傷付ける事しか出来ない。
だんだん俺はそれが怖くなっていたのに、自分自身気付いていなかった。
だから俺は自分で無意識に成長を止めていたのかもしれない。
イヤーカフを手に持って、両手で握りしめてリーズナに近付く。
『どうするかさっさと決めろ、昼食の時間が迫ってるんだから』
「昼食って、朝食食べたばかりだよ」
『いいだろ別に』
「ごめんね師匠、ちょっと俺に付き合ってくれる?」
『覚悟が出来たのか?』
「カイウスを守るために、俺は何でもする…元々俺は善人キャラで生まれてないからね」
『は?なんだそれ』
「綺麗事だけじゃカイウスを守れない、分かってた筈なんだけど実際師匠には甘く感じたんだよね」
『そうだな、カイを守るためには覚悟が必要だ…俺だってカイに何をするか分からない…その時俺を倒してカイを助けられるか?』
「……」
『傷付けるつもりで全力で来い!』
リーズナはそう言うと、猫の姿がだんだん変わっていった。
黒髪で腰まで長い髪を後ろを一つに結んでいる見た事がない顔の青年だ。
後ろの髪は何だか猫の尻尾のように揺れている。
子供の姿しか見た事がないから、大人にもなれるんだ。
そう思っていたら、リーズナは歩き出してしまい俺も追いかける。
猫の姿なら早くて追いかけられるかと思って糸をリーズナに向かって投げた。
すると、一瞬で目の前からリーズナが消えてしまった。
糸は空間を通り過ぎて、俺のところに戻ってきた。
少し先にリーズナが立っていて、俺を見ていた。
「猫じゃないから捕まえやすいとでも思った?」
「……うっ」
「確かに逃げるだけなら猫の方が早い、でも俺は捕まえろとしか言ってねぇよ」
「えっと、つまり…」
「俺も捕まるだけじゃないって事だ」
リーズナは軽く手を振ると引っ張られるほどの突風が吹いた。
リーズナはカイウスだ、カイウスと同じ魔力ではないのかもしれないけど強い力を持っているのは当然だ。
獅子の姿のリーズナとは違う、人の姿のリーズナは身軽そうだ。
リーズナは魔力を使いやすい姿になったんだ、本格的に戦わないといけない。
俺を殺すつもりかは分からないが、遠くからでもリーズナの本気の気配が分かる。
怪我をしても、それは俺の責任だ…俺の弱さが傷になる。
カイウスに心配掛けないためにも、自分を守りリーズナを捕まえる…それが今の目標だ。
リーズナの突風はすぐに止み、静寂の時間が訪れた。
リーズナが微かに動いたのを見て、一気に駆け出した。
最初の訓練は急な山を駆け上がる事だ、足を引っ掛けるものがないから滑りやすい。
足と手の押す力だけで登らないといけないし、高さがあるから途中まで登ったらもう引き返せない。
引っ掛けるものがないから糸は使えない、登るしかない。
両手をつるつるの山に付いて、指の力だけで登り始める。
かなり体力がいる、騎士の訓練所だから当たり前なんだけどね。
リーズナはまだ上にいる、俺が登るのを待ったいるのかと思った。
余裕だな、俺はまだリーズナが油断できる相手って事か。
腕を伸ばして、ゆっくりと確実にリーズナに近付いていく。
リーズナは手のひらにさっきの風を出現させていた。
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