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二人で繋ぐ絆

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カイウスが危ない事をしているんだ、俺だけ呑気にしていられない。

カイウスの手をギュッと握り、瞳を見つめる。
握っていない手で俺の事を抱きしめた。
暖かでで優しく安心する温もりに、包まれる。

行くからにはお互い絶対に無事に帰る、それを約束した。
カイウスは俺の服の襟に触れていて、軽く口付けていた。

見た目の変化はないが、カイウスは満足そうにしていた。

「ライムを守る力をもっと強くした、俺の見える範囲に居ればライムの防御力は俺と同じになる」

「カイウスと同じ…」

「力が強いからこそ限定的な効果だが、離れなければいい」

そういったカイウスは自分の服の腰にある細いベルトのようなものを外した。
それを俺の腰と自分の腰の服に繋げていた。

長さがあるから、動きづらいほどではない。
俺とカイウスを結ぶ命綱だ。

お互いの目を見つめて、決意するように頷いた。
いよいよこの世界から出るために、俺達の居場所を取り戻すために行こう。

カイウスと手を繋いで屋根裏部屋のドアに向かった。

閉じ込められたから当然外側から鍵をされていて開かない。
鍵の錠前そのものが見えないから、屋根裏部屋の窓の鍵を破壊したみたいには出来ない。

カイウスはドアノブを強く、しっかりと握っていた。
眉を寄せながら微動だにしない。

何をしているのか、ドアノブを掴む手を見つめていたらドアノブが真っ赤になりドロドロに溶けた。

液体になったドアノブは床に落ちて、扉は穴が開いている。
そこから手を入れて、バキッと音が微かにして手を穴から出した。

手には錠前であった破片が握られていた。

「ライム、音が聞こえたか?」

「えっと、ちょっとだけ…でも横にいる俺しか聞こえてないと思うよ」

「そうか」

カイウスはそう言って、音を立てないように慎重にドアを開けた。

ドアノブが溶けたって事は、カイウスの炎の力で焼いたのかな。
しかも、その後は錠前を握り潰した。

片手で全部出来るカイウスはやっぱり凄いな。
さすがに人間の俺には真似なんて出来そうもない。

視線に気付いたのか、カイウスが俺の方を見た。

「どうした?気になる事でもあったのか?」

「えっ!?ううん!やっぱりカイウスは凄いなって思っただけだよ!」

「俺からしたらライムの方が凄いよ」

「それはないよ」

「ライムが気付いていないだけだよ」

カイウスに褒められるような事はしてないけど、ここで言い合っても仕方ない。
その話は保留にして、神がいたであろう地下への入り口に向かった。

閉じ込めらてから時間が経過しているからか、廊下やエントランスには人一人いなかった。

これなら、普通に歩いていれば大丈夫だろう。

神に似た男とサクヤの関係は気になる。
一度兵士がサクヤになにかを話していて顔色が変わった事があった。
あれも神に似た男が関わっているのか、そう思ってしまう。

「あ、あれ?」

思わず声が漏れてしまう。

地下があった場所は確かにここだった筈だ。
周りを見渡しても、それらしいものはなかった。

でも、そこには壁しかなかった。
何の痕跡もない、ただの壁だ。

カイウスが壁に触れて確かめていた。

「埋められたわけではなさそうだ、下に気配がない」

「じゃあここじゃないって事?」

「後気になるところはローベルト卿の部屋か」

俺が幻覚を見た場所、確かになにかありそうではある。

俺が行った時は幻覚以外何もなかったが、カイウスだとまた違うのかもしれない。
カイウスにローベルト卿の部屋の前まで案内する。

その時、突然カイウスに腕を引っ張られた。
それと同時に足音が聞こえた。

後ろからカイウスに口を塞がれて、ジッとする。
観葉植物の後ろで身を潜めていなくなるのを待った。
見回りの足音だろうか、足音が遠くなって出た。

急いでローベルト卿の仕事部屋の前に行った。

ローベルト卿の仕事部屋のの前に到着すると、大きな耳鳴りが俺の脳を貫いた。

「うっ、うっ…」

「ライム、大丈夫か?」

「だ、いじょう…ぶ…行こう、カイウス」

カイウスに心配掛けないように笑うと、カイウスが頬に触れた。
そして、優しく唇と唇が触れ合った。

中に流れ込んでくるのは、カイウスの力……頭痛がだんだん引いていく。

カイウスの服の袖を掴んで、腰を掴まれて引き寄せられる。
「ゆっくり、息を吐いて」と耳元で言われて、ゆっくりと息を吐くと落ち着いてきた。
カイウスがローベルト卿の仕事部屋のドアに触れて、ドアノブに触れずに開いた。

俺の脳の痛みで何となく分かった、この部屋は俺を拒んでいる。
さっきは何ともなかった、煙突から入ったからなのかもしれない。

でもそれは、なにかあると自分から言っているようだ。

ドアが開き、その中は真っ暗な闇が広がっていた。

「ローベルト卿を殺したのは神だろう」

「この部屋でなにかするために?」

「そうだろうな、この世界でも好きにはさせない」

カイウスと一緒に黒い部屋に入った。

その瞬間、俺の目の前からカイウスは居なくなっていた。
周りを見渡してもいない、大きな声を出しても自分の声が響くだけだ。

はぐれた?でも、瞬きした間にはぐれるものなのか。
後ろから誰かがいる気配がした。
その気配は刃物で貫くほどの殺気が混じっていた。

後ろを振り返らず体を横にずらすと、俺がいたところに槍が突き立てられた。

「おっと、ざーんねん、気配に敏感な人間はこれだから面倒くさい」

尻もちをついたまま、槍を掴んで地面から引っこ抜いている相手を見つめる。
真っ暗で姿が見えないのに、その姿ははっきりとしていた。

真っ赤に染まった腰まで長い三つ編みを揺らして、その男は俺を見ていた。

大きなやりを肩に担いで、その槍の先が黒いもやのようなものが覆っている。

人間じゃない、その気配にすぐに分かった。

口は笑みを浮かべているが、瞳の殺気は隠しきれていなかった。
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