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合流
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下のエントランスが見えて、一瞬だけ目線を向けた。
そこにいる人物は俺の方を見つめていた、まっすぐと…しっかりと…
立ち止まりそうになった足は、追いかけてくる声に弾かれるように走り続けた。
屋根裏部屋まで駆け上がり、滑り込むように扉を開けて中に入った。
そして、俺が扉を閉じる前に兵士の手によって閉じられた。
部屋が真っ暗で何も見えない。
「追い詰められて入ったか、出れないように閉めておけ」
兵士同士でそんな会話をしているのが聞こえた。
俺がなんでここに来たのか想像が出来ないから適当に入ったと思ったのだろう。
カイウスを入れるだなんて誰も分かるわけないよな。
そう思ってくれるなら、それが一番いい。
手探りで窓を探して、何年も開けていなかったのか硬く閉ざされていた。
硬い鍵はそう簡単に外せなくなっていた。
仕方ない、鍵を壊すしかない。
イヤーカフに触れて、糸を出して鍵に巻きつけた。
思いっきり引っ張ると鍵と窓がぶつかり、もう一度足を踏ん張りバキッと鍵が壊れる音がして鍵出会った破片が落ちた。
窓は意外と頑丈なのか、外れる事はなかった。
とりあえず窓が開くようになって良かった。
鍵がないのに、壁にくっついたような窓を開けるのに苦戦した。
カイウスが来るまで時間がない、早くしなくては…
力を込めて引っ張っていたら、急に窓が軽くなり勢いよく開いた。
よろけて転びそうになったが、俺の体は地面にぶつかる事はなかった。
腰を支えられて、横にいる人に視線を向けた。
「カイウス、もう来てたの?」
「そんなに早い時間じゃないぞ…もう街はほとんど静まっている」
そんな時間が経ってたのか、いろいろと必死だったから時間の流れが分からなかった。
カイウスは俺が事前に教えていた屋根裏部屋の前まで木の上を飛び乗って来たらしい。
そこで俺が窓から見えて、様子を見ていたが窓を開けるのに苦戦していたから外側から衝撃を与えて開けた。
俺が屋根裏部屋の窓を開けるって言ったのに、結局カイウスにやってもらってしまった。
しかも、ここだけじゃなくて…今度は屋根裏部屋から出なければいけない。
俺がしてしまった事だ、今度は失敗しないぞ!
「カイウス、まだ皆起きてるから時間が経ってから出た方がいいよ」
「そうか、そうする」
カイウスと一緒に壁に寄りかかって座り込む。
待っている間、カイウスに俺が見てきたものを全て話した。
神とローベルト卿の幻覚や、ローベルト卿の死。
そして、俺が見たエントランスにいた客は神と瓜二つの姿をしていた男だった。
服装がこの世界では珍しいスーツだったから神かどうか断言出来ないが、今まで見たものを考えると無関係ではない筈だ。
「神……ここにいるのか?」
「多分…確信はないけど、すんなり帰してくれそうにないかも」
「俺達をここに連れてきて何をするつもりなのか」
「うーん、この世界の結末はカイウスが幸せになって俺が不幸になるから…それ目当てとか?」
「だとしたら、ライムだけをこの世界に閉じ込める筈だ、俺がいたら絶対に阻止するなんて想像出来ないわけがない」
カイウスにそう言われて、確かに俺だけならまだしもカイウスがこの世界にいるのは不思議だ。
じゃあ、もしかして…俺達がここに来る事は頭になかった?
この世界に入ったのは俺達自身で、神が導いたわけではない。
俺達がいつ精霊の宮殿を取り戻しに来るのか分からないが、罠を張ったって事なのかな。
あの神はきっとこの世界の神回ではない、俺の事を知っている顔だった。
憎しみと憎悪にまみれた嫌な顔だ。
ゲームの俺は悪役令嬢の後ろにいるモブみたいな立ち位置だから、この世界の俺が神を怒らせるどころか関わりもないだろう。
じゃあ神はなんでここにいる?ここで何をしているんだ?
「宮殿でなにかしてたのかな」
「宮殿は俺の力で作り出したものだ」
「……カイウスの力?」
「ここでなくてはいけない理由、俺の力が満ちた場所でなにかしたかったのかもな………何度も何度も荒らして、俺とライムのための場所なのに…」
カイウスは眉を寄せていて、本当に怒っていた。
誰にも神の気持ちなんて分からない。
…だけどカイウスの力を利用されるのは許せない。
俺達が出るのと同時に神もこの世界から引きずり出す必要が出てきた。
俺達がこの世界から出るよりも難しいが、神をここに残しておくにはあまりにも危険だ。
カイウスは俺の方を見つめて、なにか言いたそうにしていた。
少しの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。
「この先は危ない、きっとこの世界から出るにはこの世界を破壊する必要がある…だからライムはここで待って…」
「行くよ、俺もカイウスと一緒に…」
そこにいる人物は俺の方を見つめていた、まっすぐと…しっかりと…
立ち止まりそうになった足は、追いかけてくる声に弾かれるように走り続けた。
屋根裏部屋まで駆け上がり、滑り込むように扉を開けて中に入った。
そして、俺が扉を閉じる前に兵士の手によって閉じられた。
部屋が真っ暗で何も見えない。
「追い詰められて入ったか、出れないように閉めておけ」
兵士同士でそんな会話をしているのが聞こえた。
俺がなんでここに来たのか想像が出来ないから適当に入ったと思ったのだろう。
カイウスを入れるだなんて誰も分かるわけないよな。
そう思ってくれるなら、それが一番いい。
手探りで窓を探して、何年も開けていなかったのか硬く閉ざされていた。
硬い鍵はそう簡単に外せなくなっていた。
仕方ない、鍵を壊すしかない。
イヤーカフに触れて、糸を出して鍵に巻きつけた。
思いっきり引っ張ると鍵と窓がぶつかり、もう一度足を踏ん張りバキッと鍵が壊れる音がして鍵出会った破片が落ちた。
窓は意外と頑丈なのか、外れる事はなかった。
とりあえず窓が開くようになって良かった。
鍵がないのに、壁にくっついたような窓を開けるのに苦戦した。
カイウスが来るまで時間がない、早くしなくては…
力を込めて引っ張っていたら、急に窓が軽くなり勢いよく開いた。
よろけて転びそうになったが、俺の体は地面にぶつかる事はなかった。
腰を支えられて、横にいる人に視線を向けた。
「カイウス、もう来てたの?」
「そんなに早い時間じゃないぞ…もう街はほとんど静まっている」
そんな時間が経ってたのか、いろいろと必死だったから時間の流れが分からなかった。
カイウスは俺が事前に教えていた屋根裏部屋の前まで木の上を飛び乗って来たらしい。
そこで俺が窓から見えて、様子を見ていたが窓を開けるのに苦戦していたから外側から衝撃を与えて開けた。
俺が屋根裏部屋の窓を開けるって言ったのに、結局カイウスにやってもらってしまった。
しかも、ここだけじゃなくて…今度は屋根裏部屋から出なければいけない。
俺がしてしまった事だ、今度は失敗しないぞ!
「カイウス、まだ皆起きてるから時間が経ってから出た方がいいよ」
「そうか、そうする」
カイウスと一緒に壁に寄りかかって座り込む。
待っている間、カイウスに俺が見てきたものを全て話した。
神とローベルト卿の幻覚や、ローベルト卿の死。
そして、俺が見たエントランスにいた客は神と瓜二つの姿をしていた男だった。
服装がこの世界では珍しいスーツだったから神かどうか断言出来ないが、今まで見たものを考えると無関係ではない筈だ。
「神……ここにいるのか?」
「多分…確信はないけど、すんなり帰してくれそうにないかも」
「俺達をここに連れてきて何をするつもりなのか」
「うーん、この世界の結末はカイウスが幸せになって俺が不幸になるから…それ目当てとか?」
「だとしたら、ライムだけをこの世界に閉じ込める筈だ、俺がいたら絶対に阻止するなんて想像出来ないわけがない」
カイウスにそう言われて、確かに俺だけならまだしもカイウスがこの世界にいるのは不思議だ。
じゃあ、もしかして…俺達がここに来る事は頭になかった?
この世界に入ったのは俺達自身で、神が導いたわけではない。
俺達がいつ精霊の宮殿を取り戻しに来るのか分からないが、罠を張ったって事なのかな。
あの神はきっとこの世界の神回ではない、俺の事を知っている顔だった。
憎しみと憎悪にまみれた嫌な顔だ。
ゲームの俺は悪役令嬢の後ろにいるモブみたいな立ち位置だから、この世界の俺が神を怒らせるどころか関わりもないだろう。
じゃあ神はなんでここにいる?ここで何をしているんだ?
「宮殿でなにかしてたのかな」
「宮殿は俺の力で作り出したものだ」
「……カイウスの力?」
「ここでなくてはいけない理由、俺の力が満ちた場所でなにかしたかったのかもな………何度も何度も荒らして、俺とライムのための場所なのに…」
カイウスは眉を寄せていて、本当に怒っていた。
誰にも神の気持ちなんて分からない。
…だけどカイウスの力を利用されるのは許せない。
俺達が出るのと同時に神もこの世界から引きずり出す必要が出てきた。
俺達がこの世界から出るよりも難しいが、神をここに残しておくにはあまりにも危険だ。
カイウスは俺の方を見つめて、なにか言いたそうにしていた。
少しの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。
「この先は危ない、きっとこの世界から出るにはこの世界を破壊する必要がある…だからライムはここで待って…」
「行くよ、俺もカイウスと一緒に…」
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