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ローベルト家の現状
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「…掃除をするなら全て捨ててくれ、あの部屋は空にしなくてはいけない」
「いいんですか?」
「いいも何も必要なものはもう既に持ち出しているから……サクヤ様にローベルト卿の残った遺品の処分を頼まれたんじゃないのか?」
「は、はい!すぐにやります!」
俺は慌てて、さっき出たばかりの部屋に戻った。
若干怪しまれてはいるが、捕まえられなくて良かった。
でも、さっきの話は本当なのか?
嘘をつく理由がないから、本当なんだろうけど…ローベルト卿が死んだって、何でだ?
ゲームではローベルト卿は生きていたから当たり前のように生きていると思っていた。
じゃあこの部屋で俺が見たローベルト卿は…
神がやっぱりなにか企んでいそうだな。
とりあえず誤魔化すために部屋の掃除をする事にした。
とっさについた嘘だけど、本当にやらないと俺の存在を疑われてしまう。
全て捨てていいって言っていたから、そんなに時間は掛からなかった。
今思えば、煙突が掃除されていなかったのは誰も使ってなかったからか。
じゃあ後継ぎって誰がなるんだろう、サクヤ?
大量のゴミ袋を部屋の外に運んで、外の焼却炉まで運ぶ。
何度か繰り返していると、これが俺の仕事のように思えてきた。
自分のするべき事を忘れそうになり、首を横に振った。
最後のゴミを出して、すぐに屋根裏部屋に向かって急いだ。
遠回りしてしまって、明るかった空は薄暗くなっていた。
廊下を早足で歩いていたら、後ろから声を掛けられた。
目立たないように走りたい気持ちを我慢しているのに、今度は誰だ?
後ろを振り返ると、その姿に心臓が止まりそうだった。
「ちょっと待ちなさい」
「……ぁ、サクヤ…様」
今度はサクヤが疑いの眼差しで俺を見つめていた。
サクヤは他の兵士と違って鋭い。
こんなただの黒子に何の用…?
あまり長居すると危なくなるから「仕事が残ってますから」と背中を向けた。
サクヤの場合は怪しんでいたらどんな行動をしても変わらない。
ここで黒子の頭のフードを取れと言われでもしたら俺がライムだって一発でバレる。
兵士と違ってサクヤは命令が出来る。
ローベルト一族からしたら、黒子に人権はない。
だったら残された道は逃げるしかない!
黒子は同じ姿だから、何処かに隠れておさまったら顔を出せば大丈夫だ。
何処かに隠れようとしても、サクヤが後ろから追いかけて来た。
「待ちなさいよ!あんた、さっき父様の部屋から出てきたわね!私、あんたに頼んでないわよ!」
あの兵士、サクヤに言うの早すぎるだろ!
全てが終わった明日でもいいのに、そんなに怪しかったか?…急にローベルト卿の仕事部屋から出てきたら怪しいか。
捕まるわけにはいかないと走っていたら、頭のフードがなにかに引っかかり、バランスを崩して顔面から倒れた。
顔を上げると、目の前にサクヤがいた。
サクヤは俺を見ながら目を見開いていた。
サクヤの手に握られたものを見て、俺も顔が真っ青になる。
「…なんでここにいるのよ、アンタには任務があるでしょ!」
「人違いです」
「とぼけないでよ!こんなマヌケ面、他にいるわけないでしょ!」
サクヤが酷い事を言っているが、俺はバレた事で足止めになっている事に次の方法を探す。
あーでもない、こーでもないと考えていたら服を後ろから掴まれて強制的に立たされた。
俺の後ろにいたのはサクヤの兵士二人だった。
サクヤは「アンタが早くあの女を始末しないとカイを手に入れられないじゃない」と焦っているような感じで早口で言っていた。
捕まえるだけだと思ってたのに、始末するまでになってるのか!?
ローベルト卿がいなくても、サクヤは悪の中の悪の思考なのだろう。
「嫌だって言っただろ」
「時間がないのよ!早く私とカイが結婚しないとアンタがローベルト家の後継ぎになるわよ!」
「………えっ!?」
「それが嫌だから協力してたんでしょ?なのに突然人が変わったかのように嫌だ嫌だって…………まさか、後継ぎになりたくなったとか言わないわよね」
サクヤの目が鋭くなり、俺は首を横にぶんぶんと振った。
後継ぎになんてなりたくない、俺はローベルト家に関わりたいとは思ってない。
ローベルト家は考えが古い人が多く、女は当主になれない。
だからサクヤは結婚して夫を当主にする事で、サクヤもローベルト家を自由に出来る。
でも、その当主がカイウスである必要なんて一つもない。
サクヤが結婚したいならカイウス以外とすればいい。
その方が回りくどい事をしなくても済む。
そう言うが、サクヤから来たのはさっきよりも鋭い眼光だった。
「私の夫がカイ以外なんて考えられないわ、カイは私にこそ相応しいの」
「………」
「どうやってこの屋敷に入ったのか知らないけど、今日はお客様が来るの…さっさと出ていきなさい」
兵士に服を掴まれて、乱暴に引っ張られた。
その時俺の服を掴んでいた兵士の悲鳴が響き渡り、俺を突き飛ばした。
転んで兵士の方を見ると、俺を掴んでいた手がビリビリと痺れていた。
まるでイヤーカフの糸から出る電流のようで、イヤーカフに触れても反応していないから、カイウスの服が守ってくれたのだろう。
今のうちに逃げようと走り出すと、サクヤも兵士と一緒に追いかけようとしていた。
でも、後から慌てて来た兵士により呼び止められた。
「お客様がお見えです」と言っていた兵士の言葉を聞きながら、強行突破で屋根裏部屋に行こうと思った。
こうなったらやけくそだ!カイウスを屋敷に入れる、それだけは果たさなければいけない!
「いいんですか?」
「いいも何も必要なものはもう既に持ち出しているから……サクヤ様にローベルト卿の残った遺品の処分を頼まれたんじゃないのか?」
「は、はい!すぐにやります!」
俺は慌てて、さっき出たばかりの部屋に戻った。
若干怪しまれてはいるが、捕まえられなくて良かった。
でも、さっきの話は本当なのか?
嘘をつく理由がないから、本当なんだろうけど…ローベルト卿が死んだって、何でだ?
ゲームではローベルト卿は生きていたから当たり前のように生きていると思っていた。
じゃあこの部屋で俺が見たローベルト卿は…
神がやっぱりなにか企んでいそうだな。
とりあえず誤魔化すために部屋の掃除をする事にした。
とっさについた嘘だけど、本当にやらないと俺の存在を疑われてしまう。
全て捨てていいって言っていたから、そんなに時間は掛からなかった。
今思えば、煙突が掃除されていなかったのは誰も使ってなかったからか。
じゃあ後継ぎって誰がなるんだろう、サクヤ?
大量のゴミ袋を部屋の外に運んで、外の焼却炉まで運ぶ。
何度か繰り返していると、これが俺の仕事のように思えてきた。
自分のするべき事を忘れそうになり、首を横に振った。
最後のゴミを出して、すぐに屋根裏部屋に向かって急いだ。
遠回りしてしまって、明るかった空は薄暗くなっていた。
廊下を早足で歩いていたら、後ろから声を掛けられた。
目立たないように走りたい気持ちを我慢しているのに、今度は誰だ?
後ろを振り返ると、その姿に心臓が止まりそうだった。
「ちょっと待ちなさい」
「……ぁ、サクヤ…様」
今度はサクヤが疑いの眼差しで俺を見つめていた。
サクヤは他の兵士と違って鋭い。
こんなただの黒子に何の用…?
あまり長居すると危なくなるから「仕事が残ってますから」と背中を向けた。
サクヤの場合は怪しんでいたらどんな行動をしても変わらない。
ここで黒子の頭のフードを取れと言われでもしたら俺がライムだって一発でバレる。
兵士と違ってサクヤは命令が出来る。
ローベルト一族からしたら、黒子に人権はない。
だったら残された道は逃げるしかない!
黒子は同じ姿だから、何処かに隠れておさまったら顔を出せば大丈夫だ。
何処かに隠れようとしても、サクヤが後ろから追いかけて来た。
「待ちなさいよ!あんた、さっき父様の部屋から出てきたわね!私、あんたに頼んでないわよ!」
あの兵士、サクヤに言うの早すぎるだろ!
全てが終わった明日でもいいのに、そんなに怪しかったか?…急にローベルト卿の仕事部屋から出てきたら怪しいか。
捕まるわけにはいかないと走っていたら、頭のフードがなにかに引っかかり、バランスを崩して顔面から倒れた。
顔を上げると、目の前にサクヤがいた。
サクヤは俺を見ながら目を見開いていた。
サクヤの手に握られたものを見て、俺も顔が真っ青になる。
「…なんでここにいるのよ、アンタには任務があるでしょ!」
「人違いです」
「とぼけないでよ!こんなマヌケ面、他にいるわけないでしょ!」
サクヤが酷い事を言っているが、俺はバレた事で足止めになっている事に次の方法を探す。
あーでもない、こーでもないと考えていたら服を後ろから掴まれて強制的に立たされた。
俺の後ろにいたのはサクヤの兵士二人だった。
サクヤは「アンタが早くあの女を始末しないとカイを手に入れられないじゃない」と焦っているような感じで早口で言っていた。
捕まえるだけだと思ってたのに、始末するまでになってるのか!?
ローベルト卿がいなくても、サクヤは悪の中の悪の思考なのだろう。
「嫌だって言っただろ」
「時間がないのよ!早く私とカイが結婚しないとアンタがローベルト家の後継ぎになるわよ!」
「………えっ!?」
「それが嫌だから協力してたんでしょ?なのに突然人が変わったかのように嫌だ嫌だって…………まさか、後継ぎになりたくなったとか言わないわよね」
サクヤの目が鋭くなり、俺は首を横にぶんぶんと振った。
後継ぎになんてなりたくない、俺はローベルト家に関わりたいとは思ってない。
ローベルト家は考えが古い人が多く、女は当主になれない。
だからサクヤは結婚して夫を当主にする事で、サクヤもローベルト家を自由に出来る。
でも、その当主がカイウスである必要なんて一つもない。
サクヤが結婚したいならカイウス以外とすればいい。
その方が回りくどい事をしなくても済む。
そう言うが、サクヤから来たのはさっきよりも鋭い眼光だった。
「私の夫がカイ以外なんて考えられないわ、カイは私にこそ相応しいの」
「………」
「どうやってこの屋敷に入ったのか知らないけど、今日はお客様が来るの…さっさと出ていきなさい」
兵士に服を掴まれて、乱暴に引っ張られた。
その時俺の服を掴んでいた兵士の悲鳴が響き渡り、俺を突き飛ばした。
転んで兵士の方を見ると、俺を掴んでいた手がビリビリと痺れていた。
まるでイヤーカフの糸から出る電流のようで、イヤーカフに触れても反応していないから、カイウスの服が守ってくれたのだろう。
今のうちに逃げようと走り出すと、サクヤも兵士と一緒に追いかけようとしていた。
でも、後から慌てて来た兵士により呼び止められた。
「お客様がお見えです」と言っていた兵士の言葉を聞きながら、強行突破で屋根裏部屋に行こうと思った。
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