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悪魔の子と言われた二人
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もう時間が経ってるし、カイウスは知らない世界とはいえ騎士団の仕事は変わらずしている。
だからカイウスの屋敷ではなく、外にいるかもしれない。
周りを見渡して、大勢いる騎士達の中でカイウスを探す。
でも、何処にもカイウスはいなくて訓練所にいるのかと思った。
訓練所にいるなら部外者の俺は入れない、屋敷の近くで帰りを待ってようかと思った。
屋敷に近付くと、人だかりが出来ていて騒ぎになっていた。
なにがあったんだ?俺が居なくなっただけでは絶対にこうはならない。
国民が怒っているように奥にいる人が落ち着かせている。
背伸びしてちょっとしか見えなかったけど、あれはローズか?
「悪魔の子を出せ!」
「カイ様の傍に悪魔の子がいるなんて…」
怒る国民達は「悪魔の子」だと全員口にしている。
散々言われてきたから、心臓が飛び出るほど驚いた。
でも、誰一人として俺を見ている人はいなかった。
そうだった、今の俺は悪魔の紋様はなかったんだ。
…それじゃあ今は、元の人に悪魔の紋様があるって事は…
入り口にいるローズは普段は冷静だけど、声を張り上げて説明していた。
「マリーの手の甲にあるのは生まれつきの痣で悪魔とは何の関係もありません、あの子は無害です、それはカイ様も保証しております」
ローズがいくら言っても、全く国民達は聞く耳を持たなかった。
マリーが悪魔の子だと国民達に知られるゲームのストーリーか。
確か攻略ルートのキャラクターがマリーを庇っていたな。
そして、サクヤがマリーの嘘の噂を流して余計にマリーは国民達に攻撃される。
そうか、サクヤの耳に入った話ってこれの事だったのか。
でもその話の時、ライムは死んだ後の話だから出てこない。
今度はサクヤがカイウスの怒りを買う話だからだ。
騒いでいた国民達は今にも屋敷に押し寄せていきそうな雰囲気だった。
俺も経験があるから分かる、辛く…苦しいよな。
俺は何も考えず、無意識に前に出て思った事を口にしていた。
「ま、待ってくれ!彼女は何もしてないだろ!」
「誰だお前は!」
「悪魔の仲間ね!」
「違う、仲間とかそんなんじゃない!何もしていない子に悪魔の紋様があったからって責めるのは可笑しいだろ!」
「なにかあってからじゃ遅いんだよ!」
「何もないよ!今までも、これからも!」
「なんでそう言いきれるんだ!?」
「…そ、それは」
俺もそうだから、そう言えたらどんなに楽だっただろうか。
実際にそんな事を言ったらとんでもない事になるのは分かっている。
本当は悪魔の力に災いを起こすとか、そういう力はない。
カイウスの魔力を抑える、カイウスのためにある力なんだ。
昔話で悪魔が悪さをしていても、俺はその昔話は作り話だと思っている。
現実では、悪魔は精霊王にとって大切な存在だったんじゃないかってそう感じている。
ゲームでも、現実でも悪魔の子と精霊王は恋に落ちたからだ。
ゲームの世界に瓜二つの現実でも似て非なるもの…そう俺に教えてくれた。
この世界のカイウスを奪ってしまうカタチになってしまったから、せめて俺がカイウスの代わりにマリーを助けられたら…と思う。
誰も、俺のように辛く傷付いてほしくない…それが自己満足の感情だとしても…
でも、いきなり現れた俺の話を聞く人なんて一人もいなかった。
周りからしたら俺の方が危ない奴に見えるのかもしれない。
責める人達だって悪くない、悪魔の子がいるなんて思ったら恐怖の中毎日過ごす事になる。
だから、誤解だって分かってもらいたい…どちらも悪くないからこそ穏便にしたい。
それを他人に説明するのは難しい、どう言えば納得してくれる?
俺じゃあ力不足かと、悔しい気持ちでずっと同じ事を訴えるしかなかった。
すると、俺の肩に誰かが手を乗せて俺の前に出た。
国民達は責める瞳から縋るようにその人物に集まってきた。
「カイ様」という声があちこちから聞こえてきた。
「俺の屋敷のメイドが騒がせたようで、申し訳ございません」
「カイ様、しかし…悪魔の子は…」
「確かに彼女の手の甲には悪魔の紋様があります」
カイウスの言葉に確信したように騒がしい声が聞こえる。
ゲームではカイウスの兄のユリウスがマリーの悪魔の紋様を見て言いふらした話になっている。
だから、噂だけで実際は見ていなかったから半信半疑だったのだろう。
でもマリーだって外に出る、いずれ分かる事だからカイウスは認めたんだろう。
隠すより、伝える事で国民達に誠意を見せる事にした。
カイウスが知っていて、何故悪魔の子を庇うのか国民達はカイウスに詰め寄っていた。
それには動じる事なく、カイウスは冷静に話していた。
「彼女は紋様があろうとなかろうと、人格が変わるわけではない」
「…し、しかし…いつ豹変するか」
「感情のコントロールが出来なかったら幼少期からなにかある筈です、でも彼女は昔から今までただの人として過ごしてきた…魔法が使えるわけでもない、人と何も変わらない…俺は人は皆一緒だと思っています、俺の一番信頼しているメイドのローズが彼女の事をよく知っています…彼女が普通の人間だと俺が保証します」
カイウスは後ろにいるローズに声を掛けて、ローズは国民達の前に出てマリーの良いところを話していた。
さっきまで何を言っても聞いてくれなかったのに、カイウスの言葉を聞いて国民達が少しだけ納得してくれたようだ。
まだ全てを信じるまではいかないが、カイウスのおかげで考えが変わったのは事実だ。
…でも、俺は不安だった…カイウスの言葉…あれは自分の事を言ったんじゃないかって…
カイウスの横顔を見つめると、視線が合わさった。
「カイ…」
「カイ様、助けていただいてありがとうございました」
俺の声に被さるようにローズが声を出して、カイウスに頭を下げていた。
カイウスは「俺の家のメイドの事だから当然だ」と言っていた。
ローズはそれでも頭を下げていて、お礼を口にした。
その時、俺を視界に入れてジッとローズに見られた。
男の格好では初めて会ったから、俺があのメイドだと結びつかないだろう。
ただ、急に口出しをしてきた不審者くらいには思われているかもしれない。
だからカイウスの屋敷ではなく、外にいるかもしれない。
周りを見渡して、大勢いる騎士達の中でカイウスを探す。
でも、何処にもカイウスはいなくて訓練所にいるのかと思った。
訓練所にいるなら部外者の俺は入れない、屋敷の近くで帰りを待ってようかと思った。
屋敷に近付くと、人だかりが出来ていて騒ぎになっていた。
なにがあったんだ?俺が居なくなっただけでは絶対にこうはならない。
国民が怒っているように奥にいる人が落ち着かせている。
背伸びしてちょっとしか見えなかったけど、あれはローズか?
「悪魔の子を出せ!」
「カイ様の傍に悪魔の子がいるなんて…」
怒る国民達は「悪魔の子」だと全員口にしている。
散々言われてきたから、心臓が飛び出るほど驚いた。
でも、誰一人として俺を見ている人はいなかった。
そうだった、今の俺は悪魔の紋様はなかったんだ。
…それじゃあ今は、元の人に悪魔の紋様があるって事は…
入り口にいるローズは普段は冷静だけど、声を張り上げて説明していた。
「マリーの手の甲にあるのは生まれつきの痣で悪魔とは何の関係もありません、あの子は無害です、それはカイ様も保証しております」
ローズがいくら言っても、全く国民達は聞く耳を持たなかった。
マリーが悪魔の子だと国民達に知られるゲームのストーリーか。
確か攻略ルートのキャラクターがマリーを庇っていたな。
そして、サクヤがマリーの嘘の噂を流して余計にマリーは国民達に攻撃される。
そうか、サクヤの耳に入った話ってこれの事だったのか。
でもその話の時、ライムは死んだ後の話だから出てこない。
今度はサクヤがカイウスの怒りを買う話だからだ。
騒いでいた国民達は今にも屋敷に押し寄せていきそうな雰囲気だった。
俺も経験があるから分かる、辛く…苦しいよな。
俺は何も考えず、無意識に前に出て思った事を口にしていた。
「ま、待ってくれ!彼女は何もしてないだろ!」
「誰だお前は!」
「悪魔の仲間ね!」
「違う、仲間とかそんなんじゃない!何もしていない子に悪魔の紋様があったからって責めるのは可笑しいだろ!」
「なにかあってからじゃ遅いんだよ!」
「何もないよ!今までも、これからも!」
「なんでそう言いきれるんだ!?」
「…そ、それは」
俺もそうだから、そう言えたらどんなに楽だっただろうか。
実際にそんな事を言ったらとんでもない事になるのは分かっている。
本当は悪魔の力に災いを起こすとか、そういう力はない。
カイウスの魔力を抑える、カイウスのためにある力なんだ。
昔話で悪魔が悪さをしていても、俺はその昔話は作り話だと思っている。
現実では、悪魔は精霊王にとって大切な存在だったんじゃないかってそう感じている。
ゲームでも、現実でも悪魔の子と精霊王は恋に落ちたからだ。
ゲームの世界に瓜二つの現実でも似て非なるもの…そう俺に教えてくれた。
この世界のカイウスを奪ってしまうカタチになってしまったから、せめて俺がカイウスの代わりにマリーを助けられたら…と思う。
誰も、俺のように辛く傷付いてほしくない…それが自己満足の感情だとしても…
でも、いきなり現れた俺の話を聞く人なんて一人もいなかった。
周りからしたら俺の方が危ない奴に見えるのかもしれない。
責める人達だって悪くない、悪魔の子がいるなんて思ったら恐怖の中毎日過ごす事になる。
だから、誤解だって分かってもらいたい…どちらも悪くないからこそ穏便にしたい。
それを他人に説明するのは難しい、どう言えば納得してくれる?
俺じゃあ力不足かと、悔しい気持ちでずっと同じ事を訴えるしかなかった。
すると、俺の肩に誰かが手を乗せて俺の前に出た。
国民達は責める瞳から縋るようにその人物に集まってきた。
「カイ様」という声があちこちから聞こえてきた。
「俺の屋敷のメイドが騒がせたようで、申し訳ございません」
「カイ様、しかし…悪魔の子は…」
「確かに彼女の手の甲には悪魔の紋様があります」
カイウスの言葉に確信したように騒がしい声が聞こえる。
ゲームではカイウスの兄のユリウスがマリーの悪魔の紋様を見て言いふらした話になっている。
だから、噂だけで実際は見ていなかったから半信半疑だったのだろう。
でもマリーだって外に出る、いずれ分かる事だからカイウスは認めたんだろう。
隠すより、伝える事で国民達に誠意を見せる事にした。
カイウスが知っていて、何故悪魔の子を庇うのか国民達はカイウスに詰め寄っていた。
それには動じる事なく、カイウスは冷静に話していた。
「彼女は紋様があろうとなかろうと、人格が変わるわけではない」
「…し、しかし…いつ豹変するか」
「感情のコントロールが出来なかったら幼少期からなにかある筈です、でも彼女は昔から今までただの人として過ごしてきた…魔法が使えるわけでもない、人と何も変わらない…俺は人は皆一緒だと思っています、俺の一番信頼しているメイドのローズが彼女の事をよく知っています…彼女が普通の人間だと俺が保証します」
カイウスは後ろにいるローズに声を掛けて、ローズは国民達の前に出てマリーの良いところを話していた。
さっきまで何を言っても聞いてくれなかったのに、カイウスの言葉を聞いて国民達が少しだけ納得してくれたようだ。
まだ全てを信じるまではいかないが、カイウスのおかげで考えが変わったのは事実だ。
…でも、俺は不安だった…カイウスの言葉…あれは自分の事を言ったんじゃないかって…
カイウスの横顔を見つめると、視線が合わさった。
「カイ…」
「カイ様、助けていただいてありがとうございました」
俺の声に被さるようにローズが声を出して、カイウスに頭を下げていた。
カイウスは「俺の家のメイドの事だから当然だ」と言っていた。
ローズはそれでも頭を下げていて、お礼を口にした。
その時、俺を視界に入れてジッとローズに見られた。
男の格好では初めて会ったから、俺があのメイドだと結びつかないだろう。
ただ、急に口出しをしてきた不審者くらいには思われているかもしれない。
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