冷淡騎士に溺愛されてる悪役令嬢の兄の話

雪平@冷淡騎士2nd連載中

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過去編・変わる明日

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『お前はカイウス…だな』

「あぁ…」

『でも俺が知ってるカイウスではないな』

「さぁ、どうだろうな」

お互い油断を見せないように警戒しながら話している。
リーズナに俺の顔がバレてるし、カイウスと同じ顔をした人間なんているわけない。

俺達が未来から来ているのではないかと、精霊の宮殿にいるリーズナなら察するだろう。

カイウスはリーズナを肩から下ろして、元のカイウスのところに戻れと言っていた。
あまりカイウスから離れると、この時代のカイウスが不審がるかもしれない。

最後にカイウスはリーズナの頭を撫でると、飛び跳ねるようにして行ってしまった。

「リーズナがこの時代のカイウスに話したら未来変わらないかな」

「記憶を消したからそれはない」

「えっ!?そうだったの!?」

カイウスは俺の頭を撫でて、歩き出して…俺もカイウスの後ろに着いていく。

神の化身を倒したから、もう俺を殺す奴は居なくなった。
本体である神の化身が消えたから、しばらくしたら俺が戦った筋肉質の男も消えていた。

次は俺の目的だ、カイウスの目を覚ますために方法を探そう。

カイトは森にくる前にカイウスに言われた事を思い出していた。
確か、城の書庫に本があるんだっけ…広場までやって来てカイトは急いで城に向かおうとしたが、カイウスは止めた。

俺とカイウスとカイトは湖の前にやってきた。

「…カイウス、本はもういいの?」

「………目を覚ます方法を見つけた」

カイウスが小さくそう呟いて、びっくりしてカイウスの方を見る。
カイウスは俺を見つめて、優しく微笑んでいた。

目を覚ます方法が見つかったのか、知らなかった。

これでカイウスの目が覚めるんだ、良かった。

カイウスは自分の手を見つめていて、空を見上げていた。
その横顔は、少しだけ寂しげな雰囲気を出していた。

「リーズナに力を与えた時、きっと過去の俺にも有効なんだろうと思った」

「…それって」

「俺の魔力を全て過去のカイウスにあげてくれ」

魔力を全てカイウスに?……でも、そんな事したら俺の目の前のカイウスは…

カイトは「やっぱりお前はカイウスじゃないのか?ん?カイウス?」と頭が混乱している。

「…これを身につけていれば元の時間に戻れる」

「カイウス、俺の最後のお願い聞いてくれる?」

「あぁ…分かった」

カイウスは俺がなにかを言わなくても分かってくれたみたいで嬉しかった。

俺の耳に触れて、くすぐったくて目を閉じると口付けられた。
カイウスは微笑んでいて、俺の頬は赤く色付いていた。

耳に銀色のイヤーカフを付けてもらい、一歩二歩と離れていった。

カイウスの足元が光り、ワープの時のようだと感じたが…この記憶のカイウスともう二度と会えないんだ。
カイウスの声が聞こえなくなるが、口を開いてなにか言っていた。

「いってきます」と、カイウスが言ったような気がした。

カイウスに俺の声が届いているのか、分からないが…俺は涙を拭いカイウスに笑いかけた。

「いってらっしゃい」

最後まで言い終わるか終わらないかのタイミングでカイウスは姿を消した。

大丈夫だ、俺は…俺の世界に戻るだけなんだから…

イヤーカフに触れると、カイトが「アイツ、行ったのか?」と言っていた。
カイトにカイウスの事詳しく話さないと分からないよな。
もし、今のカイウスに話しかけても記憶がないわけだし…

未来のカイウスの記憶は今の記憶に受け継がれなくて、カイトの事を知らないと言った。

「…なんか複雑だなぁ」

「だから、カイウスにこの話をしても分からないんだ」

「確かに知らなかったな……お前も悪霊じゃなくて生きてるんだな」

「うん」

「……ローベルトってあの?」

この時既に悪名で有名だったから、カイトは眉を寄せていた。
王族の仕事をしていなくても、分かるだろう。

俺はまだ悪魔の子だと知られてはいないが、普通の人ならローベルト一族だって聞くだけで嫌だろう。

どうしたらいいんだろうと思いながら、考えていたらカイトはため息を吐いた。
ビックリしてカイトを見ると、首の後ろに手を置いていた。

カイトは「まぁ、いいや」と考える事を放棄した。

「あのカイウスの言った通り、俺が見てきたお前が全てだからな」

「ありがとう、カイト」

「まぁ、元の世界に帰ったら遊びに来いよ…どの時間のお前が俺を覚えてるのか分からねぇしな」

「うん、絶対に行くよ」

「ありがとうな、お前らのおかげで…自信がついた」

カイトはニッと笑い、俺の目の前が真っ白になっていった。

過去で出会った人達は俺にとって大切な人達だ。
そして俺は、大切な人達のいる世界に戻った。
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