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カイウスの話28
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肩を抱いて、小さな声で「もう大丈夫だ」と言うと、ライムは小さな声で「本当?」と言っていた。
あぁ…愛しい気持ちが溢れてくる、ライム…ライム…
二人の世界に入りたいところだが、俺達の世界に大勢の不審人物はいらない。
ライムと手を取り合って立ち上がり、腰を引き寄せた。
俺にしがみつくライムを一度見つめて、兵士達を見渡した。
「俺を呼んでいる奴がいるんだろ、俺をソイツのところに連れて行け」
俺の言っている意味を大体の奴らは理解していなかった。
神の場所に連れて行けと言いたいところだが、こんな下っ端が神の存在を知っているかと言われたら怪しいものだ。
神は意識を飛ばしてまで地下牢にやって来た。
そうなると俺に会いたいんだろう。
俺はもう同じ過ちを繰り返さない、ライムと離れる事への恐怖はもう味わいたくもない。
一人だけ、分かっている兵士がいてビクビク震えながら俺に近付く。
「あ、の…ローベルト卿が…」
「……」
「ひぃぃ!!」
いちいち怯えている兵士に眉を寄せたが、一人だけしか分かっていないからコイツを殺すわけにはいかない。
神を知っているんじゃなくて、ローベルト卿が俺に会いたいらしい。
面倒だが、ローベルト卿なら確実に神の場所を知っている。
俺は神に会わなくてはいけない…薬の事もそうだが、宮殿に細工した事は許さない。
俺の場所は誰であろうと汚す事は許さない。
ライムに声を掛けると、ローベルト卿に会うからか不安そうな顔をしていた。
ライムは危険だ、一緒に連れていけない。
必ず後で迎えにくる、だからそれまで待っていてくれ。
俺に怯えているなら、俺の逆鱗に触れる事はないだろう。
兵士の一人である弱そうな小柄な兵士を見ると背筋を伸ばしていた。
「おい」
「は、はいぃっ!!」
「ライムを安全な場所に連れて行け、もし危険な事をしたらお前の首を跳ねる、触れる事も許さない」
兵士は青い顔をしていて、ライムに近付く。
一度ライムはこちらを向いたから、大丈夫だと頭を撫でて見送った。
もし、ライムになにかしたら許さないと背中越しでも訴えた。
あの兵士からは力を感じなかった、なにかする事があってもライムが抵抗出来る兵士を選んだ。
それにしても、あんな子供にまで兵士をさせるなんてやはりローベルト卿は恐ろしい考えの男だ。
ビクビクされながら兵士の後ろを歩いていると、屋敷の中に入った。
先にローベルト卿に会うから当然といえば当然だけどな。
二階に上がり、大きな扉の前で足を止めた。
扉が開かれて、俺が入ると後ろで扉が閉ざされた。
前を見ると机に向かっていたローベルト卿がこちらを見て笑みを浮かべていた。
こうして直接話すのは初めてだった、今すぐにでも息の根を止めたいくらいだ。
ライムにしてきた事は許されない、生きて罪を償わせるなんて俺はそんなに優しくない。
でも、まず神の場所を聞かなくてはいけない。
その後ローベルト卿をどうするか考えよう。
「ようこそ、君の力は見させてもらったよ…名はなんて言えばいいのかな」
「そんな事どうでもいい、神の場所を教えろ」
回りくどい事を言って、話を伸ばす気はない。
さっさと終わらせてライムを迎えにいきたい。
ローベルト卿は笑顔のまま、俺に近付いてきた。
氷の剣をローベルト卿に向けると足を止めたが顔からは余裕そうだった。
今すぐ殺してもいいんだ、俺にコイツを見逃すつもりはない。
神の居場所を聞くために来たが、そもそもライムを傷付けた元凶だ…分かってはいたが実際に見ると怒りが込み上げてくる。
神は自分で探せばいい、この屋敷の何処かにいる筈だ。
ローベルト卿を睨みつけると、張り付いていた笑みが消えた。
俺と同じ、嫌悪と憎悪で顔が歪んでいる。
「あの方はお前のような悪魔が会えるお方ではない」
「やっと本性を出したか、ずっとそうしてればいいんだよ」
慣れない笑顔をするもんじゃないぞ、ローベルト卿。
俺は絶対にアイツに会う必要があるんだ。
さっさと薬について聞いて、宮殿を開いてもらわないとな。
ローベルト卿は壁に飾っていた剣を引き抜いてこちらに向けていた。
随分と心酔しているんだな、人間を丸め込むのが上手いな…神だからか?
ライムはこんな危ない場所に居てはいけないと改めてそう思った。
俺が、俺だけがあの子を幸せにする事が出来る。
誰にも渡さない…例外なく、誰にもだ。
あぁ…愛しい気持ちが溢れてくる、ライム…ライム…
二人の世界に入りたいところだが、俺達の世界に大勢の不審人物はいらない。
ライムと手を取り合って立ち上がり、腰を引き寄せた。
俺にしがみつくライムを一度見つめて、兵士達を見渡した。
「俺を呼んでいる奴がいるんだろ、俺をソイツのところに連れて行け」
俺の言っている意味を大体の奴らは理解していなかった。
神の場所に連れて行けと言いたいところだが、こんな下っ端が神の存在を知っているかと言われたら怪しいものだ。
神は意識を飛ばしてまで地下牢にやって来た。
そうなると俺に会いたいんだろう。
俺はもう同じ過ちを繰り返さない、ライムと離れる事への恐怖はもう味わいたくもない。
一人だけ、分かっている兵士がいてビクビク震えながら俺に近付く。
「あ、の…ローベルト卿が…」
「……」
「ひぃぃ!!」
いちいち怯えている兵士に眉を寄せたが、一人だけしか分かっていないからコイツを殺すわけにはいかない。
神を知っているんじゃなくて、ローベルト卿が俺に会いたいらしい。
面倒だが、ローベルト卿なら確実に神の場所を知っている。
俺は神に会わなくてはいけない…薬の事もそうだが、宮殿に細工した事は許さない。
俺の場所は誰であろうと汚す事は許さない。
ライムに声を掛けると、ローベルト卿に会うからか不安そうな顔をしていた。
ライムは危険だ、一緒に連れていけない。
必ず後で迎えにくる、だからそれまで待っていてくれ。
俺に怯えているなら、俺の逆鱗に触れる事はないだろう。
兵士の一人である弱そうな小柄な兵士を見ると背筋を伸ばしていた。
「おい」
「は、はいぃっ!!」
「ライムを安全な場所に連れて行け、もし危険な事をしたらお前の首を跳ねる、触れる事も許さない」
兵士は青い顔をしていて、ライムに近付く。
一度ライムはこちらを向いたから、大丈夫だと頭を撫でて見送った。
もし、ライムになにかしたら許さないと背中越しでも訴えた。
あの兵士からは力を感じなかった、なにかする事があってもライムが抵抗出来る兵士を選んだ。
それにしても、あんな子供にまで兵士をさせるなんてやはりローベルト卿は恐ろしい考えの男だ。
ビクビクされながら兵士の後ろを歩いていると、屋敷の中に入った。
先にローベルト卿に会うから当然といえば当然だけどな。
二階に上がり、大きな扉の前で足を止めた。
扉が開かれて、俺が入ると後ろで扉が閉ざされた。
前を見ると机に向かっていたローベルト卿がこちらを見て笑みを浮かべていた。
こうして直接話すのは初めてだった、今すぐにでも息の根を止めたいくらいだ。
ライムにしてきた事は許されない、生きて罪を償わせるなんて俺はそんなに優しくない。
でも、まず神の場所を聞かなくてはいけない。
その後ローベルト卿をどうするか考えよう。
「ようこそ、君の力は見させてもらったよ…名はなんて言えばいいのかな」
「そんな事どうでもいい、神の場所を教えろ」
回りくどい事を言って、話を伸ばす気はない。
さっさと終わらせてライムを迎えにいきたい。
ローベルト卿は笑顔のまま、俺に近付いてきた。
氷の剣をローベルト卿に向けると足を止めたが顔からは余裕そうだった。
今すぐ殺してもいいんだ、俺にコイツを見逃すつもりはない。
神の居場所を聞くために来たが、そもそもライムを傷付けた元凶だ…分かってはいたが実際に見ると怒りが込み上げてくる。
神は自分で探せばいい、この屋敷の何処かにいる筈だ。
ローベルト卿を睨みつけると、張り付いていた笑みが消えた。
俺と同じ、嫌悪と憎悪で顔が歪んでいる。
「あの方はお前のような悪魔が会えるお方ではない」
「やっと本性を出したか、ずっとそうしてればいいんだよ」
慣れない笑顔をするもんじゃないぞ、ローベルト卿。
俺は絶対にアイツに会う必要があるんだ。
さっさと薬について聞いて、宮殿を開いてもらわないとな。
ローベルト卿は壁に飾っていた剣を引き抜いてこちらに向けていた。
随分と心酔しているんだな、人間を丸め込むのが上手いな…神だからか?
ライムはこんな危ない場所に居てはいけないと改めてそう思った。
俺が、俺だけがあの子を幸せにする事が出来る。
誰にも渡さない…例外なく、誰にもだ。
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