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カイウスとカイウス?
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カイウスは自ら地下牢に入ったみたいだが、俺のいないストレスと精霊のにおいで兵士を殺していたらしい。
すぐに地下牢を出なかった理由はカイウスの姿を俺に見せたくなかったという。
さっきも言っていたが、どういう意味なんだ?今のカイウスは普通に見えるけど…
「俺から見たら普通だけど、なんで…」
「だって、今俺はライムの頭にある俺を装ってるから」
「…それってどういう事?」
カイウスはそれに答えず、地下牢の壁に手を付いた。
だんだん壁は光に包まれていき…宮殿を開こうとしていた。
そこでローベルト家に帰ってきた理由を思い出した。
いろいろあって神について忘れていた、カイウスがいるならカイウスを直接連れて行かないと…
カイウスに言おうと思ったら、その前に壁から手を離した。
宮殿に入る事をやめたみたいで、カイウスも本来の目的を思い出したのかと思った。
「入れない」
「…え?」
「何かに遮られて入れなくなっている」
カイウスはそう言って眉を寄せていて、俺も試しに宮殿に入ろうとしてみる。
いつもは宮殿の風景を想像する事が出来る。
精霊に導かれて、俺は入る事が出来る。
でも、宮殿の風景にノイズが混じって入れない。
カイウスの言う通り、何かに妨害されているような気がする。
俺は何度もローベルト家から宮殿に入っているから、いくら地下でも入れなくなるなんてそんな事…
カイウスはもう一度試してみても、変わらなかった。
「誰がこんな事…」
「宮殿の主である俺以外にこんな事が出来るのは…」
「私しかないな」
突然第三者の声が聞こえて、後ろを振り返ろうとしたら俺の体が浮いた。
そのまま体は強い力で壁に向かって叩きつけられた。
壁に激突した筈なのに、全然体は痛くなかった。
後ろを振り返るとカイウスが俺のクッション代わりになっていた。
慌ててカイウスを起こそうとすると、背後に気配を感じた。
背筋が凍るほどの殺気、憎悪、負の感情が詰まっていて空気も重くなる。
俺がカイウスを起こそうとしていたのに、逆にカイウスに引っ張られてカイウスの上に体を預ける。
カイウスは俺とカイウスの周りに結界を張っていた。
後ろを振り返ると、俺の後ろに神が立っていた。
俺を睨みつけていて、神は俺に向かって手を差し伸ばしていた。
「なんで…ここに…」
「カイウスが私に会いに来たのなら、出迎えなくてはならないだろ?」
「勘違いするな、俺はお前を殺すためにきたんだ」
「あぁ、そうだろう事は分かっているよ…カイウス」
神は俺に向かって鋭い爪を伸ばしながら、平然とカイウスと会話している。
なんでここに神がいるんだろう…夢の中でも宮殿でもない、ここは現実世界だ。
カイウスは神を殺すと言い切っていたが、まずは薬について聞きに来たんじゃないのか?
本来の目的が変わってるとカイウスに言うと「元凶が消えれば薬を作る奴がいなくなるから」とか力技で解決しようとしている。
確かにそうかもしれないが、今後薬を作らない人が現れるか分からない。
それに、根本的な解決になっていない…薬を調べればいろいろ分かる事もあるのに…
カイウスの力がまだ本調子じゃないのもあるからダメだと説得していたら、カイウスの結界が弾く音がした。
驚いて再び後ろを見ると、神がさっきの余裕がなくて俺を睨みつけていた。
なにがそんなに神を怒らせてしまったのか。
「カイウス、まだこの男と一緒にいるのか…いい加減英雄としての自覚を…」
「うるさい、俺を英雄にしたいならお前が悪魔になれば殺してやる」
「……私を穢らわしいその男と一緒にするな」
「ライムと一緒にはしていない、天と地の差があるからな……当然お前が地だけど」
カイウスは神を挑発していた。
何でかは分からないけど、やっぱりカイウス…何処か頭を打ったんだ。
こんな事して、今の状況は何も変わらない。
それとも、本当に神とここで戦う気なのか?
狭い地下で戦って天井が崩れたら皆生き埋めになってしまう。
いくら魔力がある二人でも、助からないかもしれない。
神は俺の言葉を聞くわけがない、今でも攻撃を続けているから当たり前だ。
俺が会話出来るのはカイウスだけだ。
今のカイウスは不安でしかないけど、それでもカイウスを止めなくては…
「ライム、俺の何処が本調子じゃないんだ?こんなに力が溢れているというのに」
「その力を使い続けて、どうなるか分からないよ!」
「……何を揉めているのか知らないが、お前の力が強くなるなら私は喜んでお前の糧になるぞ」
「カイウス、ダメだよ!こんなところで戦ったら…」
「……」
「…カイウス?」
「………あ、おれ…?」
神はカイウスに向かって言っていた。
そんな声を聞いちゃダメだと止めようとしたら、カイウスは俺を呆然と見つめていた。
まるで、理解が追いついていないような顔をしている。
気が抜けたのか、カイウスが張った結界が壊れた。
ガラスが割れるような音と共に、神は俺に向かって身を乗り出していた。
すぐにカイウスは神に向かって魔力を放ち、今度は神が壁に激突して姿が消えた。
え…?消えた?まさかそんな呆気なく死ぬとは思えないけど…
「これって…」
「意識だけこちらに見せたんだろう、いつもと同じように…」
カイウスがそう言うと、パラパラと頭の上に何か落ちてきた。
手で払うと砂のようなもので、嫌な予感がする。
二度も壁に衝撃を与えたから、もしかしたら地下牢を支える柱にぶつかってしまったのかもしれない。
そう考えるより先にカイウスに抱えられて、地下牢から脱出した。
階段がなくても羽根がある、地下牢の蓋が閉まっていてもカイウスの力なら破壊出来る。
大きな音を立てて蓋を破壊すると、それが決定的なものになり地下牢は瓦礫や土に埋もれた。
地下牢の入り口を見張っていた兵士は呆然としていたが、すぐに剣を構えている。
すぐに地下牢を出なかった理由はカイウスの姿を俺に見せたくなかったという。
さっきも言っていたが、どういう意味なんだ?今のカイウスは普通に見えるけど…
「俺から見たら普通だけど、なんで…」
「だって、今俺はライムの頭にある俺を装ってるから」
「…それってどういう事?」
カイウスはそれに答えず、地下牢の壁に手を付いた。
だんだん壁は光に包まれていき…宮殿を開こうとしていた。
そこでローベルト家に帰ってきた理由を思い出した。
いろいろあって神について忘れていた、カイウスがいるならカイウスを直接連れて行かないと…
カイウスに言おうと思ったら、その前に壁から手を離した。
宮殿に入る事をやめたみたいで、カイウスも本来の目的を思い出したのかと思った。
「入れない」
「…え?」
「何かに遮られて入れなくなっている」
カイウスはそう言って眉を寄せていて、俺も試しに宮殿に入ろうとしてみる。
いつもは宮殿の風景を想像する事が出来る。
精霊に導かれて、俺は入る事が出来る。
でも、宮殿の風景にノイズが混じって入れない。
カイウスの言う通り、何かに妨害されているような気がする。
俺は何度もローベルト家から宮殿に入っているから、いくら地下でも入れなくなるなんてそんな事…
カイウスはもう一度試してみても、変わらなかった。
「誰がこんな事…」
「宮殿の主である俺以外にこんな事が出来るのは…」
「私しかないな」
突然第三者の声が聞こえて、後ろを振り返ろうとしたら俺の体が浮いた。
そのまま体は強い力で壁に向かって叩きつけられた。
壁に激突した筈なのに、全然体は痛くなかった。
後ろを振り返るとカイウスが俺のクッション代わりになっていた。
慌ててカイウスを起こそうとすると、背後に気配を感じた。
背筋が凍るほどの殺気、憎悪、負の感情が詰まっていて空気も重くなる。
俺がカイウスを起こそうとしていたのに、逆にカイウスに引っ張られてカイウスの上に体を預ける。
カイウスは俺とカイウスの周りに結界を張っていた。
後ろを振り返ると、俺の後ろに神が立っていた。
俺を睨みつけていて、神は俺に向かって手を差し伸ばしていた。
「なんで…ここに…」
「カイウスが私に会いに来たのなら、出迎えなくてはならないだろ?」
「勘違いするな、俺はお前を殺すためにきたんだ」
「あぁ、そうだろう事は分かっているよ…カイウス」
神は俺に向かって鋭い爪を伸ばしながら、平然とカイウスと会話している。
なんでここに神がいるんだろう…夢の中でも宮殿でもない、ここは現実世界だ。
カイウスは神を殺すと言い切っていたが、まずは薬について聞きに来たんじゃないのか?
本来の目的が変わってるとカイウスに言うと「元凶が消えれば薬を作る奴がいなくなるから」とか力技で解決しようとしている。
確かにそうかもしれないが、今後薬を作らない人が現れるか分からない。
それに、根本的な解決になっていない…薬を調べればいろいろ分かる事もあるのに…
カイウスの力がまだ本調子じゃないのもあるからダメだと説得していたら、カイウスの結界が弾く音がした。
驚いて再び後ろを見ると、神がさっきの余裕がなくて俺を睨みつけていた。
なにがそんなに神を怒らせてしまったのか。
「カイウス、まだこの男と一緒にいるのか…いい加減英雄としての自覚を…」
「うるさい、俺を英雄にしたいならお前が悪魔になれば殺してやる」
「……私を穢らわしいその男と一緒にするな」
「ライムと一緒にはしていない、天と地の差があるからな……当然お前が地だけど」
カイウスは神を挑発していた。
何でかは分からないけど、やっぱりカイウス…何処か頭を打ったんだ。
こんな事して、今の状況は何も変わらない。
それとも、本当に神とここで戦う気なのか?
狭い地下で戦って天井が崩れたら皆生き埋めになってしまう。
いくら魔力がある二人でも、助からないかもしれない。
神は俺の言葉を聞くわけがない、今でも攻撃を続けているから当たり前だ。
俺が会話出来るのはカイウスだけだ。
今のカイウスは不安でしかないけど、それでもカイウスを止めなくては…
「ライム、俺の何処が本調子じゃないんだ?こんなに力が溢れているというのに」
「その力を使い続けて、どうなるか分からないよ!」
「……何を揉めているのか知らないが、お前の力が強くなるなら私は喜んでお前の糧になるぞ」
「カイウス、ダメだよ!こんなところで戦ったら…」
「……」
「…カイウス?」
「………あ、おれ…?」
神はカイウスに向かって言っていた。
そんな声を聞いちゃダメだと止めようとしたら、カイウスは俺を呆然と見つめていた。
まるで、理解が追いついていないような顔をしている。
気が抜けたのか、カイウスが張った結界が壊れた。
ガラスが割れるような音と共に、神は俺に向かって身を乗り出していた。
すぐにカイウスは神に向かって魔力を放ち、今度は神が壁に激突して姿が消えた。
え…?消えた?まさかそんな呆気なく死ぬとは思えないけど…
「これって…」
「意識だけこちらに見せたんだろう、いつもと同じように…」
カイウスがそう言うと、パラパラと頭の上に何か落ちてきた。
手で払うと砂のようなもので、嫌な予感がする。
二度も壁に衝撃を与えたから、もしかしたら地下牢を支える柱にぶつかってしまったのかもしれない。
そう考えるより先にカイウスに抱えられて、地下牢から脱出した。
階段がなくても羽根がある、地下牢の蓋が閉まっていてもカイウスの力なら破壊出来る。
大きな音を立てて蓋を破壊すると、それが決定的なものになり地下牢は瓦礫や土に埋もれた。
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