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過去から現代へ

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頬を触れられて、眉を寄せる…なんだろうこの感触。
「ライム」という声が聞こえて、慌てて目を覚ました。

「ライム、大丈夫か?どうしたんだ?」

「……カイ…ウス?」

「そうだが?」

カイウスは不思議そうな顔をしていて、頬に触れる。

周りを見ると、俺は宮殿の外で眠っていたそうだ。
近くを見渡すと、そこには入り口がなくなっていた。
確かにここら辺に過去に行ける道があった筈だ。

もしかしたら、未来のカイウスが塞いでくれたのかもしれない。

自然と頬から涙が伝い、カイウスら慌てていた。

「どうしたんだ!?何処か痛いのか!?」

「……ううん、痛くないよ…お腹空いた」

ふと、空腹を感じてカイウスに言うと俺をお姫様抱っこして宮殿の中に向かった。

なにが食べたいか聞かれて「焼き魚」と伝えた。

リーズナはカイウスが起きて、安心していた。
あの時の出来事を思い出す事がないから、本当に記憶がないのだろう。

夢だったようにも感じたが、これは夢ではない…耳に触れて現実なんだと分かる。

焼き魚を作ったカイウスは、テーブルに置いて俺の耳を見つめていた。

「ライム、どうしたんだ?その耳の」

「…ん?ちょっとイメチェン」

「そうか、似合ってるよ」

「ありがとう」

焼き魚を一口食べると、カイウスが作ってくれたあの味を思い出した。

幸せな時間を噛みしめて、俺達は過ごしていた。

夜になって、俺とカイウスは外に出て星空を眺めていた。
リーズナに起きたばかりだからと、一日だけ仕事を休んでいた。

キラキラと、星が流れていき…綺麗だなと見つめていた。
カイウスは空ではなく、ずっと俺を見つめていた。

「ライム、俺が寝ていた時なにかあったか?」

「え?な、何もないよ?」

「本当か?」

「カイウスはもう大丈夫なの?何処か痛いところは?」

「ないよ、大丈夫」

カイウスに心配掛けないように、誤魔化すとカイウスに肩を抱かれて引き寄せられた。

俺もカイウスをギュッと抱きしめた、神をどうにかしないとまた俺は死んでカイウスを苦しませる。
その繰り返しだ…だから、俺は決めたんだ……戦おうって…

一人で戦って分かった、守られるだけじゃダメなんだ。
カイウスと一緒なら、全然怖くないよ…俺はもっと強くなれる気がする。

カイウスを見つめると、カイウスは首を傾げていた。

「どうした?」

「ローベルトの家の地下に神がいるんだ」

「何故そんなところに…」

「薬についても気になる事かあるんだ」

薬…ミロが可笑しな力を得た話が気になっていた。

今まではローベルト一族が変な薬でも作ったくらいにしか思っていなかった。
でも、リーズナに力を与えたところを見ると…もしかして人間にも力を与える事が出来るのではないかと思った。

もっと探らないといけない、薬を手に入れる事が出来たら…

神を外に引っ張り出す事は簡単ではない、地下にいるし…あの牢屋の扉を開ける方法が分からない。
カイウスはローベルトの家に入れない、なら俺がやるしかない。

「薬って何の事だ」

「ミロ……ローベルト一族の仲間の一人が薬を使って可笑しくなったんだ」

「……ローベルト一族がいろんな事件に関わっているが、全ての事件で人間とは違う力が働いているように感じた…薬が原因か…筋肉強化剤ではないんだな」

「普通の薬ではなかったよ」

あれは危ない薬なんだとすぐに分かった、副作用が強いと感じた。
現物がないから詳しくは分からない…俺なら手に入ると思う。

カイウスは俺の言葉を分かったのか、俺がなにか言う前に「ダメだ」と言っていた。

でも俺しか出来ないんだし、神についても情報を集めるのは俺が適任だと思う。

危ない事はしない、なにかあったら全速力で逃げる…それじゃあダメなのか?
カイウスを見つめると、カイウスは困ったような顔をしていた。

「ライムがあの家でどんな仕打ちを受けているのか分かってる…だから心配なんだ」

「カイウス、俺はカイウスの役に立ちたいんだ」

「潜入ならリーズナにやらせる、それでいい」

カイウスはそう言って、リーズナを呼んでいた。
俺が戦った事を知らないカイウスは当然の事を言ってるんだ。

カイウスが心配しないほど強く、やっぱり筋肉がほしい。

リーズナは俺を見つめていて、そのまま宮殿の中に入っていった。
冷えてきたから、俺達も宮殿の中に入りカイウスに詳しい神の場所を教えた。

俺が先に寝室に入り、ベッドの上で寝転がった。

いっぱい寝た気がするが、眠気が襲ってうとうとする。
カイウスを、待っていたいのに眠くて扉が開く音に誘われて眠りについた。
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