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過去編・カイウスとカイト
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カイウスは驚いた顔をしていたが、ちょっと困った顔をしていた。
やっぱりダメか…俺、そんなに頼りないかな。
クラスメイトや家族に虐められている自分を思い出して、あれじゃあ頼れないか…と苦笑いした。
カイウスは「違う、ライムが頼りないんじゃない」と言っていた。
嬉しいけど、そんな慰めはいらないよと言ったら本当に違ったようだ。
「俺がこの世界に来た理由はライム、今の君を守るためなんだ」
「…今の?過去の俺が殺されたんじゃないの?」
「過去のライムが居なくなったら記憶が書き換えられて、俺がライムの事を気絶する前まで覚えている筈はない」
「……そう、だよね」
だとすると、俺はあの神の刺客である二人に殺されたからカイウスは英雄になった?
カイウスの無数の傷は自分が暴走して理性を失った時に正気に保つために自分の魔法でつけた傷だと言った。
自分の傷だから綺麗に傷が消えないのか…魔法はそれだけ強い呪いのようなものだから…
俺を巻き込みたくないのは、俺自身がターゲットだから…カイウスは俺を殺した奴らを殺す気でいるんだ。
カイウスは俺に見つからないように魔法で猫に変身していたという。
でも、崖から落ちた時…俺を助けるために風魔法を使い…変身出来るほどの魔力がなくなってしまったそうだ。
変身魔法はとても魔力がいるんだと、カイウスは言っていた。
「ライム、君がこの過去の世界にいる理由はなんだ?どうしてここにいる?」
今度は俺がカイウスに話す番だ、カイウスは俺が何故ここにいるか知らない。
カイウスも話したくない事を話してくれたんだ、俺も隠し事をしちゃいけない。
俺はカイウスが眠りについた後の話を説明した。
魔力が空っぽだとリーズナから聞いて、どうすればカイウスが目覚めるかを…
正直リーズナも確信していて言ったわけではないが、俺は試す事にしたんだ。
カイウスを助けられる可能性が一ミリでもあるならそれに縋りたい。
健全なカイウスに会うなら過去しかないと思い、俺はここにいる。
「…という事なんだ」
「すまなかった、やはり俺が寝ていたせいでライムは過去にいたのか」
「ここにいるのは俺の意思なんだから、カイウスが悪いんじゃないよ」
そう言って、微笑むと近くの草がガサガサと揺れた。
カイウスは一気に顔を険しくさせて俺の前に立った。
もしかして、刺客が追ってきたのか?…俺達の周りに緊張が走る。
ドクドクと心臓の音が聞こえてきそうだ、茂みにポゥと小さな灯りのようなものが見えた。
カイウスが手のひらに炎を出現させ、灯りがある場所に向かって走り出した。
茂みから現れた人物は「ひぃっ!!」と短い悲鳴を出して地面に尻餅をついた。
倒れる時にコロコロと手の中から滑り落ちたランタンが足元に転がっていた。
カイウスは炎が当たる寸前で、手を止めたから怪我はしていないだろう。
声からしてあの刺客ではなさそうだが、俺からはカイウスが庇ってくれていたから誰だか分からず、カイウスの所に向かった。
「あれ?カイト?」
「なっ、ななななっっ!!!??」
カイトはプチパニックを起こしていて、俺とカイウスを交互に見て口をパクパク動かしていた。
カイトも無事だったんだ、良かった…カイくんがカイウスだった事が分かって、今はそれだけが心配だった。
カイトがなかなか立ち上がらないから手を差し伸ばすと、カイウスがカイトの服の襟を掴んで立ち上がらせていた。
「ぐえっ」と苦しげな声が聞こえたが、大丈夫なのかな。
俺はランタンを拾ってカイトに渡すと、放心したようにボケーッとしながら受け取っていた。
どうしたんだろう、まさか…アイツらになにかされたのか!?
「カイト、もしかして襲ってきた奴になにかされたのか?」
「えっ!?…い、いや…アイツらは俺を無視してお前を追いかけていったんだ……アイツらが居なくなったら身体も軽くなって…お前が居なくなった後を追いかけたんだ」
「いくら悪霊でも目覚めが悪いからな!」と言うカイトは、いつもの強気なカイウスに戻ったようだった。
それで、カイウスが行った頃には俺達がいなかったそうだ。
刺客達はまだいて、崖の下を覗いていたから俺が崖に落ちたのだと思ったそうだ。
一度出直そうと思って、家に帰ってからランタンを持って探しに来てくれた。
カイトの事、少し誤解していたな…根はいい奴なんだよな。
カイトも話している間にだんだん落ち着いてきたようで深呼吸していた。
「…で、なんでここにカイウスがいるんだ?」
「………」
「あ…」
そういえば、今はカイくんじゃないんだとカイウスを見た。
実はカイくんがカイウスで、とか言ったらカイトは怒りそうだな。
だって、何度もカイくんに足蹴りされてたし…
でもカイウスは全く動じずにカイトを見ていた。
一応カイトは王族だから、カイウスは丁寧な口調で「カイト様、お城にお戻り下さい」と言っていた。
自分の事は一切話す気はないみたいで、カイトは不満そうだった。
まだ外は暗いから、カイウスが城までカイトを送り届けるみたいで俺も一緒に着いて行く事にした。
「別に俺がいなくても誰も気付かねぇよ」
小さくカイトがなにかを言っていたが、小さすぎて全く聞こえなかった。
やっぱりダメか…俺、そんなに頼りないかな。
クラスメイトや家族に虐められている自分を思い出して、あれじゃあ頼れないか…と苦笑いした。
カイウスは「違う、ライムが頼りないんじゃない」と言っていた。
嬉しいけど、そんな慰めはいらないよと言ったら本当に違ったようだ。
「俺がこの世界に来た理由はライム、今の君を守るためなんだ」
「…今の?過去の俺が殺されたんじゃないの?」
「過去のライムが居なくなったら記憶が書き換えられて、俺がライムの事を気絶する前まで覚えている筈はない」
「……そう、だよね」
だとすると、俺はあの神の刺客である二人に殺されたからカイウスは英雄になった?
カイウスの無数の傷は自分が暴走して理性を失った時に正気に保つために自分の魔法でつけた傷だと言った。
自分の傷だから綺麗に傷が消えないのか…魔法はそれだけ強い呪いのようなものだから…
俺を巻き込みたくないのは、俺自身がターゲットだから…カイウスは俺を殺した奴らを殺す気でいるんだ。
カイウスは俺に見つからないように魔法で猫に変身していたという。
でも、崖から落ちた時…俺を助けるために風魔法を使い…変身出来るほどの魔力がなくなってしまったそうだ。
変身魔法はとても魔力がいるんだと、カイウスは言っていた。
「ライム、君がこの過去の世界にいる理由はなんだ?どうしてここにいる?」
今度は俺がカイウスに話す番だ、カイウスは俺が何故ここにいるか知らない。
カイウスも話したくない事を話してくれたんだ、俺も隠し事をしちゃいけない。
俺はカイウスが眠りについた後の話を説明した。
魔力が空っぽだとリーズナから聞いて、どうすればカイウスが目覚めるかを…
正直リーズナも確信していて言ったわけではないが、俺は試す事にしたんだ。
カイウスを助けられる可能性が一ミリでもあるならそれに縋りたい。
健全なカイウスに会うなら過去しかないと思い、俺はここにいる。
「…という事なんだ」
「すまなかった、やはり俺が寝ていたせいでライムは過去にいたのか」
「ここにいるのは俺の意思なんだから、カイウスが悪いんじゃないよ」
そう言って、微笑むと近くの草がガサガサと揺れた。
カイウスは一気に顔を険しくさせて俺の前に立った。
もしかして、刺客が追ってきたのか?…俺達の周りに緊張が走る。
ドクドクと心臓の音が聞こえてきそうだ、茂みにポゥと小さな灯りのようなものが見えた。
カイウスが手のひらに炎を出現させ、灯りがある場所に向かって走り出した。
茂みから現れた人物は「ひぃっ!!」と短い悲鳴を出して地面に尻餅をついた。
倒れる時にコロコロと手の中から滑り落ちたランタンが足元に転がっていた。
カイウスは炎が当たる寸前で、手を止めたから怪我はしていないだろう。
声からしてあの刺客ではなさそうだが、俺からはカイウスが庇ってくれていたから誰だか分からず、カイウスの所に向かった。
「あれ?カイト?」
「なっ、ななななっっ!!!??」
カイトはプチパニックを起こしていて、俺とカイウスを交互に見て口をパクパク動かしていた。
カイトも無事だったんだ、良かった…カイくんがカイウスだった事が分かって、今はそれだけが心配だった。
カイトがなかなか立ち上がらないから手を差し伸ばすと、カイウスがカイトの服の襟を掴んで立ち上がらせていた。
「ぐえっ」と苦しげな声が聞こえたが、大丈夫なのかな。
俺はランタンを拾ってカイトに渡すと、放心したようにボケーッとしながら受け取っていた。
どうしたんだろう、まさか…アイツらになにかされたのか!?
「カイト、もしかして襲ってきた奴になにかされたのか?」
「えっ!?…い、いや…アイツらは俺を無視してお前を追いかけていったんだ……アイツらが居なくなったら身体も軽くなって…お前が居なくなった後を追いかけたんだ」
「いくら悪霊でも目覚めが悪いからな!」と言うカイトは、いつもの強気なカイウスに戻ったようだった。
それで、カイウスが行った頃には俺達がいなかったそうだ。
刺客達はまだいて、崖の下を覗いていたから俺が崖に落ちたのだと思ったそうだ。
一度出直そうと思って、家に帰ってからランタンを持って探しに来てくれた。
カイトの事、少し誤解していたな…根はいい奴なんだよな。
カイトも話している間にだんだん落ち着いてきたようで深呼吸していた。
「…で、なんでここにカイウスがいるんだ?」
「………」
「あ…」
そういえば、今はカイくんじゃないんだとカイウスを見た。
実はカイくんがカイウスで、とか言ったらカイトは怒りそうだな。
だって、何度もカイくんに足蹴りされてたし…
でもカイウスは全く動じずにカイトを見ていた。
一応カイトは王族だから、カイウスは丁寧な口調で「カイト様、お城にお戻り下さい」と言っていた。
自分の事は一切話す気はないみたいで、カイトは不満そうだった。
まだ外は暗いから、カイウスが城までカイトを送り届けるみたいで俺も一緒に着いて行く事にした。
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