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過去編・三年後の世界
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「カイウスが悪いんじゃないよ、だから…謝らなくていいんだよ」
「……………違う、俺が寝ていたせいでライムは…」
「寝てた?俺がカイウスを起こしたんじゃないの?」
「俺が起きたのは三年後だ」
カイウスの言葉に衝撃を受けた…俺がこの世界にいる時現代の時は変わらないのではないのか?
だとしたら俺は過去に戻っても、カイウスを救えていない事になる。
握っていた指の力が抜けて、カイウスは不思議そうに俺を見ていた。
そりゃあそうだ、カイウスは俺がなんで過去に戻ったのかを知らない。
俺がカイウスを起こしたなら説明しているかと思ったが、起こしていないならそれは無理だ。
カイウスが寝ていて、俺が死んだ?カイウスが過去に戻ってきた理由って…
「俺、過去で殺されるの?」
「……ライムを不安にさせたくなかったが、自分の事を知りたいと思うのは当然だ」
「カイウス…」
「聞きたくないなら言ってくれ、俺がこの世界に来た理由を話す」
そう言ったカイウスは、ゆっくりと教えてくれた。
カイウスが目を覚ましたのはベッドの上だったと言っていた。
カイウスを寝かせていたのはリーズナだと知っているからそれは驚かなかった。
でも、カイウスの傍にはいる筈のない人物が立っていた。
それは俺でもリーズナでもない、神がカイウスの傍にいたらしい。
カイウスは今までの事もあり、剣を抜こうと腰に手を当てた。
でも、そこにはある筈の剣がなかった…俺達はカイウスのベッドの横に剣を置いていた。
寝る時邪魔かと思って……もしかして、それが原因?
「アイツは俺に言った、『お前は三年眠っていた…お前の愛しい者は死に…お前は英雄になった』と…」
「俺が死んでカイウスが英雄になるの?」
「俺も不思議だった、何もせず寝ていた俺がなんで英雄になるんだと…」
カイウスは神の言葉を一切信じず、元の世界に戻った。
そこでカイウスは、変わり果てた世界を目にしたと言っていた。
お祭り騒ぎの街はカイウスが来る事を祝福していた。
戸惑ったカイウスは、俺に会いにローベルトの家に真っ先に向かった。
しかし、そこにあった筈のローベルトの家は跡形もなくなっていた。
カイウスは適当な騎士に今の状況を聞いて、頭を強く殴られたような衝撃に襲われたそうだ。
悪魔の子をカイウスが殺して、ローベルト一族を皆殺しにしたと言っていた。
「俺がライムを殺す?そんな事、なにがあってもありえない」
「…どうしてそんな事、言ったんだろう」
「分からないが、誰に聞いても同じような事しか聞かなかったんだ」
そして、カイウスは俺がいたであろう宮殿に戻り手がかりを探していた。
俺が眠っていたベッドから庭までよく探していた。
カイウスの後ろに神の気配を感じても、カイウスは探すのを止めなかった。
自分が俺を殺すわけがない、誰か他にいるのかもしれない。
見つけたら、死にたくなるような苦痛を与えて殺してやる…とカイウスの手が微かに震えていた。
俺は、両手でカイウスの手を包み込んで…俺はここにいる…生きてるよと教えた。
気持ちが落ち着いたのか、話の続きを話してくれた。
「何をしている?お前は悪魔の子を殺して、完全な力を手にしたというのに…」
「俺は殺していない、お前が殺したのか」
カイウスは神が殺したのだと思った、俺の事を嫌いな神ならやりかねない…と…
カイウスの身体からとても大きな力が放出して、カイウスの世界を真っ黒に染めた。
それから自分が何をしたのか、意識がプツンと切れたと言っていた。
そして、目が覚めた時にはカイウスの手が真っ赤になっていた。
足元には赤い水溜まりの上で倒れている神がいた。
神の白い着物や髪が、赤く染まっていくのをジッと眺めていた。
この神は本物だったみたいで、最後は何故か抵抗していなかった。
ただ、笑って…殺されていった神に背を向けた。
恋人の仇討ちをしても、全く気分は晴れず…ただ消失感だけがカイウスの心の中にあった。
三年眠っていた自分を悔いて、後追いも考えていたと…カイウスは俺を見つめてそう言った。
「カイウスが死ぬなんてダメだよ!」
「俺にとってライムは世界そのものなんだ、ライムがいない未来に未練なんかない」
そう言ったカイウスにギュッと少し強く抱きしめられた。
温かな体温に、今度は俺がカイウスが生きていると実感が出来た。
そんな事を考えていたカイウスの前に一匹の精霊が飛んできた。
カイウスはただ、慰めに来たのかと思っていた。
でもその精霊は、俺が何処に行ったのかを知っているとカイウスに伝えた。
俺が過去に行ったのを見ていた子がいたのだろう。
カイウスもそこに案内されて、森の奥にやって来た。
カイウスはすぐに俺が過去の世界に行ったのだと知った。
そして、自分も過去に戻れば俺を助け出せるのではないかと希望の光が見えてきた。
カイウスは俺を探しに、過去に戻っていった。
確かにこの世界に俺達と同じように未来から来た神がいた。
未来から来た神の目的は俺を殺す事なんだと襲ってきた刺客を見れば本気だと分かる。
過去の俺を殺すのに邪魔な今の俺から始末しようという事だと思う。
俺を殺してカイウスに完全な力の意味はまだ分からないが、カイウスは過去の俺を守りに来たのだろう。
だとしたらなんで俺を巻き込みたくないと言ったんだ?
確かに俺はカイウスよりは強くないけど、カイウスに鍛えられてそれなりに強くなったと思っている。
刺客に対して逃げるしか出来なかったから呆れちゃったのかな。
「カイウス、過去の俺を守るなら…俺も協力したい…俺の事なら俺が一番よく知っている……だから、巻き込みたくないなんて言わないでよ」
「……ライム」
「俺、カイウスに頼られる男になりたいんだ」
カイウスが俺にしてくれたように、俺だってカイウスにしたいんだ。
「……………違う、俺が寝ていたせいでライムは…」
「寝てた?俺がカイウスを起こしたんじゃないの?」
「俺が起きたのは三年後だ」
カイウスの言葉に衝撃を受けた…俺がこの世界にいる時現代の時は変わらないのではないのか?
だとしたら俺は過去に戻っても、カイウスを救えていない事になる。
握っていた指の力が抜けて、カイウスは不思議そうに俺を見ていた。
そりゃあそうだ、カイウスは俺がなんで過去に戻ったのかを知らない。
俺がカイウスを起こしたなら説明しているかと思ったが、起こしていないならそれは無理だ。
カイウスが寝ていて、俺が死んだ?カイウスが過去に戻ってきた理由って…
「俺、過去で殺されるの?」
「……ライムを不安にさせたくなかったが、自分の事を知りたいと思うのは当然だ」
「カイウス…」
「聞きたくないなら言ってくれ、俺がこの世界に来た理由を話す」
そう言ったカイウスは、ゆっくりと教えてくれた。
カイウスが目を覚ましたのはベッドの上だったと言っていた。
カイウスを寝かせていたのはリーズナだと知っているからそれは驚かなかった。
でも、カイウスの傍にはいる筈のない人物が立っていた。
それは俺でもリーズナでもない、神がカイウスの傍にいたらしい。
カイウスは今までの事もあり、剣を抜こうと腰に手を当てた。
でも、そこにはある筈の剣がなかった…俺達はカイウスのベッドの横に剣を置いていた。
寝る時邪魔かと思って……もしかして、それが原因?
「アイツは俺に言った、『お前は三年眠っていた…お前の愛しい者は死に…お前は英雄になった』と…」
「俺が死んでカイウスが英雄になるの?」
「俺も不思議だった、何もせず寝ていた俺がなんで英雄になるんだと…」
カイウスは神の言葉を一切信じず、元の世界に戻った。
そこでカイウスは、変わり果てた世界を目にしたと言っていた。
お祭り騒ぎの街はカイウスが来る事を祝福していた。
戸惑ったカイウスは、俺に会いにローベルトの家に真っ先に向かった。
しかし、そこにあった筈のローベルトの家は跡形もなくなっていた。
カイウスは適当な騎士に今の状況を聞いて、頭を強く殴られたような衝撃に襲われたそうだ。
悪魔の子をカイウスが殺して、ローベルト一族を皆殺しにしたと言っていた。
「俺がライムを殺す?そんな事、なにがあってもありえない」
「…どうしてそんな事、言ったんだろう」
「分からないが、誰に聞いても同じような事しか聞かなかったんだ」
そして、カイウスは俺がいたであろう宮殿に戻り手がかりを探していた。
俺が眠っていたベッドから庭までよく探していた。
カイウスの後ろに神の気配を感じても、カイウスは探すのを止めなかった。
自分が俺を殺すわけがない、誰か他にいるのかもしれない。
見つけたら、死にたくなるような苦痛を与えて殺してやる…とカイウスの手が微かに震えていた。
俺は、両手でカイウスの手を包み込んで…俺はここにいる…生きてるよと教えた。
気持ちが落ち着いたのか、話の続きを話してくれた。
「何をしている?お前は悪魔の子を殺して、完全な力を手にしたというのに…」
「俺は殺していない、お前が殺したのか」
カイウスは神が殺したのだと思った、俺の事を嫌いな神ならやりかねない…と…
カイウスの身体からとても大きな力が放出して、カイウスの世界を真っ黒に染めた。
それから自分が何をしたのか、意識がプツンと切れたと言っていた。
そして、目が覚めた時にはカイウスの手が真っ赤になっていた。
足元には赤い水溜まりの上で倒れている神がいた。
神の白い着物や髪が、赤く染まっていくのをジッと眺めていた。
この神は本物だったみたいで、最後は何故か抵抗していなかった。
ただ、笑って…殺されていった神に背を向けた。
恋人の仇討ちをしても、全く気分は晴れず…ただ消失感だけがカイウスの心の中にあった。
三年眠っていた自分を悔いて、後追いも考えていたと…カイウスは俺を見つめてそう言った。
「カイウスが死ぬなんてダメだよ!」
「俺にとってライムは世界そのものなんだ、ライムがいない未来に未練なんかない」
そう言ったカイウスにギュッと少し強く抱きしめられた。
温かな体温に、今度は俺がカイウスが生きていると実感が出来た。
そんな事を考えていたカイウスの前に一匹の精霊が飛んできた。
カイウスはただ、慰めに来たのかと思っていた。
でもその精霊は、俺が何処に行ったのかを知っているとカイウスに伝えた。
俺が過去に行ったのを見ていた子がいたのだろう。
カイウスもそこに案内されて、森の奥にやって来た。
カイウスはすぐに俺が過去の世界に行ったのだと知った。
そして、自分も過去に戻れば俺を助け出せるのではないかと希望の光が見えてきた。
カイウスは俺を探しに、過去に戻っていった。
確かにこの世界に俺達と同じように未来から来た神がいた。
未来から来た神の目的は俺を殺す事なんだと襲ってきた刺客を見れば本気だと分かる。
過去の俺を殺すのに邪魔な今の俺から始末しようという事だと思う。
俺を殺してカイウスに完全な力の意味はまだ分からないが、カイウスは過去の俺を守りに来たのだろう。
だとしたらなんで俺を巻き込みたくないと言ったんだ?
確かに俺はカイウスよりは強くないけど、カイウスに鍛えられてそれなりに強くなったと思っている。
刺客に対して逃げるしか出来なかったから呆れちゃったのかな。
「カイウス、過去の俺を守るなら…俺も協力したい…俺の事なら俺が一番よく知っている……だから、巻き込みたくないなんて言わないでよ」
「……ライム」
「俺、カイウスに頼られる男になりたいんだ」
カイウスが俺にしてくれたように、俺だってカイウスにしたいんだ。
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