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過去編・刺客
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「カイくん、こんなところにいたんだね」
カイくんは俺の方を振り返って近付いてきた。
案内してくれた精霊達はカイくんの周りに集まっていた。
もしかして、カイくんってリーズナのように喋れる精霊の仲間なのか?
だからカイくんは俺の言葉を理解出来たのかもしれない。
精霊が集まったのはカイくんに聞けという意味なのかもしれない。
カイくんの目線に合わせようとしゃがむと、かいくんの耳がピクンと動いた。
俺は気にせず、カイウスについて聞こうと口を開くと…突然カイくんが俺に向かって飛びかかってきた。
受け止めようとしたが、そのまま後ろに倒れた。
いきなりどうしたのかと、胸の上にいるカイくんに聞こうと思ったらすぐになにかが目の前を横切った。
もう、空しか見えないが…俺が座ったままだと確実に当たっていただろう。
それがなにか早すぎて目で追えなかったが、ドキドキと心臓がうるさく鳴る。
「何やってんだよ」
「ざーんねーん、もう少しだったのに」
俺達以外の別の声が聞こえて、声がした方に顔を向ける。
横になっているからナナメに見えるけど、人が見える。
一人は金髪のオールバックに筋肉質の男で、もう一人は茶髪の腰まで長い髪を後ろで一つにまとめている華奢な男だ。
華奢な男の手には自分の身長ぐらいのサイズの巨大なハサミを持っていて、俺達に刃を向けて揺らしていた。
まさか、俺の目の前を通ったのはこのハサミなのか?
でも、少し俺達と距離があるし…投げたとしてもブーメランみたいに戻ってくるものなのか?
カイくんが助けてくれたんだよな、カイくんを見るとジッと二人を見つめていた。
「カイくん、ありが……っ」
お礼を言おうと、上半身を起き上がらせた時だった。
急に俺が座っている地面の半分が消えて、身体が傾いた。
慌てて、地面に手を付いて立ち上がり避難する。
なんでいきなり地面がなくなるんだ?ここはただの森だし、そんな事あり得ない。
身体を傾けて後ろを少しだけ見ると、底が見えない崖だった。
一歩後ろに下がるだけで、落ちてしまいそうだ。
「……ど、どうなってるんだ?」
「君が何をしたのか知らないけど、厄介な方を敵に回した…だから君はここで死んでいくんだよ」
カイくんを除いても、ここには俺とカイトがいる。
でも君と言っている…となると、狙うのは俺一人だけらしい。
しかも俺は今、過去に来ている俺だ……俺が見えて俺を恨む奴がこの二人に殺しの依頼をしたのか?
思いつく人物は、一人しかいなかった……カイウスの家で会った神か…
じゃあこの人達も普通の人ではないのだろうな。
カイくんだけは逃げれるように、地面に降ろして警戒する。
華奢な男がハサミをゆっくりと舐めていて、空気がピリピリする。
緩い喋り方をしているが、殺気が肌に突き刺さる。
俺の横にいるカイトは逃げないのかとカイトの方を見た。
座っているが、目線はずっと男達に向いている。
「カイト、彼らの狙いは俺一人だからカイくんを連れて逃げて!」
「…お、れ…足…動かな…」
カイトは顔色がみるみる悪くなっていき、身体も震えていた。
恐怖で動けないのか、じゃあ俺がここを離れればきっとこの男達も着いてくる。
俺の問題にカイトやカイくんを巻き込めない。
俺一人でどうにか切り抜けないとカイウスを助ける事だって出来やしない!
俺が少し足を動かすと、華奢な男の手が動いた。
またなにかが飛んでくる前に、走り出してカイト達から離れた。
街に行く事は出来ない、森の中をぐるぐるするしかないが…範囲は崖が出現した事で狭まった。
それに、やはり男達が俺の横に並行するように移動していた。
俺が行けるのはまっすぐの道だけだ、どうやって撒こうか。
走りながら、そう考えていたら肩が強い力で掴まれて驚いた。
俺のすぐ横に、不気味に嘲笑う顔が見えて一瞬呼吸が止まる。
「つーかまえた」
華奢な男が、俺に向かってハサミの先を向けた。
避けなければ、それしか考えられなくて足元を見ていなかった。
しゃがんで後ろに後退ろうとしたら、足場がボロボロと崩れて俺の身体が傾いた。
慌ててなにかに掴まろうと手を伸ばすが、その手は華奢な男によって振り払われた。
声に出さず口パクで「バイバイ」と言っているのが見えた。
俺の手は空気を掴んで、足を滑らせ崖の底に吸い込まれる。
軽い衝撃の後、俺は痛みもなく空中を浮いていた。
下には崖の見えない底があり、俺は上を見上げた。
そこで、宙を浮いているわけではないとすぐに分かった。
「…カイ…くん」
おれの服の襟を咥えているカイくんが崖の上にいた。
カイくんって人一人支えられるほど力持ちなんだと言ってられない。
カイくんは必死に踏ん張っているが、小さな身体では限界がある。
ズルズルと足が崖に近付いていて、このままだとカイくんも崖に落ちてしまう。
カイくんに「離して!」と言っても、カイくんが力を緩める気配がない。
カイくんの後ろには、華奢な男が立っていた。
「カイくん!ダメッ、その子は関係ないから手を出さないで!」
「邪魔をする者は誰だろうと殺せという命令なんでね」
ハサミを振り上げて、悪魔のような顔をしているのが見えた。
俺はカイくんに悪いと思いながらも、カイくんを助けるためだとカイくんの口の隙間に指を入れた。
無理矢理口を開けさせると、力が抜けたように一気にがくんと崖の底に向かって落ちていく。
俺がいなければ、きっとカイくんは逃げれるはずだ。
俺は、どうなるのか分からない…でも…一目でいいから…もう一度カイウスに会いたかった。
あの神ではなく、いい神様が俺の願いを叶えてくれたのかな。
意識が失う前に、カイウスの声が聞こえたような気がした。
「絶対に離さないから、必ず俺は君と共に」
冷たいものが頬に落ちて、肌寒く感じて目を開けた。
目の前は真っ暗だった、キラキラと星や月が見えるから夜の空なのだろう。
ここは何処だっけ、あれ…俺こんなところで何して…
そこですぐに、神の刺客である男達に襲われた事を思い出した。
崖から離れた場所なのか、周りを見ても崖はどこにもなかった。
それに俺の身体も、怪我一つしていなかった。
あれは全部夢だった?だったらいいが、そんな都合がいい事あるのか?
カイくんは俺の方を振り返って近付いてきた。
案内してくれた精霊達はカイくんの周りに集まっていた。
もしかして、カイくんってリーズナのように喋れる精霊の仲間なのか?
だからカイくんは俺の言葉を理解出来たのかもしれない。
精霊が集まったのはカイくんに聞けという意味なのかもしれない。
カイくんの目線に合わせようとしゃがむと、かいくんの耳がピクンと動いた。
俺は気にせず、カイウスについて聞こうと口を開くと…突然カイくんが俺に向かって飛びかかってきた。
受け止めようとしたが、そのまま後ろに倒れた。
いきなりどうしたのかと、胸の上にいるカイくんに聞こうと思ったらすぐになにかが目の前を横切った。
もう、空しか見えないが…俺が座ったままだと確実に当たっていただろう。
それがなにか早すぎて目で追えなかったが、ドキドキと心臓がうるさく鳴る。
「何やってんだよ」
「ざーんねーん、もう少しだったのに」
俺達以外の別の声が聞こえて、声がした方に顔を向ける。
横になっているからナナメに見えるけど、人が見える。
一人は金髪のオールバックに筋肉質の男で、もう一人は茶髪の腰まで長い髪を後ろで一つにまとめている華奢な男だ。
華奢な男の手には自分の身長ぐらいのサイズの巨大なハサミを持っていて、俺達に刃を向けて揺らしていた。
まさか、俺の目の前を通ったのはこのハサミなのか?
でも、少し俺達と距離があるし…投げたとしてもブーメランみたいに戻ってくるものなのか?
カイくんが助けてくれたんだよな、カイくんを見るとジッと二人を見つめていた。
「カイくん、ありが……っ」
お礼を言おうと、上半身を起き上がらせた時だった。
急に俺が座っている地面の半分が消えて、身体が傾いた。
慌てて、地面に手を付いて立ち上がり避難する。
なんでいきなり地面がなくなるんだ?ここはただの森だし、そんな事あり得ない。
身体を傾けて後ろを少しだけ見ると、底が見えない崖だった。
一歩後ろに下がるだけで、落ちてしまいそうだ。
「……ど、どうなってるんだ?」
「君が何をしたのか知らないけど、厄介な方を敵に回した…だから君はここで死んでいくんだよ」
カイくんを除いても、ここには俺とカイトがいる。
でも君と言っている…となると、狙うのは俺一人だけらしい。
しかも俺は今、過去に来ている俺だ……俺が見えて俺を恨む奴がこの二人に殺しの依頼をしたのか?
思いつく人物は、一人しかいなかった……カイウスの家で会った神か…
じゃあこの人達も普通の人ではないのだろうな。
カイくんだけは逃げれるように、地面に降ろして警戒する。
華奢な男がハサミをゆっくりと舐めていて、空気がピリピリする。
緩い喋り方をしているが、殺気が肌に突き刺さる。
俺の横にいるカイトは逃げないのかとカイトの方を見た。
座っているが、目線はずっと男達に向いている。
「カイト、彼らの狙いは俺一人だからカイくんを連れて逃げて!」
「…お、れ…足…動かな…」
カイトは顔色がみるみる悪くなっていき、身体も震えていた。
恐怖で動けないのか、じゃあ俺がここを離れればきっとこの男達も着いてくる。
俺の問題にカイトやカイくんを巻き込めない。
俺一人でどうにか切り抜けないとカイウスを助ける事だって出来やしない!
俺が少し足を動かすと、華奢な男の手が動いた。
またなにかが飛んでくる前に、走り出してカイト達から離れた。
街に行く事は出来ない、森の中をぐるぐるするしかないが…範囲は崖が出現した事で狭まった。
それに、やはり男達が俺の横に並行するように移動していた。
俺が行けるのはまっすぐの道だけだ、どうやって撒こうか。
走りながら、そう考えていたら肩が強い力で掴まれて驚いた。
俺のすぐ横に、不気味に嘲笑う顔が見えて一瞬呼吸が止まる。
「つーかまえた」
華奢な男が、俺に向かってハサミの先を向けた。
避けなければ、それしか考えられなくて足元を見ていなかった。
しゃがんで後ろに後退ろうとしたら、足場がボロボロと崩れて俺の身体が傾いた。
慌ててなにかに掴まろうと手を伸ばすが、その手は華奢な男によって振り払われた。
声に出さず口パクで「バイバイ」と言っているのが見えた。
俺の手は空気を掴んで、足を滑らせ崖の底に吸い込まれる。
軽い衝撃の後、俺は痛みもなく空中を浮いていた。
下には崖の見えない底があり、俺は上を見上げた。
そこで、宙を浮いているわけではないとすぐに分かった。
「…カイ…くん」
おれの服の襟を咥えているカイくんが崖の上にいた。
カイくんって人一人支えられるほど力持ちなんだと言ってられない。
カイくんは必死に踏ん張っているが、小さな身体では限界がある。
ズルズルと足が崖に近付いていて、このままだとカイくんも崖に落ちてしまう。
カイくんに「離して!」と言っても、カイくんが力を緩める気配がない。
カイくんの後ろには、華奢な男が立っていた。
「カイくん!ダメッ、その子は関係ないから手を出さないで!」
「邪魔をする者は誰だろうと殺せという命令なんでね」
ハサミを振り上げて、悪魔のような顔をしているのが見えた。
俺はカイくんに悪いと思いながらも、カイくんを助けるためだとカイくんの口の隙間に指を入れた。
無理矢理口を開けさせると、力が抜けたように一気にがくんと崖の底に向かって落ちていく。
俺がいなければ、きっとカイくんは逃げれるはずだ。
俺は、どうなるのか分からない…でも…一目でいいから…もう一度カイウスに会いたかった。
あの神ではなく、いい神様が俺の願いを叶えてくれたのかな。
意識が失う前に、カイウスの声が聞こえたような気がした。
「絶対に離さないから、必ず俺は君と共に」
冷たいものが頬に落ちて、肌寒く感じて目を開けた。
目の前は真っ暗だった、キラキラと星や月が見えるから夜の空なのだろう。
ここは何処だっけ、あれ…俺こんなところで何して…
そこですぐに、神の刺客である男達に襲われた事を思い出した。
崖から離れた場所なのか、周りを見ても崖はどこにもなかった。
それに俺の身体も、怪我一つしていなかった。
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