冷淡騎士に溺愛されてる悪役令嬢の兄の話

雪平@冷淡騎士2nd連載中

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過去編・裏の話2

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すーすー、と寝息が聞こえて眠った事が分かる。

ライムの周りを黒猫が一周ウロウロして、横で丸くなる。

ガサガサとすまさないと聞こえないほどの小さな音で、耳がピクンと動いた。

パチリと目を開けると、薄暗い闇夜に溶け込んでいるが黒猫にはハッキリと見えた。

ライムと同じような真っ黒なローブを被っている人が5、6人いた。
すぐに人ではないと分かった。

目がある部分が赤く光り、手がある場所には無数の刃物がちらついている。
ライムに向けられている光は無機質だが、殺意を感じる。

揺れる刃物を振り上げられて、すぐに起き上がり胸を蹴り飛ばした。
すぐに飛んで逃げて、倒れたローブの人を見ると顔がなかった。

身体も空気のようになくなり、ローブと刃物だけが残されていた。
これは人ではなく、魔物の類いだろう。

背後から刃物が擦れる音が聞こえて、黒猫の瞳が光った。
身体が大きくなっていき、足も伸びて人の姿になった。

自然と身体も軽くなり、腕を伸ばしてローブの魔物に向かって手をかざす。
水で出来た球体を出現させて放つと、魔物は吹き飛ばされてヒラヒラとローブだけが残った。

同時に三人の魔物達が一斉に攻撃を初めて、地面に触れた。
少し息を吐き、力を込めると地面から伝わる強烈な衝撃波で魔物達が消えた。

ライムは手の甲の紋様のおかげで、魔法類は全て無効化出来るから傷は一つも付いていない。

しかし、少し騒がしくしてしまったのか…眉を寄せていた。
ライムに近付くと、少し涙が流れていてそれを指で拭う。

小さな声で、人の名を呼んでいた…ライムにとっての愛しい人の名を…

会いたいのだろう事は分かるが、今は会わせる事は出来ない。

額に軽く口付けると、ライムはすーすーと再び眠りに付いた。

「ライム、愛してる」

今はそれしか言えない、猫の姿だと会話が出来ないからだ。

この姿を見られるわけにもいかない…自分の目的を果たすまでは…

今日は満月の綺麗な月が空に浮かんでいた。

過去のライムも過去のカイウスもきっとこの空を眺めているだろう。
眺めて、何を思うのか…それとも一緒にいるのだろうか。

今のライムは眠ってしまっているから、満月ら見れないが…明日も明後日も未来を生きている限り美しい空を見る事が出来る。

そして彼も、月を眺めていた……想う事は当然彼の事だ。
彼を守るためにこの過去の世界にやってきた、そして別の目的もあった。

青黒い髪を風が撫でて、とても美しい顔が月に照らされた。

カイウス・エーデルハイド、過去を知り…未来を生きる…ライムの騎士。
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