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過去編・愛らしい黒猫
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「ふがっ」
「…っえ?」
カイトが変な声を出したから、カイトの方を見た。
黒いものはカイトにぶつかり、俺のフードの中に入っていった。
力が緩んでいる今ならカイトを連れて行ける。
思いっきりカイトを引っ張って走り出した。
後ろからカイウスの声が聞こえたけど、心の中で謝り…カイウスの家から離れた場所まで走り続けた。
結局湖しか思いつかず、木の影で足を止めて座り込んだ。
「何すんだ!もう少しだったのに!」
「カイウスの大切な家族を売り飛ばそうとしているようにしか聞こえなかったけど」
「ちっ……その猫、お前のか?俺の顔面蹴りやがって」
「…猫?」
カイトは鼻を押さえて、俺の横を睨んでいた。
横を見ると、毛並みが綺麗な黒猫がいた。
尻尾に大きなリボンが付いていて、尻尾が揺れる度に鈴の音がチリンチリンと鳴っていた。
この子のおかげでカイウスにバレずに済んだ。
ありがとう、と頭を撫でると目を細めてゴロゴロ言っていた。
カイトが後ろからゆっくりと近付いてきて、何をするのか見ていたらいきなり黒猫を掴んで抱き抱えていた。
「…なんだこの猫、男か…イテッ!!」
黒猫はカイトの手を引っ掻いて、暴れて、またカイトの顔を蹴り上げていた。
黒猫は俺のフードの中に入ってきて、くすぐったかった。
カイトが「まさかコイツがリーズナか?」と言っていた。
カイトはリーズナが猫だとは知らないけど、ペットっぽいから疑っていた。
確かに見た目はリーズナみたいだが、リーズナはリボンをしていない。
それに、綺麗な宝石のような真っ赤な瞳だ。
「リーズナではないけど、何処かの飼い猫なのかも」
「飼い主の顔が見てみたいな!!きっと、カイウス・エーデルハイドのような嫌な奴なんだろうな!」
カイトは不貞腐れながら座ってそんな事を言う。
俺はローブを脱いで、カイトに投げつけるとびっくりした声を出した。
カイウスは嫌な奴なんかじゃない!とっても優しいんだから…
猫を優しく抱きしめて、カイトに背を向ける。
黒猫にはちゃんと分かってほしくて「カイウスはかっこよくて強くて、優しいんだよ」と言った。
するとぺろぺろと頬を撫でられて、ちゃんと分かってくれたんだって嬉しかった。
可愛いなぁ…飼い主がいるかもしれないけど、手離したくない。
名残惜しいけど、猫を地面に置いた。
「じゃあ、飼い主のところにおかえり…今日はありがとうね」
そう言って小さく手を振るが、黒猫は動かず俺の周りをウロウロしていた。
「どうしたの?家が分からないのかな」
「おい…俺が悪かった、だから呪い殺さないでくれよ……な?」
「…ぐっ、お…もい」
カイトは俺が怒って呪い殺すと思ってるのか、急に甘えた声を出てきた。
女の人にいつもそう甘えているのかな、知りたくなかった。
後ろから俺に体重を乗せて抱きしめてきて、身長の差もあり凄い重かった。
早く退いてほしくて、カイトが回した腕を掴んだ。
しかし、カイトは猫の蹴りにより地面に倒れた。
猫はカイトに近付いて、バシバシ顔を叩いていた。
「もう大丈夫だよ、ありがとう」
猫は俺をジッと見つめてきて、そのあまりの愛らしさにメロメロになる。
早くお家に帰してあげたいな、よし…探そう!
とはいえ俺の姿は見えないから、飼い猫が居なくなって困っている人を探そう。
カイトは「付き合ってられるか!」と行ってしまった。
地面に落ちていたローブを拾って、着た。
俺が歩くと、猫も着いてきて愛着が湧いてしまう。
ダメだダメだ、この子の幸せは家に帰って本物の飼い主といる事なんだから!!
壁に貼ってある、チラシとかも見逃さないように見ながら進む。
「……はぁ」
何処にも、猫を探している人がいない。
キョロキョロ周りを見ている女性がいたから期待してたんだけど、迷子の子供と再会して行ってしまった。
そもそもこの世界であまり猫を飼っている人がいない。
猫は高貴な存在とされていて、貴族の中でも王族や近しい人の家でしか飼ったりはしない。
野良猫なんて何処を歩いても見かける事はない。
リーズナが精霊の化身で猫の姿なのは高貴な存在だからだ。
だからこの子は野良猫じゃないと思って探したが、王族で飼っている猫が居なくなったら騒がしくなりそうだが…それもなかった。
「君はいったい何処から来たのかな」
猫を抱き上げて、訪ねるけどぺろぺろと俺の鼻先を撫でるだけだった。
リーズナのように人間の言葉は喋れないよな。
結局リーズナもいなくて、俺は湖に戻ってきた。
でも、リーズナが居なくなってカイウスが探しに来るかと思ったけど…街で見かけたカイウスは普通だった。
いつもリーズナは勝手に外出をしているから気にしていないのか、それともリーズナはもう戻ってきたのかな。
リーズナがいないと、過去が変わってしまう…神にとってもあまり望ましくないと思う。
リーズナがいない事でどう変わるのか分からないけど、カイウスのなにかが変わると思う。
神はカイウスを大切に思っているから俺が嫌いなんだ…カイウスが変わるのは良くはないだろう。
やるとしたら……俺、なのかもしれない。
……そうだ、なんでこんな事気付かなかったんだ?
過去の俺を殺せばカイウスに付きまとう奴がいなくなると考えるなら…俺が危ない!
でも、神は俺に直接危害を加えた事がない…それにはなにか理由があるのかもしれない。
カイウスを英雄にするために俺を殺す?本当にそれだけのためにカイウスにやらせるのか?
ギュッと少し強く抱きしめてしまい、慌てて猫を地面に置いた。
不安げに見上げる子の頭を撫でて、横になる。
もう夜遅いな、ご飯もどのくらい食べてなかったっけ。
ぐぅぅ…とお腹が鳴るが食べ物を探しに行く力もない。
今日は歩き疲れたな、でも早くカイウスが助かる方法を見つけ……ないと…
猫が頬に触れて、肉球が気持ちよくて目蓋が重くなった。
目蓋を閉じて、眠りについた。
「…っえ?」
カイトが変な声を出したから、カイトの方を見た。
黒いものはカイトにぶつかり、俺のフードの中に入っていった。
力が緩んでいる今ならカイトを連れて行ける。
思いっきりカイトを引っ張って走り出した。
後ろからカイウスの声が聞こえたけど、心の中で謝り…カイウスの家から離れた場所まで走り続けた。
結局湖しか思いつかず、木の影で足を止めて座り込んだ。
「何すんだ!もう少しだったのに!」
「カイウスの大切な家族を売り飛ばそうとしているようにしか聞こえなかったけど」
「ちっ……その猫、お前のか?俺の顔面蹴りやがって」
「…猫?」
カイトは鼻を押さえて、俺の横を睨んでいた。
横を見ると、毛並みが綺麗な黒猫がいた。
尻尾に大きなリボンが付いていて、尻尾が揺れる度に鈴の音がチリンチリンと鳴っていた。
この子のおかげでカイウスにバレずに済んだ。
ありがとう、と頭を撫でると目を細めてゴロゴロ言っていた。
カイトが後ろからゆっくりと近付いてきて、何をするのか見ていたらいきなり黒猫を掴んで抱き抱えていた。
「…なんだこの猫、男か…イテッ!!」
黒猫はカイトの手を引っ掻いて、暴れて、またカイトの顔を蹴り上げていた。
黒猫は俺のフードの中に入ってきて、くすぐったかった。
カイトが「まさかコイツがリーズナか?」と言っていた。
カイトはリーズナが猫だとは知らないけど、ペットっぽいから疑っていた。
確かに見た目はリーズナみたいだが、リーズナはリボンをしていない。
それに、綺麗な宝石のような真っ赤な瞳だ。
「リーズナではないけど、何処かの飼い猫なのかも」
「飼い主の顔が見てみたいな!!きっと、カイウス・エーデルハイドのような嫌な奴なんだろうな!」
カイトは不貞腐れながら座ってそんな事を言う。
俺はローブを脱いで、カイトに投げつけるとびっくりした声を出した。
カイウスは嫌な奴なんかじゃない!とっても優しいんだから…
猫を優しく抱きしめて、カイトに背を向ける。
黒猫にはちゃんと分かってほしくて「カイウスはかっこよくて強くて、優しいんだよ」と言った。
するとぺろぺろと頬を撫でられて、ちゃんと分かってくれたんだって嬉しかった。
可愛いなぁ…飼い主がいるかもしれないけど、手離したくない。
名残惜しいけど、猫を地面に置いた。
「じゃあ、飼い主のところにおかえり…今日はありがとうね」
そう言って小さく手を振るが、黒猫は動かず俺の周りをウロウロしていた。
「どうしたの?家が分からないのかな」
「おい…俺が悪かった、だから呪い殺さないでくれよ……な?」
「…ぐっ、お…もい」
カイトは俺が怒って呪い殺すと思ってるのか、急に甘えた声を出てきた。
女の人にいつもそう甘えているのかな、知りたくなかった。
後ろから俺に体重を乗せて抱きしめてきて、身長の差もあり凄い重かった。
早く退いてほしくて、カイトが回した腕を掴んだ。
しかし、カイトは猫の蹴りにより地面に倒れた。
猫はカイトに近付いて、バシバシ顔を叩いていた。
「もう大丈夫だよ、ありがとう」
猫は俺をジッと見つめてきて、そのあまりの愛らしさにメロメロになる。
早くお家に帰してあげたいな、よし…探そう!
とはいえ俺の姿は見えないから、飼い猫が居なくなって困っている人を探そう。
カイトは「付き合ってられるか!」と行ってしまった。
地面に落ちていたローブを拾って、着た。
俺が歩くと、猫も着いてきて愛着が湧いてしまう。
ダメだダメだ、この子の幸せは家に帰って本物の飼い主といる事なんだから!!
壁に貼ってある、チラシとかも見逃さないように見ながら進む。
「……はぁ」
何処にも、猫を探している人がいない。
キョロキョロ周りを見ている女性がいたから期待してたんだけど、迷子の子供と再会して行ってしまった。
そもそもこの世界であまり猫を飼っている人がいない。
猫は高貴な存在とされていて、貴族の中でも王族や近しい人の家でしか飼ったりはしない。
野良猫なんて何処を歩いても見かける事はない。
リーズナが精霊の化身で猫の姿なのは高貴な存在だからだ。
だからこの子は野良猫じゃないと思って探したが、王族で飼っている猫が居なくなったら騒がしくなりそうだが…それもなかった。
「君はいったい何処から来たのかな」
猫を抱き上げて、訪ねるけどぺろぺろと俺の鼻先を撫でるだけだった。
リーズナのように人間の言葉は喋れないよな。
結局リーズナもいなくて、俺は湖に戻ってきた。
でも、リーズナが居なくなってカイウスが探しに来るかと思ったけど…街で見かけたカイウスは普通だった。
いつもリーズナは勝手に外出をしているから気にしていないのか、それともリーズナはもう戻ってきたのかな。
リーズナがいないと、過去が変わってしまう…神にとってもあまり望ましくないと思う。
リーズナがいない事でどう変わるのか分からないけど、カイウスのなにかが変わると思う。
神はカイウスを大切に思っているから俺が嫌いなんだ…カイウスが変わるのは良くはないだろう。
やるとしたら……俺、なのかもしれない。
……そうだ、なんでこんな事気付かなかったんだ?
過去の俺を殺せばカイウスに付きまとう奴がいなくなると考えるなら…俺が危ない!
でも、神は俺に直接危害を加えた事がない…それにはなにか理由があるのかもしれない。
カイウスを英雄にするために俺を殺す?本当にそれだけのためにカイウスにやらせるのか?
ギュッと少し強く抱きしめてしまい、慌てて猫を地面に置いた。
不安げに見上げる子の頭を撫でて、横になる。
もう夜遅いな、ご飯もどのくらい食べてなかったっけ。
ぐぅぅ…とお腹が鳴るが食べ物を探しに行く力もない。
今日は歩き疲れたな、でも早くカイウスが助かる方法を見つけ……ないと…
猫が頬に触れて、肉球が気持ちよくて目蓋が重くなった。
目蓋を閉じて、眠りについた。
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