111 / 299
過去編・奪われたリーズナ
しおりを挟む
湖に戻り、俺の考えていた計画が一気にダメになった。
魚を食らう野鳥の群れが大量にいて、魚はほとんど身がないボロボロの状態になっていた。
まぁ、リーズナは野良猫じゃない…魚に釣られてやって来る間抜けではない。
他の方法を考えよう、俺は今幽体だけど死んだらどうなるんだろう。
死ぬ覚悟で神に戦いを挑む事しか頭になかった。
死にたいわけではないし、勝てる自信もないけど他に思いつかない。
地面に座り、膝を曲げて目の前でキラキラと光る湖の美しさを見つめる。
「……おい」
「…はぁ」
「おい、聞いているのか?」
「…俺はどのくらい死ねば勝てるのだろう」
「おい、悪霊!聞いているのか!?」
耳元で大きな声を出されて、頭がキーンと耳鳴りがした。
耳を押さえてガードしながら、横を見るとそこに居たのはカイトだった。
カイトは眉を寄せて俺を睨んでいて、俺はカイトには悪いが…今は忙しいと不機嫌になっていた。
「後にして」とちょっと冷たく言うと、突然カイトに胸ぐらを掴まれて驚いていた。
そんなに怒ってしまったのだろうか、びっくりして目を丸くする。
しかし、カイトの考えている事は予想もしていなかった。
「お前のせいで俺は今日不幸だったんだよ!さっさと呪いを解け!!」
「……え、な…何の事?」
「とぼけんな!あの野郎には朝に会うし、道を歩いていておばちゃんに水をぶっかけられるし、靴履いてるのにさっき足の小指ぶつけたぞ!!」
そういえば、カイト…なんか髪がいつものセットした感じじゃなくてぺったりしていると思っていた。
でも、俺は何もしていないから…ただ運が悪かっただけではないのかな。
でも俺が悪霊だと思っているから、絶対俺のせいだと思っている。
そんな力はないと言っても、聞かないだろうし…力がない証拠って聞かれたら証明するのは難しいな。
カイトは「成仏させないからか、そうなのか?」と言っていた。
成仏って、多分俺何しても成仏なんてしないぞ。
「望みはなんだ」
「……望み?」
「また魚か?」
「あ、いや…もう魚はいいよ」
「じゃあなんだ!なにがほしいんだ!」
「リーズナ?」
とっさにリーズナの名前を言ってしまい、慌てて口を自分の両手で塞いだ。
リーズナが今ほしいけど、そんな事言っても仕方ないよな。
カイトはリーズナが何なのか分からないのか首を傾げていた。
カイウスはリーズナの話を他人にしないからリーズナの事を知っている人は限られている。
カイトは「りーずなってなんだ?おい、言え!!言え!!」と俺の肩を乱暴に揺すっていた。
カイトも呪いを解いてもらうために必死なのは分かるが、具合が悪くなる。
俺は耐えられなくなり、リーズナはカイウスのペットだと教えてくれた。
「…カイウス・エーデルハイドのペット?」
「……う、ん……でも無理だと思うからいいよ」
「お前、バカにしてるのか?」
「そんなつもりは…ごめんなさい」
「俺がお前の前に持ってきたら、呪いを解くんだよな」
いや、誰にもリーズナは捕まえられない…だって人ではない神がリーズナを連れ去ったから…
それを言おうとしたら、カイトは走って行ってしまった。
カイトが行く場所はきっとカイウスの屋敷だろう。
俺は見えないから自由に入れるが、カイトはいくら王族とはいえ自由に入れるのか?
カイトが心配で、俺も行こうと走り出した。
後ろからチリンチリンと音が聞こえた気がしたがカイトの事で頭がいっぱいで、確認はしなかった。
屋敷近くに行くと、カイトはやはり入り口で使用人達に止められていた。
俺は近くの木陰に隠れて、様子を伺っていた。
王族だから強く拒めないのか、扱いに困ってきた。
「ちょっとリーズナっていうペットを見せてもらうだけだろ!」
「で、ですが…カイ様が帰ってきてからでないと…」
「いいだろ!俺は王家の人間だぞ!!」
物凄く威張っていて、そんな頼み方じゃ無理に決まっている。
カイウスには絶対に頼みたくないという意思も感じる。
このままだといろんな人に迷惑掛けるから、カイトを止めようと木陰から出ようとした。
しかし「何をしているんだ」という声を聞き、再び木陰に引っ込んだ。
「か、カイウス・エーデルハイド…」
「どうかしましたか?カイト様」
カイウスだ、ギュッと胸が苦しくなる。
今すぐ駆け寄って抱きしめたいけど、混乱してしまうかもしれない。
だってこの時の俺って多分学校に行っている時間だから…
カイトは直球に「リーズナを連れてこい!」と言っていた。
カイウスは何故カイトがリーズナを知ってるんだという顔をしていた。
そうか、まだカイウスは部屋に戻っていないからリーズナが部屋に居ないって知らないのか。
「…用件は、それだけ…ですか?」
「なにか問題があるのか?」
「いえ、でも何故リーズナを…」
「欲しいやつがいるからに決まってるだろ!じゃないと俺が…」
カイト!そこまでは正直に言わなくていい!
その言葉にカイウスは一気にカイトを警戒している。
カイトのその言葉は、リーズナを知らない奴に売るって言っているようなものだろ。
カイウスは「ダメです、お引き取りください」と言っていた。
怒らせてしまったようだ、でもカイトも怒るのはちょっと違うぞ。
これ以上見てられず、深くフードを被りカイトに向かって小走りに走っていった。
カイトの腕を掴み、引っ張るがビクともしない。
カイウスに俺の顔を見られる前にどうにかしないと…
「も、もういいって」
「なにがいいんだ!アイツがいないとお前が成仏しないだろ!!」
「……お前がカイト様に頼んだのか?」
カイトと小声で話していたが、近くにいたカイウスには聞こえたようだ。
リーズナを誘拐しようとしているのは俺だと思われてしまった。
俺はただ、リーズナと話すだけでいいのに。
カイウスが俺に向かって手を伸ばしてきて、まさかフードを取ろうとしているんじゃ…と緊張する。
カイトを引っ張っても、リーズナを手に入れるまで動かない気なのか!?
せめてもの抵抗で、フードの先を掴んで離さない。
魚を食らう野鳥の群れが大量にいて、魚はほとんど身がないボロボロの状態になっていた。
まぁ、リーズナは野良猫じゃない…魚に釣られてやって来る間抜けではない。
他の方法を考えよう、俺は今幽体だけど死んだらどうなるんだろう。
死ぬ覚悟で神に戦いを挑む事しか頭になかった。
死にたいわけではないし、勝てる自信もないけど他に思いつかない。
地面に座り、膝を曲げて目の前でキラキラと光る湖の美しさを見つめる。
「……おい」
「…はぁ」
「おい、聞いているのか?」
「…俺はどのくらい死ねば勝てるのだろう」
「おい、悪霊!聞いているのか!?」
耳元で大きな声を出されて、頭がキーンと耳鳴りがした。
耳を押さえてガードしながら、横を見るとそこに居たのはカイトだった。
カイトは眉を寄せて俺を睨んでいて、俺はカイトには悪いが…今は忙しいと不機嫌になっていた。
「後にして」とちょっと冷たく言うと、突然カイトに胸ぐらを掴まれて驚いていた。
そんなに怒ってしまったのだろうか、びっくりして目を丸くする。
しかし、カイトの考えている事は予想もしていなかった。
「お前のせいで俺は今日不幸だったんだよ!さっさと呪いを解け!!」
「……え、な…何の事?」
「とぼけんな!あの野郎には朝に会うし、道を歩いていておばちゃんに水をぶっかけられるし、靴履いてるのにさっき足の小指ぶつけたぞ!!」
そういえば、カイト…なんか髪がいつものセットした感じじゃなくてぺったりしていると思っていた。
でも、俺は何もしていないから…ただ運が悪かっただけではないのかな。
でも俺が悪霊だと思っているから、絶対俺のせいだと思っている。
そんな力はないと言っても、聞かないだろうし…力がない証拠って聞かれたら証明するのは難しいな。
カイトは「成仏させないからか、そうなのか?」と言っていた。
成仏って、多分俺何しても成仏なんてしないぞ。
「望みはなんだ」
「……望み?」
「また魚か?」
「あ、いや…もう魚はいいよ」
「じゃあなんだ!なにがほしいんだ!」
「リーズナ?」
とっさにリーズナの名前を言ってしまい、慌てて口を自分の両手で塞いだ。
リーズナが今ほしいけど、そんな事言っても仕方ないよな。
カイトはリーズナが何なのか分からないのか首を傾げていた。
カイウスはリーズナの話を他人にしないからリーズナの事を知っている人は限られている。
カイトは「りーずなってなんだ?おい、言え!!言え!!」と俺の肩を乱暴に揺すっていた。
カイトも呪いを解いてもらうために必死なのは分かるが、具合が悪くなる。
俺は耐えられなくなり、リーズナはカイウスのペットだと教えてくれた。
「…カイウス・エーデルハイドのペット?」
「……う、ん……でも無理だと思うからいいよ」
「お前、バカにしてるのか?」
「そんなつもりは…ごめんなさい」
「俺がお前の前に持ってきたら、呪いを解くんだよな」
いや、誰にもリーズナは捕まえられない…だって人ではない神がリーズナを連れ去ったから…
それを言おうとしたら、カイトは走って行ってしまった。
カイトが行く場所はきっとカイウスの屋敷だろう。
俺は見えないから自由に入れるが、カイトはいくら王族とはいえ自由に入れるのか?
カイトが心配で、俺も行こうと走り出した。
後ろからチリンチリンと音が聞こえた気がしたがカイトの事で頭がいっぱいで、確認はしなかった。
屋敷近くに行くと、カイトはやはり入り口で使用人達に止められていた。
俺は近くの木陰に隠れて、様子を伺っていた。
王族だから強く拒めないのか、扱いに困ってきた。
「ちょっとリーズナっていうペットを見せてもらうだけだろ!」
「で、ですが…カイ様が帰ってきてからでないと…」
「いいだろ!俺は王家の人間だぞ!!」
物凄く威張っていて、そんな頼み方じゃ無理に決まっている。
カイウスには絶対に頼みたくないという意思も感じる。
このままだといろんな人に迷惑掛けるから、カイトを止めようと木陰から出ようとした。
しかし「何をしているんだ」という声を聞き、再び木陰に引っ込んだ。
「か、カイウス・エーデルハイド…」
「どうかしましたか?カイト様」
カイウスだ、ギュッと胸が苦しくなる。
今すぐ駆け寄って抱きしめたいけど、混乱してしまうかもしれない。
だってこの時の俺って多分学校に行っている時間だから…
カイトは直球に「リーズナを連れてこい!」と言っていた。
カイウスは何故カイトがリーズナを知ってるんだという顔をしていた。
そうか、まだカイウスは部屋に戻っていないからリーズナが部屋に居ないって知らないのか。
「…用件は、それだけ…ですか?」
「なにか問題があるのか?」
「いえ、でも何故リーズナを…」
「欲しいやつがいるからに決まってるだろ!じゃないと俺が…」
カイト!そこまでは正直に言わなくていい!
その言葉にカイウスは一気にカイトを警戒している。
カイトのその言葉は、リーズナを知らない奴に売るって言っているようなものだろ。
カイウスは「ダメです、お引き取りください」と言っていた。
怒らせてしまったようだ、でもカイトも怒るのはちょっと違うぞ。
これ以上見てられず、深くフードを被りカイトに向かって小走りに走っていった。
カイトの腕を掴み、引っ張るがビクともしない。
カイウスに俺の顔を見られる前にどうにかしないと…
「も、もういいって」
「なにがいいんだ!アイツがいないとお前が成仏しないだろ!!」
「……お前がカイト様に頼んだのか?」
カイトと小声で話していたが、近くにいたカイウスには聞こえたようだ。
リーズナを誘拐しようとしているのは俺だと思われてしまった。
俺はただ、リーズナと話すだけでいいのに。
カイウスが俺に向かって手を伸ばしてきて、まさかフードを取ろうとしているんじゃ…と緊張する。
カイトを引っ張っても、リーズナを手に入れるまで動かない気なのか!?
せめてもの抵抗で、フードの先を掴んで離さない。
156
お気に入りに追加
8,302
あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた
しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される???
家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。
R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。
現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。閲覧ありがとうございます。
(第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)
(第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる