冷淡騎士に溺愛されてる悪役令嬢の兄の話

雪平@冷淡騎士2nd連載中

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過去のカイウス

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ローズが女装するきっかけは確か、カイウスが関係していたんだよな。

ローズの両親はカイウスの家に仕える使用人だった。
ローズもその時カイウスに出会った、勿論男の姿で。
その時のカイウスはまだ力に目覚める前で目を隠していなかった。

友人関係だったが、カイウスの力が現れてしばらく離れていた。

そしてカイウスが神の子だと言われるようになり、いろんな家の貴族達がカイウスとうちの娘をと結婚を迫っていた。
俺の妹もその中に入っていたんだろう、カイウスは誰にも見向きしなかった。

ローズの両親は庶民だったが、カイウスがほしかった。
でも、息子しかいなくてローズに女の子の格好をさせてカイウスのメイドとしてエーデルハイド家に雇われた。
とはいえ、もしカイウスの婚約者になれたとしても男だといずれバレてしまう。

でも、その時庶民だったローズの父親の副業が上手くいき…一気に貴族の仲間入りをした。
ローズの母親のお腹には待望の女の子の赤ちゃんがいた。

きっと、そこまで計算されていたんだろう…女の子を産むまでの繋ぎにローズを使った。
他の女の子にカイウスを取られたら意味がないからな、きっとローズは妹がそれなりの年齢になったら身を引いたりするつもりなんだろう。

ローズがどう思っているのかは分からないが、酷い親だと思う。
カイウスがほしいから、実の息子の意思を無視して繋ぎに使うなんて…

この時のローズは女の子の格好が嫌だったんだなと、扉の前にいたローズを見て思った。
でも、カイウスは目が見えないからローズの格好が分からない。
だからちゃんと声でローズを見つけた、ローズはそれが嬉しかったんだろう。

ローズがカイウスの事を大切に思うのは、そういう過去があってこそなんだよな。

さっきの泣き顔はどこへやら、ローズは楽しげにカイウスとお話していた。

俺は、これからどうしようか考える…あまりカイウスといると未来が変わってしまうかもしれない。
とはいえ、元の場所に帰れる方法が思い付かない。
俺、本当に戻れるのかな…もしかしたら一生帰れないんじゃ…

そう思うと、顔が真っ青になっていく……嫌だ、今のカイウスに会えなくなるなんて…

俺は慌てて、扉の入り口に向かって走っていった。
もしかしたら、俺が最初に立っていた場所を調べたらなにかあるんじゃないかと思った。

昔のカイウスもカイウスだが、俺はこの世界の俺じゃない。
俺がいるべき場所は、あの人のいる世界だけだ!







「ライム、大丈夫か?」

「……あれ、カイウス成長した?」

「まだ夢の中なのか?」

カイウスは俺の顔を覗き込んできた、やっぱり美形だなぁ。
俺は外で倒れていたみたいで、すぐに帰ってきたカイウスにより寝室に運ばれた。

帰ってきたんだ、カイウスがいるこの場所に…

目元が熱くなる、勢いよくカイウスを抱きしめるとそのままベッドに押し倒した。

カイウスは俺がなんでこんな事をしているのか、分からなかったが…何も言わず背中を撫でられた。

そして、カイウスの心地いい手でうとうとと眠くなってきた。
カイウスの腕に抱かれて、カイウスの服をちょっとだけ掴んで眠りについた。

俺がいた事、今のカイウスは覚えているのかな…正確には俺ではなく精霊のフリをした俺だけど…
それともあれは、ただの夢だったのだろうか。

昔のカイウスは昔の俺に会えたのかな?…ずっと好きでいてくれて、ありがとう…カイウス。






目が覚めたら、目の前にカイウスはいなかった。
…というか、真っ黒ななにかが見えるんだけど…

「リーズナ、何してるんだ」

あ、カイウスの声だ…でも目の前が真っ黒で何も見えない。
リーズナって呼んでるからリーズナなんだろうけど…

そう思っていたら、突然視界がクリアになった。

カイウスがリーズナを抱き上げていて、だらんと黒い尻尾が垂れていた。
そうか、俺の目を覆っていたのは黒い尻尾だったんだ。

カイウスは「朝食出来てる」と言い、部屋を出ていった。
俺も起き上がり、眠たい目を擦りながらモゾモゾとベッドから出る。

昨日は不思議な体験をしたからだろうか、なんか眠いな。

床に寝転がると、眠気が襲ってきて仰向けになる。
リーズナが俺の顔色を伺っている、逆さまなリーズナがちょっと可笑しくてヘラヘラと笑う。

『お前、大丈夫か?』

「…へ?なにが?」

『体調悪そうだぞ』

体調、うーん…そんな事は全然ないんだけど…ただちょっと眠いかな。

リーズナが部屋から出ていって、一人だけになった。
大きな欠伸をして、眠くて目蓋が閉じそうだ。

部屋に誰かが入ってきたドアの音が聞こえる。
俺は抱き抱えられて、前髪に触れていた…カイウスだろうか。
重たい目蓋を必死に開けて、目の前を見ると眉を寄せたカイウスがいた。

「ライム、聞こえるか?」

「…ん」

『お前、気付かなかったのか?』

「昨日はまだ普通だったんだ、悪い…ライム、早く気付いてやれていれば」

カイウスは何を言っているんだろう、眠いだけなのに大袈裟だなぁ。

俺の額に手を乗せて、その手が暖かくなっていく。
気持ちいいな、もっと…触ってほしい…カイウス。
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