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ミロの話・前編
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子供の頃から僕は周りとは少し違っていた。
皆が憧れるヒーローには全く興味がなかった。
皆が怯えて怖がる悪役に憧れを抱いていた。
神の子だか何だか知らないけど、そんなものよりローベルト卿に憧れていた。
同じクラスにローベルト卿の息子がいると知っていて、正直嬉しかった…憧れの人の息子も僕にとっての憧れだった。
でも、いざ蓋を開けて見てみると…クラスメイト達にいじめられている情けない奴だった。
血は一緒でもやっぱりローベルト卿ではないのかと失望した。
だからいじめられているのを見ても、見て見ぬふりをした…周りと同じく冷めた目で見ていた。
でもそんなある日、相変わらずいじめていた奴らに反撃する姿を目の当たりにした。
その姿を見て、やはりローベルト卿の息子だと喜びに任せて声を掛けてしまった。
ライムさんは戦う勇気があるのに、イマイチ悪役になりきれていないと感じた。
だから僕はライムさんのために裏で細工して、周りからライムさんが悪役だと認識させた。
でもいじめに慣れているからか、ライムさんはあまり変わっていなかった。
ローベルト卿にライムさんを立派な悪に育てるという約束をしてローベルト一族の仲間入りした。
一族の中でもどうしようもない落ちこぼれらしくて、悪魔の力の持ち腐れだと言っていた。
悪魔は精霊王を唯一倒せるであろう存在、今で言うとカイウスを倒せるのはライムさんだけだ。
ライムさんは自分が特別だと気付いていない、本当に自分がピンチにならないと何も分からないのだろう。
だから僕はローベルト卿から初めてもらった仕事で、それを実行しようと思った。
僕自身悪役に憧れてはいるが、人を殺した事はなかった。
自分に出来るか分からないが、僕にはある強い味方があった。
最近ローベルト一族の動きが活発化したのもこれのおかげだ…この薬があれば…僕はもう弱い人間じゃなくなる。
周りの奴らにバカにされずに済むんだ、ローベルト一族のために僕は力を手にした。
ライムさんを気絶させて、夜の街まで運んだ。
普段なら重いと感じるだろうが、今は綿のようにフワフワしていて全く体重を感じなかった。
これもあの薬のおかげだ、凄い…凄いぞ…これで僕は…
ライムさんをそこら辺に置いて、ローベルト卿に言われた事を思い出す。
ライムさんの前で人を殺せと言っていた、人の死を目の当たりにすればライムさんの平和ボケの考えもなくなるだろうという事だ。
僕はターゲットである男を探し出し逃げられないように足の骨を折った。
自分より身長が高いのに弱い、こんなに人間は弱かったのか。
軽く力を入れただけで足の骨は折れて無様にもがいていた。
最初に喉を潰したから叫び声は上げられない、最初にそうしろとローベルト卿に教わった通りにした。
動かない足を掴んで、引きずりライムさんの前まで運んだ。
ライムさんに見せようと、身体を揺するが全く起きない。
イライラしていたが、今ライムさんを殺したらローベルト卿に怒られてしまうかもしれない。
仕方ない、死体を見せるだけでもいいかと思い男を殺そうと思って頭を掴んで壁に打ち付けた。
ローベルト卿にすぐに殺さず痛めつけてから殺せと言われているからそうしようと思った。
だけど男は頭から血を流して動かなくなってしまった。
あれ?力加減したつもりだったんだけど…死んじゃったの?
僕が…この手で…人を殺した手の感触が離れない。
息が荒くなり、テンションも上がってきた……もしかしたら僕は最強なんじゃないか?
隣に眠る脳天気なライムを眺めて、なんで僕はこんな弱い奴に憧れていたんだろうと急に頭が冷めていく。
まぁいいや、最後はナイフで豪快に血飛沫で飾ろうと思ってズボンのポケットに手を入れた。
しかし、目当てのものが見当たらなくて両方のポケットを探ると見当たらない。
もしかして運ぶ時に落としたのか?あのナイフにはローベルト一族の家紋が刻まれていた…落とすのはさすがにマズイ。
慌ててナイフを探しにその場を後にした。
ナイフはやはり男を見つけた場所に落ちていて、拾ってすぐに元の場所に戻ると動く人影が見えた。
誰かに見つかったのかと影からこっそり様子を見る。
しかしそれはライムさんで、起きて男になにか話しかけていてすぐに僕がいる方向に走っていった。
暗がりで、真っ直ぐしか見ていないから僕に気付く事はなかった。
ライムさんがいなくなり、男のところにすぐに向かった。
「まだ生きていたのか」
すぐにナイフを振り上げて、今度は殺し損ねないように何度も何度も刺し殺した。
僕はライムさんが来る前に物陰に隠れて様子を見る事にした。
ライムさんは誰かを連れてきていて、死体を発見した。
バカだな、こんなところ誰かに見られたら真っ先に犯人だって疑われるのに…もしかして、本当に助かると思ってたの?
ライムさんの正義感に嫌悪感を抱いて、眉を寄せた。
仕方ない、殺すターゲットではないが目撃者だ…殺してもローベルト卿なら許してくれるだろう。
僕は手袋で先に気絶させてから、ライムさんの前で殺す事にした。
こんな面倒な事、ライムさんのためにやっているのにあの人は全然分かっていなかった。
目撃者がいなければ誰が殺したかなんて分からないのに、僕を止めた…僕より弱いくせに、僕の邪魔をした。
それがとても許せなかった、グッと苛立ちを抑えてその日は帰る事にした。
この人は自分が何をしたのかまだ分かっていない…分からせるためにわざと目撃者を残した。
目撃者が生きていれば、きっと騎士団の誰かに犯人の事を教えるだろう。
僕を知らない目撃者は必ずライムさんを犯人だと思うだろう。
ライムさんは一度痛い目に見れば、自分がどんな愚かな事をしたか分かるだろう。
翌日、僕の気分はあまりよくはなかった……薬の副作用だろうか、でもあの力を手に出来るなら僕は多少具合が悪くなっても構わない。
僕は初めてライムさんを殴った、お仕置きとは違う…肉がぶつかる感触がした。
ライムさんは鼻血を出していた、僕に口出しをするからこうなるんだ……弱いくせに…弱いくせに…
僕がライムさんの代わりにカイウスを殺してローベルト一族をこの帝国で一番の権力者にしてあげます。
身体が言う事を聞かず、何を喋っているか自分でも分からなかった。
でも、こんな気持ちよくて楽しい気分は初めてだった?
すぐに駆け付けてきた兵士の人達が駆け寄り、意識を失った。
「やはりこれはまだ早かったか」
「コイツはもう使い物にならないだろう」
「最後の仕事を与えて処分するか」
なにか聞こえているが、目蓋が重すぎて目が開かなかった。
皆が憧れるヒーローには全く興味がなかった。
皆が怯えて怖がる悪役に憧れを抱いていた。
神の子だか何だか知らないけど、そんなものよりローベルト卿に憧れていた。
同じクラスにローベルト卿の息子がいると知っていて、正直嬉しかった…憧れの人の息子も僕にとっての憧れだった。
でも、いざ蓋を開けて見てみると…クラスメイト達にいじめられている情けない奴だった。
血は一緒でもやっぱりローベルト卿ではないのかと失望した。
だからいじめられているのを見ても、見て見ぬふりをした…周りと同じく冷めた目で見ていた。
でもそんなある日、相変わらずいじめていた奴らに反撃する姿を目の当たりにした。
その姿を見て、やはりローベルト卿の息子だと喜びに任せて声を掛けてしまった。
ライムさんは戦う勇気があるのに、イマイチ悪役になりきれていないと感じた。
だから僕はライムさんのために裏で細工して、周りからライムさんが悪役だと認識させた。
でもいじめに慣れているからか、ライムさんはあまり変わっていなかった。
ローベルト卿にライムさんを立派な悪に育てるという約束をしてローベルト一族の仲間入りした。
一族の中でもどうしようもない落ちこぼれらしくて、悪魔の力の持ち腐れだと言っていた。
悪魔は精霊王を唯一倒せるであろう存在、今で言うとカイウスを倒せるのはライムさんだけだ。
ライムさんは自分が特別だと気付いていない、本当に自分がピンチにならないと何も分からないのだろう。
だから僕はローベルト卿から初めてもらった仕事で、それを実行しようと思った。
僕自身悪役に憧れてはいるが、人を殺した事はなかった。
自分に出来るか分からないが、僕にはある強い味方があった。
最近ローベルト一族の動きが活発化したのもこれのおかげだ…この薬があれば…僕はもう弱い人間じゃなくなる。
周りの奴らにバカにされずに済むんだ、ローベルト一族のために僕は力を手にした。
ライムさんを気絶させて、夜の街まで運んだ。
普段なら重いと感じるだろうが、今は綿のようにフワフワしていて全く体重を感じなかった。
これもあの薬のおかげだ、凄い…凄いぞ…これで僕は…
ライムさんをそこら辺に置いて、ローベルト卿に言われた事を思い出す。
ライムさんの前で人を殺せと言っていた、人の死を目の当たりにすればライムさんの平和ボケの考えもなくなるだろうという事だ。
僕はターゲットである男を探し出し逃げられないように足の骨を折った。
自分より身長が高いのに弱い、こんなに人間は弱かったのか。
軽く力を入れただけで足の骨は折れて無様にもがいていた。
最初に喉を潰したから叫び声は上げられない、最初にそうしろとローベルト卿に教わった通りにした。
動かない足を掴んで、引きずりライムさんの前まで運んだ。
ライムさんに見せようと、身体を揺するが全く起きない。
イライラしていたが、今ライムさんを殺したらローベルト卿に怒られてしまうかもしれない。
仕方ない、死体を見せるだけでもいいかと思い男を殺そうと思って頭を掴んで壁に打ち付けた。
ローベルト卿にすぐに殺さず痛めつけてから殺せと言われているからそうしようと思った。
だけど男は頭から血を流して動かなくなってしまった。
あれ?力加減したつもりだったんだけど…死んじゃったの?
僕が…この手で…人を殺した手の感触が離れない。
息が荒くなり、テンションも上がってきた……もしかしたら僕は最強なんじゃないか?
隣に眠る脳天気なライムを眺めて、なんで僕はこんな弱い奴に憧れていたんだろうと急に頭が冷めていく。
まぁいいや、最後はナイフで豪快に血飛沫で飾ろうと思ってズボンのポケットに手を入れた。
しかし、目当てのものが見当たらなくて両方のポケットを探ると見当たらない。
もしかして運ぶ時に落としたのか?あのナイフにはローベルト一族の家紋が刻まれていた…落とすのはさすがにマズイ。
慌ててナイフを探しにその場を後にした。
ナイフはやはり男を見つけた場所に落ちていて、拾ってすぐに元の場所に戻ると動く人影が見えた。
誰かに見つかったのかと影からこっそり様子を見る。
しかしそれはライムさんで、起きて男になにか話しかけていてすぐに僕がいる方向に走っていった。
暗がりで、真っ直ぐしか見ていないから僕に気付く事はなかった。
ライムさんがいなくなり、男のところにすぐに向かった。
「まだ生きていたのか」
すぐにナイフを振り上げて、今度は殺し損ねないように何度も何度も刺し殺した。
僕はライムさんが来る前に物陰に隠れて様子を見る事にした。
ライムさんは誰かを連れてきていて、死体を発見した。
バカだな、こんなところ誰かに見られたら真っ先に犯人だって疑われるのに…もしかして、本当に助かると思ってたの?
ライムさんの正義感に嫌悪感を抱いて、眉を寄せた。
仕方ない、殺すターゲットではないが目撃者だ…殺してもローベルト卿なら許してくれるだろう。
僕は手袋で先に気絶させてから、ライムさんの前で殺す事にした。
こんな面倒な事、ライムさんのためにやっているのにあの人は全然分かっていなかった。
目撃者がいなければ誰が殺したかなんて分からないのに、僕を止めた…僕より弱いくせに、僕の邪魔をした。
それがとても許せなかった、グッと苛立ちを抑えてその日は帰る事にした。
この人は自分が何をしたのかまだ分かっていない…分からせるためにわざと目撃者を残した。
目撃者が生きていれば、きっと騎士団の誰かに犯人の事を教えるだろう。
僕を知らない目撃者は必ずライムさんを犯人だと思うだろう。
ライムさんは一度痛い目に見れば、自分がどんな愚かな事をしたか分かるだろう。
翌日、僕の気分はあまりよくはなかった……薬の副作用だろうか、でもあの力を手に出来るなら僕は多少具合が悪くなっても構わない。
僕は初めてライムさんを殴った、お仕置きとは違う…肉がぶつかる感触がした。
ライムさんは鼻血を出していた、僕に口出しをするからこうなるんだ……弱いくせに…弱いくせに…
僕がライムさんの代わりにカイウスを殺してローベルト一族をこの帝国で一番の権力者にしてあげます。
身体が言う事を聞かず、何を喋っているか自分でも分からなかった。
でも、こんな気持ちよくて楽しい気分は初めてだった?
すぐに駆け付けてきた兵士の人達が駆け寄り、意識を失った。
「やはりこれはまだ早かったか」
「コイツはもう使い物にならないだろう」
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