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突然の訪問者

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「あの野良ネコ、何処に行った…?」

ミロはリーズナを探すためにキョロキョロ部屋中を探すが、リーズナは何処にもいなかった。

いや、俺からは見える…リーズナは窓の前にいるがミロには見えていないようだ。

神様が精霊を見えるように出来るなら、リーズナは精霊の化身だから逆に見えなく出来るのかもしれない。
リーズナを捕まえる事は出来ないようだから、俺は掃除した。

昼飯がダメになったから昼飯は抜きだとミロが言った。
惜しいとは思わないからいいけど、また夕食に変な料理を出されるのは嫌だ。

だとしたら、厨房を貸してもらえば自分の食事くらい自分で作る。

「厨房貸してもらえば自分で作るよ」

「だ、ダメです!今日は屋敷の中は許されましたが…本当は悪魔の子がうろつくと皆嫌がってしまうんです」

「………」

そんな事言われたら、無理に言えなくなってしまう。
人に嫌がられる事はしたくない、食事を我慢するしかないか。

リーズナは窓から俺の肩に移動して耳元で『お前がアレを食わなくていい方法がある』
と言っていた。

その方法は分からないが、リーズナが言うなら信じてみよう。

俺はミロに分かったと言って、ミロは部屋から出ていった。
これから家庭教師が来るからだろう、俺は机に勉強道具を広げて準備した。

リーズナが机に乗り、興味津々で教科書を眺めていた。

家庭教師が部屋にやってきて、いつもの勉強が始まる。

一問だけ間違えると、家庭教師が持っている棒で手を叩かれた。
顔を歪めて痛みに堪えていると、何故か何もしていない筈の家庭教師が「いてぇ!!」と大きな声を出していた。

驚いて家庭教師の方を見ると、棒を持つ手をブンブン振ってなにかを振り払おうとしていた。
確かになにかがぶら下がっているのが見えて、それが家庭教師から離れた。

離れたのが見えていないのか、まだ腕を振っている。

リーズナが机の上に乗ってフンッと鼻息を荒くしていた。

「…リーズナ」

『体罰する奴は痛みをしらないからな!教師なら手じゃなくて生徒が分かるように教えるのが教師だろ!』

「ありがとう」

リーズナは俺のためにやってくれて、怒ってくれて嬉しかった。
頭を撫でると、そっぽ向いてしまったが微笑ましく感じた。

家庭教師は腕を振るのをやめて、俺の方に歩いてきた。
そして、流れるように胸ぐらを掴まれて椅子から引きずり下ろされた。

「お前がなにかしたのか!?」と怒りを露わにしていた。

リーズナは見えないから、俺がしたと思うよな。

「……俺は、貴方に触れてもいません」

「じゃあ誰がやったと言うんだ!!この場には俺とお前しかいないだろ!!」

「…そんな事、言われても…」

俺は嘘が上手くないから、はぐらかすように言った。
リーズナの事言えるわけないだろ、俺を助けてくれたんだから…

俺がやったなんて言ったら殴られるだろうし、リーズナが自分のせいだと責めるかもしれない。
だからはぐらかすしかないんだが、これも家庭教師の怒りを買ってるような気がする。

誰かも犯人が分からないなら俺を犯人にすればいいという考えが透けて見える。

手を上げて殴ろうとしているところを、リーズナが飛びかかり…また手を噛まれていた。

痛いと騒いでいて、その騒ぎになにかあったかと兵士達が部屋にやってきた。

なんか、大事になってしまったような気がする。

「おい!どうしたんだ!!」

「コイツ、コイツが変な力で攻撃してきて…」

『はぁ!?ライムにそんな力あるわけねぇだろ!バカかコイツ!!』

リーズナの言葉は当然届く事はなく、兵士達が剣を俺に向けた。

確かにリーズナの言う通り、俺に力はないが悪魔の子だからそちらを信じるのだろう。
抵抗しない方がいいと思い、両手を上げるとビクッと反応していた。
だから何もしないって…降参のポーズなんだけど…

ゆっくり俺に近付く兵士にリーズナが向かおうとしたから、リーズナの方を見て首を横に振った。
さすがに剣を持つ相手に向かったら怪我をしてしまう、いくらリーズナが強くても…

「おい、何処を見ている」

「い、いえ…何処も…」

「次やったら牢獄行きだからな」

そう言って兵士達は部屋を出ていき、家庭教師も変な力に怯えて部屋を出ていった。

俺とリーズナだけが部屋に残されて、嵐が去りホッとした。
勉強はダメになったけど、予習復習なら一人で出来る。

机に向かい、勉強を始めるとリーズナが覗き込んできた。
「その数式はこっちの方が分かりやすいぞ」と言っていた。

それをやると、確かに家庭教師が前に教えられたやり方よりこっちの方が早くに解ける。

「凄い分かりやすい」

「まぁな、なんせカイの家庭教師をやってたからな!」

そうだったんだ、ゲームで知らなかった裏話が知れて嬉しい。
なるほど、だから教え方が上手いのか…リーズナは器用に口でペンを咥えて書いていた。

リーズナと一緒に勉強していると、ドアが開いてミロがやってきた。

午後から学校に行っていたミロは疲れた顔していた。

俺はただただ羨ましかった、学校に行けるだけで羨ましいのに愚痴を言っていた。

俺が居なくなったから、学校の生徒達は今度はミロを悪者にしているらしい。

ちょっと可哀想だと思うが、学校であんなに悪目立ちすれば当然か。

「ライム様が居なくなったと思いやがって、ライム様は皆に怯えられる存在であるべきなのに」

「嫌だよ、そんなの」

「なんでですか!?こんな素晴らしい力があるのに!宝の持ち腐れですよ!!」

俺の腕を掴んで、強く力説していた…素晴らしい力……カイウスの力になる事に関しては素晴らしい力だと思う。
でも、悪魔の力だと見せびらかすための力という事なら宝でも何でもない。

俺はミロの手を外して、背中を向けた…さてと、お風呂入ってもう寝よう。

そう思っていたら、ミロに手を掴まれて驚いた。

俺が気付くより先にリーズナがさっきのようにミロの手に噛み付いた。
ダメだリーズナ!ミロの手にはあのお仕置用の手袋をしているんだ!

俺の腕を掴んでいる方には手袋をしていないけど、噛み付くのは難しいからもう片方に噛み付いたみたいだ。
でもそっちの方には手袋がしてあり、リーズナは小さな声を上げた。

慌ててリーズナを抱えようとしたが、グイグイとミロに腕を引かれて部屋を出た。

何処に行くのか分からず、そのままミロに引きずられていく。

「俺、部屋に戻んないと…」

「なんでですか!?」

「……いや、もう遅いし…」

「大丈夫ですから!!」

なにが大丈夫なんだ?リーズナは大丈夫ではない。
いくら見えないとしても、俺はリーズナの安否確認がしたいだけなんだ。

でもリーズナの事を言ったらリーズナがバレるから言えない。

抵抗のつもりでミロと逆方向を向いたら、ミロがチッと舌打ちしていた。
そして俺の首筋に手袋の手が触れて、バチッと電気が走った。

腕をずっと掴まれているから、避ける事も出来なかった。

そのまま視界が真っ暗に塗りつぶされて、意識がなくなった。
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