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神様

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なんだかからかっているようにも見えて素直に信じられなかった。

それを察したのか、神様と名乗る人は「まぁ君にどう思われてもいいけどね」と言っていた。

神様がなんで地下にいるのか分からないが、それよりも聞きたい事があった。
籠の中にいる傷だらけの精霊達だ、街で起こった事と無関係だとはどうしても思えなかった。

籠に触れようとしたら、バチッと強めの静電気が指先に流れた。
まだ少し指が痺れていて、もう一度手を伸ばす勇気はなかった。

「なんで精霊達が閉じ込められてるんですか?」

「……君はローベルト一族の悪魔の子だろ?何故何も知らされていないんだい?」

「そんな事、言われても…ぇ?」

この人は俺が悪魔の子だと言われているのを知っているのか?紋様の手は見せていないと思うけど…
神様だから分かるって事なのだろうか…それにローベルト一族なら知っている話なのか?

だとしたら、あの事件は……でもそれにしても可笑しい事がある。

俺以外の人が精霊が見える話を聞いた事がない。
それに神様も誰でも見えるものなのだろうか。
話せば話すほど、疑問が溢れてとまらなくなる。

「俺とカイウス以外にも見える人がいるの?」

「…なに?自分が特別だと思ってるのかい?」

「そんなわけじゃ……」

「アイツらにそんな力があるわけないだろ?私が見せてやってるんだ」

「貴方の事は見えるんですか?」

「見えるんじゃなくて、見せているんだ…協力してやってるんだよ」

まるで自分は正しい事をしていると言わんばかりに誇らしげにそう言っていた。

話をまとめると、神様は自分の姿を両親に見せて精霊が見えるようにしたらしい。
そして精霊が起こした事件はきっとローベルト一族がなにかしたのだろう。

なんでそんな事しているんだ、神様なのにローベルト一族の味方をするなんて…
でも、仲間じゃないみたいだし…俺には理解出来ないなにかがあった。

俺はローベルト一族に協力するのをやめてほしいと神様に言った。

「もう、こんな事やめてください…カイウスの知り合いならなんでカイウスに敵対するんですか!?」

「……敵対?変な事を言うなぁ」

急に声が低くなり、怒っているのだとすぐに分かった。

チャリチャリと金属を鳴らして、鉄格子に真っ白な指が絡みつく。

この場所の空気が一気に冷たく感じで、無意識に後ずさる。

俺、変な事を言っただろうか……精霊にこんな事をしてカイウスが喜ぶと思っているのか?
目は見えないが、まるで睨まれているようだった。
まるでそれは、カイウスの事を大事にしているようにも思えた。

「これは全てカイウスのためなんだよ」

「……こんな事、カイウスが喜ぶ筈が…」

「カイウスは英雄になるんだ、喜ばないわけがないだろ?」

「………えい、ゆう?」

「そう、ローベルト一族を動かした悪魔の子を殺したこの世界の英雄だ」

俺がなにか言う前に、神様は指をくいっと曲げると俺の身体は勝手に動いて神様の前にきた。
腕を伸ばされて、顎を掴まれて顔を引き寄せられた。

額をくっつけるほどの近い距離で、小さく呟いた。

「カイウスのために、死んでくれ……カイウスを愛してるなら出来るだろ」と、ぞくりとする声で俺に囁いた。

そうか、俺に言いたかったのはこれだったのか。

俺を悪者にしてカイウスに殺させて英雄にさせる。
……それの何処がカイウスのためなのか、カイウスのためと言ってカイウスの事を何も理解していない。

そう言うとまた不機嫌になるだろう、顎を掴んでいた手が首に触れた……まるで簡単に折る事が出来ると言われているようだ。

そんな時、急に後ろから強い力で引かれて俺は神様から離れた。
神様は鉄格子から離れて、座って口元が笑っていた。

話に夢中になっていて忘れていた、そうだ…俺…内緒でここにいるんだった。

また罰を与えられる、まだまだ聞きたい事があったのに…

後ろを振り返ると、見た事がある顔がそこにあった。

「………」

「…えっと」

見た事があると言っても一度だけだ、この家に帰ってきた時にいた黒子だった気がする。
黒子は何人もいるけど、一度印象的だったから覚えていた。

俺を見ている筈なのに、何も瞳に映していないような生気のない表情を見せる。

俺の襟を掴んでいるから首が苦しくて、離してほしくて両腕をばたつかせる。
すると、呆気なく解放されて息を吸って落ち着く。

黒子は俺をもう見る事はなく、神様の前に立った。

俺を探しに来たわけじゃなくて、神様に用だったのか。
何の用かと気になって、立ち去る事なく見ていた。
すると神様は俺の方を見ると、クスクスと笑っていた。

「子供にはまだ早い話だよ、さっさとおかえり」

そう言って、神様は手を振るとまるで強い突風が吹いて地下から追い出された。

気が付いたら扉の前にいて、もう下に行く気にはならずにミロに見つかる前に部屋に戻ろうと思った。
どうせあの黒子が言いつけるんだろうけど、とりあえず俺は何もしていない風を装った。

「ライム様っ!何処に行っていたんですか!?」

「ご、ごめん…」

バタバタと大きな足音を立ててミロが部屋のドアを開けた。

俺の事を心配していたのか、怒ったような泣きそうな声で俺を抱きしめてきた。
どうしたらいいのか分からず、とりあえず謝る事しか出来なかった。

本当の事を言うと、あの宮殿の話をしないといけない。
俺の大切な居場所を取られるのが怖くて、ずっと屋敷の中にいたと嘘をついた。

ミロはすぐには信じずにずっと屋敷を探していたがいなかったと言っていた。
俺は倉庫の物陰で寝ていたと言うと、倉庫の中までは見ていなかったのか…やっとミロは落ち着いた。

「……もう、勝手な事しないで下さいね」

「う、うん…」

「でも、僕の前から消えたアレはなんだったんですか?」

「き…消えれるわけないじゃん!寝ぼけてたんだよ!」

「………」

ミロは首を傾げていたが、それもそうかと納得してくれた。

ホッとしたのもつかの間、ミロは父にも俺がいなくなったと報告していたらしく父に報告すると部屋を出ていってしまった。
そんなに大騒ぎする事じゃないのに、俺がいたって何も出来ないんだから…

この悪魔の紋様だって、ただの模様だし…カイウス以外には使えない。

でも、あの神様は俺を悪魔の子としてなにかさせようとしている。

皆、俺に何を期待してるんだよ……俺は俺でしかないのに…

ミロが昼飯を持って部屋にやってきた、父と話したのだろうが俺が地下に行った事は一言も話していなかった。
もしかして、あの黒子…俺が地下に行った事を誰にも話していないのか?

俺を庇ったとは考えられない、きっと黒子も地下に行った事を知られたくないのかもしれない。

罰を与えられないなら、それでいいに決まっている。

カイウスのところに戻りたい、また行けるかな。

でも今まで自分の意思で戻っていたのに、なんで宮殿から追い出されたんだろう。

あの時、夢の中に神様が現れた…もしかしたら神様が…

「……食べないんですか?」

「た、食べるよ」

ミロが眉を寄せて不機嫌そうにしているから、スプーンを持ってスープを眺める。
濁っているような見た目のスープ、本当に食べられるものが入ってるのだろうか。

今日、ミロは一緒に食べないようで俺をジッと見つめていた。

食べなかったらまた罰を与えられるから、震える手でスプーンを握りしめ…スープを掬う。

カリカリとなにかを引っ掻く音が聞こえてミロが立ち上がった。

俺も音の正体を探るために、周りをキョロキョロと見渡した。
すると、窓になにか黒い影が見えてミロもそちらに向かっていた。

窓を軽く叩いて追い払おうとしていたが、まだカリカリと音が聞こえる。

ミロは舌打ちして、直接追い出す気なのか窓を開けた。

すると、ミロは小さな悲鳴を上げて黒い影が部屋の中に入っていった。

大きな音を立ててスープをひっくり返していて、そのままベッドの下に隠れてしまった。

「こんの!!」

「掃除しないと…掃除道具持ってきて!」

「は、はい!」

ミロに掃除道具を頼むと、部屋を出ていった。
それを見届けると、ベッドの下を覗き込んだ。

二つの瞳が光って、ジッと俺を見つめていた。

手を伸ばすと、ゆっくりと俺の方に近付いてきた。

リーズナは、俺の指先を小さな舌でぺろぺろと舐めていた。

リーズナを抱き寄せると「カイウスは元気?」と聞いた。

『元気だったら俺にお前の様子を見てこいなんて言わねぇよ』

「そうだね、俺は…大丈夫だよ」

カイウスは仕事で疲れてるだろうし、余計な心配掛けたくない。
リーズナは自分がひっくり返した皿を見つめていた。

『これ、食べ物なのか?』と俺を見て聞いてきた。

一応…食べ物、らしいけど…味はほとんどなくて栄養がなさそうだと前に食べた時思った。

リーズナはため息を吐いて、俺の腕の中から抜け出した。
すると、ミロが掃除道具を抱えて部屋にやってきた。
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