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カイウスの話18
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傍にライムがいるからか、久々にゆっくりと眠る事が出来た。
そのせいで、部屋で起こった異変に気付くのが遅れてしまった。
隣に手を伸ばすが、居るはずの人物がいなくて目蓋を開ける。
やはりそこにはライムはいなくて、すぐに起き上がり寝室を出た。
トイレにも行っているのかと思っていたが、何処を探してもライムはいなかった。
帰ったのか?あの状態で?…ライムが自分の意思で帰ったとは考えられない。
この場所には俺とライムしか入れない筈だ、誰かに入られた気配もない。
「リーズナ」
『なんだよ、こんな朝っぱらから』
リーズナを呼ぶと、何処からかやってきたリーズナは俺の肩に乗っかった。
リーズナならライムの様子が見れるだろうし、リーズナを通して俺も見る事が出来る。
前のようにぬいぐるみも考えたが、ぬいぐるみは神経を集中させないといけないし……力もかなり使うからリーズナの方がいい。
ライムは寮に帰ってないようだから、ローベルトの家にいるだろう。
リーズナを行かせて、俺は元の場所に戻った。
自室で身支度を整えて、仕事に行こうと部屋を出ようとしてドアノブを回した。
そして開けたその先は、いつも見ている光景ではなかった。
真っ白な空間が広がっていて、その中心にポツリと椅子だけが置かれていた。
その椅子に座る人物には見覚えがあったが、あまり会いたい人物ではなかったからドアを閉めようと思った。
それを察した人物は俺に向かって口を開いた。
大きな声ではなかったのに、脳内に直接流れ込んできた。
「あの子供を随分可愛がってるようだな」
「………」
閉めようとした手を止めて、もう一度開けた。
ソイツは満足そうに笑って軽く手を振っている。
まさか、ライムになにかしたのか?……確かにコイツならあの場所に入れるのかもしれない。
真っ白な空間に入ると、勝手に後ろでドアが閉まった。
「ライムを何処にやったんだ」と聞くと腹を抱えられて笑われた。
ライムの事を知っていると思ったから聞いたのに、なんだコイツは…
「知らないならもういい、さっさと消えろ」
「アレは悪い悪いローベルト一族の悪魔の子だ…そんな奴を神聖な精霊の宮殿に置けるわけがないだろ」
当然だと言わんばかりの態度に俺は腰に下げていた剣に触れた。
ライムの事を何も知らないくせに決めつけて、腹が立つ。
剣は鞘から引き抜く事が出来なかった、俺の剣を人差し指一本で止められていた。
びくともしないのが、俺とコイツの力の差だと思い悔しかった。
あの宮殿の主は俺だ、俺が誰を招こうと勝手だ。
それに精霊達もライムが来るのを喜んでいる。
だからコイツに選ぶ権利は何もない、この世界にコイツがいる理由なんて一つもない。
神だと名乗った目の前の人物と初めて出会ったのは俺が幼少期の頃に力を制御出来ず暴走した時だ。
眠る俺の夢に毎晩のように現れてはからかってくる、嫌な奴だと記憶している。
アイツが現れなくなったのは、ライムと出会ってからだ。
その事だけを生き甲斐にしてきたから、力もコントロール出来るようになりアイツが現れなくなった。
今思えば、アイツが夢に現れた時だけ気分が楽になっていた。
俺の力をコントロールしようとしていたのだろう。
そして、その必要がなくなったからアイツは居なくなった。
だからもう俺には必要がない、神なら他にいろいろやる事があるだろ。
「宮殿に誰を呼ぶのか俺の勝手だ、お前の勝手にはさせない」
「その力は誰が与えたと思ってるんだ?」
「………」
「お前の力は悪のローベルトを殺す正義の力だ、お前の力を完全にするために」
コイツが何を言っているのか分からない、俺の力は人を殺す力じゃない…誰かを守る力だ。
そう思っていたら、神の身体がうっすらと透けていった。
「あぁ、誰か来たようだ」と俺とコイツしかいないのにそう呟いていた。
コイツも俺が意識をライムに向かわせた時と同じ事をしていたのか。
そして今、本体の方でなにかが起こってこちらに集中出来なくなったのか。
剣から指を離した神は、椅子から立ち上がった。
「…俺にはお前は必要ない、もう出てくるな」
「お前が悪魔の子を殺し、この国の英雄になれば出てくる事は」
最後まで言う前に剣を抜き、神を斬りつけた。
しかし意識しかない神は傷一つ付ける事は出来ない。
本体に出会えれば…とは思うが、意識でさえ手が出せなかったのに本体に勝てるかは微妙だ。
でも、ライムになにかするというなら俺は容赦はしない。
周りの景色が流れるように変わり、俺はいつも見慣れた廊下の前に立っていた。
俺に気付いたマリーとローズが近付いてきた。
「カイ様、こんなところでどうされ…きゃっ」
「……すまない、何でもない」
マリーは俺が剣を抜いているところを見て驚いていた。
こんなところで危なかったなと、鞘に戻した。
ローズは何も言わなかったが、なにか言いたげには感じた。
でも、俺からは何も話す事はないから二人の横を通り仕事に向かった。
リーズナに言って、またライムを呼びたいが…アイツが何もしないとは考えられない。
俺もライムも、ただ普通の幸せを望んでいるだけなのに何故上手くいかないんだ。
もっともっと強くならないと、誰からもライムを守れるほどの強さがほしい。
そのせいで、部屋で起こった異変に気付くのが遅れてしまった。
隣に手を伸ばすが、居るはずの人物がいなくて目蓋を開ける。
やはりそこにはライムはいなくて、すぐに起き上がり寝室を出た。
トイレにも行っているのかと思っていたが、何処を探してもライムはいなかった。
帰ったのか?あの状態で?…ライムが自分の意思で帰ったとは考えられない。
この場所には俺とライムしか入れない筈だ、誰かに入られた気配もない。
「リーズナ」
『なんだよ、こんな朝っぱらから』
リーズナを呼ぶと、何処からかやってきたリーズナは俺の肩に乗っかった。
リーズナならライムの様子が見れるだろうし、リーズナを通して俺も見る事が出来る。
前のようにぬいぐるみも考えたが、ぬいぐるみは神経を集中させないといけないし……力もかなり使うからリーズナの方がいい。
ライムは寮に帰ってないようだから、ローベルトの家にいるだろう。
リーズナを行かせて、俺は元の場所に戻った。
自室で身支度を整えて、仕事に行こうと部屋を出ようとしてドアノブを回した。
そして開けたその先は、いつも見ている光景ではなかった。
真っ白な空間が広がっていて、その中心にポツリと椅子だけが置かれていた。
その椅子に座る人物には見覚えがあったが、あまり会いたい人物ではなかったからドアを閉めようと思った。
それを察した人物は俺に向かって口を開いた。
大きな声ではなかったのに、脳内に直接流れ込んできた。
「あの子供を随分可愛がってるようだな」
「………」
閉めようとした手を止めて、もう一度開けた。
ソイツは満足そうに笑って軽く手を振っている。
まさか、ライムになにかしたのか?……確かにコイツならあの場所に入れるのかもしれない。
真っ白な空間に入ると、勝手に後ろでドアが閉まった。
「ライムを何処にやったんだ」と聞くと腹を抱えられて笑われた。
ライムの事を知っていると思ったから聞いたのに、なんだコイツは…
「知らないならもういい、さっさと消えろ」
「アレは悪い悪いローベルト一族の悪魔の子だ…そんな奴を神聖な精霊の宮殿に置けるわけがないだろ」
当然だと言わんばかりの態度に俺は腰に下げていた剣に触れた。
ライムの事を何も知らないくせに決めつけて、腹が立つ。
剣は鞘から引き抜く事が出来なかった、俺の剣を人差し指一本で止められていた。
びくともしないのが、俺とコイツの力の差だと思い悔しかった。
あの宮殿の主は俺だ、俺が誰を招こうと勝手だ。
それに精霊達もライムが来るのを喜んでいる。
だからコイツに選ぶ権利は何もない、この世界にコイツがいる理由なんて一つもない。
神だと名乗った目の前の人物と初めて出会ったのは俺が幼少期の頃に力を制御出来ず暴走した時だ。
眠る俺の夢に毎晩のように現れてはからかってくる、嫌な奴だと記憶している。
アイツが現れなくなったのは、ライムと出会ってからだ。
その事だけを生き甲斐にしてきたから、力もコントロール出来るようになりアイツが現れなくなった。
今思えば、アイツが夢に現れた時だけ気分が楽になっていた。
俺の力をコントロールしようとしていたのだろう。
そして、その必要がなくなったからアイツは居なくなった。
だからもう俺には必要がない、神なら他にいろいろやる事があるだろ。
「宮殿に誰を呼ぶのか俺の勝手だ、お前の勝手にはさせない」
「その力は誰が与えたと思ってるんだ?」
「………」
「お前の力は悪のローベルトを殺す正義の力だ、お前の力を完全にするために」
コイツが何を言っているのか分からない、俺の力は人を殺す力じゃない…誰かを守る力だ。
そう思っていたら、神の身体がうっすらと透けていった。
「あぁ、誰か来たようだ」と俺とコイツしかいないのにそう呟いていた。
コイツも俺が意識をライムに向かわせた時と同じ事をしていたのか。
そして今、本体の方でなにかが起こってこちらに集中出来なくなったのか。
剣から指を離した神は、椅子から立ち上がった。
「…俺にはお前は必要ない、もう出てくるな」
「お前が悪魔の子を殺し、この国の英雄になれば出てくる事は」
最後まで言う前に剣を抜き、神を斬りつけた。
しかし意識しかない神は傷一つ付ける事は出来ない。
本体に出会えれば…とは思うが、意識でさえ手が出せなかったのに本体に勝てるかは微妙だ。
でも、ライムになにかするというなら俺は容赦はしない。
周りの景色が流れるように変わり、俺はいつも見慣れた廊下の前に立っていた。
俺に気付いたマリーとローズが近付いてきた。
「カイ様、こんなところでどうされ…きゃっ」
「……すまない、何でもない」
マリーは俺が剣を抜いているところを見て驚いていた。
こんなところで危なかったなと、鞘に戻した。
ローズは何も言わなかったが、なにか言いたげには感じた。
でも、俺からは何も話す事はないから二人の横を通り仕事に向かった。
リーズナに言って、またライムを呼びたいが…アイツが何もしないとは考えられない。
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