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カイウスの話23
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剣を引き抜き、剣が炎をまとい…神に向かって走り出した。
神は袖をはためかせて、腕で俺の剣を止めた。
やはり、まだ力が弱いか……いや、でも勝てない相手ではない。
この前は余裕そうだったのに、眉を寄せて少し苦しそうだ。
俺だってまだ本気ではない、剣を離して神に押し付けた。
それを見て、神は驚いた顔をしていた…その間抜けな顔が笑える。
剣に足を掛けて神に向かって、手を伸ばした。
神はすぐに俺から離れて、俺も空中を蹴り上げて地面に着地した。
「なるほど、気配のわりに剣がまとっている力が弱いと思ったが囮だったわけか」
「力が強いからといって、絶対に勝てるわけではない…力が弱くても戦い方一つで強くなれる……神のくせにそんな事も知らないのか?」
「………ならば、お前に教えてやる、力こそ戦いの全てだと」
そう言った神は、物凄い力を手のひらに集中させていた。
こんなもの、こんなところで放ったら…全員無事では済まないだろう。
それほどまでに強大な力だ、向こうも本気という事か。
精霊達は危険を察して遠くに逃げていっていた。
でも、この宮殿にはまだライムがいる…ライムを守らなくては…
「お前がライムを殺すと言うなら、この場所は破壊しないでおいてやる」とか戯言を言っていた。
ふざけるな、俺はなにがあってもライムを必ず守る。
俺の傍が、ライムにとっての安全になるように…
ずっと、この先も永遠にあの子の隣で笑顔を見ていたい。
何を恐れることがある、俺が恐れるのはただ一つ…あの子に笑顔が消えてしまう事だ。
俺は逃げる事はせず、神に向かって走り出した。
神の腕を掴むと、驚いた顔をして俺を見ていた。
俺が逃げ出すと思っていたのか、甘く見られたものだな。
「おい、そんな近くにいたらただじゃすまないぞ」
「へぇ、そうかよ」
「バカか!よく考えろ!あんな奴のために犠牲になるのか!?お前は国を守る騎士だろ!!」
「………お前、誰の話をしているんだ?」
「…!?」
「俺は騎士団長のカイウスじゃないぞ、よく見てみろよ…アホな神様」
神の力のオーラを放つ手に手を重ねて握りしめる。
焼けるように熱い、冷や汗もかいてきた…でもこのくらいなんて事はない。
力比べをしようじゃないか、どちらが一番強いのか。
俺も手のひらに力を込めた、さっきのお遊びよりもキツイやつだ。
俺は騎士団長のカイウスではない、国民がどうだが知らない。
俺がいなくても、誰かが守っていくのが国だろ?
騎士団長に任命されたからやっているだけに過ぎない。
ライムが守るべき国民じゃないという考えが気に入らない。
「うっ、ぐっ…急に…力が、強く…」
「ライムが守るべき国民じゃないって言うなら、俺はライムだけを守る……覚えとけ、俺はライムのためなら悪の道に染まっても構わない」
神は目を見開いて俺を見つめていた、俺はライムのために悪魔になる。
ライムの敵は俺の敵だ、逃げ腰になっている手を強く掴み逃がさない。
俺の力が真っ黒に変わっていく、背中が熱くなる。
なんだろう、と後ろを見ると真っ黒な羽根が生えていた。
なんだこれ、と思いつつ…どうでもいいかと思った。
しかし、神の方はそうはいかないようで眉を寄せていた。
「…お前、それは…今すぐ沈めろ!!宮殿を壊すのはやめるから!!」
「何を言ってるんだ?今更止められない、お前にはイラついているんだ」
コイツのせいでライムがどんな目に合ったのか、コイツはきっと知らない。
ライムが苦痛に感じるものは全て排除する、俺が消してやる!
羽根が大きく広がり、精霊の宮殿や周辺が俺の力で真っ黒に染まる。
大きく息を吐いた……神の首を掴んで周りよりも強い力で覆った。
『俺の大切な子を殺すと言うなら、その前に俺がお前を殺す』
その声は俺の声だったのか、何だったのか分からない。
ただ、俺はライムを守りたかった…それだけだった。
ホタルのようにキラキラと崩れていく、神の姿を見つめていた。
あれはただの幻覚か使い魔だろう、本物はまだ生きている。
またここに来るだろう、絶対にライムには会わせない……ここは俺とライムの安息の場所なんだ。
誰にも、穢させない…だから安心して…俺が絶対に守るから…
羽根が消えて、意識がゆらゆらと薄れていく。
…ライムが、起きたら…美味しいご飯を…作らなきゃ…いけないの、に…
そのままプツンと糸が切れたように意識がなくなった。
神は袖をはためかせて、腕で俺の剣を止めた。
やはり、まだ力が弱いか……いや、でも勝てない相手ではない。
この前は余裕そうだったのに、眉を寄せて少し苦しそうだ。
俺だってまだ本気ではない、剣を離して神に押し付けた。
それを見て、神は驚いた顔をしていた…その間抜けな顔が笑える。
剣に足を掛けて神に向かって、手を伸ばした。
神はすぐに俺から離れて、俺も空中を蹴り上げて地面に着地した。
「なるほど、気配のわりに剣がまとっている力が弱いと思ったが囮だったわけか」
「力が強いからといって、絶対に勝てるわけではない…力が弱くても戦い方一つで強くなれる……神のくせにそんな事も知らないのか?」
「………ならば、お前に教えてやる、力こそ戦いの全てだと」
そう言った神は、物凄い力を手のひらに集中させていた。
こんなもの、こんなところで放ったら…全員無事では済まないだろう。
それほどまでに強大な力だ、向こうも本気という事か。
精霊達は危険を察して遠くに逃げていっていた。
でも、この宮殿にはまだライムがいる…ライムを守らなくては…
「お前がライムを殺すと言うなら、この場所は破壊しないでおいてやる」とか戯言を言っていた。
ふざけるな、俺はなにがあってもライムを必ず守る。
俺の傍が、ライムにとっての安全になるように…
ずっと、この先も永遠にあの子の隣で笑顔を見ていたい。
何を恐れることがある、俺が恐れるのはただ一つ…あの子に笑顔が消えてしまう事だ。
俺は逃げる事はせず、神に向かって走り出した。
神の腕を掴むと、驚いた顔をして俺を見ていた。
俺が逃げ出すと思っていたのか、甘く見られたものだな。
「おい、そんな近くにいたらただじゃすまないぞ」
「へぇ、そうかよ」
「バカか!よく考えろ!あんな奴のために犠牲になるのか!?お前は国を守る騎士だろ!!」
「………お前、誰の話をしているんだ?」
「…!?」
「俺は騎士団長のカイウスじゃないぞ、よく見てみろよ…アホな神様」
神の力のオーラを放つ手に手を重ねて握りしめる。
焼けるように熱い、冷や汗もかいてきた…でもこのくらいなんて事はない。
力比べをしようじゃないか、どちらが一番強いのか。
俺も手のひらに力を込めた、さっきのお遊びよりもキツイやつだ。
俺は騎士団長のカイウスではない、国民がどうだが知らない。
俺がいなくても、誰かが守っていくのが国だろ?
騎士団長に任命されたからやっているだけに過ぎない。
ライムが守るべき国民じゃないという考えが気に入らない。
「うっ、ぐっ…急に…力が、強く…」
「ライムが守るべき国民じゃないって言うなら、俺はライムだけを守る……覚えとけ、俺はライムのためなら悪の道に染まっても構わない」
神は目を見開いて俺を見つめていた、俺はライムのために悪魔になる。
ライムの敵は俺の敵だ、逃げ腰になっている手を強く掴み逃がさない。
俺の力が真っ黒に変わっていく、背中が熱くなる。
なんだろう、と後ろを見ると真っ黒な羽根が生えていた。
なんだこれ、と思いつつ…どうでもいいかと思った。
しかし、神の方はそうはいかないようで眉を寄せていた。
「…お前、それは…今すぐ沈めろ!!宮殿を壊すのはやめるから!!」
「何を言ってるんだ?今更止められない、お前にはイラついているんだ」
コイツのせいでライムがどんな目に合ったのか、コイツはきっと知らない。
ライムが苦痛に感じるものは全て排除する、俺が消してやる!
羽根が大きく広がり、精霊の宮殿や周辺が俺の力で真っ黒に染まる。
大きく息を吐いた……神の首を掴んで周りよりも強い力で覆った。
『俺の大切な子を殺すと言うなら、その前に俺がお前を殺す』
その声は俺の声だったのか、何だったのか分からない。
ただ、俺はライムを守りたかった…それだけだった。
ホタルのようにキラキラと崩れていく、神の姿を見つめていた。
あれはただの幻覚か使い魔だろう、本物はまだ生きている。
またここに来るだろう、絶対にライムには会わせない……ここは俺とライムの安息の場所なんだ。
誰にも、穢させない…だから安心して…俺が絶対に守るから…
羽根が消えて、意識がゆらゆらと薄れていく。
…ライムが、起きたら…美味しいご飯を…作らなきゃ…いけないの、に…
そのままプツンと糸が切れたように意識がなくなった。
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