上 下
77 / 299

保護者のお迎え

しおりを挟む
「あっ、カイ様!」

「……何をしているんだ」

ハイドレイがカイウスに元気よく声を掛けて俺も後ろを振り返ろうとした。

しかし、フレイ先生に「動くんじゃない!」と肩を掴まれて背中に腕を回される。

包帯を巻いているだけだが、フレイ先生の腕をカイウスが握った。

フレイ先生は驚いて、手に持っている包帯を離した。
すぐにカイウスが掴んで、床に落ちる事はなかった。

残りの包帯をカイウスの手によって優しく巻いてくれた。
フレイ先生の手つきはちょっと痛かったが、カイウスは全然痛くなかった。

綺麗に包帯を巻かれて、上着を着るのを手伝ってもらった。

「ありがとう、カイウス」

「クマに聞いた、なにがあったんだ?」

「それは…えっと」

「ライム」

「…ぅ」

カイウスは俺を後ろから抱きしめて、聞いてくる。
決して責めるような感じではないが、カイウスに言われると隠し事が出来ない。

カイウスの瞳を見つめて、俺が口を開こうとした。

「もう手当てしたんだから帰ってくんないかな」とフレイ先生が手を振って追い出す仕草をする。

カイウスがフレイ先生に目線を向けると、口を閉ざしてしまった。

この二人なにかあるのか?ゲームでもフレイ先生は他の騎士とカイウスの扱いが違っていた。
その話は語られなかったから、俺には分からない。

俺を営業時間外で診てくれたのはカイウスの知り合いだからだろう。

カイウスってフレイ先生にも慕われてるんだな、自分の事のように嬉しくなる。

「先生、ライムを手当してくれてありがとうございます」

「カイ様にそこまで言ってもらえる事なんてしてませんよ」

「…それじゃあ俺はこれで」

「またなにかあれば協力しますよ、カイ様のためなら」

俺はフレイ先生に頭を下げてカイウスに手を引かれて、医務室から出ていった。

カイウスのあんな顔初めて見たな、フレイ先生の事苦手っぽいな。

後からハイドレイが医務室から出てきて、カイウスは「お前にも世話かけたな、ありがとう」と言った。
ハイドレイは首が曲がってしまうんじゃないかと心配するほど横に振っていた。

俺も頭を下げると友達を助けるなら当たり前だと笑ってくれた。

ハイドレイと別れて、カイウスと共に兵舎から離れた。

カイウスと一緒に精霊の宮殿にやってきて、俺の背中に触れないように抱き抱えられた。

「その背中の傷…俺に見せてくれるか?」

「でも、見て気分いいものじゃないから」

「ライムの全てが見たい、お願いだ」

傷口の事を言っているのは分かっているが、顔が熱くなる。

短く頷くと、顎に触れられて軽く口付けられた。
カイウスに触れられる場所全てが熱く、興奮する。

寝室に運ばれて、ベッドに座るとカイウスが俺の後ろに座る。

さっき着た服を再び脱がされて、包帯を巻いた痛々しい体が露になる。
傷口を見られるのは嫌だけど、そんな事どうでもよくなるほど頭の中がカイウスでいっぱいになる。

包帯で隠れていない首筋をチュッとキスされてビクッと震えた。

ちゅっちゅと繰り返されて、包帯もほどけていく。

「耳まで真っ赤だな」

「…そ、んな事…」

「ライム、これは誰にやられたんだ?」

甘かったカイウスの声が、鋭いものに変わった。
やっぱりかなり酷いのだろう…消毒したからか痛みが少し和らいだから、後ろを見てみた。

そして俺も傷口を見た皆と同じような反応をした。

打撲程度だと思っていたのに、皮が剥がれて切り傷のようになっていた。

こんな事になってるなんて思わず顔を青ざめた。

すると、背中がゾクゾクとした感じがしてビックリして変な声が出てしまった。

「ひゃっ!?な、なに!?」

「治癒魔法だ、動かないでくれ」

カイウスに言われて、後ろを見ようとしたけどまっすぐ見つめる。

確かに背中がポカポカ暖かくなっている、治癒魔法だろう。
でも、それだけではない感覚がある…カイウス…もしかして俺の傷口舐めてる!?

「んっ、んんっ…」

「ライム、痛くはないか?」

「…ぇっ…あんっ」

変な声が出てしまい、慌てて口元を押さえる。
しおりを挟む
感想 174

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

処理中です...