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愛の大きさ
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精霊は頷いたり首を振ったりして気持ちを伝えていた。
しかし、何故こんな事をしたか理由は聞いても答えてくれなかった。
もしかしたら言いたくても言えない…とかなのではないのか?
精霊はゲームでカイウスに絶対忠誠の筈だ、だってカイウスは精霊の加護を受けている。
つまり、神話で悪魔と戦いこの帝国を勝利へと導いた精霊王と同じ力がある。
言わば精霊の上司だ、上下関係をはっきりしている精霊がカイウスに自分の意思で隠し事をするとは思えない。
カイウスがなにかに気付いて、精霊に手を伸ばそうとしていた。
しかし「ピーピー」という変な電子音のような音が聞こえた。
何処から鳴っているのだろうと周りを見渡すと、精霊は飛び去ってしまった。
ふらふらと揺れている精霊に違和感を覚えていたが、精霊はすぐに見えなくなってしまった。
「…あの子、何処か怪我でもしてるのかな」
「羽根が二枚足りない」
「え…?」
「精霊は本来羽根が左右合わせて六枚の筈だ」
「……そういえば」
「精霊にとって羽根はとても意味のあるものだ、一枚でもなくなれば大変な事になる」
カイウスは精霊が何故放火をしたのか分かったようで、今から店主に事情を説明していくと言った。
俺も行きたかったが、騎士の仕事に一般人を巻き込めないと言われてしまい俺は一人で帰る事にした。
夜道は危ないとリーズナを案内役にしてくれて、カイウスによってリーズナは召喚された。
寝起きで不機嫌そうなリーズナはグチグチ文句を言っていたが、カイウスが「レルロッド産のにぼし」と口にすると、渋々ながら歩き出した。
カイウスに手を振って、リーズナと一緒に寮に向かって歩き出した。
静かな道で無言は、さっきの事があり不安で話題を探して話しかける。
「えっと、にぼしが好きなの?」
『はぁ!?猫だから当然だし!』
ツーンという効果音がしそうなほどリーズナは素っ気なかった。
カイウスの精霊だし、仲良くしたいんだけど…初対面からアレだったから印象悪いんだろうな。
もっと早くリーズナがカイウスの精霊だって気付いて触らなければ、カイウスは暴走しなかったんだと思うと悔やまれる。
もしかしたらカイウスの暴走もゲーム通りに世界が動いたからなのかもしれない。
あんなに沢山の人がいた騎士団長就任パレードで俺の前にピンポイントで現れるのはやっぱり不自然だよな?
…過去をどう思っても変わらないから今だ、リーズナと仲良くなる方法…レルロッド産のにぼしって何処に売ってるんだろう。
『おいお前』
「えっ、何?」
『いつも聞こうと思ってて忘れてたけど、お前カイのなんなんだ?』
リーズナにそんな事を聞かれるとは思っていなくて驚いて足を止めた。
カイウスの事を聞くならカイウスはリーズナには恋人だと言っていないって事だよな。
じゃあ恋人以外なら、隣人?先生?友人?どう言えばリーズナのこの疑いの眼差しが晴れるのだろうか。
「友達…だよ?」と言ったが『嘘を付くな!友達がキスやあんな事やこんな事するわけないだろ!』と言われて呆然とリーズナを見た。
あんな事やこんな事って、もしかしてカイウス話したのか!?
暗い夜道で良かったが、顔から煙が出るほど顔が真っ赤だろう。
「…そっ、そそ…それ、カイウスが言ったの?」
『動揺し過ぎだな、カイが言うわけないだろ?お前らが精霊の宮殿に入った時一度俺も入ったんだよ』
リーズナは精霊の化身だから当然宮殿に入れるが、リーズナが見ていたなんて知らなかった。
カイウスは気付いていなかったのかな、リーズナに聞いてみたら『俺に気付いてたけど、あの時無視したんだろ』と拗ねていた。
リーズナにとんでもないものを見せてしまって、本当に申し訳ない。
俺とカイウスの関係を知っていて、なんで改めて聞いたんだろう。
もう隠しても仕方ないから恋人だと伝えたら、リーズナは再び歩き出した。
俺もリーズナの後を慌てて付いて行き、そろそろ学校が近付いてきた。
「ここまででいいよ、ありがとう」
『……』
「どうしたの?」
『お前、カイの事本気で好きなのか?カイがただの一般人になっても変わらず愛せるか?』
リーズナがジッと見つめていたからなにか言いたそうにしていた。
そして口を開いたら、カイウスの愛を試す事を言われて周りの空気が変わった。
リーズナは敵意をむき出しで俺を睨んでいて、一歩動いたら殺されてしまう気がする。
リーズナはただの人間のユリウスとは違う、精霊で圧倒的に力が強い。
逃げ出したい、怖いという気持ちを無意識に抱いていたが足は動かなかった。
リーズナはカイウスを愛せるか聞いたんだ、だから俺は前に進む。
一歩歩いて、それ以上先には今の俺の力では進めなくてしゃがんだ。
「俺はカイウスが好きだよ、ただのカイウスを好きになったんだ…だから愛は変わらない」
『その愛を証明出来るのか?』
「なにが証明かは分からないけど、カイウスを守るためなら俺は命を掛けれる」
『…そうか、これでもか?』
リーズナは体の毛を逆立たせて、だんだん体が大きくなっていった。
虎くらいの大きさの凶暴な猫になって俺の頭の上に向かって口を開いた。
鋭い牙が覗いていて、口を閉じたら噛み殺されるだろう…リーズナの瞳は本気のようだ。
『カイと別れろ、さもなくばお前を喰らう』と地を這うような低い声で言われた。
もしこれが他の人なら俺は反撃していたかもしれない、自分の身を守るために…
簡単に殺されるわけにはいかない、カイウスという人を好きになったんだ…カイウスが悲しむ事をしたくはない。
でもリーズナはカイウスの精霊で一部だ、リーズナを受け入れる事はカイウスを受け入れる事になる。
「構わないよ」
『……これは脅しではないぞ』
「俺はカイウスに出会って、救われた…命もそうだし、人生を大きく変えてくれた…カイウスがいないとダメなほど大好きなんだ、だから殺されるならカイウスがいい…それだけだよ」
『…そうか』
リーズナはそう言って、口をゆっくりと閉ざした……俺がもし死ぬエンディングなら、他の誰でもない…カイウスがいい。
初めの頃はカイウスに殺されるのも嫌だったが、好きになって俺の全てがカイウスでいっぱいになって変わった。
カイウスが俺を殺すならきっとそれはカイウスの意思だから悲しまないだろう。
俺は自分が死ぬより、カイウスが悲しむ方がどうしようもなく嫌だ。
リーズナはカイウスとは意思が少し違うが、契約した俺よりもリーズナの方がカイウスと繋がる絆が強い。
リーズナは暴走カイウスの元でもあるんだ、だからリーズナに殺される事はカイウスに殺されるのと同じだ。
「大好きだよ、カイウス」と小さく呟くと、俺の全身をリーズナが飲み込んだ。
『……なんてな、俺がお前を殺したらカイに消されるだろ?』
「…え?」
『俺の意思はカイの意思、敵意と殺意は自分の意思で操れるがお前を殺す事はカイの意思が全力で阻止してくるから殺せるわけないだろ』
「……」
『知ってて余裕だったんだな?』
「違うよ、本当にカイウスに殺されてもいいって思っただけだよ」
元の普通サイズの猫に戻ったリーズナは唖然とした顔で俺を見つめていた、変な事言ったかな。
さっきのリーズナは幻影だったらしく、本物ではなかった…正直ゲームになかったからリーズナの新しい力かと本気で思った。
カイウスは俺を悪い人から守ってくれる、でもカイウスがどう思っているか分からないだろ。
敵意がなくても愛情表現で好きな人を殺す人もいる…妹のサクヤがそうだ。
暴走したカイウスに俺が殺されても不思議ではない、ゲームがそうだから…
カイウスの愛を疑っているんじゃない、それが愛情表現なら俺は嬉しいよ。
俺はカイウスを殺そうと思った事はないけど、カイウスに殺されるならいいって本気で思ってる。
変だって、分かってるけど…カイウスになら何されてもいいというのが俺の愛情表現だ、軽い気持ちではなく命を捧げられる。
「それほど好きなんだよ」
『重いなー、お前もカイも…』
リーズナは呆れてたけど、気が緩んだように空気が柔らかくなった。
しかし、何故こんな事をしたか理由は聞いても答えてくれなかった。
もしかしたら言いたくても言えない…とかなのではないのか?
精霊はゲームでカイウスに絶対忠誠の筈だ、だってカイウスは精霊の加護を受けている。
つまり、神話で悪魔と戦いこの帝国を勝利へと導いた精霊王と同じ力がある。
言わば精霊の上司だ、上下関係をはっきりしている精霊がカイウスに自分の意思で隠し事をするとは思えない。
カイウスがなにかに気付いて、精霊に手を伸ばそうとしていた。
しかし「ピーピー」という変な電子音のような音が聞こえた。
何処から鳴っているのだろうと周りを見渡すと、精霊は飛び去ってしまった。
ふらふらと揺れている精霊に違和感を覚えていたが、精霊はすぐに見えなくなってしまった。
「…あの子、何処か怪我でもしてるのかな」
「羽根が二枚足りない」
「え…?」
「精霊は本来羽根が左右合わせて六枚の筈だ」
「……そういえば」
「精霊にとって羽根はとても意味のあるものだ、一枚でもなくなれば大変な事になる」
カイウスは精霊が何故放火をしたのか分かったようで、今から店主に事情を説明していくと言った。
俺も行きたかったが、騎士の仕事に一般人を巻き込めないと言われてしまい俺は一人で帰る事にした。
夜道は危ないとリーズナを案内役にしてくれて、カイウスによってリーズナは召喚された。
寝起きで不機嫌そうなリーズナはグチグチ文句を言っていたが、カイウスが「レルロッド産のにぼし」と口にすると、渋々ながら歩き出した。
カイウスに手を振って、リーズナと一緒に寮に向かって歩き出した。
静かな道で無言は、さっきの事があり不安で話題を探して話しかける。
「えっと、にぼしが好きなの?」
『はぁ!?猫だから当然だし!』
ツーンという効果音がしそうなほどリーズナは素っ気なかった。
カイウスの精霊だし、仲良くしたいんだけど…初対面からアレだったから印象悪いんだろうな。
もっと早くリーズナがカイウスの精霊だって気付いて触らなければ、カイウスは暴走しなかったんだと思うと悔やまれる。
もしかしたらカイウスの暴走もゲーム通りに世界が動いたからなのかもしれない。
あんなに沢山の人がいた騎士団長就任パレードで俺の前にピンポイントで現れるのはやっぱり不自然だよな?
…過去をどう思っても変わらないから今だ、リーズナと仲良くなる方法…レルロッド産のにぼしって何処に売ってるんだろう。
『おいお前』
「えっ、何?」
『いつも聞こうと思ってて忘れてたけど、お前カイのなんなんだ?』
リーズナにそんな事を聞かれるとは思っていなくて驚いて足を止めた。
カイウスの事を聞くならカイウスはリーズナには恋人だと言っていないって事だよな。
じゃあ恋人以外なら、隣人?先生?友人?どう言えばリーズナのこの疑いの眼差しが晴れるのだろうか。
「友達…だよ?」と言ったが『嘘を付くな!友達がキスやあんな事やこんな事するわけないだろ!』と言われて呆然とリーズナを見た。
あんな事やこんな事って、もしかしてカイウス話したのか!?
暗い夜道で良かったが、顔から煙が出るほど顔が真っ赤だろう。
「…そっ、そそ…それ、カイウスが言ったの?」
『動揺し過ぎだな、カイが言うわけないだろ?お前らが精霊の宮殿に入った時一度俺も入ったんだよ』
リーズナは精霊の化身だから当然宮殿に入れるが、リーズナが見ていたなんて知らなかった。
カイウスは気付いていなかったのかな、リーズナに聞いてみたら『俺に気付いてたけど、あの時無視したんだろ』と拗ねていた。
リーズナにとんでもないものを見せてしまって、本当に申し訳ない。
俺とカイウスの関係を知っていて、なんで改めて聞いたんだろう。
もう隠しても仕方ないから恋人だと伝えたら、リーズナは再び歩き出した。
俺もリーズナの後を慌てて付いて行き、そろそろ学校が近付いてきた。
「ここまででいいよ、ありがとう」
『……』
「どうしたの?」
『お前、カイの事本気で好きなのか?カイがただの一般人になっても変わらず愛せるか?』
リーズナがジッと見つめていたからなにか言いたそうにしていた。
そして口を開いたら、カイウスの愛を試す事を言われて周りの空気が変わった。
リーズナは敵意をむき出しで俺を睨んでいて、一歩動いたら殺されてしまう気がする。
リーズナはただの人間のユリウスとは違う、精霊で圧倒的に力が強い。
逃げ出したい、怖いという気持ちを無意識に抱いていたが足は動かなかった。
リーズナはカイウスを愛せるか聞いたんだ、だから俺は前に進む。
一歩歩いて、それ以上先には今の俺の力では進めなくてしゃがんだ。
「俺はカイウスが好きだよ、ただのカイウスを好きになったんだ…だから愛は変わらない」
『その愛を証明出来るのか?』
「なにが証明かは分からないけど、カイウスを守るためなら俺は命を掛けれる」
『…そうか、これでもか?』
リーズナは体の毛を逆立たせて、だんだん体が大きくなっていった。
虎くらいの大きさの凶暴な猫になって俺の頭の上に向かって口を開いた。
鋭い牙が覗いていて、口を閉じたら噛み殺されるだろう…リーズナの瞳は本気のようだ。
『カイと別れろ、さもなくばお前を喰らう』と地を這うような低い声で言われた。
もしこれが他の人なら俺は反撃していたかもしれない、自分の身を守るために…
簡単に殺されるわけにはいかない、カイウスという人を好きになったんだ…カイウスが悲しむ事をしたくはない。
でもリーズナはカイウスの精霊で一部だ、リーズナを受け入れる事はカイウスを受け入れる事になる。
「構わないよ」
『……これは脅しではないぞ』
「俺はカイウスに出会って、救われた…命もそうだし、人生を大きく変えてくれた…カイウスがいないとダメなほど大好きなんだ、だから殺されるならカイウスがいい…それだけだよ」
『…そうか』
リーズナはそう言って、口をゆっくりと閉ざした……俺がもし死ぬエンディングなら、他の誰でもない…カイウスがいい。
初めの頃はカイウスに殺されるのも嫌だったが、好きになって俺の全てがカイウスでいっぱいになって変わった。
カイウスが俺を殺すならきっとそれはカイウスの意思だから悲しまないだろう。
俺は自分が死ぬより、カイウスが悲しむ方がどうしようもなく嫌だ。
リーズナはカイウスとは意思が少し違うが、契約した俺よりもリーズナの方がカイウスと繋がる絆が強い。
リーズナは暴走カイウスの元でもあるんだ、だからリーズナに殺される事はカイウスに殺されるのと同じだ。
「大好きだよ、カイウス」と小さく呟くと、俺の全身をリーズナが飲み込んだ。
『……なんてな、俺がお前を殺したらカイに消されるだろ?』
「…え?」
『俺の意思はカイの意思、敵意と殺意は自分の意思で操れるがお前を殺す事はカイの意思が全力で阻止してくるから殺せるわけないだろ』
「……」
『知ってて余裕だったんだな?』
「違うよ、本当にカイウスに殺されてもいいって思っただけだよ」
元の普通サイズの猫に戻ったリーズナは唖然とした顔で俺を見つめていた、変な事言ったかな。
さっきのリーズナは幻影だったらしく、本物ではなかった…正直ゲームになかったからリーズナの新しい力かと本気で思った。
カイウスは俺を悪い人から守ってくれる、でもカイウスがどう思っているか分からないだろ。
敵意がなくても愛情表現で好きな人を殺す人もいる…妹のサクヤがそうだ。
暴走したカイウスに俺が殺されても不思議ではない、ゲームがそうだから…
カイウスの愛を疑っているんじゃない、それが愛情表現なら俺は嬉しいよ。
俺はカイウスを殺そうと思った事はないけど、カイウスに殺されるならいいって本気で思ってる。
変だって、分かってるけど…カイウスになら何されてもいいというのが俺の愛情表現だ、軽い気持ちではなく命を捧げられる。
「それほど好きなんだよ」
『重いなー、お前もカイも…』
リーズナは呆れてたけど、気が緩んだように空気が柔らかくなった。
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