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優しい魔法
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目を覚ますと、いつから見ていたのかカイウスの顔が近くにあった。
おはよう…と声を出したかったが、昨日散々喘いで喉が痛かった。
かすれた声を出すと、人差し指を唇に当てられてカイウスは「おはよう」と俺の代わりに言った。
カイウスは朝食を用意したと起き上がり、ベッドの横にある小さいテーブルにトレイに乗った美味しそうな朝食が用意されていた。
俺も起き上がろうとすると腰がズキズキと痛くなった、ベッドに逆戻りした。
それを見てカイウスは心配そうに眉を寄せて俺の頬に触れてきた。
「辛いか?少し我慢していてくれ」
「…ぅ」
ゆっくり俯せの体勢にされると、着ていたシャツを半分くらい上げられた。
カイウスの手が腰に触れて、最初は冷たいと感じていたがだんだん温かくなってきた。
ズキズキしていた痛みが和らいで、そして消えていってきもちよくてうとうとしてきた。
でもまた寝たら寝過ごしてしまうから我慢しなくてはいけない。
…ぁ、でも今日学校休みだっけ…だったらもう少しだけ寝ても…
そう思ったらカイウスが手を離して、温かさが一瞬で消えた。
「カイウス、これって治癒魔法?」
「あぁ、まだ制御が上手く出来ないが…ここは精霊の力が満ちているから制御しやすい…どうだ?楽になったか?」
「…うん、あれ?喉も…」
腰はカイウスに触れられたから痛みはもうない、しかし喉の痛みも消えていた。
もしかして、唇に触れていたのは治癒魔法を掛けるためだったのかな。
カイウスに「ありがとう」と言って、ベッドから起き上がり座る。
カイウスが豆茶の入ったコップを差し出してきて、一口飲んで体の奥がポカポカと温かくなる。
美味しそうなスクランブルエッグだ、この世界の卵は成人男性の片手くらい大きくて砂糖を使わなくても十分甘く出来ている。
目玉焼きはあまり向かなかったが、スクランブルエッグならいい感じ。
俺が勝手にスクランブルエッグと思ってるだけで、本当は別の名前かもしれないけど…
もぐもぐ食べていたら、カイウスは俺の顔をジッと見るだけで朝食を食べていない。
用意された朝食はどう見ても一人分しかなくて、カイウスはもう食事を終わらせたのだろうか。
「カイウス、いつから俺の顔見てたの?」
「俺が目を覚ました時からだ、ライムが目覚めて一番に俺を見てほしくてな」
「じゃあ朝食は?」
「……ライムが俺の料理を食べているだけで、俺も満たされる」
人を見たって、空腹が満たされるわけないのに…何を言ってるんだ?
今日俺は休みだが、カイウスは非番ではないと思うしちゃんと食べないと…
サラダの中にフォークを刺して、野菜をカイウスに向けるとカイウスは大人しく食べてくれた。
俺はご飯買う金がないが、水を飲んでたら何とかなるがカイウスは体力がいる仕事をしているから…
今度はスクランブルエッグをカイウスに食べさせる、豆茶も差し出すとカイウスは困ったような顔をする。
「ライムの朝食がなくなる」と心配していて「俺がカイウスと一緒に食べたいだけだよ」と言った。
今度は俺の分も作ると言ってくれて、その時は俺がカイウスにご馳走しよう。
どうしようかな、手持ちがないから日雇いのバイトとかあるのかな。
「カイウス」
「…ん?なんだ?」
「なんか働けるところない?出来ればすぐにお金がもらえる日雇いがいいな」
「金に困ってるのか?」
「ち、違うよ!ただ仕事の経験をしたいだけだよ!」
カイウスに素直に金に困ってるなんて言ったら生々しいものをプレゼントされそうで言えない。
社会勉強にもなると思うし、経験して損はない…それにカイウスが言う場所なら安心出来る。
「ライムが出来る場所…」と考えていたから「力仕事も何でもやるよ!」とアピールした。
カイウスみたいな怪力ではないが、重いものくらい持てるぞ!
なんなら騎士見習いとして雇ってくれたら鍛えられていいと思うが…さすがに贅沢か。
期待に満ちた眼差しでカイウスを見つめると何故か頭を撫でられた。
「なら、騎士団の料理人になってくれ」
「料理人?」
「あぁ、騎士団の兵舎の料理人が一人辞めて困っているという相談を受けてな…ライムは料理が上手いし結構力仕事もある」
カイウスに言われて、確かに料理人はいいかもしれない…俺の趣味を生かして…カイウスに作る料理のレパートリーも増える。
それに騎士団の近くにいると、今のゲームのシナリオの進行具合も分かるし…断る理由がない。
「俺も毎日食べに行くよ」とカイウスに言われたらもうそこしか考えられなくなる。
俺が頷くと、カイウスは「分かった、伝えとく…いつから働くんだ?」と聞いてきた。
今すぐにでも働きたいと伝えた、今日はちょうど休みだから時間はいっぱいあった。
日雇いのアルバイトではないが、お給料はその日働いた分を貰える日払いだから全然いい。
カイウスがベッドから降りて、宮殿の入り口を俺の部屋に繋いだ。
まるでどこでもドアみたいに便利だなぁ、と思いながらカイウスと別れた。
まず最初にカイウスが話を通してから俺が向かうから、少し時間を空けてから向かおう。
そう思い、騎士団の兵舎って何処にあるのか知らない事に気付いた。
時間潰しに道を知っといた方がスムーズだな、確か騎士団の敷地内は門番のチェックが終われば一般人でも入れるようになっている。
おはよう…と声を出したかったが、昨日散々喘いで喉が痛かった。
かすれた声を出すと、人差し指を唇に当てられてカイウスは「おはよう」と俺の代わりに言った。
カイウスは朝食を用意したと起き上がり、ベッドの横にある小さいテーブルにトレイに乗った美味しそうな朝食が用意されていた。
俺も起き上がろうとすると腰がズキズキと痛くなった、ベッドに逆戻りした。
それを見てカイウスは心配そうに眉を寄せて俺の頬に触れてきた。
「辛いか?少し我慢していてくれ」
「…ぅ」
ゆっくり俯せの体勢にされると、着ていたシャツを半分くらい上げられた。
カイウスの手が腰に触れて、最初は冷たいと感じていたがだんだん温かくなってきた。
ズキズキしていた痛みが和らいで、そして消えていってきもちよくてうとうとしてきた。
でもまた寝たら寝過ごしてしまうから我慢しなくてはいけない。
…ぁ、でも今日学校休みだっけ…だったらもう少しだけ寝ても…
そう思ったらカイウスが手を離して、温かさが一瞬で消えた。
「カイウス、これって治癒魔法?」
「あぁ、まだ制御が上手く出来ないが…ここは精霊の力が満ちているから制御しやすい…どうだ?楽になったか?」
「…うん、あれ?喉も…」
腰はカイウスに触れられたから痛みはもうない、しかし喉の痛みも消えていた。
もしかして、唇に触れていたのは治癒魔法を掛けるためだったのかな。
カイウスに「ありがとう」と言って、ベッドから起き上がり座る。
カイウスが豆茶の入ったコップを差し出してきて、一口飲んで体の奥がポカポカと温かくなる。
美味しそうなスクランブルエッグだ、この世界の卵は成人男性の片手くらい大きくて砂糖を使わなくても十分甘く出来ている。
目玉焼きはあまり向かなかったが、スクランブルエッグならいい感じ。
俺が勝手にスクランブルエッグと思ってるだけで、本当は別の名前かもしれないけど…
もぐもぐ食べていたら、カイウスは俺の顔をジッと見るだけで朝食を食べていない。
用意された朝食はどう見ても一人分しかなくて、カイウスはもう食事を終わらせたのだろうか。
「カイウス、いつから俺の顔見てたの?」
「俺が目を覚ました時からだ、ライムが目覚めて一番に俺を見てほしくてな」
「じゃあ朝食は?」
「……ライムが俺の料理を食べているだけで、俺も満たされる」
人を見たって、空腹が満たされるわけないのに…何を言ってるんだ?
今日俺は休みだが、カイウスは非番ではないと思うしちゃんと食べないと…
サラダの中にフォークを刺して、野菜をカイウスに向けるとカイウスは大人しく食べてくれた。
俺はご飯買う金がないが、水を飲んでたら何とかなるがカイウスは体力がいる仕事をしているから…
今度はスクランブルエッグをカイウスに食べさせる、豆茶も差し出すとカイウスは困ったような顔をする。
「ライムの朝食がなくなる」と心配していて「俺がカイウスと一緒に食べたいだけだよ」と言った。
今度は俺の分も作ると言ってくれて、その時は俺がカイウスにご馳走しよう。
どうしようかな、手持ちがないから日雇いのバイトとかあるのかな。
「カイウス」
「…ん?なんだ?」
「なんか働けるところない?出来ればすぐにお金がもらえる日雇いがいいな」
「金に困ってるのか?」
「ち、違うよ!ただ仕事の経験をしたいだけだよ!」
カイウスに素直に金に困ってるなんて言ったら生々しいものをプレゼントされそうで言えない。
社会勉強にもなると思うし、経験して損はない…それにカイウスが言う場所なら安心出来る。
「ライムが出来る場所…」と考えていたから「力仕事も何でもやるよ!」とアピールした。
カイウスみたいな怪力ではないが、重いものくらい持てるぞ!
なんなら騎士見習いとして雇ってくれたら鍛えられていいと思うが…さすがに贅沢か。
期待に満ちた眼差しでカイウスを見つめると何故か頭を撫でられた。
「なら、騎士団の料理人になってくれ」
「料理人?」
「あぁ、騎士団の兵舎の料理人が一人辞めて困っているという相談を受けてな…ライムは料理が上手いし結構力仕事もある」
カイウスに言われて、確かに料理人はいいかもしれない…俺の趣味を生かして…カイウスに作る料理のレパートリーも増える。
それに騎士団の近くにいると、今のゲームのシナリオの進行具合も分かるし…断る理由がない。
「俺も毎日食べに行くよ」とカイウスに言われたらもうそこしか考えられなくなる。
俺が頷くと、カイウスは「分かった、伝えとく…いつから働くんだ?」と聞いてきた。
今すぐにでも働きたいと伝えた、今日はちょうど休みだから時間はいっぱいあった。
日雇いのアルバイトではないが、お給料はその日働いた分を貰える日払いだから全然いい。
カイウスがベッドから降りて、宮殿の入り口を俺の部屋に繋いだ。
まるでどこでもドアみたいに便利だなぁ、と思いながらカイウスと別れた。
まず最初にカイウスが話を通してから俺が向かうから、少し時間を空けてから向かおう。
そう思い、騎士団の兵舎って何処にあるのか知らない事に気付いた。
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