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悪役としての定め

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その時、手に変な感触がしてマリーが小さく呻き声を上げていた。

手を見ると、真っ赤になった手のひらが見えて恐怖で震えが止まらなかった。
俺が掴んだものは机に置いてあったペンで、マリーを支えようと思った衝撃でマリーの肩を刺してしまった。

刺さったペンを引き抜いて、すぐに自分の服を引きちぎりマリーの肩を止血した。
手当てはこれしか出来ない、俺がしてしまった事なのにと悔しさで唇を噛んだ…とりあえず誰か医者のところに連れて行こう。

謝りたいのに声が出ない、頭を下げていても痛みで目を瞑るマリーには見えないだろう。
マリーをお姫様だっこで抱き上げようとしたら、ドアが思いっきり開かれた。

そこにはローズとカイウスが居て、地震で散乱した室内と俺達を見て驚いていた。

良かった、これでマリーは助かる…早く手当てしてくれとローズを見る。
声では伝える事が出来ないが、ローズは医学の心得があるキャラクターだからきっと…

そう思っていたら、ローズが俺をマリーから引き剥がして思いっきり殴った。
カイウスがローズを止めようとしていたが、俺がカイウスを拒絶した。
いいんだ、俺がマリーにしてしまった事は本当だから…これはゲーム通りだ。
マリーに怪我を負わせたライムにカイウスは激怒して殺した。

大好きな人に殺される、もしかしたら悪役としての俺の一番のハッピーエンドなのかもしれない。

もう一度地震が起きて、足がよろけてカイウスが手を伸ばそうとしたが俺は伸ばさなかった。

この世界はどうやら俺を悪役として殺したいそうだ。

警告のように感じた、これ以上いたら次は俺の大切な人が傷付くぞと…

窓に背中がぶつかり、きらきらと綺麗なガラスに包まれて下に落ちていった。

最後に見たのは、暗い暗い闇の中で俺はどこまでも沈んで落ちていった。






『カイウスの話』

すぐにライムを追いかけようとしたが、ローズに引き止められてメイドを押し付けられた。

「早くマリーを医務室にお連れ下さい!あの男は私が…」

「ライムに何する気だ」

「あの男はマリーの肩にペンを刺した、このペンを握っていた事が証拠です」

そう言ったローズは血がべったりと付着したペンを俺に見せてきた。

そのペンは壁に掛かっている私服のポケットに入っていたものだ。
ライム達と距離があるポケットから取り出して、メイドを刺したというのか?
何のためにそんな事をしたんだ?本当にライムがしたのか?俺を優しいと言ったあの子が…

ローズはこのメイドをとても可愛がっていたから許せないのだろう。
ライムに何するか分からないローズを止めようとしたが、ローズはライムが落ちた窓の下を眺めて動かない。

もしかしてライムは怪我をしているのか?打ち所が悪かったら…想像したくない。

俺も窓に近付こうとしたらローズが「危ないので離れて下さい」と言っていた。

「さすが城下町を賑わせた悪魔、逃げ足が早いようで下には誰もいませんでした」

「悪魔?」

「気付きませんでしたか?ペンを持つあの男の手の甲に悪魔の紋様があったんですよ…私も案内している時に気付いていれば」

「違う、城下町の悪魔は…」

「カイ様、友人だと思っていた相手に騙されたと思いたくない気持ちは分かります…ですがそれが事実です…この揺れも数人のローベルト卿の兵士の仕業のようですし…あの男はローベルト卿の関係者です」

「二度とあの男に会われませんように」と最後にローズは言い、俺に医務室までメイドを運ぶように言ってきた。
怪我人をこのままにしておくわけにもいかず、ローズと共に医務室に向かった。

ローズはライムがローベルト卿の兵士を引き連れてきたと思い込んでいる。
でも俺がライムを屋敷に呼んだんだ、ライムが兵士に連絡する暇なんてない。
それを言っても、ローズは全く聞いていないのか俺の言い訳にしか聞こえていないようだった。

城下町の悪魔は俺なのに、頭の硬いローズは俺は悪魔じゃないと言い切っていた。

当事者の話を聞く前に何故ライムをそんなに悪者にしたがるのか理解出来ない。

ライムに会いたい、あそこから落ちて無傷でいるとは思えない…今何処にいるんだ?
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