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意識
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今日から自炊をしようと街に行くために学校の門を潜ったところで腕を掴まれた。
普通に学校に外出許可をもらったから止められる筈はない。
両サイドに立つ人を見上げて、驚いて目を見開いた。
そこにいたのはローベルトの屋敷にいた黒子達だった。
なんで学校の門にいるのだろうか、ずっと俺を見張っていたのか?
学校にいても何処にいても監視していたんだ。
「何処に行かれるんですか、ライム様」
「ちょっと買い物…」
「食事なら食堂がございますよね」
食堂の事を言うという事は学校の中までは把握していないようだ。
「自炊したくて」と本当の事を言うと、黒子達は「必要ございません」と言って聞いてくれない。
食堂があるんだから自炊はするなって事だろうか。
でも俺は食堂に行けないし、自炊をすると決めたから屋敷の外でくらい自由にさせてくれたらいいのに…
黒子達は俺に学校に戻れと背中を押してくる。
俺には災厄の力を覚醒させる事だけを考えろと強い口調で言われた。
俺にはそんな力ないのに、俺の力はゲームのヒロイン通りならカイウスのための力だからな。
何度でも言おう、俺に災厄の力はないと……
「俺にそんな力は」
「そこで何をしている」
「……また遮られた」
いつも俺が説明すると誰かが邪魔をするから今回もやっぱりという気持ちが強い。
でも、この声はとても聞き覚えがあった。
俺の頭に触れる手は温かくて、すがるように指先で小さく服を掴んだ。
黒子達は驚いた顔をして「カイ様」と小さく呟いた。
俺達の前にカイウスが現れて、俺と黒子の間に入った。
俺とカイウスが知り合いだと知らない黒子達の瞳には戸惑いが見える。
「どうかされましたか?カイ様」
「見回りだ、大人が二人して子供を誘拐か?」
「誤解です、彼は私達が忠誠を誓う主の息子さんで弱音を吐いて学校から逃げ出そうとしているところを捕まえただけです」
「ち、ちがっ…」
「お前らがどんな関係であれ、嫌がっている奴を無理矢理連れていくのは見過ごせない」
カイウスの背中に隠されて、黒子達にはっきり言っていた。
ローベルト家は今はカイウスと争いたくないから、二人は目を合わせて俺達に背を向けて去っていった。
一気に疲れが抜けて地面に倒れそうなところをカイウスの逞しい胸に支えられた。
あんな怪しい集団がいたのに、正体は誰か無理に聞く事はしないでただ俺の心配をしてくれた。
正直ありがたかった、黒子が俺を監視している災厄の悪魔の紋様が俺にあると知ればいくらカイウスでも、この帝国に害なす俺をほっとく筈はない。
違うと言っても、変な力が作動して誤解を解けなくなる。
だとしたらいっそのこと悪魔の紋様は知らない方がいい。
ヒロインの悪魔の紋様はカイウスが庇っていたが、俺はカイウスに好かれていても悪役だから……いつカイウスが心変わりしても可笑しくはない、それが悪役とヒロインの違いだ。
「ライム、怪我はないか?」
「うん、ないよ…ありがとう」
カイウスだって忙しいだろうから俺はもう大丈夫だから見回りに戻っていいよとカイウスにいった。
すると何を思ったのか、腕を掴まれて引き寄せられた。
ギュッと抱き締められて、すぐに体を離された。
仕事に向かったカイウスを呆然と見つめる。
そこで俺は買い物を思い出して城下町に行く事にした。
城下町はいろんな年代、性別の人達でとても賑わっていた。
友人同士で露店の商品を買って買い食いして、生前ではよくしていたが今は憧れる事しか出来ない。
人の話し声や呼び込みの声でがやがやと騒がしかった。
俺の目の前に小さな男の子が立っていて、俺の顔をジッと見ていた。
なにか顔に付いているだろうかと服の袖で顔を拭っていたら、すぐに母親らしき人のところに走っていった。
「ママー、あのお兄ちゃんオニダコみたいな顔してるー」
そんな声が聞こえてきて、後ろを振り返るが男の子は俺にもう興味がなくなったのか別の話題を母親にしていた。
あれが普通の親子なんだろうな、久々に見た。
それにしてもオニダコとはどういう意味だ?
オニダコとは、タコだけど生前の世界にいたタコよりも真っ赤なタコだ。
俺がそのオニダコに似てる、今すぐ自分の姿を見たくて大きな城下町のシンボルである噴水を覗き込むと、確かに男の子の言うとおり顔が真っ赤になっていた。
心当たりとしてはカイウスだが、今まで抱き締められた事なんていくらでもあったのにこんなになるだろうか。
……意識しているから、カイウスが俺に好意を抱いていると…だから前とは違うんだ。
俺、なんか変だな……恋愛対象として好きじゃない相手の好意に過剰に反応してしまう。
分からない、自分の気持ちが…自分の事なのに…
「カイ様」という声に反応してしまう。
周りを見渡すと、カイウスがそこにいて慌てて隠れる。
噴水に隠れる俺は周りから見たら不審者そのものだろう。
今のこの顔はカイウスに見られたくない、言い訳が思い付かない。
カイウスは、呼び止められて足を止めていた。
カイウスに話しかけて嬉しそうに笑うマリーを見てお似合いだなとずきりと胸が痛んだ。
俺がどう思っても、ヒロインに勝てる筈はなかった。
普通に学校に外出許可をもらったから止められる筈はない。
両サイドに立つ人を見上げて、驚いて目を見開いた。
そこにいたのはローベルトの屋敷にいた黒子達だった。
なんで学校の門にいるのだろうか、ずっと俺を見張っていたのか?
学校にいても何処にいても監視していたんだ。
「何処に行かれるんですか、ライム様」
「ちょっと買い物…」
「食事なら食堂がございますよね」
食堂の事を言うという事は学校の中までは把握していないようだ。
「自炊したくて」と本当の事を言うと、黒子達は「必要ございません」と言って聞いてくれない。
食堂があるんだから自炊はするなって事だろうか。
でも俺は食堂に行けないし、自炊をすると決めたから屋敷の外でくらい自由にさせてくれたらいいのに…
黒子達は俺に学校に戻れと背中を押してくる。
俺には災厄の力を覚醒させる事だけを考えろと強い口調で言われた。
俺にはそんな力ないのに、俺の力はゲームのヒロイン通りならカイウスのための力だからな。
何度でも言おう、俺に災厄の力はないと……
「俺にそんな力は」
「そこで何をしている」
「……また遮られた」
いつも俺が説明すると誰かが邪魔をするから今回もやっぱりという気持ちが強い。
でも、この声はとても聞き覚えがあった。
俺の頭に触れる手は温かくて、すがるように指先で小さく服を掴んだ。
黒子達は驚いた顔をして「カイ様」と小さく呟いた。
俺達の前にカイウスが現れて、俺と黒子の間に入った。
俺とカイウスが知り合いだと知らない黒子達の瞳には戸惑いが見える。
「どうかされましたか?カイ様」
「見回りだ、大人が二人して子供を誘拐か?」
「誤解です、彼は私達が忠誠を誓う主の息子さんで弱音を吐いて学校から逃げ出そうとしているところを捕まえただけです」
「ち、ちがっ…」
「お前らがどんな関係であれ、嫌がっている奴を無理矢理連れていくのは見過ごせない」
カイウスの背中に隠されて、黒子達にはっきり言っていた。
ローベルト家は今はカイウスと争いたくないから、二人は目を合わせて俺達に背を向けて去っていった。
一気に疲れが抜けて地面に倒れそうなところをカイウスの逞しい胸に支えられた。
あんな怪しい集団がいたのに、正体は誰か無理に聞く事はしないでただ俺の心配をしてくれた。
正直ありがたかった、黒子が俺を監視している災厄の悪魔の紋様が俺にあると知ればいくらカイウスでも、この帝国に害なす俺をほっとく筈はない。
違うと言っても、変な力が作動して誤解を解けなくなる。
だとしたらいっそのこと悪魔の紋様は知らない方がいい。
ヒロインの悪魔の紋様はカイウスが庇っていたが、俺はカイウスに好かれていても悪役だから……いつカイウスが心変わりしても可笑しくはない、それが悪役とヒロインの違いだ。
「ライム、怪我はないか?」
「うん、ないよ…ありがとう」
カイウスだって忙しいだろうから俺はもう大丈夫だから見回りに戻っていいよとカイウスにいった。
すると何を思ったのか、腕を掴まれて引き寄せられた。
ギュッと抱き締められて、すぐに体を離された。
仕事に向かったカイウスを呆然と見つめる。
そこで俺は買い物を思い出して城下町に行く事にした。
城下町はいろんな年代、性別の人達でとても賑わっていた。
友人同士で露店の商品を買って買い食いして、生前ではよくしていたが今は憧れる事しか出来ない。
人の話し声や呼び込みの声でがやがやと騒がしかった。
俺の目の前に小さな男の子が立っていて、俺の顔をジッと見ていた。
なにか顔に付いているだろうかと服の袖で顔を拭っていたら、すぐに母親らしき人のところに走っていった。
「ママー、あのお兄ちゃんオニダコみたいな顔してるー」
そんな声が聞こえてきて、後ろを振り返るが男の子は俺にもう興味がなくなったのか別の話題を母親にしていた。
あれが普通の親子なんだろうな、久々に見た。
それにしてもオニダコとはどういう意味だ?
オニダコとは、タコだけど生前の世界にいたタコよりも真っ赤なタコだ。
俺がそのオニダコに似てる、今すぐ自分の姿を見たくて大きな城下町のシンボルである噴水を覗き込むと、確かに男の子の言うとおり顔が真っ赤になっていた。
心当たりとしてはカイウスだが、今まで抱き締められた事なんていくらでもあったのにこんなになるだろうか。
……意識しているから、カイウスが俺に好意を抱いていると…だから前とは違うんだ。
俺、なんか変だな……恋愛対象として好きじゃない相手の好意に過剰に反応してしまう。
分からない、自分の気持ちが…自分の事なのに…
「カイ様」という声に反応してしまう。
周りを見渡すと、カイウスがそこにいて慌てて隠れる。
噴水に隠れる俺は周りから見たら不審者そのものだろう。
今のこの顔はカイウスに見られたくない、言い訳が思い付かない。
カイウスは、呼び止められて足を止めていた。
カイウスに話しかけて嬉しそうに笑うマリーを見てお似合いだなとずきりと胸が痛んだ。
俺がどう思っても、ヒロインに勝てる筈はなかった。
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