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シリウスの話7
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レインが俺と共に生きる事を決めたと言ってくれた時、心が不思議な気分になった。
これが…恋というものなのだろうか。
疲れて寝てしまったレインの傍にレインの銃を置く。
ずっとレインを見ている事が出来ない、レインなら自分の身くらい守れるだろう。
部屋を出ると、すぐ近くにレオナルドが待機していた。
部屋には絶対に入るなと言っているから、その言いつけを守っていたのだろう。
「今日の食事は部屋で食べる」
「分かりました、伝えておきます」
「…それとレオナルド、お前も分かっているだろうが」
「若様の仰せのままに」
レオナルドは俺の事なら、口にしなくてもだいたい分かっている。
レインが生きている事、俺の部屋にレインがいる事に既に気付いているのだろう。
部屋に入るなという命令は今までした事がなかった。
レインに手を出すなとずっとレオナルドに言っていたのに、レインを刺した事で俺になにか考えがあったのだと気付いている。
レオナルドに隠す事は不可能だと思っていたから、レオナルドに行動でレインがいる事を知らせた。
レオナルドは人間が嫌いだが、レインにここまでして連れてきた俺の覚悟を見せた。
もうレオナルドだとしても、俺は一度決めた事は決して揺るがない。
レインは俺のものだ、誰も手出しはさせたりしない。
「若様、私は若様だけを信頼しております…あの人間は信用出来ません」
「信用するかどうかはお前の勝手だから構わない、ただ…俺に隠れて勝手な事はするな、レインは俺の妻だ」
「…人間は脆く私達と違い、寿命も短い……どうするつもりですか」
「……」
永遠に共にいる事は出来ない、それは分かっている。
魔族が人間を妻にするという行為そのものがなかったから、戸惑う気持ちも分かっている。
レインを魔物にするのは簡単だ、でもそれをするとレインがレインではなくなる。
それだけは絶対にしない、レインは人のまま生涯共にいる。
今は若いとはいえ、先は短い…100年も生きるかどうか。
その時になったら、俺もこの役割を他の者に託す時なのかもしれない。
「俺も長く生きた、残りの人生…愛に浸りたい」
「そんな、若様!!」
「安心しろ、俺が新しい魔王を育てる…お前の役目は魔王の側にいる事、俺ではなく…魔王のな」
「……若様」
レオナルドはまだなにか言いたそうな顔をしていたが、言葉を飲み込んだ。
俺の力を全て受け継ぐ事が出来る後継者を見つけるのは簡単な事ではない。
でも、必ず見つける…それが魔王としての最後の仕事だ。
レオナルドと歩いていると、後ろになにか気配を感じた。
消しているつもりなのか、気配がダダ漏れだった。
レオナルドも気付いているのか、剣に手を添えていた。
城の魔物なら、隠れる必要なんて一つもない…あるとしたらやましい事がある奴だけだ。
「若様」
「分かってる」
「始末します」
レオナルドが後ろを振り返り、大剣を振り下ろした。
地面が大きく揺れて、廊下にある物が床に落ちていく。
部屋にいた他の魔物達が異変に気付いて顔を出してくる。
戦闘にも対応出来るこの城はレオナルドが暴れたくらいではヒビすら入らない。
レオナルドの攻撃を受けても、まだ出てくる気がないのか。
俺は気配がした方に歩いて、こちらから視覚になっていた曲がり角の先を覗いた。
「………」
「若様、何者かいましたか?」
「いや、いない」
「まさか、そこは行き止まりでは…」
レオナルドが俺の前に出て、曲がり角の先を見て驚いていた。
そこには誰もいないし、逃げた形跡も何もなかった。
確かにそこにいた、レオナルドの攻撃に紛れて逃げたか。
俺達を見ていたその視線に殺気を感じた、しかもかなり強い魔物の気配だ。
レオナルドは「あの者が魔界に戻ってきたんでしょうか」と耳打ちしてきた。
俺の宝玉を人間に与えて、魔物を憎むように唆した悪魔。
あの崩壊した瓦礫の中にあった真っ黒な羽根は悪魔族のものだが、俺の宝玉に触れられるほどの力は悪魔族にはない筈だ。
俺とレオナルドを見ていたという事は、俺に恨みでもあるのか。
いちいち恨みなんて覚えていない、さっさと来ればいい…こんな遠回りな事をしなくても相手してやる。
「レオナルド、悪魔族の生き残りが何処にいるかすぐに調べろ」
「御意」
レオナルドは俺に背を向けて、歩き出して俺は他の魔物を指先で呼んだ。
双子の悪魔であるリドルとクルルは俺に敬礼しながら近付いてきた。
この二人も悪魔族の生き残りで、俺が唯一知っている悪魔だ。
魔王軍と人間の争いで多くの悪魔が消滅して、二人で寄り添って命を燃やそうとしていた二人を城に連れ帰った。
理由は簡単だ、悪魔族はいろんな能力を秘めていて使えるからだ。
俺への忠誠も強く、戦闘では役には立たないがそれ以外ではよく働いてくれる。
「二人は悪魔族の生き残りを知っているか」
「生き残り…」
「…ですか?」
二人が知らないならそれで話は終わりだが、悪魔族が反逆するなら俺はいくら身内の一族でも制裁を加える。
これが…恋というものなのだろうか。
疲れて寝てしまったレインの傍にレインの銃を置く。
ずっとレインを見ている事が出来ない、レインなら自分の身くらい守れるだろう。
部屋を出ると、すぐ近くにレオナルドが待機していた。
部屋には絶対に入るなと言っているから、その言いつけを守っていたのだろう。
「今日の食事は部屋で食べる」
「分かりました、伝えておきます」
「…それとレオナルド、お前も分かっているだろうが」
「若様の仰せのままに」
レオナルドは俺の事なら、口にしなくてもだいたい分かっている。
レインが生きている事、俺の部屋にレインがいる事に既に気付いているのだろう。
部屋に入るなという命令は今までした事がなかった。
レインに手を出すなとずっとレオナルドに言っていたのに、レインを刺した事で俺になにか考えがあったのだと気付いている。
レオナルドに隠す事は不可能だと思っていたから、レオナルドに行動でレインがいる事を知らせた。
レオナルドは人間が嫌いだが、レインにここまでして連れてきた俺の覚悟を見せた。
もうレオナルドだとしても、俺は一度決めた事は決して揺るがない。
レインは俺のものだ、誰も手出しはさせたりしない。
「若様、私は若様だけを信頼しております…あの人間は信用出来ません」
「信用するかどうかはお前の勝手だから構わない、ただ…俺に隠れて勝手な事はするな、レインは俺の妻だ」
「…人間は脆く私達と違い、寿命も短い……どうするつもりですか」
「……」
永遠に共にいる事は出来ない、それは分かっている。
魔族が人間を妻にするという行為そのものがなかったから、戸惑う気持ちも分かっている。
レインを魔物にするのは簡単だ、でもそれをするとレインがレインではなくなる。
それだけは絶対にしない、レインは人のまま生涯共にいる。
今は若いとはいえ、先は短い…100年も生きるかどうか。
その時になったら、俺もこの役割を他の者に託す時なのかもしれない。
「俺も長く生きた、残りの人生…愛に浸りたい」
「そんな、若様!!」
「安心しろ、俺が新しい魔王を育てる…お前の役目は魔王の側にいる事、俺ではなく…魔王のな」
「……若様」
レオナルドはまだなにか言いたそうな顔をしていたが、言葉を飲み込んだ。
俺の力を全て受け継ぐ事が出来る後継者を見つけるのは簡単な事ではない。
でも、必ず見つける…それが魔王としての最後の仕事だ。
レオナルドと歩いていると、後ろになにか気配を感じた。
消しているつもりなのか、気配がダダ漏れだった。
レオナルドも気付いているのか、剣に手を添えていた。
城の魔物なら、隠れる必要なんて一つもない…あるとしたらやましい事がある奴だけだ。
「若様」
「分かってる」
「始末します」
レオナルドが後ろを振り返り、大剣を振り下ろした。
地面が大きく揺れて、廊下にある物が床に落ちていく。
部屋にいた他の魔物達が異変に気付いて顔を出してくる。
戦闘にも対応出来るこの城はレオナルドが暴れたくらいではヒビすら入らない。
レオナルドの攻撃を受けても、まだ出てくる気がないのか。
俺は気配がした方に歩いて、こちらから視覚になっていた曲がり角の先を覗いた。
「………」
「若様、何者かいましたか?」
「いや、いない」
「まさか、そこは行き止まりでは…」
レオナルドが俺の前に出て、曲がり角の先を見て驚いていた。
そこには誰もいないし、逃げた形跡も何もなかった。
確かにそこにいた、レオナルドの攻撃に紛れて逃げたか。
俺達を見ていたその視線に殺気を感じた、しかもかなり強い魔物の気配だ。
レオナルドは「あの者が魔界に戻ってきたんでしょうか」と耳打ちしてきた。
俺の宝玉を人間に与えて、魔物を憎むように唆した悪魔。
あの崩壊した瓦礫の中にあった真っ黒な羽根は悪魔族のものだが、俺の宝玉に触れられるほどの力は悪魔族にはない筈だ。
俺とレオナルドを見ていたという事は、俺に恨みでもあるのか。
いちいち恨みなんて覚えていない、さっさと来ればいい…こんな遠回りな事をしなくても相手してやる。
「レオナルド、悪魔族の生き残りが何処にいるかすぐに調べろ」
「御意」
レオナルドは俺に背を向けて、歩き出して俺は他の魔物を指先で呼んだ。
双子の悪魔であるリドルとクルルは俺に敬礼しながら近付いてきた。
この二人も悪魔族の生き残りで、俺が唯一知っている悪魔だ。
魔王軍と人間の争いで多くの悪魔が消滅して、二人で寄り添って命を燃やそうとしていた二人を城に連れ帰った。
理由は簡単だ、悪魔族はいろんな能力を秘めていて使えるからだ。
俺への忠誠も強く、戦闘では役には立たないがそれ以外ではよく働いてくれる。
「二人は悪魔族の生き残りを知っているか」
「生き残り…」
「…ですか?」
二人が知らないならそれで話は終わりだが、悪魔族が反逆するなら俺はいくら身内の一族でも制裁を加える。
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