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パフォーマンス
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盗賊達は怒りを露わにして、俺達の方にまた走ってきた。
次は何処を狙うか考えていたら、肩を掴まれて隣を見ると親指を立てた団長がいた。
団長が出るのを合図として、皆それぞれのパフォーマンスを見せる。
ナイフが顔スレスレにかすったり、獅子に追いかけられて、炎で足元を焦がされて、最後に剣で服を切り刻まれて裸にされた。
散々されて、へろへろになりながら「覚えてやがれ!!」お決まりの捨て台詞を吐いて、走っていった。
俺に飛びついてきて「凄いじゃんレイン!」と団長は喜んでいたが、俺はそれどころではなかった。
さっきの揺れで酒が回ったみたいで、気持ち悪い。
顔色が悪い俺を心配してくれていて、ここでちょっと休んでいくのかと聞いてきたが正直早くシリウスに追いつきたい。
だから俺は「大丈夫だから」と言って、先に進むように言った。
「無理そうだったらちゃんと言うんだよ、レインは大事な仲間なんだから」
「分かってる、ありがとう」
馬車の中に入って、再び馬車はゆっくりと動き始めた。
俺は横になりながら休んだ、またなにかが来るかもしれないから治しておかないとな。
シリウス、俺は人間の敵になったとしてもシリウスを諦める事は出来ない。
俺は本気なんだ、次会ったら何をされても絶対に離さない。
俺を本気にさせた責任はちゃんと取ってもらうからな。
馬車がゆっくり止まり、団長に体を揺すられて起こされた。
「村に着いたよ、ここで買い出しとかギルドとか寄るから宿屋に行くけど、休むなら宿屋がいいよ」
「そうだな」
まだ治っていない重い体を起こして、馬車から降りる。
俺がいたリール村みたいに小さな村で、そこで一泊する事になった。
慌てても仕方ない、こんな状態で迷いの洞窟に行くよりちゃんと休んで治した方がいいな。
皆は買い出しに向かったが、俺は宿屋で休む事にした。
するとインディが宿屋まで付いて行ってくれると言ってくれた。
これがエロゲーならなんか起きるんだろうけど、今の俺にはそんな気にはなれない。
それにこの世界は、俺が主人公の筈なのに女の子に好意を寄せられた事がないから何もないだろう。
悲しいが、仕方ないよな。
部屋の前で「ありがとう、もう大丈夫だから」と言うとインディは「じゃあ行くね」と手を振っていた。
前から人が歩いてきて、紙を見ていて前を見ていなかった。
インディの肩にぶつかり、よろけるインディを支えた。
すると、インディの頭の上にあった頭巾が取れてなにかが見えた。
普段だったら頭巾が覆って見える事はないが、ぶつかった時に少し尖った耳だ。
人間にも少し尖っている人はいるから、そういう人もいるかぐらいにしか思っていなかったが、インディの反応からそうではないのだと分かった。
顔を青くしていた。
このままのインディを放っておくわけにもいかず、部屋に入れた。
「えっと、大丈夫か?団長呼んでくる?」
「いや、いいよ……怖いって思わないの?いや、賞金首ハンターなら憎いって思うよね」
「いやいや、なんで!?インディは何もしてないだろ」
「私の耳で分かるよね」
「気にするなよ、そう言う人間も」
「私、ダークエルフ…魔物なんだよ」
インディは髪をかき上げて、耳を見せてくれた。
大道芸人の皆は知っているらしく、俺に言ったのも耳を見られたからと仲間になるから教えてくれたそうだ。
最初に俺の事を人間って言ったのはそういう理由だったのか。
俺は賞金首ハンターだけど、魔物だから憎いって事はない。
俺はインディに「大丈夫だ、俺は怖くない」と言った。
その証拠に、自分の銃を置いて何も武器は持っていないと証明した。
まだインディの事は知らない、だけど団長達が信頼しているならきっといい魔物なんだと思う。
出会ったばかりだけど、俺はそう思う…俺に秘密を教えてくれたインディを信じる。
「団長達みたいに、変わった人間がまだいたんだ」
「そうか?」
「なんでそんなに簡単に言えるわけ?」
「俺自身、信用出来る魔物を知っているからだ…シリウスが居てくれたから俺…は…」
今までの俺ではこうはいかなかっただろう、でも俺はシリウスと会って考え方が変わり…魔物の事を知ろうと思えるようになった。
そこで俺はとんでもない事を言った事に気付いた。
慌ててインディの方を見ると、インディは呆然として俺を見ていた。
もしかして気付いてないのかなとホッとしたのもつかの間、インディの顔が青くなっていた。
その反応を見るに、やってしまったと後悔した。
当然のように「なんで人間には知られていないあの方の名前を知ってるの!?」と慌てていた。
だよなぁ、魔王と同じ名前なんてこの世にいるか分からないよな。
「えっと、あー…」
「あの方は人間嫌いだって聞いたわ、人間が好きな魔物なんて普通いないけど…だから私はダークエルフの森から追い出されたんだけど」
インディはそう言ってため息を吐いていた。
いろんな魔物がいて、いろんな事情がある。
シリウスが人間にも魔物にも厳しいから、インディは驚いていた。
言ってしまったけど、さすがに俺とシリウスの関係は言えない。
でも、インディには秘密を教えてもらったし…一つくらい言ってもいいかな。
だから俺は「会った事はある」とだけ言った。
嘘ではない、会った事はある…それ以上の事もしているが…
インディはそれ以上深くは聞かなかった、シリウスとの関係なんてそんなもんだと思っているからだろう。
疑り深い性格でなくて俺も良かったと思った。
インディにお大事にと言われて部屋から出ていき、俺はベッドで横になる。
話していると一瞬だけ怠さを忘れるが、やっぱり怠いものには変わりなかった。
何も考えず、目蓋を閉じる。
そして、翌朝…何事もなかったかのように出発した。
「食べ物もいっぱい買ったし、これでかなり持つぞ!」
「……」
「どうした?レイン」
「いや、何でもないよ…早く着かないかなって思って」
「慌てるなよ、まだ旅は始まったばかりなんだから!」
そうだ、まだ始まったばかりで俺はこれから大道芸人に……
いや、違う…シリウスに会いに旅をしているんだから…
次はいったい何処の街に行くのか、今度は俺もギルドに行こう。
賞金首ハンターの仕事もやらないとな、シリウスのところに行く時に無一文だといろいろと大変だからな。
次は何処を狙うか考えていたら、肩を掴まれて隣を見ると親指を立てた団長がいた。
団長が出るのを合図として、皆それぞれのパフォーマンスを見せる。
ナイフが顔スレスレにかすったり、獅子に追いかけられて、炎で足元を焦がされて、最後に剣で服を切り刻まれて裸にされた。
散々されて、へろへろになりながら「覚えてやがれ!!」お決まりの捨て台詞を吐いて、走っていった。
俺に飛びついてきて「凄いじゃんレイン!」と団長は喜んでいたが、俺はそれどころではなかった。
さっきの揺れで酒が回ったみたいで、気持ち悪い。
顔色が悪い俺を心配してくれていて、ここでちょっと休んでいくのかと聞いてきたが正直早くシリウスに追いつきたい。
だから俺は「大丈夫だから」と言って、先に進むように言った。
「無理そうだったらちゃんと言うんだよ、レインは大事な仲間なんだから」
「分かってる、ありがとう」
馬車の中に入って、再び馬車はゆっくりと動き始めた。
俺は横になりながら休んだ、またなにかが来るかもしれないから治しておかないとな。
シリウス、俺は人間の敵になったとしてもシリウスを諦める事は出来ない。
俺は本気なんだ、次会ったら何をされても絶対に離さない。
俺を本気にさせた責任はちゃんと取ってもらうからな。
馬車がゆっくり止まり、団長に体を揺すられて起こされた。
「村に着いたよ、ここで買い出しとかギルドとか寄るから宿屋に行くけど、休むなら宿屋がいいよ」
「そうだな」
まだ治っていない重い体を起こして、馬車から降りる。
俺がいたリール村みたいに小さな村で、そこで一泊する事になった。
慌てても仕方ない、こんな状態で迷いの洞窟に行くよりちゃんと休んで治した方がいいな。
皆は買い出しに向かったが、俺は宿屋で休む事にした。
するとインディが宿屋まで付いて行ってくれると言ってくれた。
これがエロゲーならなんか起きるんだろうけど、今の俺にはそんな気にはなれない。
それにこの世界は、俺が主人公の筈なのに女の子に好意を寄せられた事がないから何もないだろう。
悲しいが、仕方ないよな。
部屋の前で「ありがとう、もう大丈夫だから」と言うとインディは「じゃあ行くね」と手を振っていた。
前から人が歩いてきて、紙を見ていて前を見ていなかった。
インディの肩にぶつかり、よろけるインディを支えた。
すると、インディの頭の上にあった頭巾が取れてなにかが見えた。
普段だったら頭巾が覆って見える事はないが、ぶつかった時に少し尖った耳だ。
人間にも少し尖っている人はいるから、そういう人もいるかぐらいにしか思っていなかったが、インディの反応からそうではないのだと分かった。
顔を青くしていた。
このままのインディを放っておくわけにもいかず、部屋に入れた。
「えっと、大丈夫か?団長呼んでくる?」
「いや、いいよ……怖いって思わないの?いや、賞金首ハンターなら憎いって思うよね」
「いやいや、なんで!?インディは何もしてないだろ」
「私の耳で分かるよね」
「気にするなよ、そう言う人間も」
「私、ダークエルフ…魔物なんだよ」
インディは髪をかき上げて、耳を見せてくれた。
大道芸人の皆は知っているらしく、俺に言ったのも耳を見られたからと仲間になるから教えてくれたそうだ。
最初に俺の事を人間って言ったのはそういう理由だったのか。
俺は賞金首ハンターだけど、魔物だから憎いって事はない。
俺はインディに「大丈夫だ、俺は怖くない」と言った。
その証拠に、自分の銃を置いて何も武器は持っていないと証明した。
まだインディの事は知らない、だけど団長達が信頼しているならきっといい魔物なんだと思う。
出会ったばかりだけど、俺はそう思う…俺に秘密を教えてくれたインディを信じる。
「団長達みたいに、変わった人間がまだいたんだ」
「そうか?」
「なんでそんなに簡単に言えるわけ?」
「俺自身、信用出来る魔物を知っているからだ…シリウスが居てくれたから俺…は…」
今までの俺ではこうはいかなかっただろう、でも俺はシリウスと会って考え方が変わり…魔物の事を知ろうと思えるようになった。
そこで俺はとんでもない事を言った事に気付いた。
慌ててインディの方を見ると、インディは呆然として俺を見ていた。
もしかして気付いてないのかなとホッとしたのもつかの間、インディの顔が青くなっていた。
その反応を見るに、やってしまったと後悔した。
当然のように「なんで人間には知られていないあの方の名前を知ってるの!?」と慌てていた。
だよなぁ、魔王と同じ名前なんてこの世にいるか分からないよな。
「えっと、あー…」
「あの方は人間嫌いだって聞いたわ、人間が好きな魔物なんて普通いないけど…だから私はダークエルフの森から追い出されたんだけど」
インディはそう言ってため息を吐いていた。
いろんな魔物がいて、いろんな事情がある。
シリウスが人間にも魔物にも厳しいから、インディは驚いていた。
言ってしまったけど、さすがに俺とシリウスの関係は言えない。
でも、インディには秘密を教えてもらったし…一つくらい言ってもいいかな。
だから俺は「会った事はある」とだけ言った。
嘘ではない、会った事はある…それ以上の事もしているが…
インディはそれ以上深くは聞かなかった、シリウスとの関係なんてそんなもんだと思っているからだろう。
疑り深い性格でなくて俺も良かったと思った。
インディにお大事にと言われて部屋から出ていき、俺はベッドで横になる。
話していると一瞬だけ怠さを忘れるが、やっぱり怠いものには変わりなかった。
何も考えず、目蓋を閉じる。
そして、翌朝…何事もなかったかのように出発した。
「食べ物もいっぱい買ったし、これでかなり持つぞ!」
「……」
「どうした?レイン」
「いや、何でもないよ…早く着かないかなって思って」
「慌てるなよ、まだ旅は始まったばかりなんだから!」
そうだ、まだ始まったばかりで俺はこれから大道芸人に……
いや、違う…シリウスに会いに旅をしているんだから…
次はいったい何処の街に行くのか、今度は俺もギルドに行こう。
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