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人間の食べ物
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「どうした?」
「あ、いや…腹減ってて…ちょっと買いに行ってもいいか?」
「…あれが食べたいのか?」
「えっ、うん」
シリウスにちょっと待ってもらおうかと思った。
魔王を一人にするのはちょっと危ないかと思って、行動するなら一緒がいい。
実際、人混みでかなり眉を寄せて不機嫌そうだったからいつ王都が大惨事になるか分からない。
魔王は人間に優しくない、それはゲームでも現実の魔王の噂でも誰もが知っている事だ。
シリウスは今は何もしていないが、俺にとっても油断ならない相手だ。
決して一緒にいたいからとか、とち狂った事は絶対ない!
シリウスは一人で屋台のところに行き、少ししたら戻ってきた。
手には香ばしい匂いの一口サイズの肉が棒にいくつも刺さっている串焼きが二本あった。
「シリウス、お金持ってたんだ」
「レインは俺を何だと思っているんだ」
「…ごめん」
「これ」
シリウスは串焼きの一つを俺に渡してきて、受け取る。
なんか、デートしてるみたいじゃないか?俺達。
周りを見ると、女の人達がチラチラと俺達を見ている。
俺はシリウスの友達だとシリウスの肩に腕を回して「ありがとうな!」と自分なりに爽やかに言っていた。
シリウスはその事はスルーして俺の前に串焼きを見せていた。
シリウスは自分用に買ったと思った…人間の食べ物って食うのか?
「シリウスが食べたかったんじゃないのか?」
「いや、貰った」
「貰ったって、おまけで?」
シリウスが後ろを見ると、屋台にいるおばちゃんからハートが飛んでいて手を振っている。
顔が良ければ物が貰えるのか…イケメンって得だな。
俺はシリウスが貰ったならシリウスが食えと言った。
人間の食べ物がシリウスにとって悪いものじゃないならだけど…
シリウスは串焼きをジッと見つめていて、俺は肉を食べた。
シリウスも俺のを見て、真似するように食べた。
「どう?美味しい?」
「……分からない」
「え…」
「レインは美味いか?」
「ま、まぁ…」
「じゃあ美味いんだろうな」
そう言ってシリウスはもう一口肉を食べていた。
味は感じてるみたいだが、美味いか不味いか分からないようだ。
俺は美味しいと思うが、シリウスと俺の味覚が同じとは思えない。
黙々と食べているから食べられないほどではなさそうだ。
腹も膨れたし、俺は役所に行くから付いて来てと言うとシリウスは黙って付いて来た。
さすが王都の役所だ、リール村と違って大きい。
派手な格好をした二人組の男達が出てきて、ぶつかりそうになり間一髪シリウスに肩を引き寄せられてぶつかる事はなかった。
しかし、男達は俺達を睨んでいて舌打ちしていた。
「おい、お前」
「えっ?」
「ここら辺で見ない顔だな」
「…リール村から来た賞金首ハンターです」
そう言うと、二人の男達は顔を見合わせて笑っていた。
「田舎から来たのかよ!!」と笑われて、確かに田舎だけどバカにされる筋合いはないとムスッとした。
王都って広いからいろんな人がいるんだな。
リール村は皆穏やかな人ばかりだから、新鮮だ。
俺とシリウスを交互に見つめて、嫌な笑みを向けていた。
俺は良いとしてシリウスは怒らせたらいけないと思う。
「王都の常識、教えてやるぞ」
「…レイン、常識ってなんだ?」
「さ、さぁな」
「こっち来い!」
男達が俺とシリウスの腕を掴んでいて、すぐに悲鳴が聞こえた。
隣を見ると、シリウスの腕を掴んでいた男は地面に伏せていて逆にシリウスに腕を掴まれていた。
ギリギリと逆方向に腕を曲げていて、泣きながら命乞いをしていた。
俺の腕を掴む男の方を睨むと、自分の首を押さえて急にしゃがんで苦しみ出した。
口から血が出てきて、地面にドス黒い血を吐き出していた。
持病でもあったのか!?早く病院に運ばないと…
「シリウス!そこで見ていてくれ!今医者を呼んでくる!!」
「助けるのか?」
「当たり前だろ!ほっとくわけにはいかない!!」
「…レインは人助けが好きだな」
シリウスは呆れたような顔をしている、人助けが好きなんじゃない…そうするのが当たり前だと体が染み付いているだけだ。
役所の壁に寄りかかるシリウスに二人を任せて、俺は病院に向かった。
救急車のようなものがこの世界にあったらいいが、まず電話がない時点で無理な話だ。
病院は十字の模様だからすぐに見つける事が出来た。
滑り込むように中に入り、医者に説明して病人の近くに案内した。
医者は地面に倒れている病人を運んでいって見送った。
「これでもう大丈夫だ」
「そうなのか?」
「持病ならどうなるか分からないけど、ここにいるよりはマシだろう」
「あれは持病じゃない」
「…どういう事だ?」
「俺の殺気は人間にとっての猛毒だからな」
「あ、いや…腹減ってて…ちょっと買いに行ってもいいか?」
「…あれが食べたいのか?」
「えっ、うん」
シリウスにちょっと待ってもらおうかと思った。
魔王を一人にするのはちょっと危ないかと思って、行動するなら一緒がいい。
実際、人混みでかなり眉を寄せて不機嫌そうだったからいつ王都が大惨事になるか分からない。
魔王は人間に優しくない、それはゲームでも現実の魔王の噂でも誰もが知っている事だ。
シリウスは今は何もしていないが、俺にとっても油断ならない相手だ。
決して一緒にいたいからとか、とち狂った事は絶対ない!
シリウスは一人で屋台のところに行き、少ししたら戻ってきた。
手には香ばしい匂いの一口サイズの肉が棒にいくつも刺さっている串焼きが二本あった。
「シリウス、お金持ってたんだ」
「レインは俺を何だと思っているんだ」
「…ごめん」
「これ」
シリウスは串焼きの一つを俺に渡してきて、受け取る。
なんか、デートしてるみたいじゃないか?俺達。
周りを見ると、女の人達がチラチラと俺達を見ている。
俺はシリウスの友達だとシリウスの肩に腕を回して「ありがとうな!」と自分なりに爽やかに言っていた。
シリウスはその事はスルーして俺の前に串焼きを見せていた。
シリウスは自分用に買ったと思った…人間の食べ物って食うのか?
「シリウスが食べたかったんじゃないのか?」
「いや、貰った」
「貰ったって、おまけで?」
シリウスが後ろを見ると、屋台にいるおばちゃんからハートが飛んでいて手を振っている。
顔が良ければ物が貰えるのか…イケメンって得だな。
俺はシリウスが貰ったならシリウスが食えと言った。
人間の食べ物がシリウスにとって悪いものじゃないならだけど…
シリウスは串焼きをジッと見つめていて、俺は肉を食べた。
シリウスも俺のを見て、真似するように食べた。
「どう?美味しい?」
「……分からない」
「え…」
「レインは美味いか?」
「ま、まぁ…」
「じゃあ美味いんだろうな」
そう言ってシリウスはもう一口肉を食べていた。
味は感じてるみたいだが、美味いか不味いか分からないようだ。
俺は美味しいと思うが、シリウスと俺の味覚が同じとは思えない。
黙々と食べているから食べられないほどではなさそうだ。
腹も膨れたし、俺は役所に行くから付いて来てと言うとシリウスは黙って付いて来た。
さすが王都の役所だ、リール村と違って大きい。
派手な格好をした二人組の男達が出てきて、ぶつかりそうになり間一髪シリウスに肩を引き寄せられてぶつかる事はなかった。
しかし、男達は俺達を睨んでいて舌打ちしていた。
「おい、お前」
「えっ?」
「ここら辺で見ない顔だな」
「…リール村から来た賞金首ハンターです」
そう言うと、二人の男達は顔を見合わせて笑っていた。
「田舎から来たのかよ!!」と笑われて、確かに田舎だけどバカにされる筋合いはないとムスッとした。
王都って広いからいろんな人がいるんだな。
リール村は皆穏やかな人ばかりだから、新鮮だ。
俺とシリウスを交互に見つめて、嫌な笑みを向けていた。
俺は良いとしてシリウスは怒らせたらいけないと思う。
「王都の常識、教えてやるぞ」
「…レイン、常識ってなんだ?」
「さ、さぁな」
「こっち来い!」
男達が俺とシリウスの腕を掴んでいて、すぐに悲鳴が聞こえた。
隣を見ると、シリウスの腕を掴んでいた男は地面に伏せていて逆にシリウスに腕を掴まれていた。
ギリギリと逆方向に腕を曲げていて、泣きながら命乞いをしていた。
俺の腕を掴む男の方を睨むと、自分の首を押さえて急にしゃがんで苦しみ出した。
口から血が出てきて、地面にドス黒い血を吐き出していた。
持病でもあったのか!?早く病院に運ばないと…
「シリウス!そこで見ていてくれ!今医者を呼んでくる!!」
「助けるのか?」
「当たり前だろ!ほっとくわけにはいかない!!」
「…レインは人助けが好きだな」
シリウスは呆れたような顔をしている、人助けが好きなんじゃない…そうするのが当たり前だと体が染み付いているだけだ。
役所の壁に寄りかかるシリウスに二人を任せて、俺は病院に向かった。
救急車のようなものがこの世界にあったらいいが、まず電話がない時点で無理な話だ。
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医者は地面に倒れている病人を運んでいって見送った。
「これでもう大丈夫だ」
「そうなのか?」
「持病ならどうなるか分からないけど、ここにいるよりはマシだろう」
「あれは持病じゃない」
「…どういう事だ?」
「俺の殺気は人間にとっての猛毒だからな」
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