エロゲー主人公に転生したのに悪役若様に求愛されております

雪平@冷淡騎士2nd連載中

文字の大きさ
上 下
20 / 82

独占欲

しおりを挟む
噛んだところを労わるように、舐められてくすぐったい。

それ以上されると、腹の奥が疼いて仕方ない。

シリウスを見つめると、シリウスの瞳に囚われる。

「レインは俺のもの、誰にも見せたりしない」

「…えっ」

ピシッと横から音が聞こえて、シリウスから視線を外して横を見るとシリウスが触れている壁からヒビが出ている。

ヒビがだんだん広がっていき、ぱらぱらと崩れていきシリウスが俺の腕を引いた。

しかし、俺の体はシリウスの腕の中に閉じ込める事はなく途中で止まった。
驚いて、もう片方の腕を掴むなにかを見るために後ろを振り返る。

すると、壁に俺とシリウスの姿が映し出されていた。
壁一面が全て鏡で、俺の腕は鏡から伸びた手に握られていた。

鏡から覗く真っ赤な唇と真っ黒な瞳を見て血の気が引いた。

さっきから見ていたのはこの瞳だったのか?

腰まで髪が長い亡霊のような女性は俺の腕を引っ張っていた。
その腕をシリウスが掴んでいた。

「…俺のものに触るな」

腕を引くと、ズルズルと鏡の中から現れてシリウスは頭を掴んだ。
耳の鼓膜を揺さぶるほどの奇声を上げていて、両手で耳を塞ぐ。
塞いでも完全に聞こえないわけではなく、頭がクラクラする。

シリウスが力を込めると女性の顔が膨張して怖かった。
すると、鏡になにかが横切ったと思ったら白いものが沢山横切った。
鏡から出てきたのは布を被った魔物やゾンビだった。

この神殿ってお化け屋敷だったのか?

でも、シリウスならまだしも…このくらいの魔物なら武器がなくても倒せる。

シリウスが掴んでいる女性を助けるためか、シリウスに向かって襲ってきたから俺は足で蹴った。
本物の幽霊なら触れられないけど、魔物なら話は別だ。

「これで、貸し借りなしだからな」

「レインなら貸し借りはいらない」

「……それじゃあ俺がモヤモヤするんだよ」

さっき鏡の手から助けてくれたから、俺もシリウスを守り貸し借りはチャラだ。
とはいえ、シリウスに襲いかかろうとしている魔物だがシリウスの無意識に体にまとっている魔力のオーラに怯えて近付けずにウロウロしていた。
人間の俺でさえ直接シリウスの殺気を浴びたらどうなるか分からない。

かっこいい事を言ったが、はたして俺は必要だったのか疑問だ。
それでもなにかあるか分からないから、魔物を殴って戦う。

ハァハァ…と息を吐いて、シリウスの方を見た。

女性の顔が風船のように限界が来ていて苦しそうだ。

「…消えろ」

小さくシリウスがそう呟くと、女性の体が破裂して大きな鏡が割れた。

すると、さっきまで神殿の中にいたのに真っ暗な空間に変わった。
何も見えない、シリウスも……いったい何処だ。
手を伸ばして手探りで探すと、なにかが手に触れた。

すぐに手を掴まれて、引き寄せられた。

温かいなにかに包まれると、変な話…少しだけ安心を覚えた。

シリウスが俺のにおいと言ったようにシリウスのにおいを感じた。
甘く脳を溶けさせる危険な香り…魔王に堕落させられた人のような気分だ。

一つ、瞬きをすると視界が再び変わり……そこは俺が寝ていた神殿の部屋だった。

俺はシリウスに抱きしめられたまま座っていて、俺達の前には壊れた鏡が落ちていた。
あの場所がまるで幻だったかのように、静まり返っていた。
視線も、飛んでいた魔物も何もかもなくなっていた。

「…どうなってたんだ?」

「親玉を消したから全て居なくなったんだろう」

「親玉?」

「ここは死んだ人間が彷徨う神殿だ」

死んだ人間……という事はやはりあの魔物は亡霊だったという事か?
そしてシリウスが倒したのは、この神殿に取り憑いた女性の亡霊だったらしい。
他の亡霊はその女性の亡霊が生み出した残像のようなものらしい。

俺がいた場所は鏡の中の世界だったらしい。
寝ている間に連れてこられていたようだ。

シリウスが来なかったら、あのまま一生誰にも気付かれず鏡の中で死んで肉体を乗っ取られていたそうだ。
そう思うと、ゾッと鳥肌が立ってシリウスの服をギュッと掴んだ。

シリウスは俺の方に体重を乗せてきて、体を逸らしながら驚いた。

「なっ、なんだ?」

「もう誰も見ていない、だから……」

「ちょっ、待て待て!!」

シリウスが俺に唇を押し付けてきて、とっさで手でガードした。
不機嫌そうに眉を寄せるシリウスに焦る。

こんな場所でするのは衛生的にどうかと思う!……いや、そういう問題か?

そうシリウスに言うと「なら、俺の城に行く」と言っていた。
それって、また魔界に行くって事じゃないか。
ダメだ、あんなところに居たら今度こそ帰れなくなる。
常に命を狙われている生活なんてしたくない。

シリウスを見る、俺に下半身を押し付けてくる。
通常時もデカいと分かるが、さらに興奮していると恐ろしい凶器になる。
擦り付けるな、耳元で息を吹き掛けるな……変な気分になるだろ!

「待って、ダメ…ダメだから」

「じゃあ何処ならいいんだ?」

「……お、俺の家…なら」

リール村に魔王なんて連れて来て大丈夫なのかと不安がないわけではない。

でも、今のシリウスがリール村に行く理由は村を滅ぼすためではなく俺とするためだ。
だから…大丈夫だろう、そもそもリール村を滅ぼしたところでシリウスの得にはならないだろう。
自分の村だが、本当に田舎なんだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

王弟様の溺愛が重すぎるんですが、未来では捨てられるらしい

めがねあざらし
BL
王国の誇りとされる王弟レオナード・グレイシアは優れた軍事司令官であり、その威厳ある姿から臣下の誰もが畏敬の念を抱いていた。 しかし、そんな彼が唯一心を許し、深い愛情を注ぐ相手が王宮文官を務めるエリアス・フィンレイだった。地位も立場も異なる二人だったが、レオは執拗なまでに「お前は私のものだ」と愛を囁く。 だが、ある日エリアスは親友の内査官カーティスから奇妙な言葉を告げられる。「近く“御子”が現れる。そしてレオナード様はその御子を愛しお前は捨てられる」と。 レオナードの変わらぬ愛を信じたいと願うエリアスだったが、心の奥底には不安が拭えない。 そしてついに、辺境の村で御子が発見されたとの報せが王宮に届いたのだった──。

悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る

竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。 子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。 ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。 神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。 公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。 それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。 だが、王子は知らない。 アレンにも王位継承権があることを。 従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!? *誤字報告ありがとうございます! *カエサル=プレート 修正しました。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...