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独占欲
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噛んだところを労わるように、舐められてくすぐったい。
それ以上されると、腹の奥が疼いて仕方ない。
シリウスを見つめると、シリウスの瞳に囚われる。
「レインは俺のもの、誰にも見せたりしない」
「…えっ」
ピシッと横から音が聞こえて、シリウスから視線を外して横を見るとシリウスが触れている壁からヒビが出ている。
ヒビがだんだん広がっていき、ぱらぱらと崩れていきシリウスが俺の腕を引いた。
しかし、俺の体はシリウスの腕の中に閉じ込める事はなく途中で止まった。
驚いて、もう片方の腕を掴むなにかを見るために後ろを振り返る。
すると、壁に俺とシリウスの姿が映し出されていた。
壁一面が全て鏡で、俺の腕は鏡から伸びた手に握られていた。
鏡から覗く真っ赤な唇と真っ黒な瞳を見て血の気が引いた。
さっきから見ていたのはこの瞳だったのか?
腰まで髪が長い亡霊のような女性は俺の腕を引っ張っていた。
その腕をシリウスが掴んでいた。
「…俺のものに触るな」
腕を引くと、ズルズルと鏡の中から現れてシリウスは頭を掴んだ。
耳の鼓膜を揺さぶるほどの奇声を上げていて、両手で耳を塞ぐ。
塞いでも完全に聞こえないわけではなく、頭がクラクラする。
シリウスが力を込めると女性の顔が膨張して怖かった。
すると、鏡になにかが横切ったと思ったら白いものが沢山横切った。
鏡から出てきたのは布を被った魔物やゾンビだった。
この神殿ってお化け屋敷だったのか?
でも、シリウスならまだしも…このくらいの魔物なら武器がなくても倒せる。
シリウスが掴んでいる女性を助けるためか、シリウスに向かって襲ってきたから俺は足で蹴った。
本物の幽霊なら触れられないけど、魔物なら話は別だ。
「これで、貸し借りなしだからな」
「レインなら貸し借りはいらない」
「……それじゃあ俺がモヤモヤするんだよ」
さっき鏡の手から助けてくれたから、俺もシリウスを守り貸し借りはチャラだ。
とはいえ、シリウスに襲いかかろうとしている魔物だがシリウスの無意識に体にまとっている魔力のオーラに怯えて近付けずにウロウロしていた。
人間の俺でさえ直接シリウスの殺気を浴びたらどうなるか分からない。
かっこいい事を言ったが、はたして俺は必要だったのか疑問だ。
それでもなにかあるか分からないから、魔物を殴って戦う。
ハァハァ…と息を吐いて、シリウスの方を見た。
女性の顔が風船のように限界が来ていて苦しそうだ。
「…消えろ」
小さくシリウスがそう呟くと、女性の体が破裂して大きな鏡が割れた。
すると、さっきまで神殿の中にいたのに真っ暗な空間に変わった。
何も見えない、シリウスも……いったい何処だ。
手を伸ばして手探りで探すと、なにかが手に触れた。
すぐに手を掴まれて、引き寄せられた。
温かいなにかに包まれると、変な話…少しだけ安心を覚えた。
シリウスが俺のにおいと言ったようにシリウスのにおいを感じた。
甘く脳を溶けさせる危険な香り…魔王に堕落させられた人のような気分だ。
一つ、瞬きをすると視界が再び変わり……そこは俺が寝ていた神殿の部屋だった。
俺はシリウスに抱きしめられたまま座っていて、俺達の前には壊れた鏡が落ちていた。
あの場所がまるで幻だったかのように、静まり返っていた。
視線も、飛んでいた魔物も何もかもなくなっていた。
「…どうなってたんだ?」
「親玉を消したから全て居なくなったんだろう」
「親玉?」
「ここは死んだ人間が彷徨う神殿だ」
死んだ人間……という事はやはりあの魔物は亡霊だったという事か?
そしてシリウスが倒したのは、この神殿に取り憑いた女性の亡霊だったらしい。
他の亡霊はその女性の亡霊が生み出した残像のようなものらしい。
俺がいた場所は鏡の中の世界だったらしい。
寝ている間に連れてこられていたようだ。
シリウスが来なかったら、あのまま一生誰にも気付かれず鏡の中で死んで肉体を乗っ取られていたそうだ。
そう思うと、ゾッと鳥肌が立ってシリウスの服をギュッと掴んだ。
シリウスは俺の方に体重を乗せてきて、体を逸らしながら驚いた。
「なっ、なんだ?」
「もう誰も見ていない、だから……」
「ちょっ、待て待て!!」
シリウスが俺に唇を押し付けてきて、とっさで手でガードした。
不機嫌そうに眉を寄せるシリウスに焦る。
こんな場所でするのは衛生的にどうかと思う!……いや、そういう問題か?
そうシリウスに言うと「なら、俺の城に行く」と言っていた。
それって、また魔界に行くって事じゃないか。
ダメだ、あんなところに居たら今度こそ帰れなくなる。
常に命を狙われている生活なんてしたくない。
シリウスを見る、俺に下半身を押し付けてくる。
通常時もデカいと分かるが、さらに興奮していると恐ろしい凶器になる。
擦り付けるな、耳元で息を吹き掛けるな……変な気分になるだろ!
「待って、ダメ…ダメだから」
「じゃあ何処ならいいんだ?」
「……お、俺の家…なら」
リール村に魔王なんて連れて来て大丈夫なのかと不安がないわけではない。
でも、今のシリウスがリール村に行く理由は村を滅ぼすためではなく俺とするためだ。
だから…大丈夫だろう、そもそもリール村を滅ぼしたところでシリウスの得にはならないだろう。
自分の村だが、本当に田舎なんだ。
それ以上されると、腹の奥が疼いて仕方ない。
シリウスを見つめると、シリウスの瞳に囚われる。
「レインは俺のもの、誰にも見せたりしない」
「…えっ」
ピシッと横から音が聞こえて、シリウスから視線を外して横を見るとシリウスが触れている壁からヒビが出ている。
ヒビがだんだん広がっていき、ぱらぱらと崩れていきシリウスが俺の腕を引いた。
しかし、俺の体はシリウスの腕の中に閉じ込める事はなく途中で止まった。
驚いて、もう片方の腕を掴むなにかを見るために後ろを振り返る。
すると、壁に俺とシリウスの姿が映し出されていた。
壁一面が全て鏡で、俺の腕は鏡から伸びた手に握られていた。
鏡から覗く真っ赤な唇と真っ黒な瞳を見て血の気が引いた。
さっきから見ていたのはこの瞳だったのか?
腰まで髪が長い亡霊のような女性は俺の腕を引っ張っていた。
その腕をシリウスが掴んでいた。
「…俺のものに触るな」
腕を引くと、ズルズルと鏡の中から現れてシリウスは頭を掴んだ。
耳の鼓膜を揺さぶるほどの奇声を上げていて、両手で耳を塞ぐ。
塞いでも完全に聞こえないわけではなく、頭がクラクラする。
シリウスが力を込めると女性の顔が膨張して怖かった。
すると、鏡になにかが横切ったと思ったら白いものが沢山横切った。
鏡から出てきたのは布を被った魔物やゾンビだった。
この神殿ってお化け屋敷だったのか?
でも、シリウスならまだしも…このくらいの魔物なら武器がなくても倒せる。
シリウスが掴んでいる女性を助けるためか、シリウスに向かって襲ってきたから俺は足で蹴った。
本物の幽霊なら触れられないけど、魔物なら話は別だ。
「これで、貸し借りなしだからな」
「レインなら貸し借りはいらない」
「……それじゃあ俺がモヤモヤするんだよ」
さっき鏡の手から助けてくれたから、俺もシリウスを守り貸し借りはチャラだ。
とはいえ、シリウスに襲いかかろうとしている魔物だがシリウスの無意識に体にまとっている魔力のオーラに怯えて近付けずにウロウロしていた。
人間の俺でさえ直接シリウスの殺気を浴びたらどうなるか分からない。
かっこいい事を言ったが、はたして俺は必要だったのか疑問だ。
それでもなにかあるか分からないから、魔物を殴って戦う。
ハァハァ…と息を吐いて、シリウスの方を見た。
女性の顔が風船のように限界が来ていて苦しそうだ。
「…消えろ」
小さくシリウスがそう呟くと、女性の体が破裂して大きな鏡が割れた。
すると、さっきまで神殿の中にいたのに真っ暗な空間に変わった。
何も見えない、シリウスも……いったい何処だ。
手を伸ばして手探りで探すと、なにかが手に触れた。
すぐに手を掴まれて、引き寄せられた。
温かいなにかに包まれると、変な話…少しだけ安心を覚えた。
シリウスが俺のにおいと言ったようにシリウスのにおいを感じた。
甘く脳を溶けさせる危険な香り…魔王に堕落させられた人のような気分だ。
一つ、瞬きをすると視界が再び変わり……そこは俺が寝ていた神殿の部屋だった。
俺はシリウスに抱きしめられたまま座っていて、俺達の前には壊れた鏡が落ちていた。
あの場所がまるで幻だったかのように、静まり返っていた。
視線も、飛んでいた魔物も何もかもなくなっていた。
「…どうなってたんだ?」
「親玉を消したから全て居なくなったんだろう」
「親玉?」
「ここは死んだ人間が彷徨う神殿だ」
死んだ人間……という事はやはりあの魔物は亡霊だったという事か?
そしてシリウスが倒したのは、この神殿に取り憑いた女性の亡霊だったらしい。
他の亡霊はその女性の亡霊が生み出した残像のようなものらしい。
俺がいた場所は鏡の中の世界だったらしい。
寝ている間に連れてこられていたようだ。
シリウスが来なかったら、あのまま一生誰にも気付かれず鏡の中で死んで肉体を乗っ取られていたそうだ。
そう思うと、ゾッと鳥肌が立ってシリウスの服をギュッと掴んだ。
シリウスは俺の方に体重を乗せてきて、体を逸らしながら驚いた。
「なっ、なんだ?」
「もう誰も見ていない、だから……」
「ちょっ、待て待て!!」
シリウスが俺に唇を押し付けてきて、とっさで手でガードした。
不機嫌そうに眉を寄せるシリウスに焦る。
こんな場所でするのは衛生的にどうかと思う!……いや、そういう問題か?
そうシリウスに言うと「なら、俺の城に行く」と言っていた。
それって、また魔界に行くって事じゃないか。
ダメだ、あんなところに居たら今度こそ帰れなくなる。
常に命を狙われている生活なんてしたくない。
シリウスを見る、俺に下半身を押し付けてくる。
通常時もデカいと分かるが、さらに興奮していると恐ろしい凶器になる。
擦り付けるな、耳元で息を吹き掛けるな……変な気分になるだろ!
「待って、ダメ…ダメだから」
「じゃあ何処ならいいんだ?」
「……お、俺の家…なら」
リール村に魔王なんて連れて来て大丈夫なのかと不安がないわけではない。
でも、今のシリウスがリール村に行く理由は村を滅ぼすためではなく俺とするためだ。
だから…大丈夫だろう、そもそもリール村を滅ぼしたところでシリウスの得にはならないだろう。
自分の村だが、本当に田舎なんだ。
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