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怪しい男
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それを知ったのは翌朝の事で、俺とシリウスは呑気に朝食を食べていた。
城の周辺を兵士がウロウロしていたらしく、何かを探していたらしい。
それが宝玉を奪った奴を探しているのだと俺達は知っている。
野菜を食べるのを止めて、テーブルに身を乗り出してシリウスに小声で話す。
「シリウス、バレたりしないよな」
「心配ない、宝玉に魅入られた奴らは操られている記憶すらない…俺達を見た奴はいない」
「…そっか、良かった」
シリウスの場合奪ったわけではなくて返してもらったのにな。
バレる前に早めに出ないとな、と朝食を口に押し込む。
いつ食えるか分からないから、食事はちゃんと食べないとな。
次は西に宝玉があると言っていた、西の大陸には確か船がないと行けないんだよな。
あそこはリール村のように田舎だったと思う。
船か、乗った事がないから子供のように少しワクワクする。
立ち上がり、宿屋を出ようと思ったが後ろから誰かに呼び止められた。
あんな騒ぎの話をした中で、いきなり声を掛けられてドキリと心臓が跳ねた。
隣のシリウスを見ると、俺の肩を抱いて相手に見えないように隠した。
どうしようかと相談したかっただけだから、そこまではしなくていいのに…
「あのー、すみません」
「なんだ」
「ちょっと道をお尋ねしたくて」
ただの道に迷った人みたいで、ホッと安堵した。
深くフードを被っているが、口調は明るい感じだ。
いろんな人がいるが、雰囲気でそんな悪い人には見えなかった。
シリウスは男を全身見て、眉を寄せていた。
そんなに怒る事はないだろ…と落ち着かせようとした。
シリウスは男に一言「俺達も旅人だから分からない」と言って、俺の肩を抱いたまま歩き出した。
さっきの道、広場で見かけたから教えてやればいいのに…
「シリウス、どうかしたのか?」
「…あの男、何者だ?」
「何者って、人間だろ」
俺がそう言うと、シリウスは考える仕草をした。
もしかして魔物?魔物でもシリウスがこんな深く眉を寄せる事はあるだろうか。
後ろを振り返ると、まだフードの男がいて俺の視線に気付き手を振っていた。
シリウスは「あの剣から俺の魔力を感じた」と衝撃の事を言っていた。
剣って、確かにさっきの男は剣を持っていたがありきたりな普通の銀色の剣だと思っていた。
でもシリウスの魔力を感じる剣って、シリウスの剣?
「シリウス、その腰に下げている剣以外にシリウスの剣はあるのか?」
「…使っていない剣ならいくつか城にあるが」
じゃあ一本くらい盗まれたんじゃないのか?宝玉のように…
そこで気付いて、シリウスの方を見た。
シリウスの宝玉ってもしかして、ソイツが盗んだんじゃないのか?
慌てて宿屋に戻ったが、そこには誰もいなかった。
確認出来なかったが、考えれば考えるほど変な人だった気がする。
シリウスは「俺の剣は宝玉同様に俺の力が具現化したものだから人間どころか他の魔物が持つ事すらありえない」とはっきり言った。
だとしたら、アイツはいったい何者なのか…ますます分からない。
他にシリウスの力を感じるとなったら、シリウスの私物を持って居るとかか?
考えてもアイツは居ないし、何も進展はしない。
シリウスは船乗り場に向かう前に行きたいところがあると言っていた。
俺は次の旅の身支度をしたかったが、シリウスを一人に出来ないから付き合う事にした。
すると、また森にやってきた。
透明魔物を呼んだ時以来だから、かなり最近だ。
「また魔物でも召喚するのか?」
「召喚ではなく、呼ぶんだ」
そう言ったシリウスは呪文を唱えるように小さく「レオナルド」と言っていた。
その言葉を聞き、俺は身構えてしまう。
レオナルドって言ったらシリウスの右腕で、俺の事を嫌っているという印象だ。
少し離れて見てみたら、シリウスの前から突風が吹いた。
踏ん張れず、少し転けて尻餅を付いた。
そして、膝を付いて頭を下げているレオナルドがやってきた。
あんな小さな声一つ聞き逃さないなんて、さすが過保護は名だけじゃないと思った。
「レオナルド、俺の力を持つ人間を見かけた」
「若様の!?どういう事ですか!?」
「もしかしたら宝玉を食ったのかもしれない」
「宝玉って食えるのか!?」
シリウスの言葉を聞いて、つい大きな声を上げた。
宝玉は俺の中にあるが、食ったわけではなくシリウスの影響だが食べる事も出来るのか?
でも触れたら死ぬっていうけど、食べたら大丈夫なのか?
レオナルドは視線をシリウスから俺に一瞬だけ目線を向けた。
人を殺すのに充分そうなほどの眼力で睨みつけられた。
背筋が冷たくなり、木の影に隠れた。
シリウスがいなかったら、今にも飛びかかってきそうだ。
「若様、何故この人間が?」
「レインの体の中には、俺の宝玉がある」
「こいつまで若様の力を!?殺して腹の中を裂きましょう!」
「ひぃっ!?」
「レオナルド、俺のものだと言っただろ」
「申し訳ございません!!」
レオナルドは地面に顔を埋める勢いで土下座をしていた。
城の周辺を兵士がウロウロしていたらしく、何かを探していたらしい。
それが宝玉を奪った奴を探しているのだと俺達は知っている。
野菜を食べるのを止めて、テーブルに身を乗り出してシリウスに小声で話す。
「シリウス、バレたりしないよな」
「心配ない、宝玉に魅入られた奴らは操られている記憶すらない…俺達を見た奴はいない」
「…そっか、良かった」
シリウスの場合奪ったわけではなくて返してもらったのにな。
バレる前に早めに出ないとな、と朝食を口に押し込む。
いつ食えるか分からないから、食事はちゃんと食べないとな。
次は西に宝玉があると言っていた、西の大陸には確か船がないと行けないんだよな。
あそこはリール村のように田舎だったと思う。
船か、乗った事がないから子供のように少しワクワクする。
立ち上がり、宿屋を出ようと思ったが後ろから誰かに呼び止められた。
あんな騒ぎの話をした中で、いきなり声を掛けられてドキリと心臓が跳ねた。
隣のシリウスを見ると、俺の肩を抱いて相手に見えないように隠した。
どうしようかと相談したかっただけだから、そこまではしなくていいのに…
「あのー、すみません」
「なんだ」
「ちょっと道をお尋ねしたくて」
ただの道に迷った人みたいで、ホッと安堵した。
深くフードを被っているが、口調は明るい感じだ。
いろんな人がいるが、雰囲気でそんな悪い人には見えなかった。
シリウスは男を全身見て、眉を寄せていた。
そんなに怒る事はないだろ…と落ち着かせようとした。
シリウスは男に一言「俺達も旅人だから分からない」と言って、俺の肩を抱いたまま歩き出した。
さっきの道、広場で見かけたから教えてやればいいのに…
「シリウス、どうかしたのか?」
「…あの男、何者だ?」
「何者って、人間だろ」
俺がそう言うと、シリウスは考える仕草をした。
もしかして魔物?魔物でもシリウスがこんな深く眉を寄せる事はあるだろうか。
後ろを振り返ると、まだフードの男がいて俺の視線に気付き手を振っていた。
シリウスは「あの剣から俺の魔力を感じた」と衝撃の事を言っていた。
剣って、確かにさっきの男は剣を持っていたがありきたりな普通の銀色の剣だと思っていた。
でもシリウスの魔力を感じる剣って、シリウスの剣?
「シリウス、その腰に下げている剣以外にシリウスの剣はあるのか?」
「…使っていない剣ならいくつか城にあるが」
じゃあ一本くらい盗まれたんじゃないのか?宝玉のように…
そこで気付いて、シリウスの方を見た。
シリウスの宝玉ってもしかして、ソイツが盗んだんじゃないのか?
慌てて宿屋に戻ったが、そこには誰もいなかった。
確認出来なかったが、考えれば考えるほど変な人だった気がする。
シリウスは「俺の剣は宝玉同様に俺の力が具現化したものだから人間どころか他の魔物が持つ事すらありえない」とはっきり言った。
だとしたら、アイツはいったい何者なのか…ますます分からない。
他にシリウスの力を感じるとなったら、シリウスの私物を持って居るとかか?
考えてもアイツは居ないし、何も進展はしない。
シリウスは船乗り場に向かう前に行きたいところがあると言っていた。
俺は次の旅の身支度をしたかったが、シリウスを一人に出来ないから付き合う事にした。
すると、また森にやってきた。
透明魔物を呼んだ時以来だから、かなり最近だ。
「また魔物でも召喚するのか?」
「召喚ではなく、呼ぶんだ」
そう言ったシリウスは呪文を唱えるように小さく「レオナルド」と言っていた。
その言葉を聞き、俺は身構えてしまう。
レオナルドって言ったらシリウスの右腕で、俺の事を嫌っているという印象だ。
少し離れて見てみたら、シリウスの前から突風が吹いた。
踏ん張れず、少し転けて尻餅を付いた。
そして、膝を付いて頭を下げているレオナルドがやってきた。
あんな小さな声一つ聞き逃さないなんて、さすが過保護は名だけじゃないと思った。
「レオナルド、俺の力を持つ人間を見かけた」
「若様の!?どういう事ですか!?」
「もしかしたら宝玉を食ったのかもしれない」
「宝玉って食えるのか!?」
シリウスの言葉を聞いて、つい大きな声を上げた。
宝玉は俺の中にあるが、食ったわけではなくシリウスの影響だが食べる事も出来るのか?
でも触れたら死ぬっていうけど、食べたら大丈夫なのか?
レオナルドは視線をシリウスから俺に一瞬だけ目線を向けた。
人を殺すのに充分そうなほどの眼力で睨みつけられた。
背筋が冷たくなり、木の影に隠れた。
シリウスがいなかったら、今にも飛びかかってきそうだ。
「若様、何故この人間が?」
「レインの体の中には、俺の宝玉がある」
「こいつまで若様の力を!?殺して腹の中を裂きましょう!」
「ひぃっ!?」
「レオナルド、俺のものだと言っただろ」
「申し訳ございません!!」
レオナルドは地面に顔を埋める勢いで土下座をしていた。
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