エロゲー主人公に転生したのに悪役若様に求愛されております

雪平@冷淡騎士2nd連載中

文字の大きさ
上 下
32 / 82

聞き込み

しおりを挟む
そのまま一階のレストランを通り過ぎて宿屋の外に出た。

来たのは街外れの森の中だ、綺麗な小川が流れている。
しゃがんで小川を見ると、ぴちゃんと小さな魚が飛び跳ねてビックリして尻餅をついた。
恥ずかしさを紛らわすために、シリウスの方を見ると手をかざしてなにか呪文を口にしていた。

「来い、我が使い魔」

シリウスの前に真っ赤な魔法陣が現れて、光り輝いた。
やがて光が消えて、そこには何もいなかった。

召喚でも失敗したのかと思ったが、シリウスは満足そうにしていた。
よく目を凝らして見てみると、姿はないが人の形をした影はあった。

…もしかして、透明人間ってやつか?この場合は透明人間じゃなくて透明悪魔?

恐る恐る手を伸ばしてみると、むにゅっと柔らかい感触がした。
その瞬間、俺は頭を地面に付ける勢いで思いっきり土下座をした。

「ごめんなさいごめんなさい、女の子だとは思わなくてごめんなさい」

「大丈夫だ、気にしていないそうだ」

シリウスの使い魔は喋れないのか、くねくね影が動いているだけだった。
人間には分からない信号があるのかもしれない、多分。

シリウスは透明魔物に一言だけ「行け」と命令すると影が走っていった。
あの姿、多分裸だよな…エロゲーだからか女性の魔物はかなり露出があった事を思い出した。

俺だって男だ、いくら透明魔物だとしても目のやり場に困ってしまう。

シリウスは用事が終わったのか、宿屋に向かって歩き出したから後ろから付いて行く。

「シリウス、あの使い魔に何を命令したんだ?」

「宝玉の場所を調べる事とそこに行くまでの道を作る事を命令した」

なるほど、確かに透明だったらバレる事はなさそうだ。
でも一言だけでそこまで分かるなんて、やっぱりテレパシーでもあるのか?

シリウスの使い魔が調べてくれているが、俺も情報を集めれば役に立つかもしれない。

宿屋に戻ってきて、情報収集だけじゃ悪いから席に座り注文した。
やってきたウェイトレスの女性は、俺が注文してるのにシリウスばかりチラチラ見ていた。
……べ、別にいいさ…男の俺から見てもシリウスは美形だからな…………泣いてない!

「シリウスは何食うんだ?」とメニュー表の紙を見せたが首を傾げていた。

そういえば人間の食べ物って食べた事ないんだっけ、じゃあ俺のと同じでいいか。
俺は山盛り肉丼を二人前頼んだ、さっき肉を食べていた時不味そうにしてなかったし、肉が食えないわけではないのだろう。

「……肉?」

「そう、さっきと同じ肉だけど大丈夫か?」

「人間の?」

シリウスの言葉に飲んでいた水を吹き出すところだった。
食欲を削ぐ事言うなよ、そんなわけないだろ。

俺は牛っていう獣の肉を使ってると言った、この世界の牛豚鳥は食獣しょくじゅうという食べるために生まれてきた動物がいる、生前の世界みたいにペットとして飼っている人は一人もいない。
食べるために死んで食べるために生まれ変わる生き物だ。

だから気にする事はない、食獣も食べられる事が幸せなんだから…
その代わり、ちゃんと残さず美味しく食べないとな。

「シリウス、食獣食べた事ないのか?」

「あるが、味付けは人間のとは違う…いつもレオナルドが作っているからな」

レオナルドって魔王の側近で俺を殺そうとした男だよな。
そんな男がエプロンをしてキッチンで料理を作るところを想像して何とも言えない気分になった。
かなりシリウスに心酔している感じだったから、きっと身の回りの世話もしているんだろうな。

シリウスは人間と魔物の肉以外なら食べると言っていた。
好き嫌いというより、体が受け付けないといった感じなのかもしれない。

俺だって人間と魔物は食いたくない、想像するだけで気持ち悪くなる。

水を一気に飲んで、今から食事をするんだから気持ちを切り替えた。

「明日のパーティ何を着て行こうかしら」

「ヴァルド様の誕生パーティだ、あまり派手な服装は…」

近くの席にいた年配の夫婦が会話をしているのが耳に入った。
ヴァルドとは、この国の王の名前…国も王都をヴァルドという名前だ。

苗字ではなく名前を国の名前にするなんて自己顕示欲の塊のようだと最初に名前の由来を聞いた時そう思った。

明日パーティか、パーティはやっぱり城で行われるのが普通だ。
だとしたら、簡単に城に入れるかもしれない。

でも、やっぱりパーティーだからチケットがないと入れないんだよな。

どうやったらチケットが手に入るんだろう、国王の誕生パーティーだったら身内だけを集めてやるとは考えにくい…大勢に祝ってもらいたいだろうし…
椅子から立ち上がり、夫婦のところに近付いた。

突然来た俺に対して、当然不審な顔をしている。

「すみません、お尋ねしたい事がありまして」

「………なにか?」

「国王様の誕生パーティーってどうやったら参加出来るんですか?」

そう聞いた途端、不審な顔が更に不審になり…変質者を見るような顔になった。
聞いただけなのになんでそんな顔をされないといけないんだ。

ただの一般人は参加出来ないって事なのか?そう上手くはいかないか。

俺は笑って誤魔化して、自分の席に戻った。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

モブ兄に転生した俺、弟の身代わりになって婚約破棄される予定です

深凪雪花
BL
テンプレBL小説のヒロイン♂の兄に異世界転生した主人公セラフィル。可愛い弟がバカ王太子タクトスに傷物にされる上、身に覚えのない罪で婚約破棄される未来が許せず、先にタクトスの婚約者になって代わりに婚約破棄される役どころを演じ、弟を守ることを決める。 どうにか婚約に持ち込み、あとは婚約破棄される時を待つだけ、だったはずなのだが……え、いつ婚約破棄してくれるんですか? ※★は性描写あり。

処理中です...