エロゲー主人公に転生したのに悪役若様に求愛されております

雪平@冷淡騎士2nd連載中

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裏の話

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コツコツと冷たい石造りの地面を歩く足音を響かせた。
その足音を聞くだけで、魔物達は脅え…その存在にひれ伏す。

白い軍服に真っ赤なマントをはためかせて、切れ長の瞳はまっすぐ見つめていた。
血で染めたような真っ赤な瞳に、糸のような繊細な銀髪が揺れる。

ぐちゃぐちゃと、うるさい音が聞こえる…意地汚い下級魔族が人を食らう音だろう。

城の中では聞かないが、ここはいろんな魔物が住む無法地帯だいろんな奴らがいる。

「へへっ、魔王様…これ食いますか?もう死んでますがまだ新鮮ですぜ」

ヨダレを垂らしながら魔王と呼ばれた青年に向かって、腕だけになった物体を差し出していた。
眉を寄せて、目を逸らす…そんなものを食べるのは下級魔族ぐらいだ。

魔王として、定期的に城下町を覗かないといろんなトラブルを招く。
人間を食らうのは別に構わないが、魔物同士の共食いや派手な行動をして賞金首ハンターに殺されたりする。
自業自得ではあるが、魔王として魔界の秩序を乱す行為は許されない。

最近は魔物の暴走化も目立つようになり、仕事も増えていた。
人間共の行動も大胆になってきて、そろそろ分からせる必要が出てきた。

誰が一番強いのか…魔物も人間でさえも支配する。

しつこく腕を押し付けてくる下級魔族にイラついていたら下級魔族の腕が吹っ飛んだ。
魔王は腰に下げていた剣を握ってはいたが鞘は抜いていない。
隣を見ると、大剣を下級魔族に向けている大男がいた。

「若様に汚いものを見せるでない!!」

「レオナルド」

名を呼ぶと、すぐに膝を折り魔王に頭を下げた。

レオナルドは魔王の右腕である、怪力が自慢の男だ。
ゴーレムの種族だが、見た目は人間のおっさんとそう変わらない容姿だ。
レオナルドは魔王に絶対忠誠を誓う、魔物や人間達から鬼将軍と呼ばれている。
腕を切り落とされた魔物は雄叫びを上げながら、吹っ飛んだ腕を探していた。

城下町でもまだ魔王に無礼を働く者がいるとは思わなかった。
レオナルドが来なかったら、この剣で首を切り落としていただろう。
グッと剣を握りしめて、そろそろ城に帰ろうと歩き出した。
後ろからレオナルドが付いて来る。

「若様!やはり貴方様が城下町に訪れるのは危険です!あのような不届き者がまた現れるかもしれない」

「危険?なにがだ」

「…い、いえ…若様があのような者達を見るのはお目汚しになるかと」

レオナルドが言いたい事は分かってる、教育に悪いと言っているのだろう。
いつまで子供のままで時が止まっているのか。
小さな頃からレオナルドに育てられてきたが、もう大人だというのに過保護が過ぎる。

昨日は雨が激しくて、水溜まりが目の前にあった。
特に理由はないが、足を止めて水溜まりを覗き込んだ。

人間離れした美しい容姿に尖った耳をしている男が映し出された。
すると、急に水溜まりが消えて代わりにレオナルドが地面に寝そべっている。

「若様!お靴が汚れますので私の上にお乗り下さい!」

「レオナルド」

「はい!」

「帰ったら服を着替えた方がいい」

そう一言だけ言って、レオナルドを避けるように歩いた。
さすがに仲間の背を踏みつけてまでまっすぐに進みたいと思わない。
レオナルドは残念そうにしながら、全身泥だらけで魔王に付かないように離れて歩いていた。

城が見えると門番をしている鎧ゴースト達が敬礼をしていた。

そして、小さな影が近付いてきて飛び付いてきた。
魔王は微動だにせず、下を向くと小さな影も上を見上げる。

「おかえりなさい!シリウス様」

「ただいま、フェザー」

「おいフェザー!!若様になんて馴れ馴れしい…」

「ちょっとおっさんうるさいんだけど」

フェザーと呼ばれた悪魔は魔王の腰に腕を巻き付けてレオナルドに向かって舌を出していた。
桃色の髪にショートカットで、胸は隠れているが腹が出ていて人を惑わすハートの淫紋がへその下にある。
パンツと見違えるほど短いズボンを穿いている。

見た目はどう見ても美少女だが、彼はちゃんと付いているものは付いている少年だ。
サキュバスと呼ばれる、精液を主食とする淫魔だ。

一般的は男はインキュバスと言われているが、彼は体内に精液を取り込むから女型であるサキュバスと言われている。

魔王を見つめて、ペロリと妖艶に舌で唇を舐めた。

「シリウス様ぁ、僕とお試しでしてみませんか?絶対満足出来ますよぉ」

「卑しい悪魔が!若様に何を言っている!!」

「うるさい筋肉ダルマだなぁ、お前とは頼まれてもしないよーだ」

「私だってお前なんてお断りだ!!」

レオナルドとフェザーが言い合いをしていて、いつも間に挟まれている魔王はうんざりしている。
腰に絡みつくフェザーの腕を外して、城の中に入ろうと歩き出した。

何処からか雄叫びのような鳴き声が響いて立ち止まった。
フェザーは「がおがおがまたお腹壊すものでも拾ってきたのかな?」と言っていた。

がおがおとはフェザーのペットである恐竜の魔物だ。
いつも人間を拾ってきては、なぶり殺して食べているのを見た事がある。

まぁ、いつもの事だから気にせず城の中に入った。
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