エロゲー主人公に転生したのに悪役若様に求愛されております

雪平@冷淡騎士2nd連載中

文字の大きさ
上 下
3 / 82

裏の話

しおりを挟む
コツコツと冷たい石造りの地面を歩く足音を響かせた。
その足音を聞くだけで、魔物達は脅え…その存在にひれ伏す。

白い軍服に真っ赤なマントをはためかせて、切れ長の瞳はまっすぐ見つめていた。
血で染めたような真っ赤な瞳に、糸のような繊細な銀髪が揺れる。

ぐちゃぐちゃと、うるさい音が聞こえる…意地汚い下級魔族が人を食らう音だろう。

城の中では聞かないが、ここはいろんな魔物が住む無法地帯だいろんな奴らがいる。

「へへっ、魔王様…これ食いますか?もう死んでますがまだ新鮮ですぜ」

ヨダレを垂らしながら魔王と呼ばれた青年に向かって、腕だけになった物体を差し出していた。
眉を寄せて、目を逸らす…そんなものを食べるのは下級魔族ぐらいだ。

魔王として、定期的に城下町を覗かないといろんなトラブルを招く。
人間を食らうのは別に構わないが、魔物同士の共食いや派手な行動をして賞金首ハンターに殺されたりする。
自業自得ではあるが、魔王として魔界の秩序を乱す行為は許されない。

最近は魔物の暴走化も目立つようになり、仕事も増えていた。
人間共の行動も大胆になってきて、そろそろ分からせる必要が出てきた。

誰が一番強いのか…魔物も人間でさえも支配する。

しつこく腕を押し付けてくる下級魔族にイラついていたら下級魔族の腕が吹っ飛んだ。
魔王は腰に下げていた剣を握ってはいたが鞘は抜いていない。
隣を見ると、大剣を下級魔族に向けている大男がいた。

「若様に汚いものを見せるでない!!」

「レオナルド」

名を呼ぶと、すぐに膝を折り魔王に頭を下げた。

レオナルドは魔王の右腕である、怪力が自慢の男だ。
ゴーレムの種族だが、見た目は人間のおっさんとそう変わらない容姿だ。
レオナルドは魔王に絶対忠誠を誓う、魔物や人間達から鬼将軍と呼ばれている。
腕を切り落とされた魔物は雄叫びを上げながら、吹っ飛んだ腕を探していた。

城下町でもまだ魔王に無礼を働く者がいるとは思わなかった。
レオナルドが来なかったら、この剣で首を切り落としていただろう。
グッと剣を握りしめて、そろそろ城に帰ろうと歩き出した。
後ろからレオナルドが付いて来る。

「若様!やはり貴方様が城下町に訪れるのは危険です!あのような不届き者がまた現れるかもしれない」

「危険?なにがだ」

「…い、いえ…若様があのような者達を見るのはお目汚しになるかと」

レオナルドが言いたい事は分かってる、教育に悪いと言っているのだろう。
いつまで子供のままで時が止まっているのか。
小さな頃からレオナルドに育てられてきたが、もう大人だというのに過保護が過ぎる。

昨日は雨が激しくて、水溜まりが目の前にあった。
特に理由はないが、足を止めて水溜まりを覗き込んだ。

人間離れした美しい容姿に尖った耳をしている男が映し出された。
すると、急に水溜まりが消えて代わりにレオナルドが地面に寝そべっている。

「若様!お靴が汚れますので私の上にお乗り下さい!」

「レオナルド」

「はい!」

「帰ったら服を着替えた方がいい」

そう一言だけ言って、レオナルドを避けるように歩いた。
さすがに仲間の背を踏みつけてまでまっすぐに進みたいと思わない。
レオナルドは残念そうにしながら、全身泥だらけで魔王に付かないように離れて歩いていた。

城が見えると門番をしている鎧ゴースト達が敬礼をしていた。

そして、小さな影が近付いてきて飛び付いてきた。
魔王は微動だにせず、下を向くと小さな影も上を見上げる。

「おかえりなさい!シリウス様」

「ただいま、フェザー」

「おいフェザー!!若様になんて馴れ馴れしい…」

「ちょっとおっさんうるさいんだけど」

フェザーと呼ばれた悪魔は魔王の腰に腕を巻き付けてレオナルドに向かって舌を出していた。
桃色の髪にショートカットで、胸は隠れているが腹が出ていて人を惑わすハートの淫紋がへその下にある。
パンツと見違えるほど短いズボンを穿いている。

見た目はどう見ても美少女だが、彼はちゃんと付いているものは付いている少年だ。
サキュバスと呼ばれる、精液を主食とする淫魔だ。

一般的は男はインキュバスと言われているが、彼は体内に精液を取り込むから女型であるサキュバスと言われている。

魔王を見つめて、ペロリと妖艶に舌で唇を舐めた。

「シリウス様ぁ、僕とお試しでしてみませんか?絶対満足出来ますよぉ」

「卑しい悪魔が!若様に何を言っている!!」

「うるさい筋肉ダルマだなぁ、お前とは頼まれてもしないよーだ」

「私だってお前なんてお断りだ!!」

レオナルドとフェザーが言い合いをしていて、いつも間に挟まれている魔王はうんざりしている。
腰に絡みつくフェザーの腕を外して、城の中に入ろうと歩き出した。

何処からか雄叫びのような鳴き声が響いて立ち止まった。
フェザーは「がおがおがまたお腹壊すものでも拾ってきたのかな?」と言っていた。

がおがおとはフェザーのペットである恐竜の魔物だ。
いつも人間を拾ってきては、なぶり殺して食べているのを見た事がある。

まぁ、いつもの事だから気にせず城の中に入った。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

王弟様の溺愛が重すぎるんですが、未来では捨てられるらしい

めがねあざらし
BL
王国の誇りとされる王弟レオナード・グレイシアは優れた軍事司令官であり、その威厳ある姿から臣下の誰もが畏敬の念を抱いていた。 しかし、そんな彼が唯一心を許し、深い愛情を注ぐ相手が王宮文官を務めるエリアス・フィンレイだった。地位も立場も異なる二人だったが、レオは執拗なまでに「お前は私のものだ」と愛を囁く。 だが、ある日エリアスは親友の内査官カーティスから奇妙な言葉を告げられる。「近く“御子”が現れる。そしてレオナード様はその御子を愛しお前は捨てられる」と。 レオナードの変わらぬ愛を信じたいと願うエリアスだったが、心の奥底には不安が拭えない。 そしてついに、辺境の村で御子が発見されたとの報せが王宮に届いたのだった──。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

処理中です...