エロゲー主人公に転生したのに悪役若様に求愛されております

雪平@冷淡騎士2nd連載中

文字の大きさ
上 下
2 / 82

誕生日前日

しおりを挟む
「レイン、もう帰ろうよー」

「ここまで来て何弱気な事言ってんだよ」

後ろから付いて来ていた男は弱気な態度でもう何度目かの弱音を吐く。
自分から賞金首ハンターになりたいって言ったくせにこんなんじゃ少額のスライムでさえ倒せないだろう。

誕生日の前日になんで俺が草原の中でスライムを探さなきゃならないんだよ。
草を蹴り上げると、草や砂が舞い上がって咳き込む。

今日くらい家でのんびりと過ごしたかったのに、家のドアを激しく叩く音で目が覚めた。
いつもの幼馴染みの奇襲かと思ったが、切羽詰まった男の声が聞こえた。

家のドアを開けると、臆病者として街で有名な男が立っていた。
女の子と居てもいつも脅えてなにかあると一人で帰ってくる奴だ。

面倒事は嫌だな…と思いながら話を聞くと、どうやら賞金首ハンターになって臆病者だとバカにした奴らを見返したいと言っていた。
俺には全く関係ない話だが、街で噂の賞金首ハンターとして名が知れてるから頼ってきたらしい。
臆病者を賞金首ハンターに…正直全く興味が湧かないが、この男は臆病者だけではなくしつこい事でも有名だ。

ずっと付き纏われるのは鬱陶しい、さっさとやって諦めればいいさ。
臆病者が賞金首ハンターのような過酷な職業に耐えられるとは思えなかった。

ずっと帰ろう帰ろうとうるさいくらい後ろで叫んでいて、スライムを全く探していない。
ここまで臆病者だと、呆れを通り越して無関心になる。

でも、ここで帰ったら次の日…絶対にまた賞金首ハンターになると家に来るだろう。
…そういう奴なんだ、コイツは…

絶対俺の誕生日は誰にも邪魔させないからな!

20歳というのは、俺にとって大切な歳でもある。
ゲームの主人公の年齢も20歳で、謎の女性と出会う歳でもある。
この世界は俺がやっていたゲームの世界そのものなんだ、絶対にそうだ。

まだ何をしても幼馴染みの好感度は上がっていないような気がしつつも、ゲームが始まればきっと俺はモテモテライフが待っている筈だ!

「スライムちゃーん、出ておいでー」

「うわぁぁぁ!!!!」

「おい、俺がせっかく探してるのにうるさい…」

後ろで騒いでいる声が聞こえて、眉を寄せて後ろを振り返った。
すると、そこにいた男が走って逃げている後ろ姿が見える。
呆然と、小さくなる姿を見つめる事しか出来なかった。

自分でしつこく言ってきたのに、真っ先に逃げるなんて…
それにさっきの叫び声はいったいなんなんだ?まるでなにかを見たような…

前を見ようとして足元に視線を向けていたが、影が見えた。
さっきは影なんてなかった、恐る恐る見上げる。

今度は俺の方が声にならない叫びを上げる事になった。

「キシャアァァァァ!!!!!!」

恐竜の魔物が大きな口を開けて、迫ってきていた。

この魔物はここら辺で生息していない種族だった。
狩った事があるから分かる、確か立ち入り禁止の山が主の生息地だ。

だからこんなレベルの低い魔物が生息している場所にいるわけがない。
もしかして、スライムが見当たらなかったのってコイツがいるからか?

早く倒さないと、腰に下げていた銃のホルダーに手を伸ばす。
慌ててしまい、銃を落とすという間抜けなミスをしてしまう。
こんな至近距離で魔物を見たのは初めてで、冷静さを失っていた。

あ、もう死んだな…と俺はゲームオーバーを覚悟した。
しかし、まだ始まってもいないのにゲームオーバーってあるものなのか?

口から覗く鋭い牙がキラリと光っているのを最後に俺の意識は真っ暗になった。

生暖かいものに包まれている感じがするが、魔物の胃の中だったら嫌だな。

まさか二度も童貞のまま、死ぬなんて…俺は一生童貞の呪いにでも掛かっているのだろうか。
俺の疑問に答える人などいなくて、虚しく散っていくだけだった。

あぁ…可愛い彼女候補達が走馬灯のように流れてくる。
まだ会っていない少女達はどんな子だったのかな。
ゲーム通りの性格だろうが、見た目はリアルになっているから顔がよく分からない。
まぁ、可愛いのは保証されているから会えなかった事が心残りだ。

アイツは…別に会いたくない、この世界でまで女の子達を奪われたらトラウマどころじゃなくなる。
アイツにだけは会いたくない、絶対に会いたくない。

なんか、フラグを立ててる気もしなくもないが…心を込めて拒絶した。

俺の人生に、主役を奪うイケメンキャラクターなんて必要ないんだ!
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

王弟様の溺愛が重すぎるんですが、未来では捨てられるらしい

めがねあざらし
BL
王国の誇りとされる王弟レオナード・グレイシアは優れた軍事司令官であり、その威厳ある姿から臣下の誰もが畏敬の念を抱いていた。 しかし、そんな彼が唯一心を許し、深い愛情を注ぐ相手が王宮文官を務めるエリアス・フィンレイだった。地位も立場も異なる二人だったが、レオは執拗なまでに「お前は私のものだ」と愛を囁く。 だが、ある日エリアスは親友の内査官カーティスから奇妙な言葉を告げられる。「近く“御子”が現れる。そしてレオナード様はその御子を愛しお前は捨てられる」と。 レオナードの変わらぬ愛を信じたいと願うエリアスだったが、心の奥底には不安が拭えない。 そしてついに、辺境の村で御子が発見されたとの報せが王宮に届いたのだった──。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

処理中です...