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騎士団の兵舎
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広場には人が少なくなっていて、なにが人混みにあったのかすぐに分かった。
看板がポツンと地面に突き刺さっていて、さっきの人が叫んでいた内容がそのまま書いてあった。
この紙は何処に渡せばいいんだろう、見回りの騎士に直接持っていけばいいのかな。
もうすぐで暗くなるからか、街中に騎士は見当たらなかった。
探し回るより、直接騎士団に持って行った方が確実だと思って騎士団の兵舎に向かった。
騎士団の兵舎には訪れた事はなかった。
ディアを知る生徒や教師が兵舎に訪れた時、俺は行かなかった。
一番最初に、ディアの事を聞かされたなのかもしれない。
信じる事がすぐに出来なくても、騎士の人に話を聞いても同じ事しか言わないと分かっていた。
まさか、別の用事で来るとは思わなかった…悪い事をしたわけじゃないけど緊張する。
敷地内に入って、誰でもいいから紙を渡そうと見て回る。
話しながら歩いている騎士が二人見えて、近付くと足を止めた。
「なんだお前は」
「あの、この紙を渡したくて」
高圧的な言い方に、言葉が一瞬詰まってしまったけど頑張って声を出した。
騎士達は俺が渡した紙を見て、変な顔をしていた。
あれ?全員の騎士が知っている話だと思ってだけど知らないのか?
そうだとしたら誰に渡したらいいのか分からない。
紙を捨てるように投げられて、風に乗って揺れていた。
びっくりして、笑いながら俺を眺めている騎士達を無視して紙を追いかける。
後ろから「黙っててやるから、さっさと帰れ!」という声が聞こえてきた。
もしかして、俺が紙を勝手に作って騎士団に売り込みに来たと思われたのかもしれない。
知らない人からしたら、そう思うのも無理はない。
でも、紙を捨てなくてもよくないか?いくら不審者に見えても…
紙が何処かに引っかかるまで空を舞っているのを追いかける事しか出来ない。
紙を回収したら、ウルのところに行こう…ウルならきっと紙を何処に持っていけばいいか分かるかもしれない。
このまま追いかけても止まる気配がなくて、鷹の魔物を召喚した。
一直線に紙に向かったが、上手く掴めず、兵舎の室内に入ってしまった。
鷹を森に帰して、窓が開いた場所を眺める事しか出来ない。
諦めてまた紙をもらう事も出来るけど、紙の事を知らない騎士もいるから誰に聞いたらいいのかな。
そういえば、騎士団長は関わってるんだっけ…騎士団長に聞けばいいかな。
よく街のパレードとかで顔を見た気がするけど、改めて顔はどうだったか思い出そうにも忘れてしまった。
騎士団長の場所を聞いたら教えてくれるだろうか。
さっきバカにされたから、また誰かに声を掛ける勇気がない。
国民の味方の優しい騎士団って印象だったんだけど、一部の人だけがこうだと思いたい。
最後に窓の方を見てみたら、誰かが窓を覗き込んでいるのが見えた。
一部の人じゃない事を祈って、両手を上げてアピールした。
「あの!紙が部屋に入ったんですけど」
「……」
「あ、それです!申し訳ないですが紙を丸めて投げて下さい!」
紙を見せられて、両手を振って紙を投げてくれるように頼んだ。
丸めれば重くなって飛ばされないから、必死にお願いした。
しかし、投げてくれると思っていたけど部屋の中に戻っていってしまった。
返してくれないのかな、やっぱり新しい紙を貰いに行こうかな。
帰ろうと歩いていたら、後ろで物音が聞こえた。
後ろを振り返ると、俺の目の前に書いた紙が見えた。
もしかして、わざわざ高いところから降りて届けに来てくれたのか?
受け取って、お礼を言おうとその人の顔を見た。
一瞬空気が固まり、息が止まりそうなほど驚いた。
「…ディ…ア」
「…?なんだ?」
なんでこんなところにディアがいるんだ?ここは騎士団の兵舎ではないのか?
俺の言葉に訳がわからないと言いたげな顔をしていた。
もう五年も経つけど、俺が呼んでた名前を忘れちゃったのかな。
それとも容姿が似ているだけの他人の可能性もある。
五年も経てば面影を残して、カッコよく成長していた。
成長したディアを知らないから、何とも言えない。
そうだよな、死んでしまったんだから居るわけないよな。
もし生きていたら、騎士団が死んでいる事にしてる意味も分からないし、ディアだって何から行動する筈だ。
「ありがとうございます」と一言お礼を言うと、ディアに似てる人が俺の顔をジッと見つめていた。
穴が開いてしまいそうなほど見られると、緊張する。
「えっと、俺の顔になにか付いますか?」
「いや、別に」
「そうですか、じゃあ俺はこれで」
長話して、また騎士の誰かに不審人物だと思われたくないから帰ろうと思った。
紙も手に入ったし、暗くなってきたから明日ウルのところに行こう。
ディア似の騎士の人に背を向けて、歩き出したら横から手が出てきて俺の口と腕を掴まれて引きずられた。
大きな木の影に隠れていると、人の話し声が聞こえてきた。
その声は俺達に気付いていないみたいで、そのまま行ってしまった。
再び静かになり、ディア似の人が手を離して離れた。
俺は部外者だから悪い事をしていなくても隠れたい気持ちがあるけど、彼は騎士ではないのか?
隠れる意味が分からず、ディア似の人を見つめると視線に気付いて俺の方を見ていた。
「なんだ」
「いや、なんで隠れるのかなと思って…」
「アイツに見つかると厄介なだけだ」
「アイツ?」
「そんな事より、さっきは勢いで触れたが…」
彼は最後まで言う事なく「何でもない」と終わらせてしまった。
分からないけど、見つかりたくない人がいる事は分かった。
騎士の中でもこの紙を知らなかったり、派閥でもあるのか?
ゲームではそんなのなかったから、知らなかった。
ディアがいない今、ゲームの内容なんて無意味だよな。
ディア似の人は首を傾げていて「なんでそんな顔をするんだ?」と言っていた。
しんみりした雰囲気にさせちゃったかな、初対面の人を友人と重ねるのは失礼だよな。
彼はディアじゃない、似ているだけで思い出すのは前を見れていない証拠だ。
ウルのようにいい加減、前を見て進まないとな。
「ちょっと懐かしかっただけです、紙…ありがとうございました…俺のせいで誰かに怒られたり」
「怒りはしない、面倒になるだけだ」
「俺のせいだから俺が説明すれば」
「殺されるから行かない方がいい」
ディア似の人から物騒な事を言われて、知らない人に殺されるのは怖いと顔を青ざめた。
冗談を言っている顔ではないのが、さらに怖い。
ディア似の人に「誰にも見つからず帰った方がいい、俺は慣れてる」と言われてお言葉に甘える事にした。
看板がポツンと地面に突き刺さっていて、さっきの人が叫んでいた内容がそのまま書いてあった。
この紙は何処に渡せばいいんだろう、見回りの騎士に直接持っていけばいいのかな。
もうすぐで暗くなるからか、街中に騎士は見当たらなかった。
探し回るより、直接騎士団に持って行った方が確実だと思って騎士団の兵舎に向かった。
騎士団の兵舎には訪れた事はなかった。
ディアを知る生徒や教師が兵舎に訪れた時、俺は行かなかった。
一番最初に、ディアの事を聞かされたなのかもしれない。
信じる事がすぐに出来なくても、騎士の人に話を聞いても同じ事しか言わないと分かっていた。
まさか、別の用事で来るとは思わなかった…悪い事をしたわけじゃないけど緊張する。
敷地内に入って、誰でもいいから紙を渡そうと見て回る。
話しながら歩いている騎士が二人見えて、近付くと足を止めた。
「なんだお前は」
「あの、この紙を渡したくて」
高圧的な言い方に、言葉が一瞬詰まってしまったけど頑張って声を出した。
騎士達は俺が渡した紙を見て、変な顔をしていた。
あれ?全員の騎士が知っている話だと思ってだけど知らないのか?
そうだとしたら誰に渡したらいいのか分からない。
紙を捨てるように投げられて、風に乗って揺れていた。
びっくりして、笑いながら俺を眺めている騎士達を無視して紙を追いかける。
後ろから「黙っててやるから、さっさと帰れ!」という声が聞こえてきた。
もしかして、俺が紙を勝手に作って騎士団に売り込みに来たと思われたのかもしれない。
知らない人からしたら、そう思うのも無理はない。
でも、紙を捨てなくてもよくないか?いくら不審者に見えても…
紙が何処かに引っかかるまで空を舞っているのを追いかける事しか出来ない。
紙を回収したら、ウルのところに行こう…ウルならきっと紙を何処に持っていけばいいか分かるかもしれない。
このまま追いかけても止まる気配がなくて、鷹の魔物を召喚した。
一直線に紙に向かったが、上手く掴めず、兵舎の室内に入ってしまった。
鷹を森に帰して、窓が開いた場所を眺める事しか出来ない。
諦めてまた紙をもらう事も出来るけど、紙の事を知らない騎士もいるから誰に聞いたらいいのかな。
そういえば、騎士団長は関わってるんだっけ…騎士団長に聞けばいいかな。
よく街のパレードとかで顔を見た気がするけど、改めて顔はどうだったか思い出そうにも忘れてしまった。
騎士団長の場所を聞いたら教えてくれるだろうか。
さっきバカにされたから、また誰かに声を掛ける勇気がない。
国民の味方の優しい騎士団って印象だったんだけど、一部の人だけがこうだと思いたい。
最後に窓の方を見てみたら、誰かが窓を覗き込んでいるのが見えた。
一部の人じゃない事を祈って、両手を上げてアピールした。
「あの!紙が部屋に入ったんですけど」
「……」
「あ、それです!申し訳ないですが紙を丸めて投げて下さい!」
紙を見せられて、両手を振って紙を投げてくれるように頼んだ。
丸めれば重くなって飛ばされないから、必死にお願いした。
しかし、投げてくれると思っていたけど部屋の中に戻っていってしまった。
返してくれないのかな、やっぱり新しい紙を貰いに行こうかな。
帰ろうと歩いていたら、後ろで物音が聞こえた。
後ろを振り返ると、俺の目の前に書いた紙が見えた。
もしかして、わざわざ高いところから降りて届けに来てくれたのか?
受け取って、お礼を言おうとその人の顔を見た。
一瞬空気が固まり、息が止まりそうなほど驚いた。
「…ディ…ア」
「…?なんだ?」
なんでこんなところにディアがいるんだ?ここは騎士団の兵舎ではないのか?
俺の言葉に訳がわからないと言いたげな顔をしていた。
もう五年も経つけど、俺が呼んでた名前を忘れちゃったのかな。
それとも容姿が似ているだけの他人の可能性もある。
五年も経てば面影を残して、カッコよく成長していた。
成長したディアを知らないから、何とも言えない。
そうだよな、死んでしまったんだから居るわけないよな。
もし生きていたら、騎士団が死んでいる事にしてる意味も分からないし、ディアだって何から行動する筈だ。
「ありがとうございます」と一言お礼を言うと、ディアに似てる人が俺の顔をジッと見つめていた。
穴が開いてしまいそうなほど見られると、緊張する。
「えっと、俺の顔になにか付いますか?」
「いや、別に」
「そうですか、じゃあ俺はこれで」
長話して、また騎士の誰かに不審人物だと思われたくないから帰ろうと思った。
紙も手に入ったし、暗くなってきたから明日ウルのところに行こう。
ディア似の騎士の人に背を向けて、歩き出したら横から手が出てきて俺の口と腕を掴まれて引きずられた。
大きな木の影に隠れていると、人の話し声が聞こえてきた。
その声は俺達に気付いていないみたいで、そのまま行ってしまった。
再び静かになり、ディア似の人が手を離して離れた。
俺は部外者だから悪い事をしていなくても隠れたい気持ちがあるけど、彼は騎士ではないのか?
隠れる意味が分からず、ディア似の人を見つめると視線に気付いて俺の方を見ていた。
「なんだ」
「いや、なんで隠れるのかなと思って…」
「アイツに見つかると厄介なだけだ」
「アイツ?」
「そんな事より、さっきは勢いで触れたが…」
彼は最後まで言う事なく「何でもない」と終わらせてしまった。
分からないけど、見つかりたくない人がいる事は分かった。
騎士の中でもこの紙を知らなかったり、派閥でもあるのか?
ゲームではそんなのなかったから、知らなかった。
ディアがいない今、ゲームの内容なんて無意味だよな。
ディア似の人は首を傾げていて「なんでそんな顔をするんだ?」と言っていた。
しんみりした雰囲気にさせちゃったかな、初対面の人を友人と重ねるのは失礼だよな。
彼はディアじゃない、似ているだけで思い出すのは前を見れていない証拠だ。
ウルのようにいい加減、前を見て進まないとな。
「ちょっと懐かしかっただけです、紙…ありがとうございました…俺のせいで誰かに怒られたり」
「怒りはしない、面倒になるだけだ」
「俺のせいだから俺が説明すれば」
「殺されるから行かない方がいい」
ディア似の人から物騒な事を言われて、知らない人に殺されるのは怖いと顔を青ざめた。
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