転生当て馬召喚士が攻め度MAXの白銀騎士に抗えません

雪平@冷淡騎士2nd連載中

文字の大きさ
上 下
10 / 37

入学生

しおりを挟む
年々召喚士になる人も減ってきていると聞いた事がある。
派手な魔術が好きな人が多いのもそうだが、やはり今は人々を守る職業である騎士に憧れる人が多い。

凶悪な魔物が国に住み着いているから、その影響もある。

確かに騎士はかっこいいけど、俺の力じゃ誰も守れないし…召喚士がいい。

魔術を研究しているなら、召喚術の事もなにか分かるかもしれない。
何処で部活動やっているのか、見てみようと思ったら横から誰かの手が出てきた。

驚いて、ポスターから離れると力任せにポスターを引きちぎった。
片手で力いっぱい握りしめて丸めている姿を呆然と見る事しか出来なかった。

「アイツら、またこんなもん貼り付けやがって!!」

風紀委員と書かれたワッペンを腕に巻いている人は、周りが近付けないほどに目付きを鋭くさせていた。
この学園の風紀委員会の人だという事は分かった。

憎悪を抱くかのように紙を握りしめて、ゴミ箱に投げ捨ててその人は後ろにいた人達を連れて行ってしまった。
嵐の去った後のように静かだったが、再び廊下は騒がしくなった。

何処に部活があるのか分からない、そもそも風紀委員会があんなに怒る部活っていったいどんな部活なんだ?
他の部活にしようかと見てみたが、あまり興味が湧かず今日は諦める事にした。
まだ入学したばかりだし、これから探せばいいよな。

そう思って一年の名簿表が張り出されている掲示板を見て、自分の名前が書いてある教室を目指した。

ゲームで見た事があるキャラクターはいるかなと周りを見渡して確認してみたが、全校生徒が集まる大きな講堂では見つけるのは難しかった。
唯一見つける事が出来たのは同じ入学生のウルだけだ。

学園にいる人以外にも攻略キャラクターはいるから、仕方ないのかもしれない。

俺と二つ違いだからディアもまだ学園にいる筈だ。
しかし、先輩のところまでは人が多くて見られない。

前を向いて、校長の長い話を聞いていた。

俺が興味あるのは魔術だ、生前の世界ではフィクションとして描かれていた。
今使う事が出来るなら、とことん魔術師人生を謳歌したい。
そのためにはあの部活がやっぱり気になる。

放課後に探してみよう、部室の前に部活の名前が書かれたなにかがあるかもしれない。

入学式は終わり、教室に戻るとそれぞれで自己紹介したり雑談をしていた。
俺も近くの人と仲良くなり、話していた。
ゲームとは関係ない人達だから、気が楽だ。

ずっとこのキャラがこうだとか、考えるのは苦しい。
少しはそんな事も考えないで過ごしたい。

今日は授業がないから皆部活見学をしに教室を出て行った。
部活に入るのが必須だから、全員まだ帰らない。
俺も新しく出来た友人に誘われたが、行くところが決まっているから断った。

一つの部活を目指すから、探す時間を考えて一人で探す事にした。
俺に合わせてもらうのも申し訳ない、魔術研究同好会と言っても興味なさそうだったし…

部室マップという分かりやすい地図が壁に貼られていて、確認する。

何処にもない、そもそも同好会そのものが見当たらない。

風紀委員会があんなに怒っていたから、なにかあったのかもしれない。
広い校舎を隅々まで確認したが、魔術研究同好会は何処にもなかった。

外はすっかり夕陽に染まってきていて、歩き疲れた。
早めに終わって部活を探していた筈なのに、もうこんな時間になっていたのか。

一週間で決めればいいみたいだし、今日は帰ろうかな。
この時間なら、もう終わっている部活動もある。
魔術研究同好会も活動が終わっているかもしれない。

廊下を歩いていたら、目の前に怪しい人が見えた。
真っ黒なローブを着ていて、深々と被ったフードからは素顔が見えない。

周りを気にした挙動不審な姿に、怪しいと誰もが口を揃えて言うだろう。
壁に向かって、両手を動かしてなにかをしている。

不思議に思っていたが、そのまま行こうと思った。
すれ違う時、真っ正面からそれを見て思わず声を出した。

「…それ」

「ぎゃうっ!!」

ローブを着ている子は、変な声を出して俺の方を振り返った。
大きなメガネが勢いあまってずれていて、両手で直していた。

俺より頭一つ分小さな身長に大きなメガネの奥の瞳も大きい。

あれ?ここって男子校舎じゃなかったっけ…隣の女子校舎と間違えたのか?
そう思うほどに、女の子だと言われても違和感はなかった。

でも、制服は男のものだから男子校舎の生徒だろう。
いくら男でも、こんなに可愛かったら少しでも話題になりそうなものだけど、聞いた事がない。

もしかして、この子は入学生ではないのか?

その子は俺を見るなり、大きな目を精一杯キリッと力を入れて、身構えていた。

「風紀の人!?」

「え、いや…俺は」

「それとも学生会の人!?」

「ただの、新入生だよ」

ローブを着ている子は、俺の言葉に脱力していた。
廊下に座り込むほど安心していた。

手を差し伸ばすと、素直に掴んでくれて起き上がるのを手伝った。
もう俺の事を敵視しているわけじゃないみたいだ。

やっぱり、今朝の風紀委員会の態度からして仲は良くないみたいだ。

彼がさっき壁に貼っていたのは、魔術研究同好会のポスターだ。
これを貼りに来たって事は、彼はこの部活動に関係があるって事だ。
まさか、こんな運がいいなんて…不幸体質だった生前とは天と地の差くらいはある。

彼も魔術研究同好会に入る新入生で、先輩に言われて来たのかもしれない。
いくら彼の噂がなくても、だれがどう見ても先輩には見えない。

むしろ俺よりも年下に見えるほど、見た目が幼い。

「勘違いしてごめんね、新入生だったんだ」

「そのポスター…君も魔術研究同好会の人?」

「そうだけど、もしかして入部希望者!?」

眼鏡の奥の瞳がキラキラと輝いてきて、そこまで期待されると思ってなくて呆然とする。
俺がなにか言う前に、腕を掴んで引っ張っていく。

部室まで連れて行ってくれるのかと、ローブを着ている子に付いて行く。
このローブも研究に必要だから着ているのか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セントアール魔法学院~大好きな義兄との学院生活かと思いきや何故だかイケメンがちょっかいかけてきます~

カニ蒲鉾
BL
『ラウ…かわいい僕のラウル…この身体の事は絶対に知られてはいけない僕とラウル二人だけの秘密』 『は、い…誰にも――』    この国には魔力を持つ男が通うことを義務付けられた全寮制魔法学校が存在する。そこに新入生として入学したラウルは離れ離れになっていた大好きで尊敬する義兄リカルドと再び一緒の空間で生活できることだけを楽しみにドキドキワクワク胸を膨らませていた。そんなラウルに待つ、新たな出会いと自分の身体そして出生の秘密とは――  圧倒的光の元気っ子ラウルに、性格真反対のイケメン二人が溺愛執着する青春魔法学園ファンタジー物語 (受)ラウル・ラポワント《1年生》 リカ様大好き元気っ子、圧倒的光 (攻)リカルド・ラポワント《3年生》 優しいお義兄様、溺愛隠れ執着系、策略家 (攻)アルフレッド・プルースト《3年生》 ツンデレ俺様、素行不良な学年1位 (友)レオンハルト・プルースト《1年生》 爽やかイケメン、ラウルの初友達、アルの従兄弟

強制悪役令息と4人の聖騎士ー乙女ハーレムエンドー

チョコミント
BL
落ちこぼれ魔法使いと4人の聖騎士とのハーレム物語が始まる。 生まれてから病院から出た事がない少年は生涯を終えた。 生まれ変わったら人並みの幸せを夢見て… そして生前友人にもらってやっていた乙女ゲームの悪役双子の兄に転生していた。 死亡フラグはハーレムエンドだけだし悪い事をしなきゃ大丈夫だと思っていた。 まさか無意識に悪事を誘発してしまう強制悪役の呪いにかかっているなんて… それになんでヒロインの個性である共魔術が使えるんですか? 魔力階級が全てを決める魔法の世界で4人の攻略キャラクターである最上級魔法使いの聖戦士達にポンコツ魔法使いが愛されています。 「俺なんてほっといてヒロインに構ってあげてください」 執着溺愛騎士達からは逃げられない。 性描写ページには※があります。

日本で死んだ無自覚美少年が異世界に転生してまったり?生きる話

りお
BL
自分が平凡だと思ってる海野 咲(うみの   さき)は16歳に交通事故で死んだ………… と思ったら転生?!チート付きだし!しかも転生先は森からスタート?! これからどうなるの?! と思ったら拾われました サフィリス・ミリナスとして生きることになったけど、やっぱり異世界といったら魔法使いながらまったりすることでしょ! ※これは無自覚美少年が周りの人達に愛されつつまったり?するはなしです

少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ
BL
外の世界に憧れを抱いていた少年は、少女漫画の世界に転生しました。 当て馬キャラに転生したけど、モブとして普通に暮らしていたが突然悪役である魔騎士の刺青が腕に浮かび上がった。 それでも特に刺青があるだけでモブなのは変わらなかった。 漫画では優男であった聖騎士が魔騎士に豹変するまでは… 出会う筈がなかった二人が出会い、聖騎士はヤンデレと化す。 メインヒーローの筈の聖騎士に執着されています。 最上級魔導士ヤンデレ溺愛聖騎士×当て馬悪役だけどモブだと信じて疑わない最下層魔導士

妹が破滅フラグしか無い悪役令嬢だったので、破滅フラグを折りまくったらBL展開になってしまった!

古紫汐桜
BL
5歳のある日、双子の妹を助けた拍子に前世の記憶を取り戻したアルト・フィルナート。 アルトは前世で、アラフィフのペンネームが七緒夢というBL作家だったのを思い出す。 そして今、自分の居る世界が、自分が作家として大ブレイクするきっかけになった作品。 「月の巫女と7人の騎士」略して月七(つきなな)に転生した事を知る。 しかも、自分が転生したのはモブにさえなれなかった、破滅フラグしかない悪役令嬢「アリアナ」が、悪役令嬢になるきっかけとなった双子の兄、アルトであると気付く。 アルトは5歳の春、アルトの真似をして木登りをしまアリアナを助けようとして死んでしまう。 アルトは作中、懺悔に苦しむアリアナが見つめた先に描かれた絵画にしか登場しない。 そう、モブにさえなれなかったザコ。 言わば、モブ界の中でさえモブというKING of モブに転生したのだ。 本来なら死んでいる筈のアルトが生きていて、目の前に居る素直で可愛い妹が、破滅エンドしかない悪役令嬢アリアナならば、悪役令嬢になるきっかけの自分が生きているならば、作者の利点を生かして破滅フラグを折って折って折りまくってやろうと考えていた。 しかし、何故か攻略対象達から熱い視線を向けられているのが自分だと気付く。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

処理中です...