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また会う日まで

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フラフラとウルは自分の部屋に向かって行ってしまった。

俺は杖で体を支えて、なるべく足の負担がない歩き方をして部屋に向かった。

俺とウルの部屋に入ると、ウルは窓を見つめていた。
特にいつもと変わらない夜空が広がる街が見えるだけだ。
ロマンチストではないウルにとって興味がないものの筈だ。

時々、大きなため息を吐いている…いつものウルじゃない。
なんか変なものを食べたんじゃないかと心配になる。

真後ろにまで近付いても、ウルは全く気付いていない。
俺なんて、存在すらしていないと言いたげな態度だ。

放っておけばいいけど、それも兄弟としてなんかなぁ。

いつもはウルがしている驚かせ方をした。

大きい声で「わっ!」と驚かすと、ウルの肩がビクッと反応した。
目を丸くしたウルが振り返り、やっと反応して嬉しくて笑った。

いつもうるさいウルが大人しいと調子狂う。
仕返ししてくるかと身構えたが、ウルはすぐに真顔になった。

「いつまでナギはそんな子供なんだよ」

「……えっ?」

「いい加減、大人になりなよ」

あのウルから信じられない言葉を聞いて今度は俺の方が驚いた。
これじゃあ、いつもと立場が逆になってるじゃん。
まるで、俺が落ち着きがない子供のようにウルは見ていた。

本気で変なものを食べて腹が痛いんじゃないかと心配したが、ウルは鼻で笑うだけだった。
大人ぶってはいるが、ウルはウルのままな部分はある。

俺の事を馬鹿にするウルは変わってなくて、なにかあったという事は分かる。
でも、あんな短時間でなにが起きたって言うんだ?

またウルは窓を見つめていて、俺なんか気にしていなかった。

某映画のヒロインのように見えてきた、攻めキャラの筈なのに。

庭でウルは駆け出すほどの興味があったんだ。
あの庭で、そこまでウルの興味を引くものなんて一つしかない。

もしかして、ディアと会ったのか?確かにゲームでもバルコニーで二人は出会うゲームのシーンがあった。
あのシーンが、現実で再現されたのかもしれない。

見てみたかったが、さすがに二人の世界は邪魔できないな。
今もまだ、ウルは夢心地のようでディアを思って外を見ている。

「好きな人でも出来た?」とウルに小声で聞いてみた。
これは意地悪ではなくて、本当のところはどうなのか気になった。
恋ばなをするほど俺に恋愛経験はないから、それは無理だ。

ウルだって兄弟とそんな恥ずかしい事をしたくないだろうし。
いるかいないかだけ聞くくらいなら、いいかなと思った。

馬鹿にするか、動揺するか、反応は二つだろう。
ウルの性格からして、俺の言葉だから馬鹿にするかもしれない。

「は!?なんで分かるんだよ!ナギのくせに!」

ウルは俺の方を見て顔を真っ赤にしながら怒っていた。
照れているのか、怒っているのか、どっちかにしてほしい。

近くにあったクッションを投げつけられて、顔面に直撃した。
痛くはないが、いきなりだったからビックリした。

でも、俺の言葉が図星のようで文句を言っている。
「見てたのか!?」と怒り気味で言われて、病院に行ってたから見てるわけないと説明した。

ゲームの話をするつもりはないから、何となくと誤魔化した。
不機嫌な顔で俺を睨んで、再び窓の方を向いた。

頬を赤らめて、想い人を想う姿はどう見ても攻めに見えない。
これが一途な可愛い受けなら、絵になっていたのかもしれない。

まだウルは5歳だからな、成長したらカッコ良くなるよ。

ついでに俺もかっこよく成長するよな、ゲームではモブ顔だったけどウルがイケメンで俺がモブとかあり得ない。
双子ではないから、モブ顔になるかもしれない確率を頭から消し去った。

イケメンになるんだ、俺は絶対にかっこよくなる!
そう信じて、ウルが呟いたからウルの方を見た。

「また会えるかな、美しいあの人に」

少女漫画のヒロインのような顔をしているウルに、ゲームの回想シーンってこんなのだったっけと不思議な気持ちになった。
ディアと別れた後のウルの話はなかったから分からない。
もしかしたら、ゲームでもこうだったのかもしれない。

だってウルは、こんななよなよした性格ではない。
もっと生意気なキャラクターだ、まるでいつものウルのような…

ウルの事を見すぎて、またクッションを投げられた。
これからウルは攻めとして成長していくって事なのかと、ウルを見てそう思った。
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