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第2話
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浩太の背中を支えていた厚壁が東の一撃を基点として大きくひびが入り、挙げ句、拳が貫通していた。
「抗うなよ……折角、一発で終わらせてやろうとしてんのによぉ」
ゆっくりと腕を引抜いた東は、浩太に向かって腕を振り破片を飛ばす。目眩ましの狙っての行動だとはすぐに分かった。だが、下手にはね除けようものなら、回避後に強烈な攻撃を受けてしまう。浩太にとって、絶望的な展開だった。
そこで助け船を出したのは真一だ。
「おらあ!」
鋭痛が残る足を庇いながら駆け出し、東が飛ばした破片を避けもせず、渾身の力で握り締めた拳を繰り出す。その際に、偶然だが破片の一部が拳頭に付着した。簡易なメリケンサックとなった状態で頬を撃ち抜かれた東だが、身動ぎもせず真一の腹部へ膝をつきたてた。
呻きながら、かくり、と腰を落とした真一の後頭部目掛けて右を打ち下ろし、直撃の寸前、新崎の胴タックルが東を弾き、さきほど穴を穿った壁へ背中をつけた。
浩太は、立ちあがりつつ東を睨み付ける。ここまでの動きで、ある推測が確信に変わった。東にダメージが残っていない。体格差を考慮すれば、人間離れした頑丈さ自体が考えられない。だとしても、達也と裕介の前情報では、東はイカれた「人間」だったはずだ。ともすれば、闘いの中で興奮してアドレナリンが過剰に分泌されているのだろうか。いや、その仮定も考えにくい。それならば、浩太を仕留め損なった時の静かな口調が矛盾してしまう。
いくら考察を重ねても、答えに辿り着けず、浩太は眉間に皺を刻んだ。
「怪人が怪物になるなんざ、どんな神話だよクソッタレが……!」
四対一、圧倒的有利なのは、果たしてどちらなのだろう。壁に手を着け、東は淀みなく一歩進み自衛官を見回す。
「……俺は慈善事業家ではない。ましてや、キリストなんてものとは正反対だ……自身が正しいと信じるものがあるならば、手に入る武器は何でも使う。自分自身が十字架などにはりつけになるよりも、敵を打ち負かすことを優先する」
引き抜いたナイフを構え、東の声に達也が吠える。
「ゲバラ……テメエが英雄だとでも言いてえのかよ……このサイコ野郎が……!」
同時に距離を潰し、達也はナイフを振りかぶるも、東により一歩を踏み込まれ懐への侵入を許す。
ざわり、と襟足が総毛立つのが分かる。避けられない。
「英雄だぁ?そんな小せえ枠に俺を嵌め込むなよ、自衛官!」
「古賀ァ!」
達也は一瞬の浮遊感を覚えた。気付けば、背中を床に強打して男の背中を仰いでいた。
そして、その背中には奇妙な点がある。背中の中央に、人間の左手が生えていることだ。あり得ない光景に達也は言葉を無くす。
「抗うなよ……折角、一発で終わらせてやろうとしてんのによぉ」
ゆっくりと腕を引抜いた東は、浩太に向かって腕を振り破片を飛ばす。目眩ましの狙っての行動だとはすぐに分かった。だが、下手にはね除けようものなら、回避後に強烈な攻撃を受けてしまう。浩太にとって、絶望的な展開だった。
そこで助け船を出したのは真一だ。
「おらあ!」
鋭痛が残る足を庇いながら駆け出し、東が飛ばした破片を避けもせず、渾身の力で握り締めた拳を繰り出す。その際に、偶然だが破片の一部が拳頭に付着した。簡易なメリケンサックとなった状態で頬を撃ち抜かれた東だが、身動ぎもせず真一の腹部へ膝をつきたてた。
呻きながら、かくり、と腰を落とした真一の後頭部目掛けて右を打ち下ろし、直撃の寸前、新崎の胴タックルが東を弾き、さきほど穴を穿った壁へ背中をつけた。
浩太は、立ちあがりつつ東を睨み付ける。ここまでの動きで、ある推測が確信に変わった。東にダメージが残っていない。体格差を考慮すれば、人間離れした頑丈さ自体が考えられない。だとしても、達也と裕介の前情報では、東はイカれた「人間」だったはずだ。ともすれば、闘いの中で興奮してアドレナリンが過剰に分泌されているのだろうか。いや、その仮定も考えにくい。それならば、浩太を仕留め損なった時の静かな口調が矛盾してしまう。
いくら考察を重ねても、答えに辿り着けず、浩太は眉間に皺を刻んだ。
「怪人が怪物になるなんざ、どんな神話だよクソッタレが……!」
四対一、圧倒的有利なのは、果たしてどちらなのだろう。壁に手を着け、東は淀みなく一歩進み自衛官を見回す。
「……俺は慈善事業家ではない。ましてや、キリストなんてものとは正反対だ……自身が正しいと信じるものがあるならば、手に入る武器は何でも使う。自分自身が十字架などにはりつけになるよりも、敵を打ち負かすことを優先する」
引き抜いたナイフを構え、東の声に達也が吠える。
「ゲバラ……テメエが英雄だとでも言いてえのかよ……このサイコ野郎が……!」
同時に距離を潰し、達也はナイフを振りかぶるも、東により一歩を踏み込まれ懐への侵入を許す。
ざわり、と襟足が総毛立つのが分かる。避けられない。
「英雄だぁ?そんな小せえ枠に俺を嵌め込むなよ、自衛官!」
「古賀ァ!」
達也は一瞬の浮遊感を覚えた。気付けば、背中を床に強打して男の背中を仰いでいた。
そして、その背中には奇妙な点がある。背中の中央に、人間の左手が生えていることだ。あり得ない光景に達也は言葉を無くす。
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