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saijya

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第22部 悔恨

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    田辺にとって、この結末は予想外のものだったのだろうか、それとも、ここまで頭を回す余裕がなかったからかもしれない。
 隊長と呼ばれている男達を含め、野田を引き連れ施設から出ると、待ち構えていたのは、青い服に身を包んだ集団と、その先頭に立つ紳士然とした男だ。とても、見覚えがある。毎日のように横目でみることができる男達だった。呆然と立ち尽くす田辺へ、紳士風の男が懐から手帳を一冊つきだした。 

「通報があって、ここに来たわけだが、どういうことか説明してもらおうか?」

  藤堂保信、そう書かれた手帳に一瞥くれると、田辺は心底、舌を打ちたい気分になった。手帳には、藤堂警視正とある。
 あれだけ派手に立ち回れば、こうなるのも当然だが、迎えた結果は、最悪なものになり果てた。
    藤堂は、ギロリ、と斎藤を睨みつけ口を開いた。 

「斎藤、お前もだ。なぜ、お前がここにいる?」

  斎藤は、答えられず、ただ喉を鳴らす。
    署長という地位にいる人物が相手ならば仕方がない。だが、この場にいることについての言及からは逃れられない。

「何も答えられないのか?なら、質問を変えようか。そこにいる政治家の野田さんが、何故、三人の男に縛られている?」 

  厳しい詰問に対して、狼狽するように目線を泳がせる。藤堂は、そういった心理状況を読み取ることに長けた人物なのだろう。ゆるりと口角をあげ、三度質問を繰り返そうとした。

「いやぁ、申し訳御座いません藤堂さん......でしたか?随分とお騒がせしているみたいで......」

  言葉を被せるように、一歩前に出たのは浜岡だった。
    途端に片眉をあげた藤堂に、浜岡が大仰な動作で詰めよっていき、田辺達が眼を見開いている中、眼前に立つと右手を差し出した。

「御会いできて光栄です。一度、挨拶でもできればと思っていたのですが、いやはや、こんなところで......」

 怪訝に双眸を細める藤堂は、右手をちらりと視線だけで見て、すぐさま浜岡の両目に戻す。どうにも、釈然としないものを抱えたまま言った。

「......貴方は誰だ?社会人として名刺を差し出す、これは常識なのではないか?」

「ああ!申し遅れました!私、こういう者です」

  すっ、と懐に左手をいれれば、藤堂の背後にいる警察官達に緊張が走った。それを右手だけで収めた藤堂に、軽く会釈をしつつ、名刺ケースを高く掲げてから、浜岡は一枚を藤堂へと渡す。
 しかし、藤堂は受け取りながらも、そのまま背後にいた壮年の警官へ後ろ手で回し、内容を耳打ちで訊いていた。
    そんな奇妙な光景に、田辺は胸中で藤堂へ同情に似た感情を抱く。浜岡と初対面、それも、このような状況であれば、浜岡は充分すぎるほどに警戒の対象となるだろう。全く、眼を逸らしていない。壮年の警官が離れると、藤堂は少しだけ考える仕草をして言った。
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