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第7話
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杭で打ち抜かれたような激痛に、祐介は二人の目が向いていることすら気にする余裕もなく、額を抑えて転がり続けた。重なった鈍痛は、頭蓋を響き全身へと巡る。
「お、なんだよ、安部さん好みの年齢じゃねえか。良い拾い物したなぁ、こりゃ」
加奈子を阿里沙が、反射的に抱き寄せる。この男に加奈子を渡してはいけない、直感が警鐘を鳴らし始めた最大の要因は、男が口にした安部という名前だった。
三人にとって、忘れることなど出来る筈がない。瞼を揺らしながらも、双眸だけは決して外さない阿里沙へと男が言った。
「そんな警戒すんじゃねえよ。こちとら、一応はフェミニストで通ってんだぜぇ?きひひ、自分で言っときながら笑えてくるなぁ......」
男が一歩を踏み出せば、阿里沙は加奈子を背中に回し、守るように立ちあがった。
「おいおい、俺の前に立つのかよ?無茶っつうか、無謀っつうか……」
嗟歎を吐きつつ、肩をすくねると、目線だけで振り返る。祐介の方は、未だに立ち上がれそうにもない。亜里沙は、それを承知して立ち上がったのだろう。
つまり、祐介が復帰するまでの時間稼ぎにすぎない。ならば、復帰さえすれば、この状況を脱する手段があるという意味にもとれる。
男は考えた。確かに、身体は鍛えているようだが、二人の戦力差は明瞭だ。事実、二発の攻撃を喰らってからは、子供に踏まれたムカデのように床を這っている。逆転の手段とすればなんだろうか。答えはすぐに出た。
「......銃だな」
ハッ、と祐介が起き上がるが、すでに遅かった。
助走をつけた男の蹴りが、咄嗟にガードした両腕ごと祐介の顔面を叩き、たたらを踏んだ所で前蹴りが直撃し、祐介は身体ごと壁面にぶつかる。
「祐介君!」
阿里沙の叫び声がスイッチになったかのように崩れ落ちる祐介の胸ぐらを掴み、強引に立たせると、男はポケットの膨らみを見て、唇を三日月形に歪めた。
父親の形見でもあるM360、それをろくに抵抗も出来ずに奪われてしまう。解放された祐介は、力なく、その場にへたりこんだ。
頭上から男の声が聞こえてくる。
「弾丸は少ないが......まあ、良いか。さてと......」
ゴリっ、とした武骨な感触を後頭部に感じると同時に、阿里沙が悲鳴に近い声をあげた。
「やめて!お願い!」
「安心しろよ。俺の質問に、正直に答えるなら、こいつは助けてやる」
「し......質問......?」
「ああ、そうだ。子供でも簡単に答えられる質問だ。ただし、少しでも嘘だと判断したら、こいつの脳ミソが吹き飛ぶことになる」
男が見せ付けるように撃鉄をあげた。
「まず、ひとつだ。お前ら、安部って奴を見なかったか?」
ピクリ、と反応した祐介に、男が目線を下げる。
「知ってるみてえだな。どこで会った?」
俯いたまま、祐介は僅かに視線を持ち上げて阿里沙を見た。まだ意識が揺れているのだろうか、焦点が定まっていない。しかし、何を訴えているのかは、すぐに分かった。隙をみて、床にある脱出口から抜け出せと言っている。
安部というワードに含まれた双方にある多様な意味、その一つにして、もっとも重要な事実、安部は、あれから三人を追ってきていないことだ。
現場を目撃せずとも、彰一が安部の足止めに成功したのだろう。
口振りからしても、こんな地獄のような環境下でも安部を捜しているのならば、この男にとって、安部は大切な仲間なのだ。
「お、なんだよ、安部さん好みの年齢じゃねえか。良い拾い物したなぁ、こりゃ」
加奈子を阿里沙が、反射的に抱き寄せる。この男に加奈子を渡してはいけない、直感が警鐘を鳴らし始めた最大の要因は、男が口にした安部という名前だった。
三人にとって、忘れることなど出来る筈がない。瞼を揺らしながらも、双眸だけは決して外さない阿里沙へと男が言った。
「そんな警戒すんじゃねえよ。こちとら、一応はフェミニストで通ってんだぜぇ?きひひ、自分で言っときながら笑えてくるなぁ......」
男が一歩を踏み出せば、阿里沙は加奈子を背中に回し、守るように立ちあがった。
「おいおい、俺の前に立つのかよ?無茶っつうか、無謀っつうか……」
嗟歎を吐きつつ、肩をすくねると、目線だけで振り返る。祐介の方は、未だに立ち上がれそうにもない。亜里沙は、それを承知して立ち上がったのだろう。
つまり、祐介が復帰するまでの時間稼ぎにすぎない。ならば、復帰さえすれば、この状況を脱する手段があるという意味にもとれる。
男は考えた。確かに、身体は鍛えているようだが、二人の戦力差は明瞭だ。事実、二発の攻撃を喰らってからは、子供に踏まれたムカデのように床を這っている。逆転の手段とすればなんだろうか。答えはすぐに出た。
「......銃だな」
ハッ、と祐介が起き上がるが、すでに遅かった。
助走をつけた男の蹴りが、咄嗟にガードした両腕ごと祐介の顔面を叩き、たたらを踏んだ所で前蹴りが直撃し、祐介は身体ごと壁面にぶつかる。
「祐介君!」
阿里沙の叫び声がスイッチになったかのように崩れ落ちる祐介の胸ぐらを掴み、強引に立たせると、男はポケットの膨らみを見て、唇を三日月形に歪めた。
父親の形見でもあるM360、それをろくに抵抗も出来ずに奪われてしまう。解放された祐介は、力なく、その場にへたりこんだ。
頭上から男の声が聞こえてくる。
「弾丸は少ないが......まあ、良いか。さてと......」
ゴリっ、とした武骨な感触を後頭部に感じると同時に、阿里沙が悲鳴に近い声をあげた。
「やめて!お願い!」
「安心しろよ。俺の質問に、正直に答えるなら、こいつは助けてやる」
「し......質問......?」
「ああ、そうだ。子供でも簡単に答えられる質問だ。ただし、少しでも嘘だと判断したら、こいつの脳ミソが吹き飛ぶことになる」
男が見せ付けるように撃鉄をあげた。
「まず、ひとつだ。お前ら、安部って奴を見なかったか?」
ピクリ、と反応した祐介に、男が目線を下げる。
「知ってるみてえだな。どこで会った?」
俯いたまま、祐介は僅かに視線を持ち上げて阿里沙を見た。まだ意識が揺れているのだろうか、焦点が定まっていない。しかし、何を訴えているのかは、すぐに分かった。隙をみて、床にある脱出口から抜け出せと言っている。
安部というワードに含まれた双方にある多様な意味、その一つにして、もっとも重要な事実、安部は、あれから三人を追ってきていないことだ。
現場を目撃せずとも、彰一が安部の足止めに成功したのだろう。
口振りからしても、こんな地獄のような環境下でも安部を捜しているのならば、この男にとって、安部は大切な仲間なのだ。
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