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第11話
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ここは、ショッパーズモールだ。それなら、建物の構造を利用するしかない。発想を変えろ、きっとなにかある。振り落とすのではなく、奴を車上にいられなくすれば良い。
新崎は、生存の為に思考を始め、やがて、あることが引っ掛かった。ショッパーズモールは、多数の店舗がテナントに入ることで成り立つ大型施設だ。つまり、各通路には区画が存在する。その区切りでよく見られる光景があるではないか。
「坂下!天井が一段下がっている場所を探せ!区画の入口だ!」
「はあ!?なんの意味があるんだ!」
「良いから早くしろ!」
新崎の勢いに押され、大地はペリスコープを見た。見たくもない死者の崩れた顔面の奥に、それはあった。南口へと続く通路だ。
真上には、二階エントランスホールの円形路が広がっているので、車上の男は、そちらへ身をかわすだろうが、戦車を囲む死者が幾人か男へ目標を変えるだろう。そうなれば、御の字だ。
男が死者に抵抗している内に、戦車ごとバックして逃げ去れば良い。あとは、一目散に北九州空港へ向かうだけだ。それで、全てが終わる。
「坂下!あそこだ!あの通路に突っ込め!」
大地は言われた通りの行動を実行に移した。
死者をキャタピラで薙ぎ倒しながらの強引な走行、軋む音が戦車の悲鳴に聞こえる。それでも、二人は進むしかなかった。南口への入口は、地獄に垂らされた極彩色の蜘蛛の糸だからだ。
戦車の砲塔が入り、凄まじい異音を響かせながら、戦車は通路の壁を破壊する。幅が足りない分、キャタピラを強硬に回し続け、男の足場を減らしていく。この振動では、どれほどバランスに優れていようと立ってはいられないだろう。
新崎の目論み通り、車体は、ハッチを天井に隠されている。結果、戦車のハッチを開こうとするスタンプの音は消えた。こちらも狙い通りに、男は二階の円形エントランスへ移ったか、死者の海へとバランスを崩して落ちたのだろうが、今となってはどちらでも良かった。
「坂下、もういいぞ。止めろ」
キャタピラの回転音が静まっていき、戦車は停止した。ほんの一瞬だけの安堵に襲われ、大地の瞳からは涙が溢れだす。
「泣いている場合じゃない。戦車を下げろ、このショッパーズモールから脱出するぞ」
「......了解」
大地が操縦管を握り、戦車がバックを始めると、ようやく新崎も一息ついた。
今回の出来事は、良い経験になった。次回があれば、視界を広く持つようにしよう、と物事の締め括りをしている最中、突然、キャタピラの音が止まり、聴こえてきたのは、狼狽する大地の声と、操縦管を乱暴に扱う音だ。燃料は充分にあったはずだ。嫌なざわつきが胸に広がっていく。
新崎達は、もしもの事態に備える為に、極力、弾丸や武器の使用を控えてきた。それが出来たのも、戦車という兵器があったからだ。新崎達は、死者を撥ね飛ばし、吹き飛ばし、踏み潰し、砕き、擂り潰してきた。
外に出ることは死に繋がる。
余裕の筈だった。福岡空港まで一直線で進める筈だった。
しかし、突然の変更と任務の追加、恐らく、数多の死者を戦車のみで葬ってきたことが原因だろう。
死者の骨が、毛髪が、歯が、肉が、血が、まるで、怨念のように、こびりついた多くの要因が重なり、キャタピラの駆動部に噛みついたのだ。
新崎は、生存の為に思考を始め、やがて、あることが引っ掛かった。ショッパーズモールは、多数の店舗がテナントに入ることで成り立つ大型施設だ。つまり、各通路には区画が存在する。その区切りでよく見られる光景があるではないか。
「坂下!天井が一段下がっている場所を探せ!区画の入口だ!」
「はあ!?なんの意味があるんだ!」
「良いから早くしろ!」
新崎の勢いに押され、大地はペリスコープを見た。見たくもない死者の崩れた顔面の奥に、それはあった。南口へと続く通路だ。
真上には、二階エントランスホールの円形路が広がっているので、車上の男は、そちらへ身をかわすだろうが、戦車を囲む死者が幾人か男へ目標を変えるだろう。そうなれば、御の字だ。
男が死者に抵抗している内に、戦車ごとバックして逃げ去れば良い。あとは、一目散に北九州空港へ向かうだけだ。それで、全てが終わる。
「坂下!あそこだ!あの通路に突っ込め!」
大地は言われた通りの行動を実行に移した。
死者をキャタピラで薙ぎ倒しながらの強引な走行、軋む音が戦車の悲鳴に聞こえる。それでも、二人は進むしかなかった。南口への入口は、地獄に垂らされた極彩色の蜘蛛の糸だからだ。
戦車の砲塔が入り、凄まじい異音を響かせながら、戦車は通路の壁を破壊する。幅が足りない分、キャタピラを強硬に回し続け、男の足場を減らしていく。この振動では、どれほどバランスに優れていようと立ってはいられないだろう。
新崎の目論み通り、車体は、ハッチを天井に隠されている。結果、戦車のハッチを開こうとするスタンプの音は消えた。こちらも狙い通りに、男は二階の円形エントランスへ移ったか、死者の海へとバランスを崩して落ちたのだろうが、今となってはどちらでも良かった。
「坂下、もういいぞ。止めろ」
キャタピラの回転音が静まっていき、戦車は停止した。ほんの一瞬だけの安堵に襲われ、大地の瞳からは涙が溢れだす。
「泣いている場合じゃない。戦車を下げろ、このショッパーズモールから脱出するぞ」
「......了解」
大地が操縦管を握り、戦車がバックを始めると、ようやく新崎も一息ついた。
今回の出来事は、良い経験になった。次回があれば、視界を広く持つようにしよう、と物事の締め括りをしている最中、突然、キャタピラの音が止まり、聴こえてきたのは、狼狽する大地の声と、操縦管を乱暴に扱う音だ。燃料は充分にあったはずだ。嫌なざわつきが胸に広がっていく。
新崎達は、もしもの事態に備える為に、極力、弾丸や武器の使用を控えてきた。それが出来たのも、戦車という兵器があったからだ。新崎達は、死者を撥ね飛ばし、吹き飛ばし、踏み潰し、砕き、擂り潰してきた。
外に出ることは死に繋がる。
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しかし、突然の変更と任務の追加、恐らく、数多の死者を戦車のみで葬ってきたことが原因だろう。
死者の骨が、毛髪が、歯が、肉が、血が、まるで、怨念のように、こびりついた多くの要因が重なり、キャタピラの駆動部に噛みついたのだ。
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