136 / 419
第8話
しおりを挟む
そんな達也の思いは、小金井が続けた言葉に掻き消される。膝窩から重みが外れ、怪訝そうに振り仰いだ達也を無視して小金井が言った。
「いや、なんでもありません!ただ、大きな鼠がいただけです!」
「鼠だぁ?そいつは良いじゃねえか!外にいる使徒にでも投げてやれよ!」
東の声に頷きだけで返した小金井は、膝を折って、達也へと顔を近づけ、小声で言った。
「なぜ、ここにいる。今はとにかく休めと釘を刺しただろ!」
達也は、何も返せなかった。ただ、あまりにも必死な形相で迫る小金井に、首を動かして反応するだけしか出来なかった。次第に雲行きが怪しくなる。
「どうしたよ!さっさと終わらせて戻ってこいよ!」
小金井を急かす東の大声に、安部を始め、その場にいる全員の視線が集まった。まさか、と小金井の額から一筋の汗が流れる。
これ以上の時間稼ぎは出来ない。そう判断した小金井は、淀みなく立ち上がると、一息吸った。
「申し訳ありません!鼠が素早くて手間取りまして......すぐに戻ります!」
何かを含んだように、両手を合わせて腕を挙げた。そして、小金井が自動扉へと近づこうとしたその時、東が言った。
「ちょっと待てよ、小金井!」
ピクリ、と二人は同時に肩を揺らす。
小金井は、振り返れなかった。最早、冷や汗は身体中に流れている。
東が一歩一歩と着実に歩いてきていることが気配で分かる。
達也は、自動扉からの脱出を諦め、出来るだけ東から隠れるように後退する。
だが、小金井はこれこそ好奇と考えた。期せずして東と安部の距離は離れている。
「古賀さん......もっと奥だ......奥に下がってくれ」
言われるまでもない。達也は、一階のホールから延びるエスカレーターからは見えない位置まで慎重に下がり、東がエスカレーターを上がりきる前に小金井は振り返り、さっ、と背中に右手を回す。達也が寝てる間に抜き取っていたのか、腰に挟んでいたアーミーナイフをしっかりと握り、東がエスカレーターを上がりきると、小金井は静かに喉を鳴らした。
「よお、小金井......鼠ってのはどこにいんだ?」
東は挑発でもするように、軽く左手を挙げる。
見下した目線、嘲笑うような口元、小金井は確信した。間違いなく、東は企みを見抜いている。自然と、ナイフを握る手にも力が入った。
「鼠なら俺が持ってる。確認が?」
東は喉の奥で微笑を洩らしながら一歩、小金井へ向けて踏み出した。
「死体愛好家、ネクロフィリアって奴には、ある特徴が存在する。なにか分かるか?」
「いや、なんでもありません!ただ、大きな鼠がいただけです!」
「鼠だぁ?そいつは良いじゃねえか!外にいる使徒にでも投げてやれよ!」
東の声に頷きだけで返した小金井は、膝を折って、達也へと顔を近づけ、小声で言った。
「なぜ、ここにいる。今はとにかく休めと釘を刺しただろ!」
達也は、何も返せなかった。ただ、あまりにも必死な形相で迫る小金井に、首を動かして反応するだけしか出来なかった。次第に雲行きが怪しくなる。
「どうしたよ!さっさと終わらせて戻ってこいよ!」
小金井を急かす東の大声に、安部を始め、その場にいる全員の視線が集まった。まさか、と小金井の額から一筋の汗が流れる。
これ以上の時間稼ぎは出来ない。そう判断した小金井は、淀みなく立ち上がると、一息吸った。
「申し訳ありません!鼠が素早くて手間取りまして......すぐに戻ります!」
何かを含んだように、両手を合わせて腕を挙げた。そして、小金井が自動扉へと近づこうとしたその時、東が言った。
「ちょっと待てよ、小金井!」
ピクリ、と二人は同時に肩を揺らす。
小金井は、振り返れなかった。最早、冷や汗は身体中に流れている。
東が一歩一歩と着実に歩いてきていることが気配で分かる。
達也は、自動扉からの脱出を諦め、出来るだけ東から隠れるように後退する。
だが、小金井はこれこそ好奇と考えた。期せずして東と安部の距離は離れている。
「古賀さん......もっと奥だ......奥に下がってくれ」
言われるまでもない。達也は、一階のホールから延びるエスカレーターからは見えない位置まで慎重に下がり、東がエスカレーターを上がりきる前に小金井は振り返り、さっ、と背中に右手を回す。達也が寝てる間に抜き取っていたのか、腰に挟んでいたアーミーナイフをしっかりと握り、東がエスカレーターを上がりきると、小金井は静かに喉を鳴らした。
「よお、小金井......鼠ってのはどこにいんだ?」
東は挑発でもするように、軽く左手を挙げる。
見下した目線、嘲笑うような口元、小金井は確信した。間違いなく、東は企みを見抜いている。自然と、ナイフを握る手にも力が入った。
「鼠なら俺が持ってる。確認が?」
東は喉の奥で微笑を洩らしながら一歩、小金井へ向けて踏み出した。
「死体愛好家、ネクロフィリアって奴には、ある特徴が存在する。なにか分かるか?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる