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第4話
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浜岡は笑って返す。
「それは、自分の耳と目で感じてもらうしかないですねぇ......それで、どうしますか?」
まるで試されているようだと感じた。
それは、斎藤の主観ではあるが、黒幕の存在をこうも醸されては、出口へ足を運び辛い。現場主義の性だろう。
斎藤は、浜岡へ向き直って言った。
「今回だけだ。今回だけはお前の妄言に付き合ってやる。だが、終わり次第、お前を連行して埃が出なくなるまで調べてやるから覚悟しとけ」
「それは勘弁願いたいですねえ......まあ、叩いて出る埃ならいくらでも出しますが」
ケラケラと軽口混じりに笑う浜岡は、すっ、と道を開ける。警察署で斎藤がした動作と全く同じだ。斎藤は苦笑を挟み、エレベーターのボタンを押す。
「ところで、お前は何故、あのメッセージを読めたんだ?」
斎藤の問い掛けに、浜岡は困ったように頭を掻いた。
「うーーん、なんというか......あのメッセージは、正義感の強い彼らしい素直なメッセージではないですかねえ」
斎藤は、田辺と浜岡、互いの信頼からくる理解だろうと察した。田辺は、浜岡なら必ず気付く筈だと信じ、浜岡は田辺の特徴を理解し、メッセージが含まれていることを前提として受け取った。
少し、その信頼関係が羨ましくも思えた斎藤は、浜岡よりも先にエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターの扉が閉まり、一階から二階へ上がっていく。その様子を真向かいのマンションのロビーから眺めていた男が、目に当てていた双眼鏡を離し無線のボタンを押した。
「......やはり、写真の人物とは違うようです」
無線越しに無機質というよりは、機械的な口調で返事が聞こえる。
「そうか、了解した。お前も一度戻ってこい」
「了解しました」
男は無線を切り、腰から提げた双眼鏡を使い、再びエレベーターを確認する。六階で止まった点滅を見ると、お気の毒に、と口先で囁きエレベーターに乗り込んだ。
※※※ ※※※
あの二人を引き離す作戦を考えてくる。古賀さんは、ひとまずここで休んでいてくれ。
そう言って小金井が部屋を出てから約一時間が経過した。ふと、目を覚ました達也は、頭を軽く振ってから身体を起こした。
どうやら、眠っちまってたみたいだな、そう理解した時、足元にある違和感に気付き視線を向けると、89式小銃が置いている。達也が持っていたものだろう。弾丸が入っていないので無用の長物と化してはいるが、これから先を考慮した小金井が残していったようだった。
あの、キチガイ染みた東を相手にするのは、素手では骨が折れる。現に、達也は気圧されたとはいえ、一度負けている。いや、気圧されたからこそ負けたのだ。油断しなければ勝てるという保証はどこにもない。
「それは、自分の耳と目で感じてもらうしかないですねぇ......それで、どうしますか?」
まるで試されているようだと感じた。
それは、斎藤の主観ではあるが、黒幕の存在をこうも醸されては、出口へ足を運び辛い。現場主義の性だろう。
斎藤は、浜岡へ向き直って言った。
「今回だけだ。今回だけはお前の妄言に付き合ってやる。だが、終わり次第、お前を連行して埃が出なくなるまで調べてやるから覚悟しとけ」
「それは勘弁願いたいですねえ......まあ、叩いて出る埃ならいくらでも出しますが」
ケラケラと軽口混じりに笑う浜岡は、すっ、と道を開ける。警察署で斎藤がした動作と全く同じだ。斎藤は苦笑を挟み、エレベーターのボタンを押す。
「ところで、お前は何故、あのメッセージを読めたんだ?」
斎藤の問い掛けに、浜岡は困ったように頭を掻いた。
「うーーん、なんというか......あのメッセージは、正義感の強い彼らしい素直なメッセージではないですかねえ」
斎藤は、田辺と浜岡、互いの信頼からくる理解だろうと察した。田辺は、浜岡なら必ず気付く筈だと信じ、浜岡は田辺の特徴を理解し、メッセージが含まれていることを前提として受け取った。
少し、その信頼関係が羨ましくも思えた斎藤は、浜岡よりも先にエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターの扉が閉まり、一階から二階へ上がっていく。その様子を真向かいのマンションのロビーから眺めていた男が、目に当てていた双眼鏡を離し無線のボタンを押した。
「......やはり、写真の人物とは違うようです」
無線越しに無機質というよりは、機械的な口調で返事が聞こえる。
「そうか、了解した。お前も一度戻ってこい」
「了解しました」
男は無線を切り、腰から提げた双眼鏡を使い、再びエレベーターを確認する。六階で止まった点滅を見ると、お気の毒に、と口先で囁きエレベーターに乗り込んだ。
※※※ ※※※
あの二人を引き離す作戦を考えてくる。古賀さんは、ひとまずここで休んでいてくれ。
そう言って小金井が部屋を出てから約一時間が経過した。ふと、目を覚ました達也は、頭を軽く振ってから身体を起こした。
どうやら、眠っちまってたみたいだな、そう理解した時、足元にある違和感に気付き視線を向けると、89式小銃が置いている。達也が持っていたものだろう。弾丸が入っていないので無用の長物と化してはいるが、これから先を考慮した小金井が残していったようだった。
あの、キチガイ染みた東を相手にするのは、素手では骨が折れる。現に、達也は気圧されたとはいえ、一度負けている。いや、気圧されたからこそ負けたのだ。油断しなければ勝てるという保証はどこにもない。
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