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第11話
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「弾は無駄にするなよ。数も少ない」
浩太は、自分のナイフを抜いて、真一に渡す。
「了解だぜ」
トラックは、萩原のボーリング場を通り、青山葬議場を抜けた。喪服を着た暴徒の一団を出来るだけ避け、萩原から穴生へ到達する。萩原橋を左折するところで、達也が声を出した。
「どこまで行くつもりだ?」
「穴生ドームを一周して、警察署に戻る」
左手にある小学校からも、転化した暴徒がトラックを追い掛けてくる。中には、年端もいかない少年や少女もいた。心苦しそうに、真一は目線を反らす。いっそのこと楽にしてやりたい気持ちがあるが、ここで弾丸を消費する訳にはいかない。
心に蓋をするように、真一は鬱々とした気分で言う。
「警察署にいた奴等は、大丈夫か不安だぜ......」
「仕方ないだろ......けど、ここまで生き延びてるんだ。絶対に大丈夫だろ」
自分に言い聞かせているような浩太の口調を受け、二人は暴徒達に視線を向けた。 追い掛けてくる数は、みるみるうちに増えてきている。
長い直進の先に、穴生ドームがその姿を現した時、浩太と真一の顔から一斉に血の気が引いた。
普段は、幼稚園の運動会、近隣中学校のスポーツ試合の会場に使われる有名なドームだが、今となっては巨大な棺桶と大差がないように思えた。
浩太がかけた急ブレーキに、荷台にいる達也が非難をあげる。
「おい!急に停ま......」
穴生ドームの周辺は多くの住居やマンションが乱立する地域だ。集合住宅街ともいっていいだろう。ならば、この光景にも納得がいく。三人の眼界に広がるのは、無数の暴徒達だった。広大な敷地を誇る穴生ドームを取り囲むような広がりをみせる大群は、警察署から連れてきた人数を優に越えている。
達也が言葉に詰まるのも無理はない。哮りの怒声にも似た唸りを聞いた瞬間、浩太はハンドルを右に切り、アクセルを踏み抜いた。
「くっそ!なんだってんだよあれは!ふざけんな!」
「黙ってろ真一!舌噛むぞ!」
ドゴン、とトラックに追突された暴徒が宙を舞う。凹んだフロントは、もう限界が近づきつつあるのだろうか、バンパーが折れ曲がっていた。連続した衝撃に、ついには、サイドミラーまでもが悲鳴をあげ始めている。それでも、浩太はアクセルを踏むしかなかった。一度でも停まってしまえば、いくらトラックといえど、追ってきている暴徒に囲まれれば、容易く横転させられるだろう。
「一難去ってまた一難ってどころの話しじゃないぜ!チクショウ!」
浩太は、穴生の商店街に進路を変更して走ることを余儀なくされた。
そして、真一が叫んだ直後、不運が起きた。悲鳴をあげていたサイドミラーに、電柱がかすり、一部の破片が割れていたフロントから飛び込み、浩太の眉間をを直撃する。
掌に浮き出た汗が、頭を目掛けて登ってくる錯覚に襲われ、意識が朦朧としてきた。肺が空気を求めている。極度の疲労、緊張による酸欠、それに伴い、吐き気まである。この一日で何度、命が脅かされてきただろうか。
浩太の異変に気付いた真一と達也の呼び掛けが遠退いていき、やがてトラックのスピードが落ちていく。
「浩太!おい!大丈夫か!?」
「真一!ハンドル持て!意識が飛びかけてやがる!」
浩太は、自分のナイフを抜いて、真一に渡す。
「了解だぜ」
トラックは、萩原のボーリング場を通り、青山葬議場を抜けた。喪服を着た暴徒の一団を出来るだけ避け、萩原から穴生へ到達する。萩原橋を左折するところで、達也が声を出した。
「どこまで行くつもりだ?」
「穴生ドームを一周して、警察署に戻る」
左手にある小学校からも、転化した暴徒がトラックを追い掛けてくる。中には、年端もいかない少年や少女もいた。心苦しそうに、真一は目線を反らす。いっそのこと楽にしてやりたい気持ちがあるが、ここで弾丸を消費する訳にはいかない。
心に蓋をするように、真一は鬱々とした気分で言う。
「警察署にいた奴等は、大丈夫か不安だぜ......」
「仕方ないだろ......けど、ここまで生き延びてるんだ。絶対に大丈夫だろ」
自分に言い聞かせているような浩太の口調を受け、二人は暴徒達に視線を向けた。 追い掛けてくる数は、みるみるうちに増えてきている。
長い直進の先に、穴生ドームがその姿を現した時、浩太と真一の顔から一斉に血の気が引いた。
普段は、幼稚園の運動会、近隣中学校のスポーツ試合の会場に使われる有名なドームだが、今となっては巨大な棺桶と大差がないように思えた。
浩太がかけた急ブレーキに、荷台にいる達也が非難をあげる。
「おい!急に停ま......」
穴生ドームの周辺は多くの住居やマンションが乱立する地域だ。集合住宅街ともいっていいだろう。ならば、この光景にも納得がいく。三人の眼界に広がるのは、無数の暴徒達だった。広大な敷地を誇る穴生ドームを取り囲むような広がりをみせる大群は、警察署から連れてきた人数を優に越えている。
達也が言葉に詰まるのも無理はない。哮りの怒声にも似た唸りを聞いた瞬間、浩太はハンドルを右に切り、アクセルを踏み抜いた。
「くっそ!なんだってんだよあれは!ふざけんな!」
「黙ってろ真一!舌噛むぞ!」
ドゴン、とトラックに追突された暴徒が宙を舞う。凹んだフロントは、もう限界が近づきつつあるのだろうか、バンパーが折れ曲がっていた。連続した衝撃に、ついには、サイドミラーまでもが悲鳴をあげ始めている。それでも、浩太はアクセルを踏むしかなかった。一度でも停まってしまえば、いくらトラックといえど、追ってきている暴徒に囲まれれば、容易く横転させられるだろう。
「一難去ってまた一難ってどころの話しじゃないぜ!チクショウ!」
浩太は、穴生の商店街に進路を変更して走ることを余儀なくされた。
そして、真一が叫んだ直後、不運が起きた。悲鳴をあげていたサイドミラーに、電柱がかすり、一部の破片が割れていたフロントから飛び込み、浩太の眉間をを直撃する。
掌に浮き出た汗が、頭を目掛けて登ってくる錯覚に襲われ、意識が朦朧としてきた。肺が空気を求めている。極度の疲労、緊張による酸欠、それに伴い、吐き気まである。この一日で何度、命が脅かされてきただろうか。
浩太の異変に気付いた真一と達也の呼び掛けが遠退いていき、やがてトラックのスピードが落ちていく。
「浩太!おい!大丈夫か!?」
「真一!ハンドル持て!意識が飛びかけてやがる!」
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