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第19話
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真一は上空のアパッチを仰ぐ。まだ、態勢は崩れているようだ。不安定に機体を傾けたまま、海上を旋回している。
走るよりも早いと判断した達也が、トラックを運転し、二人を迎えにきた。
「乗れ!」
真一が荷台、浩太は助手席にそれぞれ乗り込んだ。
アパッチの態勢が整い、M2重機関銃の銃口が煌めくと同時に、達也はアクセルを踏み抜く。連続した凄まじい射撃音をバックに、三人が乗ったトラックが走り出す。アパッチは、三百五十キロが限界速度だ。達也は、最低でも百キロを超えた速度で走ることを余儀なくされた。
尻を叩くようなモーター音に混じり、荷台から真一が言った。
「達也!もっとスピード出せ!追い付かれるぜ!」
「んなこと分かってんだよ!言ってるだけじゃねえで、ちっとは、お前も応射しろ!」
「また、俺かよ!貧乏くじ引いてばっかりだぜ!今度、なんか奢れよな、ちくしょう!」
真光寺の本殿を横目で確認した浩太は、信号を左に曲がるよう指示を出す。本線に乗り、小倉駅まで一気に走らせ、高いビル等の障害物に紛れ込む算段だろう。
だが、その思惑は、応射をしていた真一の一声で水泡に帰した。
「ヤバイ!奴等、ヘルファイアまで撃ちやがったぜ!」
「はあ!?クソが!冗談じゃねえぞ!」
アパッチが対戦車ミサイルを射出する。それは、
FCSを搭載しているという意味だ。その威力の前には、自衛隊のトラックなどひとたまりもない。目標の追尾を可能にしたミサイルは、グングンとその距離を縮めてくる。浩太が叫ぶ。
「撃ち落とせないか!」
「アニメやゲームの世界じゃないんだぜ!無理に決まってんだろうが!それより、もっと飛ばした方が現実性があるってもんだ!」
「悪ぃが、これが限界だよ!」
達也が言うように、スピードメーターは振り切れていた。タコメーターの端で小刻みな振動を繰り返している。
アパッチが目標を捉えている限り、ミサイルが止まることはない。達也と真一には、もう絶望の色が浮かんでいた。特にハンドルを握る達也は、生きた心地がしなかった。
着弾まで、残り何分の猶予があるのだろうか。いや、何秒しかないかもしれない。いっそ止まってしまった方が、この息苦しさから逃げ出せるんじゃないか。無意識にトラックのスピードが下がった時、浩太が振り切てた。
「達也!右だ!ハンドルを右に切れ!」
「ああ?なんの意味があるってんだよ!」
「良いから!あそこから入れ!」
浩太が指差した先は、門司港レトロの入口だった。確かに、建造物は多いが、相手は上空を飛ぶアパッチだ。高い建物が密集していなければ、身を隠すことは不可能だろう。
だが、達也は浩太を信じるしか無かった。それ以外に、もう選べる手段がなかったからだ。浩太なら、針を以って地を刺すようなようなことは口にしないだろうと信じて答えた。
「分かったよ!なにか、考えがあるんだろうな!」
浩太の返事は聞かなかった。横滑り気味に、トラックは門司港レトロへ入る。
ミサイルは、数メートルに迫っていた。判断ミスをすれば、痛みを感じる間もなく、吹き飛んでしまう。残された時間はほとんどない。息が詰まる。
そんな状況下でも、浩太は辺りをキョロキョロと見回していた。三人の心音が高まる。極限状態の不安に誰しもが声を出せない。ミサイルの摩擦音までも聞こえてきそうだ。
門司港レトロのレトロハイマートが見えてくる。直後、浩太は突然、声を張った。
「あった!あれだ!達也、 あそこに向かって、そのまま真っ直ぐ進め!」
達也は、浩太の発案に目を剥いた。
走るよりも早いと判断した達也が、トラックを運転し、二人を迎えにきた。
「乗れ!」
真一が荷台、浩太は助手席にそれぞれ乗り込んだ。
アパッチの態勢が整い、M2重機関銃の銃口が煌めくと同時に、達也はアクセルを踏み抜く。連続した凄まじい射撃音をバックに、三人が乗ったトラックが走り出す。アパッチは、三百五十キロが限界速度だ。達也は、最低でも百キロを超えた速度で走ることを余儀なくされた。
尻を叩くようなモーター音に混じり、荷台から真一が言った。
「達也!もっとスピード出せ!追い付かれるぜ!」
「んなこと分かってんだよ!言ってるだけじゃねえで、ちっとは、お前も応射しろ!」
「また、俺かよ!貧乏くじ引いてばっかりだぜ!今度、なんか奢れよな、ちくしょう!」
真光寺の本殿を横目で確認した浩太は、信号を左に曲がるよう指示を出す。本線に乗り、小倉駅まで一気に走らせ、高いビル等の障害物に紛れ込む算段だろう。
だが、その思惑は、応射をしていた真一の一声で水泡に帰した。
「ヤバイ!奴等、ヘルファイアまで撃ちやがったぜ!」
「はあ!?クソが!冗談じゃねえぞ!」
アパッチが対戦車ミサイルを射出する。それは、
FCSを搭載しているという意味だ。その威力の前には、自衛隊のトラックなどひとたまりもない。目標の追尾を可能にしたミサイルは、グングンとその距離を縮めてくる。浩太が叫ぶ。
「撃ち落とせないか!」
「アニメやゲームの世界じゃないんだぜ!無理に決まってんだろうが!それより、もっと飛ばした方が現実性があるってもんだ!」
「悪ぃが、これが限界だよ!」
達也が言うように、スピードメーターは振り切れていた。タコメーターの端で小刻みな振動を繰り返している。
アパッチが目標を捉えている限り、ミサイルが止まることはない。達也と真一には、もう絶望の色が浮かんでいた。特にハンドルを握る達也は、生きた心地がしなかった。
着弾まで、残り何分の猶予があるのだろうか。いや、何秒しかないかもしれない。いっそ止まってしまった方が、この息苦しさから逃げ出せるんじゃないか。無意識にトラックのスピードが下がった時、浩太が振り切てた。
「達也!右だ!ハンドルを右に切れ!」
「ああ?なんの意味があるってんだよ!」
「良いから!あそこから入れ!」
浩太が指差した先は、門司港レトロの入口だった。確かに、建造物は多いが、相手は上空を飛ぶアパッチだ。高い建物が密集していなければ、身を隠すことは不可能だろう。
だが、達也は浩太を信じるしか無かった。それ以外に、もう選べる手段がなかったからだ。浩太なら、針を以って地を刺すようなようなことは口にしないだろうと信じて答えた。
「分かったよ!なにか、考えがあるんだろうな!」
浩太の返事は聞かなかった。横滑り気味に、トラックは門司港レトロへ入る。
ミサイルは、数メートルに迫っていた。判断ミスをすれば、痛みを感じる間もなく、吹き飛んでしまう。残された時間はほとんどない。息が詰まる。
そんな状況下でも、浩太は辺りをキョロキョロと見回していた。三人の心音が高まる。極限状態の不安に誰しもが声を出せない。ミサイルの摩擦音までも聞こえてきそうだ。
門司港レトロのレトロハイマートが見えてくる。直後、浩太は突然、声を張った。
「あった!あれだ!達也、 あそこに向かって、そのまま真っ直ぐ進め!」
達也は、浩太の発案に目を剥いた。
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